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住民税が高い/安い自治体はどこ? 差額はいくら?【2023年版 最新ランキング】

全47都道府県+5市町を比較してみた

 昨年、INTERNET Watchとして(筆者としても)初めて掲載した住民税ランキングの記事は、お陰さまで多くの人に読んでいただき、SNSなどで参考になる情報もいただくことができた。今年も昨年と同様、徹底的に調べて正しい情報をお届けしたい。

 住民税は住む自治体によって差がある。ただし、差があると言っても多くの自治体でわずかな差しかなく、引っ越してメリットがあるほどの差ではない。ところが都市伝説的に「愛知県豊田市はトヨタがあるから住民税が安い」「自分の住む○○市は住民税が高い(らしい)」などと思っている人は少なくない。今回も、住む自治体によって住民税がどれくらい高いのか、安いのかを「2023年版 最新ランキング」としてお知らせしよう。

住民税が高い/安いランキング1位の自治体は?「課税所得200万円の人」で比べてみた

 住民税の課税所得(課税標準額)が200万円の人の年間の住民税額をランキングで見てみよう。47都道府県に、住民税の高い「兵庫県豊岡市」「神奈川県横浜市」「兵庫県神戸市」、住民税の安い「愛知県名古屋市」「大阪府田尻町」を加えた52自治体を住民税が高い順に並べてみた。

課税所得(課税標準額)200万円の人の年間の住民税額を高い順に並べた自治体のランキング

 事例の課税所得200万円というのは、サラリーマン独身(扶養家族なし)、生命保険未加入で社会保険(厚生年金+健康保険+雇用保険)を65万円とすると、年収は440万円ほどとなる。なお、表の住民税額には調整控除(-2500円~)は含まれていない。

 ほとんどの都道府県内の市町村民税に差はない。市町村まで含めたランキングにすると1700を超えるランキングとなってしまうので、ここでは税額が高い・安いことが知られている一部の市町(5市町)を加え、やや変則的なランキングとしている。これら5市町以外の人は、原則、自分の住む都道府県ごとに税額を参照してほしい。

 住民税高いランキング1位は兵庫県豊岡市、2位は横浜市、3位タイは宮城県と神戸市、以下、5位タイは岩手県など6県が並んでいる。

 表の「差額」は、住民税を増税していない東京都(を含む41位タイの10都道県)を基準とした場合の差を表している。東京都に比べ兵庫県豊岡市は2800円、横浜市は1700円、宮城県と神戸市は1200円高い。サラリーマンは12分割して毎月天引きされるので、宮城県や神戸市に住むと東京都より住民税が月額100円高くなる。

 一方、最も住民税が安いのは大阪府田尻町、住民税安いランキング2位は名古屋市となっている。住民税の減税を行っているのはこの2つの自治体だけだ。

住民税は所得割+均等割。市民税、県民税の所得割(税率)と市民税、県民税の均等割(○○円)の4つのパラメータで住民税の差が決まる

住民税の一番安い大阪府田尻町、一番高い兵庫県豊岡市

 住民税の一番安い大阪府田尻町、一番高い兵庫県豊岡市。初めて自治体の名を聞いた読者がいるだろう。そこには何があるの、なぜ住民税が安い・高いの、そもそも何処にあるの……疑問にお答えしよう。

大阪府田尻町とは

 日本一住民税の安い大阪府田尻町は大阪府南部に位置し、町内にある有名施設は関西国際空港で、田尻町の面積の3分の2は関西国際空港の敷地となっている。格安航空会社のPeach Aviationの本社も田尻町。人口は約8400人。1970年代から減少して約6300人となっていた人口は、1994年の関空開港から上昇に転じている。田尻町のウェブサイトの田尻町の財政状況に掲載されているPDFを見ると、田尻町キャラクターの“たじりっち”は「関空関連企業の業績に大きく影響を受ける」となっている。PDFの中でも触れられているが田尻町は大阪府で唯一、地方交付税不交付団体となっている。

 なお、田尻町の減税は2023年(令和5年)までとなっている。2017年(平成29年)から2019年(令和元年)まで3年間実施され、その後、2020年(令和2年)から4年間延長されている。さらなる延長があるのか今年で終了するのかは不明だが、新型コロナが一段落して観光需要が正常化しつつあり、関空からの税収が増えれば延長となる可能性は高そうだ。

兵庫県豊岡市とは

 日本一住民税の高い兵庫県豊岡市は、兵庫県の北東の端、北は日本海、東は京都府に面した自治体だ。兵庫県で最も面積が大きな自治体で、日本で最後の野生コウノトリの生息地とのこと。人口約7万5000人の市が日本一住民税が高い自治体となった理由は「都市計画税の廃止に伴い、平成21年度から超過課税を適用しています」としたためだ。どういうこと?

 家を購入した人は固定資産税と都市計画税を納めていると思う。このうち都市計画税を廃止し、市民税の所得割の税率を6.0%から6.1%に引き上げている。

 筆者は名古屋の自宅マンションの4月に納付した「令和5年度 固定資産税・都市計画税課税明細書」を見てみた。土地と家屋それぞれの価格、固定資産税課税標準額、都市計画税課税標準額、税相当額などが明記され、別紙「納税通知書」に固定資産税と都市計画税の納税額が記載されている。

 都市計画税の算出根拠を知らないが、手元にある通知書の都市計画税の金額がゼロ円になるなら、市民税所得割の税率が0.1%増税されても、トータルの納税額は減りそうな印象だ。

 豊岡市の住宅事情は知らないが、豊岡市の市民で自宅を購入していて、これまで都市計画税を納税していた人はこの部分が減税、市民税所得割が増税され、減税分の金額が上回っていれば得となる。固定資産税・都市計画税は立地に左右される。例えば駅近の物件で不動産価値が高ければ都市計画税の廃止はかなり美味しい。一方でアパートなどの賃貸物件に住んでいると都市計画税廃止の恩恵はなく増税されるだけだ。大都市圏と比べると地方都市は持ち家の率が高くなるので、この日本一高い住民税という市民税の改正は豊岡市の多くの住民にとってウェルカムかもしれない。

 住民税が高い自治体・安い自治体はどこなのか、差額はいくらなのか――全47都道府県+5市町をランキングにして比較した昨年8月の記事の内容をアップデートし、今回、その冒頭部分や加筆部分の一部を紹介した。このほか、いくつかの自治体について、情報を更新したほか、自治体指定ゴミ袋の価格差や無料健康診断といった“住民サービスのコスト差”と“住民税の差”について考察。自治体の主要財政指標である「財政力指数」のランキングも追加している。昨年の記事を未読の方はもちろん、読んだことがある方もあらためて記事全編を読んでいただければ幸いだ。

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