仕事で使えるファイル同期サービス、「SugarSync」の始め方


 「SugarSync」日本語版が公開された。さまざまなファイル同期サービスの中で、仕事を効率よく進める技の長けたビジネスパーソンに支持されてきた高機能ぶりを紹介する。

高機能で柔軟な同期サービス

SugarSyncの利用イメージ

 SugarSyncは、ファイル同期サービスと呼ばれるタイプのオンラインストレージサービスだ。アカウントを登録するとインターネット上にディスクスペースが与えられ、そこを介して、指定したファイルが端末間で自動的に常に同じになるように同期できる。

 使い方としてはたとえば、社内のデスクトップPCで作業した内容を、外出用のノートPCで続けるといったことが可能だ。インターネットに接続していないときでも、ファイルはそのままローカル側で閲覧・編集することができ、次に接続したときに同期される。

 利用するには、Windows 7/Vista/XPおよびMac OS X 10.5以降に対応した専用クライアントソフトをPCにインストールしておくのが基本だが、これをインストールしていないPCでも、オンラインストレージにあるファイルにWebブラウザーからアクセスすることが可能だ。なお、インターネット通信にはTLS(SSL)暗号化が使われているので、少なくともインターネット上の盗聴でデータが漏れる心配もない。

 SugarSyncと同じようなサービスとしてはほかにも、DropBoxやMobileMe、Zumodrive、Live Meshなどがある。その中でもSugarSyncは、以下のようにビジネスにも活用できる高機能と柔軟さが特徴だ。

1. どのフォルダーでも同期できる
同期専用のフォルダーのほかに、ドキュメントフォルダーやデスクトップなどを同期するフォルダーとして指定できる。そのため、ふつうに作業して保存したファイルが、専用のフォルダに置かなくてもそのまま同期される。それ以外のフォルダーも指定できるので、たとえば「ScanSnapでスキャンした書類一式を同期」といった使い方もできる。
2. 細かく設定できる
フォルダーを他のユーザーと共有するときに、共有する相手や相手に許可する操作を指定して、安全に共有できる。そのほか、公開ファイルのURLを他人に伝えるときやファイルを更新するときなどにメールが使えるなど、柔軟な使い方ができる。
3. 各種スマートフォンでも使える
iPhone(iPad、iPod touch)のほか、Android、Windows Mobile、BlackBerryのクライアントが用意されている。Android版では、ファイルを読み書きするだけでなく、PCと同じように同期してローカルで使えるようになっている。

まずはユーザー登録から

 SugarSyncは、無料プランから気軽に始められる。この記事でも、無料プランを中心に紹介する。ただし、無料プランではオンラインストレージの容量が2GBまで、同期できるPCが2台まで、変更履歴が2つ前まで、といった制限がある。

 それでは、SugarSyncにユーザー登録してみよう。まずSugarSyncのWebサイトにアクセスする。右上の「日本語」をクリックすると表示が日本語に変わる。

SugarSyncのWebサイト日本語版

 最初に料金プランを選ぶ。ここでは無料プランに登録するため、「2GBの無料プランにサインアップ」をクリックする。メールアドレスと使いたいユーザー名、パスワードを尋ねられるので、入力してサインアップする。なお、ユーザー名がすでに使われている場合は、再び入力画面に戻るので、ユーザー名を変えて入力しよう。

料金プランを選ぶユーザー情報を入力

 入力したメールアドレスに確認メールが送られてくるので、文中のURLにアクセスする。これで、アカウントが有効になって登録が完了する。

確認メールURLにアクセスすると登録が完了

クライアントソフトをインストールする

 登録が完了すると、そのままクライアントソフトのインストールに進む。Windowsでアクセスしていれば、Windows版のクライアントソフトのダウンロードが案内される。

クライアントをダウンロードインストーラーを実行

 インストーラーを実行したら、まずはライセンスに同意する。続いてインストール先フォルダーを尋ねられるが、これは標準のままでよいだろう。なお、WindowsのエクスプローラーにSugarSyncを組み込むためにエクスプローラーを再起動するので、開いているフォルダーがある場合は注意したい。

インストールを開始ライセンスに同意
インストール先フォルダーは標準のままでエクスプローラーを再起動するので注意

 インストーラーが終了すると、SugarSyncの初期設定に移る。まず、ユーザー登録したメールアドレスとパスワードを入力する。

インストール完了登録したユーザー情報を入力

 PCの名前とアイコンを選ぶ。その後で、詳細な設定をするかどうか尋ねられるが、通常は「Express Setup」で標準設定にしておけばよいだろう。

PCの名前とアイコンを選ぶ。詳細な設定をするかどうか尋ねられる

 続いて、同期するフォルダーを選ぶ画面が表示される。デフォルトでは「Desktop」「Documents」「Pictures」が有効になっているので、必要に応じてチェックボックスを変更する。ここですべてオフにしても、ドキュメントフォルダーの中の「Magic Briefcase」フォルダーが同期フォルダーとして使われる。なお、あらゆるフォルダーを同期の対象に選べるのは、SugarSyncの特徴のひとつだ。

 選び終わると、設定が完了してSugarSyncのクライアントが起動する。

同期するフォルダーを選ぶ設定が完了

ファイルを置くだけで同期

 基本的な使い方は、一般のアプリケーションやWindowsのエクスプローラーから、同期設定したフォルダーにファイルを作るだけだ。あとは、自動的に同期される。同期対象になっているファイルやフォルダーは、アイコンに印が付いて表示される。

 「Magic Briefcase」フォルダーは、指定していなくても同期対象になる。Magic Briefcaseには、インストールした時に、サンプルのドキュメントが置かれる。

同期を設定したドキュメントフォルダーMagic Briefcaseに置かれたサンプルのドキュメント

専用アプリでファイル管理

 デスクトップ用アプリケーション「SugarSync File Manager」も用意されている。エクスプローラーと同じように、ファイルをドラッグ&ドロップで移動したり、削除したりできる。PC上で動くアプリだが、インターネット上のオンラインストレージと連携しているため、後で解説するように、削除したファイルの復元などもここから操作できる。

 SugarSync File Managerは、さまざまな方法で呼び出せる。タスクトレイのSugarSyncアイコンを右クリックしてメニューから選ぶのが一般的だろう。そのほか、デスクトップのショートカットやスタートメニューから呼び出したり、Windowsのエクスプローラーで右クリックして呼び出したりもできる。

SugarSync File ManagerエクスプローラーからSugarSync File Managerを開く

同期対象のフォルダーを変更する

 インストールのときに設定した同期対象のフォルダーは、SugarSync File Managerの設定から変更することもできる。「File」メニューの「Manage Sync Folders」を選ぶと、同期対象の設定画面が表示される。項目に出ていないフォルダーを選ぶには、「Add Folders from this Computer」をクリックすると、フォルダーを選べる。

同期対象のフォルダーの設定好きなフォルダーを選べる

Webインターフェイスでファイル管理

 デスクトップ用アプリケーションだけでなく、Webブラウザーからもファイルにアクセスしたり、管理したりもできる。SugarSyncクライアントを入れるほど頻繁にアクセスしないPCから、オンラインストレージ上のデータにアクセスすることが可能だ。つまり、同期しているPCのドキュメントフォルダーにアクセスするのと同様の操作が行えるわけだ。

 タスクトレイのSugarSyncアイコンを右クリックしてメニューから「My SugarSync」を選ぶか、WebブラウザーからSugarSyncのWebサイトにアクセスしてログインすると、Webインターフェイスのファイル管理画面が表示される。ここから、ファイルのダウンロードやアップロード、削除、移動などができる。Webインターフェイスでファイルを操作した場合も、同期しているPCにリアルタイムで反映される。

WebからMagic Briefcaseの中を表示ドキュメントフォルダーの中を表示

 ユニークなのがWebSync機能だ。WebSyncを使うと、SugarSyncのクライアントをインストールしていないPCからでも、選んだファイルを一時的に同期して編集できる。ローカルにファイルが残らないため、出先のPCからでも安全に作業できる。ただし、Java実行環境がインストールされている必要がある。

 Webインターフェイス上で、*.xlsなどの文書ファイルをクリックすると、メニューの中に「WebSyncで編集」という項目が現れる。これを選ぶと、Javaアプリによるクライアントが起動し、ファイルを一時的にPCにダウンロードしてファイルを開く。もちろん、Officeのファイルを開くにはPCにOfficeがインストールされている必要がある。編集が終わると、また自動的にアップロードしてオンラインストレージ上で更新される。

出先のPCからWebSyncで編集

ファイルを元に戻す

 ファイル同期サービスで便利なのが、ファイルを更新したり削除したときに、自動的に古いバージョンを保管してくれる機能だ。

 SugarSync File ManagerでもWebインターフェイスでも、削除されたファイルは「Deleted Files」や「削除済みファイル」という項目に保管されている。これを、選択して復元を指定したり、ドラッグ&ドロップしたりすれば、元のフォルダーに戻せる。

SugarSync File Managerの「Deleted Files」Webインターフェイスの「削除済みファイル」

 また、たとえばファイルから大きな個所を削除して保存してしまったあと、元に戻したいときに便利なのがバージョン管理機能だ。ファイルをクリックして「バージョン」を選ぶと、過去のバージョンが一覧表示されるので、選んだ時点のバージョンのファイルを取り出せる。ただし、無料プランの場合は2バージョン前までに限られる。

ファイルのバージョン管理を呼び出す過去のバージョンが一覧される

 削除されたファイルとは違うが、SugarSync File ManagerやWebインターフェイスから使えるのが「Web Archive」だ。Web Archiveにファイルをアップロードすると、同期されたファイルとは違い、オンラインストレージだけにファイルを保存しておける。

インターネット経由で共同作業

 ファイル同期サービスを使うと、オンラインストレージを使ってほかの人にデータを公開したり、ほかの人とフォルダーを共有して共同作業したりできる。

 データを受け渡すときなどに便利なのが、オンラインストレージのファイルを公開して専用のURLを生成してくれる、パブリックファイル機能だ。Windowsのエクスプローラーから、公開対象のファイルを右クリックして「Get Public Link」を選ぶと、ファイルがインターネットからアクセスできるようになり、そのURLがPCのクリップボードにコピーされる。このURLを相手に伝えてダウンロードしてもらう。

 ただし、ユニークなURLが生成されるとはいえ、アクセス制限なしでインターネット公開され続けるのは望ましくない。公開をやめるときは、Webインターフェイスの「パブリックリンク」からファイルを選んで「リンクを無効化」を指定する。なお、公開期間は21日間までとなっている。

パブリックファイルとして公開する公開をやめる

 ファイルをオンラインストレージからメールで送信することもできる。Windowsのエクスプローラーから「Send File」を選ぶと、Webインターフェイスでメール送信画面が開く。ここで宛先やメッセージなどを入力すると、相手にメールで送られる。

ファイルをメールで送信する宛先などを入力する

 フォルダーの共有の機能を使うと、SugarSyncを使っている相手と共同作業ができる。例えば、会社をまたがったチームで作業をするときに、フォルダーを共有すれば、自分のPC上のデータを更新していくと相手のPC上でも自動的に最新のデータになる。

 Windowsのエクスプーラーなどから共有するフォルダーを指定し、「Share Folder」を選ぶと、フォルダーを共有する画面がWebインターフェイスで表示される。ここで、共有する相手や、相手に許す操作、パスワードなど、共有の設定を指定する。相手に許す操作としては、ファイルの表示のみか、ファイルの編集や追加を許すかを選べる。

フォルダーを共有する共有の設定

 メール送信やフォルダー共有のための連絡先リストは、GmailやYahoo.com、Hotmail、aol.comからインポートできる。Webインターフェイスの右上の「連絡先」を選ぶと、連絡先の管理画面になる。ここで「連絡先をインポート」を選ぶと、指定したアカウントから連絡先が取り込まれる。

Gmailから連絡先をインポート

勝手にフォトアルバム

 ちょっと変わっている機能が「フォトギャラリ」だ。これは、公開したフォルダーの中から写真を探して自動的にフォトアルバムを作ってくれるものだ。見つかったファイルはフォルダーごとにまとめられ、Webインターフェイスの「フォトギャラリ」コーナーに表示される。アルバムは「連絡先」に登録されている人に見せたり、Facebookで公開したりもできる。

自動的にフォトアルバムが作られるFacebookなどで公開できる

各種スマートフォンに対応

Android版のSugarSyncクライアント

 便利なサービスやツールを積極的に活用する人であれば、スマートフォンを使っている人も多いだろう。SugarSyncでは、iPhone(iPad、iPod touch)のほか、Android、Windows Mobile、BlackBerryのそれぞれに対応したクライアントを用意している。特にAndroid版は、PCと同じようにローカル側でも同期し、オフラインでもファイルを見たり編集したりできるのが強力だ。

ディスク容量が増える有料版も

 さらに多くのディスクスペースを使いたいというユーザーには、ディスクスペースが30GBで月額4.99ドルまたは年額49.99ドル、60GBで月額9.99ドルまたは年額99.99ドル、100GBで月額14.99ドルまたは年額149.99ドル、250GBで月額24.99ドルまたは年額249.99ドルの有料プランが用意されている。決済はクレジットカードに対応する。有料プランには30日間無料トライアルも用意されているので、試してみるのもよいだろう。

 そのほか、企業で一括導入する場合のためには、ビジネスプランも用意されている。ビジネスプランでは、アカウントのコントロールやカスタマイズなど、多くのスタッフで利用するための機能が追加される。

 以上、SugarSyncの特徴的な機能を紹介した。さまざまなファイル同期サービスの中でも、ビジネスパーソンが同期サービスを「使い込む」ための機能が充実していることがわかっていただけただろうか。無料プランには若干制限があるが、SugarSyncの豊富で柔軟な機能を仕事に使いこなすユーザーであれば、月額4.99ドルから使える有料プランを契約する価値はあるだろう。


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(高橋 正和)

2010/6/14 12:36