【ワイヤレスジャパン2003レポート】
坂村健教授講演ユビキタス・コンピューティング普及を「あせっちゃダメ」■URL 「ワイヤレスジャパン2003」の一環として開催されている「ワイヤレスコンファレンス2003」で16日、坂村健・東京大学教授が「ユビキタス・コンピューティングのためのUbiquitous Communicator構想」と題した講演を行ない、ユビキタス・コンピューティングの観点から第4世代携帯電話サービス(4G)に求められる条件などを示した。 坂村教授は、ユビキタス・コンピューティングの本質は、1)人の位置と属性、2)モノの位置と属性、3)周囲の状況──という3つを把握する“Context Awareness”にあると説明。Context Awarenesのためには、ユーザーが一人一台所有するとともに常に身に付けている端末が必要であることから、4Gこそがいよいよ携帯電話から統合コミュニケーション専用機「Ubiquitous Communicator(UC)」となるべきだと指摘する。 UCはパソコンではないため、汎用アプリケーションの処理機能は不要で、端末側で持たない機能をネットワーク側で補えばよい。持つべき機能は、1)ユーザーの使用言語や身体特性などを記録した個人情報、2)無線LANや携帯回線、Bluetoothなどを環境に応じたネットワーク接続が行なえるマルチモーダルな通信機能、3)GPSなどで位置を把握する周囲環境のリアルタイム理解機能──などに限られる。 UCは、ユーザーの属性をネットワークに認識させ、その属性と今いる環境に応じたサービスや機能が利用できるようにする。例えば、キオスク端末に近付いただけでUCがキオスクに属性を通知し、そのユーザーが読める言語でコンテンツを表示するといったものだ。また、坂村教授らが試験的に開発したUCには無線IDタグのスキャナーも搭載されており、例えば、服用しようとしている薬の組み合わせが、その人とってに副作用の影響がないものかどうかといった情報を表示する機能の実験にも取り組んでいるという。 このように、UCには個人情報が記録されており、それをネットワーク上でやりとりすることから、ユビキタス・コンピューティングを実用化するにあたって取り組むべきは「コストダウンではなく、セキュリティが先」だという。坂村教授は、「日本ではユビキタス・コンピューティングが盛り上がっているが、あせっちゃダメ。あせってはいけない」と強調する。特に社会への影響が大きい技術だけに、セキュリティなどの必要条件をすべて盛り込んだ段階ではじめて広めるべきだとし、普及までに10年はかかるかもしれないとの考えを示した。 ◎関連記事 (2003/7/16) [Reported by nagasawa@impress.co.jp] |
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