【イベントレポート】
コンテンツビジネスではCATVが通常ISPよりも認証と決済で有利~NMRC佐々木氏講演■URL
24日、東京・お台場で開催されているケーブルテレビ関連イベント「ケーブルテレビ2003」の2日目に、NMRCネットワーク音楽著作権連絡協議会代表世話人である佐々木隆一氏が、「ブロードバンドにおけるコンテンツビジネス」と題する講演を行なった。佐々木氏は、音楽やアニメーションなどのコンテンツを配信する株式会社ミュージック・シーオー・ジェーピーの創業者で代表取締役会長も務める人物だ。 NMRCは1997年に、インターネット上で音楽を流通させるために結成された利用者団体で、社団法人音楽電子事業協会、社団法人マルチメディア・タイトル制作者連盟(現・社団法人デジタルメディア協会)、社団法人日本レコード協会、社団法人テレコムサービス協会、電子ネットワーク協議会(現・インターネット協会)、日本インターネット協会(現・インターネット協会)、日本地域プロバイダー協会(現・社団法人日本インターネットプロバイダー協会)、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会およびオープンシステム推進機構の9団体で結成された。主な業務は、利用者の代表として著作権管理団体であるJASRACを相手に著作権使用料の仲介・管理事業を行なう。 ●成功したコンテンツ配信ビジネスは「着メロ」だけ 佐々木氏はまず、コンテンツ配信ビジネスにおいて唯一成功している例として「着メロ」を挙げた。携帯電話の着信メロディー(着メロ)はMIDI形式のデジタルデータを配信する(KDDIが提供している「着うた」ではmp3形式)もので、「850億円市場を築き、唯一大成功した事例だ。一方、ブロードバンドがこれだけ普及しているにもかかわらず、ブロードバンドで儲かっているビジネスは少ない」とコメントした。 続けて佐々木氏は、「CATV業者にとってコンテンツビジネスに大きなチャンスが存在する。それは、通常のインターネット事業者やコンテンツプロバイダーに比べて、ユーザーと配信事業者が直接契約した関係にあるので、認証システムや課金・決済システムが構築しやすい。また、そのコストも下げることができる」と分析する。 主な契約モデルには3種類が挙げられるという。1つ目はユーザーをコンテンツサイトに誘導するアフィリエイトモデル、2つ目は入り口だけを自社で担当しコンテンツそのものはコンテンツプロバイダーに任せるゲートウェイモデル、そして3つ目は入り口からコンテンツまでを自社で完結させるショップ運営モデルだ。手数料収入は、アフィリエイトモデルの場合で3~5%、ゲートウェイモデルで10~20%、ショップ運営モデルで30~50%という。佐々木氏は「それぞれのモデルは、事業の規模やコストによって使い分けが考えられる。お勧めはゲートウェイモデルであり、ショップ運営モデルはあまり勧められない」と語った。 ●日本は「世界一厳しい著作権使用料体系」 韓国でコンテンツビジネスが大成功している理由として佐々木氏は「著作権にルーズだったから」と理由を挙げる。「韓国では、政府がブロードバンド化を促進しすぎて、著作権が置き去りにされてしまっていた。最近になってようやく著作権使用料を徴収するようになったが、その結果、1,500万人いた会員制サイトのユーザーが10分の1になってしまった」という。日本でコンテンツビジネスがなかなか成功しないのは、「世界一厳しい著作権使用料体系」(佐々木氏)が存在しているからだという。 コンテンツの配信モデルには、中継などのライブストリーム、サーバーからコンテンツを配信するストリーム、ユーザーのニーズに応じてコンテンツを配信するオンデマンドストリームの3タイプが存在する。佐々木氏は、「日本でこれから中心になるのはオンデマンドストリームだろう。ライブストリームには同時視聴者数に制限がかかってしまう欠点が改善されないから」と語った。そのほかにもダウンロード配信モデルや、レンタル(再生制限)配信モデルも存在する。これらには強力な著作権管理機能(DRM)を組み込むことが必須で、ユーザーの利便性とのバランスが重要だという。また佐々木氏は「現在、世界的に見て成功していると思うビジネスはApple社のiTuneだけだろう」とコメント。iTuneはダウンロードした端末以外へのコピーやCD-ROMへの焼付けを可能にしている。 音楽配信ビジネスを行なう上でどうしても避けて通れないのが著作権の問題だ。佐々木氏によれば、作詞・作曲家や配信事業者に関する著作権使用料の体系は定まったという。現在、課題として残っているのはレコード会社と実演家との著作権利用料の支払いで、同氏は「未決なまま残されているのでビジネスが困難になってしまっている」と分析した。 最後に佐々木氏は、「CATVインターネットならば、通常のインターネット事業者よりも回線コストや認証、課金コストを安く提供することができる。コンテンツホルダーの視点から考えても、そろそろ真剣にビジネスモデルを考える時期にきているはずだ。今年から来年にかけて、先行しているモバイルビジネスとコンテンツビジネスのバランスに注目したい」と語った。 ◎関連記事 (2003/7/24) [Reported by okada-d@impress.co.jp] |
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