被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー
「マネーミュール」の手口に注意!
SNSの「お金配り」に応募したら当選通知が届いた!? でも指示に従ったら犯罪に加担させられたケースも
2022年10月7日 11:50
Twitterなどで「お金配り」と称して活動するアカウントを見たことがないでしょうか。そうしたアカウントでは応募する場合の条件として、アカウントをフォローしたり、リツイートで拡散するように呼び掛けていることがあります。詐欺師はこうしたSNS上でのお金配りを悪用して詐欺を仕掛けることがあります。
例えば、過去記事「元ZOZO前澤氏の『お金配り』に参加したつもりが……Facebookで起こっている詐欺に注意」や「ZOZOの社長から100万円振り込むので手数料を振り込むようにDMが来た」で紹介したように、「100万円が当選した」などとという偽の当選通知から、有料の動画配信サイトに登録させたり、手数料を要求する「当選詐欺」が起きており、筆者の所属するDLIS(デジタルリテラシー向上機構)にも今年に入ってからは減少したものの、これまで多くの相談が寄せられていました。
お金配りに絡む詐欺は色々なパターンがあり、注意深い人でもころっと騙されてしまうことがあります。今回は、当選通知後に実際にお金が振り込まれるケースになりますが、そこでやり取りするお金をめぐってトラブルに巻き込まれる事例について紹介します。
「当選者」の口座が別の詐欺の振り込み先として利用されることも
まず、詐欺師はSNSでお金配りを告知し、応募してきた人に「当選金を振り込むので、口座番号や個人情報を教えてくれ」などと連絡します。その後、実際に数万円のお金を振り込みます。「当選者」とされた人は喜びますし、詐欺師を信用してしまうでしょう。
一方、詐欺師は他の人にもネット詐欺を仕掛けます。オレオレ詐欺やショッピング詐欺、ロマンス詐欺で被害者にお金を振り込ませるのですが、この振り込み先をお金配りの「当選者」の口座に指定するのです。
例えば、別のネット詐欺の被害者から同口座へ100万円が振り込まれた後、詐欺師は「当選者」にもう一度連絡し、「間違えて振り込んでしまったので返金してもらえないか」と言います。その際に「手数料として10万円をあげるので手渡しでできないか」と持ち掛けるのです。一度当選し、実際に振り込まれたことがあって信頼しているため、「当選者」は話に乗ってしまいやすい状況です。
手数料を引いた90万円を詐欺師に渡すことで、「当選」者は最初の当選金数万円と10万円の手数料が手元に残るわけですが、実際は犯罪に加担させられたことになるのです。
これは「マネーミュール」という手口で、詐欺師が犯罪で得たお金をマネーロンダリングするときに使います。犯罪収益の運び屋として、犯罪に加担させる詐欺手口です。過去記事「善意とお金欲しさの欲望につけ込む『コロナ・マネーミュール』の手口」でも詳しい手口を紹介しています。
詐欺師自身でだまし取ったお金を口座から引き出したりしていないため、警察に捕まる可能性を減らすことができるのです。そして、警察が詐欺事件の捜査上で突き止めるのは、お金配りに応募したことで結果的に別の詐欺被害者の送金先として利用されてしまった「当選者」の口座です。
詐欺師を信用し、言われるがままに口座に振り込まれたお金をおろして詐欺師に渡した「当選者」は、当人の心情としては被害者でしょう。しかし、警察にはそうはみなされません。ネット詐欺行為にがっつりと加担していると見なされ、逮捕されてしまう可能性があるのです。
従来は、海外送金を指定されるケースが多かったのですが、最近ではこうした資金移動を日本国内で完結させるケースも観測されています。SNSでのお金配りに応募する際は、そのアカウントが本当に信用できるか確認する必要があります。その上で、多額の現金を動かす、ということが犯罪収益の運び屋になる可能性がある、ということも覚えておきましょう。
あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。
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※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと