被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

それってネット詐欺ですよ!

大事な写真やメールを人質に取られて身代金を要求された

 「請求書ですご確認ください」というメールが来て、「あ、今月は早いな」と思いながら開いたところ、変な画面になってファイルを一切操作できなくなるというケースがあります。ファイルが暗号化され、写真にもメールにもアクセスできないようになるのです。

 画面には、「このPCは暗号化されました。復号化する秘密鍵は私たちが持っています。元の状態に戻したいなら、ビットコインで300ドルを支払ってください」といった内容が表示されます。

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

 これは、みなさんの大切なファイルを人質に取り、身代金を要求する“ランサムウェア”という種類のマルウェアを利用したネット詐欺です。詐欺と言うか、もう露骨な誘拐犯罪ですね。

筆者が“ランサムウェア”にわざと感染したときの画面です

 マルウェア自体は高度なプログラムなのですが、問題は、“ダークウェブ”というところで手軽に売買されていることです。そこまでの知識がなくても、小遣い稼ぎでやってみようと思ってしまう価格で手に入るのです。我々としては、この手の危険があることを知り、防御を固めておく必要があります。

ランサムウェアは“ダークウェブ”で普通に販売されています

 以前は、感染したら終わりで、PCを工場出荷時の状態に戻すしかありませんでした。しかし、現在は、暗号化されてしまったファイルをアップロードすることでランサムウェアの種類を判別し、いくつかのケースでは復号化できるツールが公開されています。また、以前は、もし身代金を支払っても当然無視されていました。払い損だったのです。しかし現在は、支払うと本当に復号できるケースも報告されています。犯人にとっては、払えば何とかなると思わせた方が被害者を増やすことができるからです。とはいえ、基本的には復旧は難しく、犯人にお金を払うのもお勧めできません。

 防御策は簡単です。パソコンを最新の状態にしたうえ、セキュリティ機能を有効にしていればいいだけです。筆者がランサムウェアに感染しようとしたときも、いくつものセキュリティ機能を明示的に無効にしなければすべて検知・除去されたほどです。そして、重要なデータはバックアップしておくことです。そもそも、パソコンはいつか壊れます。絶対に、バックアップは必要です。バックアップさえあれば、もしマルウェアに感染してもデータを戻せるためです。

 また、難しいことですが、やはりメールに添付されているファイルを開くときは慎重になることが重要です。例え、知人からだとしても、自分の名前が書いてあったとしても、添付ファイルには注意するようにしましょう。

「被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー」の注目記事

NPO法人DLIS(デジタルリテラシー向上機構)

高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。