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数ミリ秒の差が対戦格闘で効く! 最強ゲーミングルーター「ROG Rapture GT-BE19000AI」

DockerとAIでガジェット的な面白さも

 ASUS製ゲーミングWi-Fiルーターのハイエンドとして投入される「ROG Rapture GT-BE19000AI」。製品名にAIと入っているとおり、AI処理専用プロセッサーであるNPUを搭載している。

 AI機能が増えてきているPCでも、AIとゲームの接点はなかなか見えないものだが(実際には高画質化処理やゲーム開発においては活用が進んでいる)、そんなAI機能をルーターに搭載しようという意欲的かつ先進的な製品だ。

 とはいえ、何もかもAIが処理するわけではなく、ルーターとしての基本的な仕組みは従来どおり。純粋に高い性能を持つゲーミングWi-Fiルーターとしても、評価もされるべき製品である。

 本機はAIが加わったことで、とにかく機能や設定項目が多彩だ。全てをフォローしているととんでもない量になってしまうので、今回は主にゲーミング向けの性能に注目していく。リアルタイム性の高いオンラインゲームで、数ms(ミリ秒)単位の短縮を狙う仕組みが盛り込まれている。

WAN/LANともに10G完備。Wi-Fi 7も充実のスペック

 まずはハードウェアから見ていこう。Wi-Fi 7対応で、据え置き型の筐体を囲むように8本の外部アンテナが立っている。本体サイズは約350.41×350.41×220.6mm、重量は約2000gと大型だ。家庭用のA4プリンターと同じくらいのスペースが要ると思っておくといい。アンテナの向きは個別に調整可能だ。

8本のアンテナが特徴的な本体。アンテナの向きは調整できる

 本体色は白がベースになっている。同社のハイエンド機はこれまで黒ベースが基本だったので、かなり印象が変わった。これもAI搭載の新しさをイメージさせたものなのかもしれない。

 本体天面にはROGのロゴが描かれており、内部にはLEDが仕込まれている。Aura RGBによるライティング制御に対応しており、LEDライティングを用いたゲーミング環境に合わせられる。

ロゴ部分はLEDが仕込まれており、光り方や色を変更できる

 性能面では、有線LANはWAN側が10GBASE-Tまたは2.5GBASE-Tのどちらかを切り替えて使用可能。使わなかった方はLANポートとして使える。LAN側はほかに、10GBASE-T×1、2.5GBASE-T×3、1000BASE-T×1という構成で、実質的に計6つのLANポートを備えている。なおLAN側の10GBASE-Tポートはゲーミングポートに設定されており、接続した機器からのゲームの通信を優先させる。

LANポートの数は6つと多め

 Wi-Fiは、2.4GHz帯、5GHz帯、6GHz帯のトライバンドで、いずれもストリーム数は4x4。6GHz帯で320MHz幅の通信では、最大11529Mbpsとなる。子機側はほとんどが2ストリームまでなので、実用上は最大5764Mbpsとなるが、アンテナ数、ストリーム数の両面で、複数台からの同時通信にも強い構成だ。

 ほかにUSBポートとして、USB 3.2 Gen 1×1、USB 2.0×1を搭載。従来機種と同様、USBストレージを接続して簡易NASにしたり、インターネット回線トラブル時の緊急対応としてモバイル回線を接続することなどにも使える。また本機ではWebカメラを接続し、内蔵するDockerエンジンで動かしたAI動画認識ツール「Frigate」に映像を送ることもできる。

2基のUSBポートも搭載。WebカメラをつないでAIと連携できるなど、活用の幅が広がっている

実測でも3Gbps超えのWi-Fi通信速度。遠距離での通信も安定

 実機検証は、まずWi-Fiの速度測定から。

 計測にはiPerf3を使い、クライアントとなるPCは6GHz帯の320MHz幅に対応したもの。サーバー側は10GBASE-Tで有線接続されたPC。同室内での近距離通信のほか、筆者宅である3LDKのマンションで、本機と子機が最も遠方になる部屋に設置し、間にある3枚の木製扉を閉じた状態で通信した。5GHz帯の制御チャンネルは120、6GHz帯は53に設定。

計測データ
上り(6GHz)下り(6GHz)上り(5GHz)下り(5GHz)
近距離3177369517732219
遠距離559.5814.6237.9539.2

※単位はMbps。iPerf3はパラメーター「-i1 -t10 -P10」で10回実施し、平均値を掲載

 近距離では、6GHz帯で上り下りとも3Gbpsを超える結果が出た。有線接続でも未だに1Gbpsから2.5Gbpsが一般的な中で、無線でもこの速度が出せるのはインパクトがある。5GHz帯でも2Gbps前後で、通信速度に不足を感じることはまずないだろう。

 遠距離の環境は、遮蔽物が複数あり、直線で電波を飛ばせない、筆者宅のワーストケースを作っている。Wi-Fi 5の時代の製品だと5GHz帯では通信の切断も多かった環境だが、本機ではiPerf3の個別のデータを見ても通信が途切れる様子はほぼなく、とても安定している。

 速度も6GHz帯の下りは1Gbpsに迫るほど。5GHz帯に比べて6GHz帯は遮蔽物に弱いはずだが、320MHz幅の余裕があるおかげか、まだ優位を保っている。筆者宅と同程度の広さの家なら、本機1台で家中カバーできると言っていいだろう。

6GHz帯で接続した際のリンク速度は5764Mbps

3レベルに分けられたゲーミング機能

 次は本機の機能を見ていこう。初期セットアップはPCのウェブブラウザーから行ったところ、端末ログイン用のIDとパスワードの入力や、Wi-FiのSSID設定などを行うだけで、簡単に終了した。

ウェブブラウザーでのセットアップは、指示された案内どおりに進めるだけで簡単

 設定画面は、同社の従来製品とは大きく異なっている。ただインターネット接続するだけならば初期セットアップが済めば問題ないのだが、何か使いたい機能がある場合はこの画面で設定が必要になる。

本体色と同様、白を基調にした画面。デザインも新しくなった

 ゲーム向けの機能を見る場合は、左のタブから「AI Game Boost」を選択する。ここにはゲーム向けの機能が3つのレベルに分けて紹介されている。レベル1は10GBASE-TのLANポートに設定されたゲーミングポートで、ゲーム用マシンをこのLANポートに接続するだけでいい。追加設定は存在しない。

ゲーム向け機能は3つのレベルに分けられている

 レベル2は「ゲームブースト」。「Adaptive QoE」という、通信の優先度を動的に調整する機能を用いて実現されている。設定を確認すると、通信を5つのカテゴリに分類したグラフが表示され、どれを優先するかを選択できる。「ゲーム」を選択すればゲームの通信が最優先となり、「オフィス」を選ぶとオンライン会議を優先しつつもファイル転送を高速化する、といった調整になる。

「Adaptive QoE」では、ゲーム向けの通信を優先させる設定を選んでも、状況に応じてほかの通信も適切に流してくれる
ゲーム以外の通信を優先する設定もある

 また各設定には「最適化調整」という項目がある。初期値は0に設定されており、+10から-10までの範囲で調整できる。+寄りにすると、優先度の設定がより極端に調整される。ゲームの通信を最大限優先させたいなら、カテゴリ設定を「ゲーム」にし、「最適化調整」を+10にするのがベストとなるだろう。

「最適化調整」を+10にすると、かなり極端なバランスに割り振られる。ゲーム最優先にしたい場合はこうする

 レベル3は「GTNet」という機能を用いて、高速なネットワークルートを選び出す。レベル1とレベル2は、LAN内の通信混雑を回避するための設定だったが、レベル3はインターネット上の通信経路を最適化・高速化する。つまりPing値の低減を狙ったものだ。

 利用するには、「GT Booster」というソフトをPCにインストールする必要がある。この機能はルーターが制御するものではなく、「GT Booster」が単体で処理を行う。ではなぜルーターにこのような項目があるのかというと、ASUSと「GT Booster」が協力した施策だからだ。「GT Booster」は本来は有料サービスだが、本機の設定からアクセスした場合に限り、当面は無料で提供されるという仕組みだ。

「設定に移動」をクリックすると、「GT Booster」のウェブサイトが開く

インターネット接続の数msを縮める「GT Booster」

 「GT Booster」は本機のゲーミング機能の肝でもあるので、詳しく検証してみた。ソフトをインストールし、ユーザー登録を済ませると、「GT Booster」のメニュー画面が表示される。ここにはインストール済みのゲームの一覧が表示されており、遊びたいゲームをここから起動できる。一種のランチャーとしても機能する形だが、通信不要なゲームもリストアップされる。

「GT Booster」のメイン画面。左のメニューからゲームパッドのアイコンを選ぶ
インストール済みのゲーム一覧が表示され、ここからゲームを起動できる

 ゲームを起動すると、「GT Booster」の画面は通信状況を表示する。通常の接続経路と、GTNetと呼ばれる推奨経路で、Ping値に差がないかをチェックし続ける。もしGTNetのルートの方がPing値が継続的に低ければ、そちらに自動で切り替わる。その際には回線切断などのトラブルが起こらないようになっている。

「Diablo IV」を起動中の「GT Booster」の画面。通常の接続経路と、GTNet推奨の経路が順次比較される

 ゲームをフルスクリーン表示にすると、「GT Booster」の画面は見えなくなり、経路の変更があったかどうかは確認できなくなる。もちろん画面を見ている必要はなく、フルスクリーンで動作するゲームの裏でも、「GT Booster」の経路が効く場面では自動で切り替えてくれる仕組みだ。

 実際に試してみると、日本国内にあるサーバーに接続するオンラインゲームでは、通常経路とGTNetで違いはほぼ出ない。日本国内のインターネット環境が優秀なため、別経路を考える必要がない状態だ。

 では海外はどうかというと、これもほとんど差は出ない。大きなゲームサーバーが置かれるような場所は、日本から海外への主要経路に近く、もともと最善の経路が選ばれやすいためだ。

 そうなるとどこで使えるのか……と考えた結果、対戦格闘ゲーム「ストリートファイター6」を試すことにした。この作品は対戦時にP2P通信を使用するため、他国のプレイヤーと対戦する場合には、主要なネットワーク回線から外れた場所と通信する可能性も大いにある。そうなればGTNetがより良い経路を見つける可能性が高いはずだ。

 実際に試してみたところ、日本国内のプレイヤーと接続した場合は、Pingは5ms程度で経路変更はなし。しかし海外からと思しきプレイヤーと接続し、Pingが50ms程度になった時には、GTNetの方が数ms早い判定となり、通信が切り替わることがあった。割合としては5%程度有利になるくらいで、体感できるとは言い難いが、格闘ゲームの快適性向上に役立つことは確かだ。

日本のプレイヤーとの対戦では、Ping値は低く、GTNetとの差がほぼない
海外のプレイヤーらしき人とマッチングすると、Ping値が高くなり、GTNetに経路を移すことがあった

 P2Pを用いるゲームや、ユーザーが独自にサーバーを立ち上げるタイプのゲームでは、「GT Booster」の優位性は確かにある。特に1フレーム未満の通信速度が有益になる対戦ゲームでは、あって損はないサービスと言える。

 なお注意点として、PCにソフトをインストールする必要があるため、家庭用ゲーム機では本機能を利用できない。何とかルーター本体側に本機能を内蔵して、Nintendo Switchなどでも連動できるようになれば、ゲーマーからのニーズは一気に高まりそうなのだが……。

AIやDockerなど機能もりだくさん

 その他の機能も見ていこう。注目のAI機能は、AIと対話できる「ルーターアシスタント」がある。設定画面の上部にある「Ask Router Assistant...」のテキストボックスに聞きたいことを入力すると、本機で動作するAIが回答する。ローカルで動作するAIなので、インターネット接続すら必要ない。

 ただし現時点では、対応しているのは英語のみ。日本語を入力すると、「現在は英語しか利用できない」と回答される。日本語対応のAIモデルの登場を待ちたい。

日本語は使用できない

 ひとまず英語で質問をしてみた。「インターネット接続に問題がないか確認して」と問うと、「Webインターフェイスにログインすれば、各所の状況を確認できる」という内容が表示された。こちらの問いかけに対して直接的に設定変更してくれたり、続けて対話できたりという感じではない。ヘルプ用のAIチャットボット、という印象だ。

英語であれば質問に回答してくれる
「接続に問題がないか確認したい」と言うと、確認方法を教えてくれた

 次にDocker機能。本機には32GBのeMMCと4GBのDDR4メモリが、ルーターの本機能とは別に用意されている。ルーターが小型のサーバーとしてふるまい、Dockerコンテナをルーター内に導入できる。設定画面の「AI Board」から、Dockerをインストールすると使用可能になる。

「Docker管理」の項目にある「インストール」をクリックすると、Dockerが導入される

 試しに左のタブにある「Templates」の「Application」から、Linux OSの「Ubuntu」を選ぶと、初期設定画面が表示される。何も設定を変えず、下にある「Deploy the container」をクリックすると、Dockerコンテナがダウンロードされる。

「Templates」にある「Ubuntu」を導入してみる
「Deploy the container」をクリック

 続いて左のタブから「Containers」を選ぶと、導入済みのDockerコンテナの一覧が表示される。一番下にある「thirsty_spence」という名前のコンテナが「Ubuntu」のようなので、「Quick Actions」の項目から「>_」というアイコンをクリックする。

「Ubuntu」のコンテナが導入されている

 次の画面で「Connect」をクリックすると、「Ubuntu」のコンソールが表示される。バージョンを確認するコマンドを入れてみると、確かに「Ubuntu 26.04 LTS」が動作しているのを確認できた。

「Ubuntu」が確かに動作しているのを確認

 ほかにもさまざまなテンプレートが用意されている。ストレージとメモリの制約はあるが、何をどう使うかは自由だ。Dockerや導入するコンテンツの知識は必要になるので、全ての人が使うべきものではないが、ちょっとした機能を動かしたいという希望があるなら、ミニPCを導入したつもりで活用してみるのも面白い。

テンプレートだけで数十種類あり、さまざまな機能が用意されているのが分かる

 ペアレンタルコントロール機能も進化している。以前の機種ではゲームやストリーミング、アダルトなど、カテゴリ別でのフィルタリングが可能だったが、本機では特定のコンテンツを指定したフィルタリングが可能になった。

 例えばゲームの項目を見ると、「Steam Games」や「PlayStation Games」といったストア単位や、「Valorant」、「Apex Legends」といったゲームタイトル単位での設定が用意されている。あらゆるゲームタイトルを個別に指定できるわけではなく、プリセットされたものを選ぶ形ではあるが、特定のサービスだけを止められる仕組みだ。

ペアレンタルコントロールでは、ゲームタイトルやプラットフォーム単位でフィルタリングが可能

 ほかにもストリーミングサービスなら「YouTube」や「Netflix」などが選べるし、インスタントメッセージなら「LINE」だけを止めることも可能。どの端末で何を使わせないのか、個別に設定できる。

ストリーミングサービスも特定のサービスだけフィルタリングできる

 Wi-Fiの設定では、メインのWi-Fi設定のほかに、特定機能向けのSSIDを作成できる。例えば「ゲームネットワーク」はゲーム専用のSSIDとして作られ、特別なゲーム向けの設定を行うことなく、ゲームの通信を最優先にするWi-Fiネットワークを構築できる。ほかにもゲスト用、IoT機器用、VPN用(本機側でVPN接続を行い、配下の端末をVPN経由の接続にする)などを自由に作成できる。

ゲーム専用のSSIDを作成できる。管理も楽になりそう

 このほかにも、ネットワークのセキュリティを担う「AiProtection」や、同社製のWi-Fiルーターとメッシュネットワークを構築できる「AiMesh」、Wi-Fiの電波の干渉を視覚的に確認できる「WiFi Insight」など、さまざまな機能を活用できる。

ネットワークの安全を保つ「AiProtection」。同社のルーターには伝統的に搭載されている
同社製ルーターとメッシュネットワークを構築できる「AiMesh」
Wi-Fiの電波状況を確認できる「WiFi Insight」

最高のゲーマー向け製品でありつつ、ガジェット好きにもおすすめ

 ASUS製Wi-Fiルーターの最新・最高峰の製品ということで、これまでの同社製Wi-Fiルーターの機能は全部入りだと思っていい。日本では重要なIPv4 over IPv6の接続にも各種対応している。その上で、AIやDockerなどの新機能を盛り込んでいる。

現時点でのWAN接続タイプ。IPv4 over IPv6の接続にも広く対応している

 ゲーミングルーターとしては、WAN/LANの両方が10Gbps対応で、高速なインターネット回線にも対応できる。Wi-Fiもアンテナ数、ストリーム数とも最高のスペックで、なおかつゲーム専用のSSIDも作れるなど融通も利く。スマートフォンでのゲームプレイや、通信端末が多い環境でも安定かつ高速な通信が期待できる。

 そういった本体の高いスペックや機能に加えて、「GT Booster」でインターネットの接続経路も最適化できるのが大きい。PCゲーマーのネットワーク環境を可能な限り改善したいという思いがなければ、このようなサービスの連携は考えられない。

 そこにゲーミングブランド「ROG(Republic of Gamers)」の価値がある。ただ最高性能の製品を作るのではなく、ゲーマーに必要な機能をしっかり入れ込んでいく。ゲームのための最高の環境を整えたいなら、本機を買えば間違いないと安心して言える。

 もちろん、約35cm四方の広い設置スペースが必要だったり、価格的にも最高峰だったりするので、誰もが気軽に導入できるとは言えない。通信速度を1msでも短くしたいゲーマーが究極を追求した時にたどり着く製品であれば良く、その選択肢が存在することが重要なのだと思う。

 世界初のAIルーターをうたう点については、今のところはそれほど活用方法があるわけではない。それは同社もおそらく理解していて、後々に何かできるようにするためのDockerなのだと思う。

 誤解を恐れず言えば、とにかく遊びがいのある製品だ。ルーターは1回設定してしまえば、あとは放っておくだけになりがち。本機は後から思い出したように触って、新しい機能をDockerで持ってくるようなこともできて、今までのルーターとは全然違う付き合い方ができる。ゲーマーだけでなく、新しいガジェット好きにも触れてほしい。

従来のルーターにはなかった機能が搭載され、より面白い製品になっている