被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

だまされないように注意!

有名人の画像を悪用した広告が氾濫中、LINEで連絡すると投資詐欺に誘導されるケースも

 有名人の写真を無断使用してSNSで広告を出し、投資詐欺などに誘導する手口が広まっています。以前から、堀江貴文さんや前澤友作さん、ビル・ゲイツさんやイーロン・マスクさんといった事業家の写真を悪用した詐欺広告はありましたが、今ではさまざまな有名人の写真が片っ端から詐欺に悪用されています。

 3月中旬には、北海道函館市の60代女性が池上彰さんをかたる人物から投資話を持ち掛けられ、500万円をだまし取られた事件が発生しました。先日、筆者のFacebookに池上彰さんの写真が掲載された「2024年の株式市場投資戦略」という広告が表示されました。

 広告をクリックすると、簡単なアンケートの後に別のSNSに誘導され、投資話を持ち掛けられるのです。もちろん、この手の詐欺広告では振り込んだお金は投資に回らず、詐欺師の懐に入ります。いつまで経っても出金することはできません。

 なお、池上彰さんのファンクラブサイトでは、「Facebook、LINE等の使用はしておらず、また、投資の旨を掲げた勧誘には一切関わりがございません」と注意喚起を行っています。

池上彰さんの写真を無断使用した詐欺広告の例です

 お笑いコンビ「麒麟」の川島明さんの詐欺広告も出回っていました。「川島明選手」とアスリートのように記載しており、「生放送での発言で日銀が提訴」と書かれるなど、意味不明です。さらに手錠の画像を合成し、「カメラが録画していることに気付かなかった…」とも書かれています。

川島明さんの写真を無断使用した詐欺広告の例です

 URLを開くと、明石家さんまさんとの対談記事が出てきますが、内容は投資に関するでっちあげの内容です。下にスクロールすると、投資関連の話題に誘導されます。

投資に関する偽の対談記事が表示されます
読み進めると、投資サイトに誘導されます

柳井正さんや西村博之さんなど、他にも多くの有名人の写真を無断使用する詐欺広告の例

 他にも、多数の有名人が勝手に写真を使われる被害に遭っています。ソフトバンクの孫正義さん、ファーストリテイリングの柳井正さん、経済アナリストの森永卓郎さん、映画監督の宮崎駿さん、ロンドンブーツ1号2号の田村淳さん、「2ちゃんねる」開設者の西村博之さん、テニス選手の大坂なおみさん、などの著名人が多い傾向です。アナウンサーやYouTuber、投資家、起業家などの詐欺広告も見かけます。

ファーストリテイリングの柳井正さんの写真を無断使用した詐欺広告の例
経済アナリストの森永卓郎さんの写真を無断使用した詐欺広告の例
「2ちゃんねる」開設者の西村博之さんを騙る詐欺広告の例

 経済学者の成田悠輔さんの写真を無断使用した詐欺広告は何パターンも見かけました。広告をクリックすると、LINEに友だち追加するQRコードが表示されます。友達に追加すると、本人をかたる詐欺師からメッセージが届きます。返事をすると、投資詐欺に誘導されます。

経済学者の成田悠輔さんを騙る詐欺広告の例
LINEの友達に登録すると……
本人をかたるアカウントから連絡がありました。返信すると、投資への勧誘が始まります

 筆者の所属するNPO法人DLIS(デジタルリテラシー向上機構)にも有名人の広告詐欺被害に遭った方から相談が寄せられています。

 例えば、被害者の中には、お笑いタレントの蛍原徹さんと楽天の三木谷浩史さんが対談したという広告を開き、投資口座に送金してしまったそうです。その方は、お金はあきらめましたが個人情報の流出を恐れていました。確かに、詐欺師はお金になるものは躊躇なく売り払うと考えられます。このように誤って入力した、メールアドレスや電話番号、クレジットカード番号など、変更できるものは変えたほうがいいです。

 被害に遭わないためには、美味しい投資話などはない、と肝に銘じるべきです。有名人が直接LINEで連絡してくることもありません。その有名人の名前と投資の内容について検索すれば、本人のホームページで注意喚起している記事やSNSでの被害報告などが見つかるはずです。

 最初は少し疑ったものの、その人の著書が送られてきて信じてしまった、というケースもあるようです。1度利益を確定させたと言い、少額を送金し、信じ込ませる手口もあります。

 有名人をかたる投資詐欺が流行しているということを知っていれば、このような広告詐欺をスルーできるでしょう。ぜひ、ご両親と情報を共有してください。また、今回、記事が検索されるように、あえてたくさんの有名人の名前を列挙してみましたが、実際はまだまだ多数の有名人の画像が詐欺に利用されています。Facebookなどのプラットフォーマーには、詐欺広告が表示されないようにしっかりとした対応を期待したいところです。

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

「被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー」の注目記事

高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。

※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと