確定申告 意外に知らない○○の話

第4回:青色申告に切り替える話

青色申告への切り替え期限も3月15日

 確定申告の提出期限は3月15日。残り1週間だ。白色申告をしている個人事業主は3月15日にもう1つ期限を迎えるものがある。白色申告から青色申告に切り替えるための「所得税の青色申告承認申請書」を3月15日までに提出すれば、2019年分(2020年2月~3月申告分)の確定申告を青色申告にすることができる。今回は、青色申告と白色申告の違い、青色申告にすることのメリット、「所得税の青色申告承認申請書」の書き方についてお伝えしよう。

「INTERNET Watch」ではこのほかにも、サラリーマンと個人事業主がぜひ読んでおきたい税金に関する記事を多数掲載しています。まとめページ『サラリーマンと個人事業主の税金の話』よりご参照ください。

青色申告と白色申告はどう違う?

 残り1週間となり焦っている人もいるだろう。筆者もその1人だ。この原稿を書き上げ、もう1つ別の仕事を済ませ、この週末が確定申告の天王山だ。切羽詰まっている人は、まずは確定申告を優先し、めどが付いてから読んでいただきたい。

 まずは青色申告と白色申告の違いを確認しよう。白色申告は特に手続きはないので、開業届けだけ提出した人は白色申告となる。青色申告は「所得税の青色申告承認申請書」なるものを税務署に提出しなければならない。開業した年は開業から2カ月以内。これまで白色申告だった人が青色申告に切り替えるには、青色申告を行う年の3月15日までに申請をする。平成31年(2019年)分の確定申告から青色申告に切り替える人は、平成31年3月15日までに提出することとなる。期限まで1週間だ。

 記帳方法は、青色申告は複式簿記が義務付けられていて、白色申告は単式簿記による記帳が認められている。ザックリ言うと青色申告はやや難しく、白色申告はやや簡単という感じだ。提出する書類は、青色申告は青色申告決算書(損益計算書、貸借対照表)、白色申告は収支内訳書。確定申告書Bはどちらも同じだ。

 青色申告には税制面で様々なメリットがある。代表的なのは青色申告特別控除の65万円。少し難しい書類を作成したら所得から65万円を控除してくれるということだ。経費で65万円を積み上げるのは大きな出費を伴うが、頑張って書類を作成すると納税額を大きく減らすことができる。そのほかのメリットも含め、青色申告による節税効果は大きい。青色申告には控除額が10万円の通称「青10(アオジュー)」もあるが、どうせ青色申告に切り替えるなら65万円の控除をゲットしたい。

「白色申告は記帳が楽」は昔の話、青色申告者は急増中だ

 平成26年(2014年)分から白色申告の記帳義務化が行われた。それ以前は白色申告で所得300万円以下であれば記帳義務はなく、どんぶり勘定の申告が許されるなど白色申告の記帳は緩かったが、平成26年から厳しくなったということだ。

 現在も青色申告と白色申告では複式簿記と単式簿記の違いはある。手書きで記帳していた時代は大きな差があったと思われるが、申告ソフトが普及したことにより、複式簿記を理解していなくても記帳を行うことが可能となった。結果として記帳方法による難易度の差は縮まった。「白色申告は記帳が楽」というのは昔の話と言えよう。

 グラフは平成18年(2006年)から平成29年までの青色申告の比率だ。白色申告の記帳義務化が告知されて以降、青色申告の比率はググッと伸びている。間もなく3人に2人は青色申告者となりそうだ。

青色申告のメリット

 では青色申告に切り替えるとどのようなメリットがあるかを確認しよう。代表的なメリットは4つ。「青色申告特別控除」「減価償却の特例」「青色事業専従者給与」「赤字の3年繰り越し」だ。この中でも「青色申告特別控除」「減価償却の特例」はほぼすべての事業者に恩恵がある。事業形態によってはすべてのメリットを享受できる。4つのメリットを順番に見ていこう。

メリット1:青色申告特別控除

 青色申告特別控除は、青色申告をする全ての事業者が受けられる大きなメリットだ。条件は複式簿記で記帳し、青色申告決算書(損益計算書、貸借対照表)を作成して、3月15日の期限までに確定申告をすること。青色申告特別控除の控除額は65万円。「よく記帳ができました。ちゃんと期日までに提出しました。頑張ったご褒美に65万円を控除をしましょう」といった感じだ。

 サラリーマンに比べ税制面で不利な個人事業主にとって、65万円の控除は大きい。個人事業主にはサラリーマンのような給与所得控除がないので、1円の出費もなく大きな控除が受けられるのは、青色申告特別控除と基礎控除くらいだ。課税所得の額により所得税の税率は異なるが、所得税と住民税で約10万円~20万円も納税額を減らすことができる。青色申告特別控除の税率ごとの節税効果は以下のとおりだ。

 所得税、住民税以外に復興特別税、国民健康保険も減らすことができるので、所得税の税率が20%の人なら、青色申告特別控除だけで30万円ほどのメリットがあるだろう。

メリット2:減価償却の特例

 10万円以上の工具、器具、備品、車両などを購入すると固定資産となる。固定資産は購入した年に全額経費にすることができず、購入価格を耐用年数で割って数年に分割して経費とする。固定資産は分類ごとに耐用年数が定められていて、クルマは6年、パソコンは4年、カメラは5年などとなっている。このように長期に使用するものの価格=価値を分割して経費にしていくことを減価償却という。

 例えば24万円以上のカメラは、定額法で減価償却すると5年=60カ月に分割して経費とするので、毎月4000円、12カ月分で4万8000円が経費となる。1月に購入すれば4万8000円を経費にすることができるが、年末に「今年はもうかった」と24万円のカメラを購入しても、1カ月分の4000円しか経費にすることができない。

青色申告をしていれば、20万円を超えるミラーレスカメラを全額をその年の経費にすることができる

 青色申告のメリットの2つ目は減価償却の特例だ。10万円以上30万円未満の資産を「少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例(措置法28の2)」により、即時償却をすることが可能だ。その年に全額経費にできるので、この制度を使えば年末ギリギリに24万円のカメラを買って、全額をその年の経費とすることができる。

 毎年の売り上げ、納税額が一定であれば1年で経費にしても5年で経費にしても、トータルの納税額に差は出ないが、浮き沈みが激しい人はもうかる→税率が上がる→経費を増やす→節税効果大となり、大きなメリットとなるだろう。

メリット3:青色事業専従者給与

 青色事業専従者給与は、家族に支払った給与を経費にできる制度なので、独身で親を含め給与を払う家族がいなければ利用できない。配偶者がいても配偶者が正社員で働いている場合も同様だ。

 まずは白色申告の場合を確認してみたい。白色申告では配偶者(例えば奥さん)に対する給与は年間86万円まで経費とすることができる。子どもなど扶養親族に対する給与は50万円となっている。家族に給与を支払うと、その家族は配偶者控除、扶養控除の対象外となる。

 子どもに経費にできる上限の年間50万円の給与を支払っても、経費は50万円増えるが扶養控除が38万円減るので差し引き12万円しか課税所得は減らない。もし子どもが19歳~22歳なら特定扶養親族となるので、給料を払わず63万円の控除を選択した方が節税となる。要するに白色申告の人は家族に給与を払っても、ほとんど意味がないということだ。

 青色申告であれば、青色事業専従者給与として家族に支払った給与を全額経費とすることができる。条件は1年のうち6カ月以上従事すること、学生でないこと、15歳以上であることなど。この条件を満たせば、常識の範囲の給与を家族に支払い経費にすることができる。

 青色事業専従者給与による節税効果をザックリと計算してみよう。事業者が旦那さん、配偶者が奥さん、旦那さんの元々の課税所得を500万円、奥さんは専業主婦としよう。奥さんに仕事を手伝ってもらい、年間100万円と年間200万円の給与を支払った場合を比較する。住民税の税率の地域差、住民税の均等割、社会保険料は無視した。また、住民税は地域により課税されない収入が異なるが、ここでは100万円まで無税とした。

 100万円の給与を支給すると経費が100万円増え、配偶者控除が38万円減り、旦那さんの課税所得は438万円となる。奥さんは所得税、住民税とも無税。旦那さんの課税所得が減ったことで納税額は約19万円減った。

 200万円の給与を支給すると経費が200万円増え、配偶者控除が38万円減り、旦那さんの課税所得は338万円となる。奥さんの収入が200万円となったので、所得税、住民税が課税されるが、旦那さんと奥さんの納税額の合計は36万円減ることとなる。

 奥さんの年収が増えると、給与支払時に源泉徴収をする手間が増えたり、元々の事業の売り上げが減少すると節税効果が減ったりするので、青色事業専従者給与の給与額の決定は難しい。このあたりは税理士の腕の見せ所のような気がする。

 青色事業専従者給与を受けるためには「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出が必要で、その年の3月15日が提出期限となる。年の途中から新たに青色専業専従者になった人がいる場合は、2カ月以内に届け出をする。

メリット4:赤字の3年繰り越し

 個人事業主は業績の浮き沈みが激しい。ライター業のように仕入がなく設備投資が少ない職業は、事業自体が赤字になることは少ない(生活費が利益を上回る生活赤字はままある)が、販売業や製造業など仕入や設備投資、アルバイトなどの人件費がかかる業態は事業自体が赤字になることがある。

 運悪く赤字になった場合、青色申告なら赤字の3年繰り越しが可能だ。赤字分を翌年以降の黒字と相殺できるので、黒字の年の納税額を減らすことができる。白色申告と青色申告を比べてみよう。例えば2018年に500万円の赤字。2019年は100万円の黒字。2020年は200万円の黒字。2021年は500万円の黒字だったとしよう。

 2018年は赤字なので所得税はゼロ円となる。白色申告は赤字の繰り越しができないので、2019年~2021年は黒字分の税金を納税することになる。これに対し青色申告は赤字の繰り越しができるので、2019年、2020年の所得税はゼロ円。2021年は500万円の黒字から2018年の赤字の残りである200万円を引いた300万円の黒字分に対する納税をすることになる。このように赤字の繰り越しにより大幅な節税が可能となる。

「所得税の青色申告承認申請書」の書き方

 2019年分の確定申告から青色申告に切り替えようと思う人は、税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を提出しよう。ダウンロードしたPDFに直接入力し、印刷した申請書は郵送でも持参でもよいので、確定申告書を郵送する人は同封して送ろう。

 書き方のサンプルとして、自宅でライター業をしている人が、平成31年(2019年)から青色申告に切り替える想定で記入してみた。よく分からないのは帳簿を選択するの部分だと思うので、記入例を参考にしていただきたい。

 確定申告の期限も、2019年分から青色申告に切り替える人の「所得税の青色申告承認申請書」の提出期限も、1週間後だ。残りわずか、皆さんの健闘を期待する。

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