【ワイヤレスジャパン2003レポート】
NTT-BP講演「NTTグループの無線LANローミングを秋頃に実施予定」■URL
NTTブロードバンドプラットフォーム(NTT-BP)は、WIRELESS JAPAN 2003のコンファレンスで「無線LANサービスの現状と無線LAN倶楽部について」と題し、同社の公衆無線LANサービス「無線LAN倶楽部」について講演を行なった。 講演に先立ち、NTT-BPの小林忠男代表取締役社長は、現在提供されている公衆無線LANサービスの一覧表を紹介した。小林氏は「(NTTドコモやNTT Comなど)NTTグループがなぜこれほどサービスを提供しているのかという点について言い訳をすると」と冗談めかしつつ、グループ全体の無線LANに対する取り組みを説明。移動体や地域、長距離など会社としての役割が異なり、それぞれ事業の付加価値や相互補完的なサービスとして試行錯誤しているのが現状だと語った。 続けて小林氏は海外の状況に触れた。米国ではすでに無線LANが利用できる公共スペースが1,650カ所、有料会員も35,000人を集めるほか、韓国ではKorea Telecomが「NESPOT」というサービスを展開、約20万人の会員を有している。小林氏はこうした海外の普及状況について「日本と違って諸外国ではPHSでのデータ通信サービスが提供されていない」点を指摘。モバイルでのアクセス方法が携帯電話か無線LANしかないために、無線LANサービスが普及しやすいとの意見を示した。
対する日本は、PHSとの差別化もさることながら、ビジネスモデルをいかに構築するかという点が課題だという。携帯電話のようにサービスを一環して提供するNTT ComのHOTSPOTや、無線LAN機器メーカーが主導する「FREESPOT」、さらにはJR東日本というスポットオーナーとプロバイダーによる「無線による、駅でのインターネット接続実験」など、様々なビジネスモデルが乱立する状況を説明した。 こうした様々な公衆無線LANサービスが存在する中で、小林氏は「陣取り合戦をしていてもしょうがない」と一刀両断。「重要なのはユーザーが一番利用したい場所でサービスを提供すること」であり、その考えに基づいてユーザーの意見を反映した結果が、無線LAN倶楽部の駅を中心としたサービス展開だという。 現在は京浜急行電鉄と京王電鉄それぞれ9駅でサービスを提供するほか、バックボーンを提供する相模鉄道でも8月初めに正式サービスを開始する予定。さらに現状名前は明らかにできないものの、すでに大手私鉄の1社とサービス提供の予定があるという。小林氏は「首都圏の大手私鉄8社のうち半分はサービスを提供することになり、残りの4社とも交渉を続けている」とコメント。JR東日本の無線LANサービスともローミングを実施している点を付け加えて、駅を中心としたサービス展開が着実に進んでいることを強調した。
さらに2003年秋頃には、NTT Comの「HOTSPOT」、NTTドコモの「Mzone」と相互ローミングを実施する予定だという。小林氏は「やるやると言いながらなかなか実現していない」と前置きした上で、現在は認証や課金、セキュリティといった様々な問題を詰めている途中であると説明した。ただしローミングについては「総論ではいいが各論ではシビア」であり、各社それぞれ異なるシステム形態のため、課題も多いとした。 今後の展開としては、更新されたコンテンツのみをダウンロードできる「コンテンツシンクロ」をPalm OSに対応、Windows CEベースのOSやLinuxなど、PDAで採用されているOSのほとんどをカバーする予定だという。さらにPHSと無線LANといった異なるメディアでのローミングも考えていかなければならない問題として挙げられた。小林氏は「携帯電話の中に無線LANのチップを搭載すればそれが一番いいという声も多い」と説明したのち、今後はそういったサービスも実現されるだろうという予測を示した。 そのほかネットワークストレージサービスも現在NTT-BP社内で実験中であるほか、位置情報サービスやVPNサービス、IP電話サービスなども予定しているという。小林氏は「エリアや対応機種の拡大といった基礎を固めつつ、サービスの幅を広げて行きたい」と、今後の展開に向けて意欲を示した。 最後に小林氏は固定電話と携帯電話の普及予測を示したグラフを紹介。固定電話を「ナローバンド」、携帯電話を「モバイル」と例えた上で、携帯電話の普及が固定電話を上回った傾向が仮にインターネットの世界でも成り立つのであれば、「最後にはモバイルの無線LANがブロードバンドより普及するだろう」と講演を締めくくった。
◎関連記事 (2003/7/17) [Reported by 甲斐祐樹] |
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