確定申告 意外に知らない○○の話

第2回:スマホで確定申告の話

確定申告はスマホでどこまでできるのか? 取説的にほぼ全部やってみた結果

 今年の確定申告の最大の話題は「スマホで確定申告ができる」だろう。このニュースを聞いたときの筆者の印象は「個人事業主には関係なさそう」だった。おそらく何年も確定申告をしている個人事業主は、売り上げと経費の集計、按分や減価償却はスマートフォンよりパソコンを使った方が楽だと思うはずだ。だが、もしかすると個人事業主でも確定申告初心者の人は「スマホで簡単にできる」と間違った期待をしている人がいるかもしれない。一方で、サラリーマンなら簡単な確定申告はスマホでできそうだ。そこで、実際に確定申告がどこまでスマホでできるのか実践してみた。

「INTERNET Watch」ではこのほかにも、サラリーマンと個人事業主がぜひ読んでおきたい税金に関する記事を多数掲載しています。まとめページ『サラリーマンと個人事業主の税金の話』よりご参照ください。

 サラリーマンで確定申告をした方がよい人、しなければならない人は限定的だ。した方がよい人は、医療費控除などで還付が受けられる人。しなければならない人は、年収が2000万円を超える人や副業でそこそこ稼いでいる人だ。

 個人事業主はほぼすべての人が確定申告をしなければならない。税理士に丸投げしている人もいると思うし、税務署が開催する確定申告相談コーナーで申告する人もいれば、申告ソフトを使って自分で申告書まで作成している人もいるだろう。いずれにせよ、サラリーマンの確定申告よりは難易度が高い。

“スマホで確定申告”はサラリーマン限定、いろいろ条件もある

 では実際に試してみよう。国税庁の「確定申告書作成コーナー」にアクセスする。同じURLでパソコンとスマートフォンでは異なる画面となる。

「確定申告書作成コーナー」のパソコンに表示される画面
「確定申告書作成コーナー」のスマートフォンに表示される画面

 スマートフォンの画面を見ると、「所得税の確定申告書」が作成できる、と書かれているが、収支内訳書や青色決算書を作成される方はパソコンをご利用ください、となっていて、個人事業主の白色申告(収支内訳書)・青色申告(青色決算書)には使えないことが分かる。サラリーマン限定のサービスであることが確定した。

 [作成開始]をタップすると「申告内容に関する質問」が7問続く。最初の質問は「Q 確定申告する年分は平成30年分ですか」。仮に過去(平成29年分以前)の確定申告をしたい人が[いいえ]をタップすると、「お手数ですがPC版をご利用ください」となり終了だ。[はい]で次の質問に進むと「Q 給与以外に申告する収入がありますか」。これも副収入があり[はい]をタップすると「PC版へ」となる。

最初の質問は「Q 確定申告する年分は平成30年分ですか」
[いいえ]をタップすると、「お手数ですがPC版をご利用ください」となる
「Q 給与以外に申告する収入がありますか」に[はい]をタップすると「PC版へ」となる

 以下同様に「Q 源泉徴収票は1枚のみですか」「Q 年末調整が済んでいますか」「Q 医療費控除や寄附金控除の適用を受けますか」「Q 追加する控除や年末調整に変更はありますか」と質問が続く。

 結果をまとめると、給与所得のみ(=サラリーマン)で、1つの会社に勤め、年末調整済みで、平成30年分の医療費控除、寄附金控除(ふるさと納税等)の確定申告であれば、スマートフォンで可能ということだ。一部に「ガッカリ」「使えね~」という声も聞くが、筆者は「大きな進歩」「まずはこれで十分」という印象を持っている。

 条件をクリアした人は、最後の質問「Q 申告書の提出方法を選択してください」で[e-Tax]か[書面]を選択すると入力画面に進むことができる。

条件をクリアし「Q 申告書の提出方法を選択してください」で[e-Tax]か[書面]を選択する。

 “スマホで確定申告”はサラリーマンで医療費控除、寄附金控除をする人限定となるが、このあとは実際に操作し、取説的にすべての画面をキャプチャしたので、該当する人は参考にしていただきたい。iPhoneの人はそのままPDFまで進めるが、Androidの人は事前にAcrobat Readerアプリをインストールしよう。源泉徴収票は『【保存版】知っておきたい源泉徴収票の見方を図解で説明』の記事で使用したものをサンプルデータとした。

「書面」で提出する場合の手順を試してみる

 e-Taxと書面、両方とも試してみたので、まずは書面での提出から。この先しばらくは画像とキャプションだけで進めたい。

まずは生年月日を入力し、利用規約に同意したら次へ
源泉徴収票の入力画面が開く
安倍進次郎さんの源泉徴収票を入力してみた。入力するのは赤枠の3箇所
所得控除の額の合計額を間違って入力してしまった(赤×)
間違っていると指摘された
正しい金額を再入力
源泉徴収票どおりの所得金額が表示され、医療費控除と寄附金控除の選択で寄附金控除をタップ
寄附金の入力画面が開くので[次へ]をタップ
ワンストップ特例を受けなかったとして、寄附金の入力をしよう
寄附金の証明書を用意しよう
日付を入力、寄附金の種類はプルダウンから「市区町村に対する寄附金(ふるさと納税)を選択」。都道府県と市区町村、金額を入力すると所在地は自動的に記入された
寄附金控除の入力が完了
2,000円を引いた23,000円が控除額、の確認画面
控除の選択画面に戻り、寄附金控除が23,000円と分かる
還付される金額が表示され、その受け取り方法を選択する
プルダウンから「ゆうちょ銀行以外の銀行への振込み」を選択
銀行の入力画面が開くので銀行名、支店、口座番号を記入する
16歳未満の扶養親族を入力
最初に入力した誕生日以外の基本(個人)情報を入力
自分と子のマイナンバーを記入
[帳票表示・印刷]をタップするとPDFが別画面で開く

 これで操作は終了。書面提出であればマイナンバーカードもID・パスワード方式も不要だ。画面の所々に操作方法の案内が表示される。開くと中断する方法、再開する方法、印刷する方法が掲載されている。別画面で表示されたPDFを印刷すれば、書面提出用の確定申告書が完成となる。

操作方法のガイド画面。中断する方法、再開する方法、印刷する方法が掲載されている
別画面でスマホの画面に表示されたPDF

「e-Tax」で提出する場合の手順を試してみる

 次はe-Taxで提出。今度は医療費控除を申請してみよう。年間の医療費が10万円を超えている人が対象なので、Excelなどで集計されていることを前提として進めよう。e-Taxを利用するにはマイナンバーカードか、「ID・パスワード方式」で「利用者識別番号」「暗証番号」を取得していることも前提となる。今年から始まったID・パスワード方式については、第1回の記事を参照していただきたい。書面提出と重複する画面もあるが、こちらも全画面をキャプチャしたので、この先しばらくは画像とキャプションだけで進めたい。

[e-Tax]を選択して次へ
同意して次へ
「ID・パスワード方式」を申請して入手した「利用者識別番号」(ID)と「暗証番号」(パスワード)を入力
ここで「登録情報が見つかりませんでした」のメッセージが出た。ID・パスワードの申請から数日しか経っていないからなのか理由は不明だが、下に入力画面が開いているのでそのまま入力を続行。屋号の入力枠が表示されたのも不明だが無視して先へ進もう
登録情報を確認して次へ
源泉徴収票を見ながら入力
所得金額が表示されるので、今回は医療費控除を選択
医療費控除とセルフメディケーション税制の選択画面で医療費控除を選択
入力方法の選択画面。ここで領収書を1枚1枚入力もできるが、別途Excelなどで集計していれば「医療費の合計額のみ入力する」を選択
下に支払った総額の入力欄が展開するので、年間の医療費を記入
医療費控除の確認画面が表示される
控除の選択画面に戻り、医療費控除が25,000円と分かる
還付される金額が表示されたら、受取方法を記入する
16歳未満の扶養親族を入力
本人情報を記入する
自分と子のマイナンバーを記入
データ送信前に[帳票表示・印刷]をタップして確認
別画面が開き送信前のデータが確認できる
利用者識別番号(ID)の確認
暗証番号(パスワード)を入力して[送信する]をタップする

 送信したあとの画面も見てみたいが、筆者は個人事業主で、入力したデータはダミーなので、さすがにデータを送信すると、税務署から叱られそうなのでここまでとした。

 全体の印象は、手元に源泉徴収票や寄附金の証明書、医療費を集計したデータがあれば、簡単に申告ができそうだ。日常的にパソコンを使用している人は、わざわざスマホを使う必要はないと思われるが、スマホ中心の生活をしている人の選択肢としては、「スマホで確定申告」はよい方向へ進んでいると思う。

 今回はほぼ全画面をキャプチャして紹介したので、ご自身や知人でスマホで確定申告をする人がいれば、取説的に参考にしていただきたい。

「INTERNET Watch」ではこのほかにも、サラリーマンと個人事業主がぜひ読んでおきたい税金に関する記事を多数掲載しています。まとめページ『サラリーマンと個人事業主の税金の話』よりご参照ください。