被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー
それってネット詐欺ですよ!
善意とお金欲しさの欲望につけ込む「コロナ・マネーミュール」の手口
2020年4月17日 06:00
新型コロナウイルスの被害は大きくなる一方です。無事な人々は、被害に遭われた人のことを思い、心を痛めていることでしょう。そんな時、慈善団体から、在宅でできる仕事の募集メールが届きます。働いている企業が自粛するなどして、先行きが不安な人にはうってつけの打診です。
応募が通ると、就職のお祝いとともに、最初の仕事が指示されます。近くの薬局などに行って、マスクや消毒剤の価格を調べるというものです。交通費も支払うので、領収書を取っておくように言われます。
マスクの価格を報告すると、次はマスクを買う資金を提供するための手伝いをするように指示されます。例えば30万円振り込むので、前回と今回の報酬である1万5000円を引いた金額を指定のビットコインウォレットに送金するように言われるのです。もちろん、30万円は先に振り込まれるので、損をするようなことはありません。
さて、実際にこの人は1万5000円の報酬をもらっています。今後も、先にお金が振り込まれ、報酬を引いてビットコインで送金するという仕事をすることでしょう。しかし、善意から新型コロナウイルスの被害を抑制するために活動したとしても、この人は逮捕される可能性があります。重大な犯罪に加担しているからです。
これは「マネーミュール」という、古くからあるマネーロンダリングの一種に組み込まれたネット詐欺です。「ミュール」はラバという意味で、お金の運び屋を指します。犯人は、銀行口座への不正アクセスや振り込め詐欺などで得たお金を、第三者に渡します。それを自分のビットコインウォレットに集約するのです。
犯罪で得た収益を直接自分の口座に入れると捜査機関などに追跡されやすくなりますが、関係のない人を経由して、痕跡を消すのです。本人は犯罪者の情報は何も持っていませんし、国や地域をまたげば警察の捜査は一層難しくなります。現金からビットコインに変換するのも捕まるリスク要因ですが、そのネックも解消します。たかが数%の手数料など、犯罪収益を自由に使えることと比べれば、たいしたことがないのです。
新型コロナウイルスの感染拡大に便乗するような「コロナ・マネーミュール」には絶対に引っかからないようにしてください。マネーロンダリングの手伝いをすると、逮捕される可能性があります。知らなかったでは済まないのです。ちなみに、マスクの価格を調べるという仕事は、信頼を得るための大嘘で、何の役にも立っていません。
もっと露骨に、割のいいアルバイトがあると募集をかけることもあります。受け取ったお金を指定先に振り込むだけで、その一部が報酬になります、と誘ってきます。雇用契約という口実で、応募してきた人の個人情報を取得しているのも悪質なポイント。1回送金し、怪しいと思ってやめたいと伝えても、問答無用で次のお金が振り込まれるというケースもあります。当然、黙って盗んでしまえば、犯罪者が取り返しに来ることでしょう。資金を移動する、という行為には関わらないようにしましょう。
あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。
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NPO法人DLIS(デジタルリテラシー向上機構)
高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。