被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

それってネット詐欺ですよ!

芸能人を装ったりパリオリンピックに便乗した手口など、2024年に注意すべきネット詐欺

 米AARP(全米の高齢者団体)は、2024年に注意すべき6つの詐欺について警鐘を鳴らす記事を公開しました。今回はその中でネット詐欺に関するものを紹介します。

 ネット詐欺がなくならないのは、詐欺師が手口を洗練させているためで、対抗しようにも、もぐら叩きのような状態になっています。最近ではAIを利用するようになり、フィッシング詐欺メールなどの日本語の不自然さも少なくなっています。被害者にならないため、ネット詐欺の手口をチェックしておきましょう。

個人情報や口座情報をだまし取る当選詐欺

 大金が当たった、などと嘘の連絡をする当選詐欺という手口があります。喜ばせておき、税金や手数料などの前払いという名目で、お金をだまし取るのです。もちろん、懸賞金などは払われません。以前は、手紙や電話が使われたこともありましたが、今ではメールなどネット上でのやり取りが主流です。

 記事によると、最近では懸賞金を支払うためとして、個人情報を要求してくるケースが確認されているようです。身元が確認できれば支払いの手続きを行うと言い、口座情報や社会保障番号までだまし取ろうとしてきます。

 詐欺師は口座から少額を引き出し、詐欺行為に気付くかどうかを確認します。気付かなければ、その口座を使って被害者の名義でクレジットカードを作り、与信枠を利用してお金を盗み続けます。

 対策は、懸賞金が当たったという連絡が来ても無視することです。個人情報は提供しないでください。

大金が当選したという連絡が来ても、詐欺の可能性が高いので要注意です

ネット上で有名人を装うバーチャルセレブ詐欺

 バーチャルセレブ詐欺は有名人をかたり、お金を奪おうとするネット詐欺の手口です。詐欺師はFacebookやInstagramで有名人やそのマネージャーを装ってやり取りをするのですが、最終的には何らかの理由を付けてお金を盗まれます。

 以前からバーチャルセレブ詐欺自体はありましたが、ネット上で有名人から連絡が来ることは信じられないと考える人も多く、大きな被害は出ていませんでした。しかし、コロナ禍でリアルのコンサートを開けない有名人たちがSNSやオンラインイベントでファンとのつながりを持つ機会が増えたことで、人々は有名人との近い関係に慣れてしまいました。

 記事によると、例えばSNSでコメントしている人に、セリーヌ・ディオンのマネージャーを名乗る人物から「セリーヌはあなたのコメントが好きです。彼女はあなたと話したいと思っています。これが彼女のプライベートアカウントです」などと連絡が来るのです。その後、やり取りが続く中、「セリーヌ・ディオンが訴訟に巻き込まれたので、あなたから5万ドルの融資を受けたい」といった話に持っていくそうです。

 有名人やその関係者を自称するアカウントから連絡が来たとしても、詐欺だと考えたほうがよいでしょう。

偽の販売サイトなど、パリオリンピックに便乗した詐欺

 2024年7月~8月にはパリオリンピックが開催されます。このような大きなイベントにはネット詐欺がつきものです。まず、偽の販売サイトでチケットを購入したり、オリンピック委員会を装った詐欺メールを信用しないようにしてください。

 パリ2024の公式サイトでは、ログイン情報や銀行口座情報を求めることはないと注意喚起しています。送信元のメールアドレスやメールに記載するURLのドメイン名も1文字だけ変えたり、正規のアドレスと勘違いさせようとしてくるので注意が必要です。

 また、最近はあまり聞かない「偽の緊急事態詐欺が復活する可能性もある」とのことです。この詐欺はまず、誰かのメールアカウントに不正アクセスします。そして、そのアカウントの連絡先に登録されている全ての相手に「パリに来ているけど財布が盗まれた。ギフトカードサービスなどで送金して助けてくれ」というメッセージを送るのです。連絡先の中に、「そういえば◯◯さんはオリンピックが大好きだったな」と納得し、お金を送ってしまう人がいるかもしれないからです。

 現金が欲しいとメールが来た場合、送金する前に電話など別の方法で連絡を取り、本人であることを確認しましょう。ネット詐欺であれば、それだけで被害を回避できます。

 以上が2024年に注意しておきたいネット詐欺になります。

祖父母詐欺

 もう1点、ネット詐欺とは別にご紹介しておきたいのがオレオレ詐欺関連の手口です。記事では、お年寄りをターゲットにした「祖父母詐欺」をより複雑にした「多段階祖父母詐欺」と呼ばれる詐欺について注意喚起を行っています。

 祖父母詐欺では、交通事故で逮捕された孫を装って連絡し、保釈金を盗み取ろうとする手口があります。他にも、痴漢冤罪で逮捕されたとか、戦争が始まったからウクライナから脱出したい、などさまざまなバリエーションがあります。

 多段階祖父母詐欺では、詐欺師はコールセンターを設置し、だましの手口をブラッシュアップしています。まず、孫を装って祖父母に連絡する際、お金は要求せず、偽の事件番号と弁護士や検察官の連絡先を教えます。祖父母がその連作先に電話すると、弁護士や検察官を装った詐欺師が「事件番号を教えてください」と言ってくるのです。その一連の手続きは、祖父母が数千ドル・数万ドルを送金するかどうかを確認するための心理トリックになっているそうです。

 対処法としては、知らない電話番号から、家族が困っているという電話がかかってきても、あわてないことが重要です。話が終わったら、まずは被害に遭ったという本人の電話番号に連絡し、本当に困っているかどうか確認しましょう。連絡がつかない場合でも、他の家族や友人に連絡してください。詐欺師は、状況を秘密にするために他の人に連絡しないように指示してきますが、無視して必ず確認しましょう。

 どの事例も手口や対策を知っておけば、対処できますし、無視できます。ネット詐欺の手口は変化し続けているので、リテラシーも常にアップデートしていくことが重要です。

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。

※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと