読者参加企画「ヤフオク・ユーザー座談会」レポート(後編) ~ヤフオク担当マネージャーも出席、ユーザーの声を直接届ける


報復評価をおそれて「悪い」が付けられない~評価システムをめぐる議論

「評価」ページ

 ご存じの通り、ヤフオクでは「評価」と呼ばれるシステムがある。取引終了後、円滑な対応が行われたかを出品者と落札者がそれぞれ、コメントを付けて「非常に良い」から「非常に悪い」までの5段階でお互いを評価しあう仕組みだ。

 前出の通り、ヤフオクの評価システムでは「2年経過したものは詳細が見られないようにする」というような、一定の期間経過後に詳細情報を閲覧できなくする機能がない。IDさえ知っていれば、そのユーザーがいつ何を出品・落札したかを、そのユーザーの利用開始時まで遡って閲覧することができる。

 この評価システムにより、「自分の好きな分野の商品をたくさん出品している人だから今後も注目しよう」「この入札者はギリギリになって競ってくる人だ」「この出品者は評価が悪いから入札を控えよう」といった判断ができる。顔の見えない相手との取引で、過去の評価からどういった取引相手なのかを知ることができるわけだ。

 一方で、評価一覧から、趣味・嗜好を知られたり、同じ趣味を持つコレクターから何を持っているかがチェックされることもある。このため、希少価値のあるコレクター商品では、評価一覧では出品・落札物を知られないよう、「評価しないで」と取引相手に依頼するケースも、ままあるという。

 評価一覧を見られることに抵抗のある利用者向けに「オプション料金で評価を非表示にできるようにしてはどうか」という意見や、「年月が経過した評価については星だけ残し、詳細は消してもいいのでは」といった意見も出た。

 評価システムをめぐっては、"報復評価"が常に議論の対象となってきた。振り込まれた代金が不足していて不足額を値引きするよう要求された、届いた品は商品ページの説明と違い、目立つ汚れや傷があった――というような場合でも、「悪い」「非常に悪い」の評価を付けると、悪い評価を付けられた取引相手が憤慨して、こちらには落ち度がないのに「悪い」「非常に悪い」を付け返してくるというケースだ。

 人によって、どのくらい評価を重視するかは程度の差があるものの、ヤフオクの取引においては評価が非常に重要だ。「『悪い』の評価が1つでも付いている人の入札はキャンセルします」と但し書きつきで出品する人もいる。このため、報復で「悪い」評価を付けられることを恐れ、どんなに問題のあった相手に対しても、せいぜい「大変良い」ではなく「良い」の評価にしておくか、評価自体をスルーするという人が多い。迷惑な取引相手でも、自分は「悪い」評価は付けない、という点で参加者は一致していた。

 報復評価については、誰もが問題を感じているものの、とはいえ抜本的な解決策も現時点では見当たらないという点で参加者の見方は一致していた。

 しかし、評価方法については、「Amazonマーケットプレイスのように5つ星制の積算評価にしては」「評価の5段階制ではなく『良い』『普通』『悪い』の3段階で良いのでは」「数多く出品する出品者には、評価が負担になる。もっとシンプルにし、コメントは候補から選べるようにする、あるいはコメント入力は必須でなくオプションにする、など簡略化してほしい」といった具体的な改善案が多く上げられた。


送料と梱包の"あるある"ネタも

直接テーブルを囲んだのは13名(司会、書記含む)だが、その他にも多くヤフーの関係者が座談会を見学した

 参加者の間で特に盛り上がったのが、送料に関する話題だ。ヤフオクでは、落札金額と別に送料を請求するのが一般的。ただし、出品者が配送業者の窓口へ荷物を持って行った際、事前の計算より安くなってしまうこともあるという。これをどうやって返金するかは悩みのタネのようで「少額でも振り込みをして返した」「浮いた分の金額を切手に変え、封筒に入れて荷物に貼る」など、さまざまな実例が語られ、参加者から共感の声や笑いが起こった。

 出品を数多く行う参加者からは、落札者からの"送料交渉"に困惑した経験も語られた。出品者側が宅配便を指定しているにも関わらず、落札者から少しでも安くあげるために普通郵便に変えてほしいと懇願されるケースがあるという。こうした落札後の交渉は連絡の回数も増え、交渉が終わるまで梱包を追えた出品物を発送できないため、煩雑に感じる出品者が多い。

 大量出品する出品者の場合は、こうした交渉に取られる手間は馬鹿にならない。当然のことながら、連絡はできるだけ効率的に済ませてスムーズな取引を行いたいという意向が強いようだ。ヤフオクでは落札された時に、出品者があらかじめ設定しておいた内容で自動的に落札時のお知らせメールが配信される。大量に出品する事業者の場合は、自動配信メールに必要事項をすべて記入しておき、落札者から支払方法や送付先などを連絡するよう求めている場合が増えている。

 落札専門の参加者では、ヤフオクの利用説明に、落札したら出品者から連絡が来るとあるため、出品者から連絡をすべきだとする声もあった。出品者からの連絡にはこだわらず、すぐにYahoo!かんたん決済で決済を済ませ、自分から送付先を出品者に連絡するという参加者もいたが、公式の説明と実情の取引方法で齟齬が生じている点については、初心者がとまどう原因となるという指摘もあった。

 また、オークションで出品する際に大きなハードルになるのが、「梱包が面倒」という問題だ。通販を利用した際に送られてきた梱包材などを保存しておき、再利用するという参加者が多かったが、適当な梱包材が手元にない時は、「スーパーでもらってきた段ボールに新聞紙で十分」という意見がある一方で、「気泡シート(プチプチ)をロールで購入しておいたら、引っ越しの際に引っ越し業者に持って帰られてしまった」というエピソードを語る出席者もいた。梱包については商品によりどのくらい保護が必要かも違うため、おもに取引する商品のジャンルでも異なるようだ。

 ソファーやタイヤといった大型商品は梱包や発送が大きなハードルになるという意見は複数の参加者から出ていた。一般に利用されている宅配便はサイズの制限があり、たとえば自転車を送ろうという場合には、宅配便は利用できない。こうした大型商品は、輸送距離や重量、業者によっても料金が大きく異なり、梱包材も大きなものを用意しなくてはならない。引っ越しのために家具などをヤフオクで出品した経験を持つ参加者は、大型商品については、ヤフーを通して運送業者にピックアップと梱包を依頼できるようにしてほしい、という要望が上がり、大型商品を扱ったことのある他の参加者も同意していた。

仕様、ユーザーサポートにも注文アリ

軽食をとりながら進んだ座談会。厳しい意見も飛び交った

 ユーザーサポートへの不満も複数の参加者から上がった。「アカウントを不正乗っ取りされた場合の連絡窓口がわかりにくかった。アカウントを乗っ取られてどんどん不正出品されており、1分1秒を争う状況なのに、クレジットカードの紛失連絡先のような緊急連絡を受ける窓口がない」と、自らの経験から不満点を上げた。

 また別の参加者からは、「モバオクでは商品情報ページで入札価格と送料の併記を近日中に始めると連絡があった(商品価格を安く設定して落札者の目を引き、高い送料を取る出品者への対策)。ヤフオク以外の他社の場合は、要望を出すとしっかり検討してくれて、意外と1カ月くらいで反映される場合もある。少なくともテンプレメールではない返答が来る。競合他社は機能追加などを行っているが、ヤフオクのシステムはユーザーの要望は多いのにあまり変わっていない。こうした対応をみると、ヤフオクは『我々はトップシェアだ、システムは変えない、やりたい人だけやればいい』という企業姿勢をイメージしてしまう」という、厳しい指摘もあった。


オークションならでは「楽しさ」の追求を

ヤフオク担当者から、一般ユーザー側への質問も行われた

 ヤフオクはサービス開始当初こそ「個人間取引サービス」の側面が強かったが、現在は多くの事業者が参入しており、当初のフリーマーケット的なまったりした空気よりはビジネス的な色合いが濃くなってきている。利用者の側も、ショッピングと同様の感覚で、競り合いを楽しむのではなく、欲しいものがあれば即決価格で落札するといった利便性を求めるユーザーが増えている。

 こうした変化によって、たとえば、「落札直後の連絡はまず出品者が落札者に行うべきか」という問題などでも、オークションという場のルールを重んじるユーザーと、利便性と速やかな取引を求めるユーザーでは意見の相違が見られた。

 ショッピングサイトと個人の関係に置き換えてみれば、一般的には販売する側が連絡するのが当然と言える。しかし、オークションは基本的に個人間取引の場だ。取引ごと、取引相手によってもルールは変わる。「商品ページや出品者プロフィールに必要事項をすべて書いておけば、出品側からの連絡はマストではないと考えている」「ヤフーの説明に、出品側から連絡するとある以上、出品側から連絡するのがマナー。俺様ルールを持ち出されても困る」「それなら出品側からは連絡しないと書いてある商品には入札しなければいいのでは」というやりとりも、座談会で実際に起こった。

 ある参加者は「ユーザー同士のトラブルは、出品者側が事前に一言でも説明していれば基本的には発生しない」と語る。「もらい過ぎた送料をどう返すか」の問題も、出品段階でその対処を商品ページに明示しておけば、基本的に発生しないという。

 ただ、こういったやりとりこそがオークションの本質であるとも言える。座談会も終盤となり、最後に感想や意見を、と求められた参加者の1人からは、ヤフオクにおいて「楽しむ」という視点がそもそも減ってきているのではないか、との危惧が示された。

 「間違いのないように商品説明を熟読し、相手の入札傾向を読みあい、少しでも高く売る、あるいは安く買うという真剣勝負、趣味の場がオークションだと思う」「ヤフオクだけに限ったことではないが、効率の追求だけが進み、単なるネットショップのディスカウント版になりかけているのではないか」という指摘だ。

 この「オークションを楽しむ」という意見は、効率や利便性を求める意見が多く出ていた流れを変え、他の参加者からも次々と意見が出た。デスクトップ用ウイジェットの有効活用、商品説明や出品自体が面白可笑しいものを発見・観察できるようにウォッチリストを改良したり、商品ページから直接FacebookやTwitterと連携する機能などが具体案として挙がっていた。

 ヤフーの担当者は聞き役に徹していたが、「最後に担当者から何か参加者へお聞きになりたいことは」と振られ、参加者に「ヤフオクにどのような印象を持っているか」と質問した。というのも、ヤフオク担当者の間では、出品者・入札者ともプロフェッショナル中心になり、ビギナーの入り込む余地がなくなってはいないか、結果として場の楽しさが損なわれていないか、という疑念が共通認識としてあるのだという。

 これに対し、ある参加者は、セミプロ的な出品者が増えたことにより、商品の背景にある"思い入れ"が伝わりづらくなり、商品取引に特化する側面は確かに強くなっているとコメント。「転売屋によって商品の予約受付開始と同時に予約購入券がヤフオクで出品される、といったことが当たり前に行われている。発売前の出品を規制するなどの対策をしてほしい」という意見も出た。

 また、いわゆる掘り出し物、レア物がヤフオクに出品されるケースが減っているのではないか、という指摘も参加者から複数出た。その理由として、中古品を買い取る専門業者が増え、ヤフオクよりも手軽に不要品を売却できるようになっているのに加え、リサイクル関連の法律が変わったため、処分コストを抑える狙いでリース物件が増えている影響があると分析していた。

 座談会は終了予定時刻を50分近くオーバーして、約3時間にわたって参加者の生の声をヤフオク担当者が直接聞いた。ヤフー ECオペレーション本部 本部長の坂本孝治氏は、参加者への感謝を述べるとともに、「来年、これらの課題が解決されたという記事がINTERNET Watchに載るよう、頑張りたい」とコメントして座談会は終了した。



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(森田 秀一)

2011/12/20 06:00