被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

それってネット詐欺ですよ!

白人のハイキャリアナイスミドルからラブレターが来た

 ある日、気軽な感じでメールやメッセージが届きます。直訳っぽい日本語ですが、アイコンがとてもかっこいいオジサマの写真になっています。適当に返信するとカジュアルな感じで返答が返ってきました。ロボットではないようですし、迷惑メールでもなさそう。メッセージのやり取りだけであれば、何も起きないだろうと続けていると、もう日本人とは違ってぐいぐいと迫ってきます。しかも、相手はアメリカのエリート軍人。写真とメッセージのやり取りしかしていないのに、恋心が芽生えます。そのうち、日本に行きたいと言いはじめます。女性は紹介してもらったその軍人の上司である司令官に直談判。経費の200万円で手を打ち、早速100万円を振り込みました。

 これは、典型的な“国際ロマンス詐欺”です。外科医や軍人を名乗り、メッセージをやり取りして信用させ、その後いろいろな口実でお金を振り込ませる手口です。この詐欺が怖いのは、実際に人間がメッセージをやり取りしているので、だまされる可能性が跳ね上がる点です。

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

 国際ロマンス詐欺でやり取りしていたメールを入手しましたが、もうすごい内容でした。最初は、いきなり「こんにちは良い一日私の友人。」というわけのわからない日本語でメッセージが来ます。その女性は英語ができるので、その旨を伝えると英語でのやり取りに切り替わりました。完全にネイティブな英語を使うので、アジア圏ではなく珍しく英語圏からの攻撃の可能性が高いと思われます。

 「何しているの?」とか、「どこに住んでいるの?」といった他愛のない話が繰り返されます。すると、唐突に「ところで僕は整形外科医なんだ。米軍で働いてる。君はどこに住んでるの?」と自己アピールしてきます。「僕は毎日君とメッセージをやり取りするのが本当に好きなんだ」などと、ちょっと尊敬するプッシュを繰り返します。Gmailのメールアドレスを聞きたがったり、写真を求めるのも常套手段です。写真を送った日には、「Wow baby u are so beautifl」とか「In fact u are most amazing and beautiful womn I have ever seen」といったメッセージがバンバン来ます。情報提供してくれた女性は、ここで面倒になりブロックしてしまいましたが、本来はこのあとが本番です。

 前述の、日本に行って一緒になるための費用を請求するパターンから、軍にいるため戦闘に巻き込まれ大けがを負ってその緊急治療費用など、言い訳はいろいろです。一度支払ってしまったら、限界まで手口を変えてむしり取られます。当たり前ですが、本人は来ませんし、そもそもナイスミドルの写真は他人のものである可能性が高いのです。もちろん、送金してしまったお金は取り返しがつきません。

 この詐欺を防ぐには、この手の詐欺があることを事前に知っておくしかありません。一定の信頼関係を築かれてしまうと、あとから事態を把握した人がアドバイスをしても聞かない可能性があるのです。ITに詳しくないご両親や知人がいる場合は、ぜひこの記事をシェアしてあげてください。クールな状態であれば、引っかかるわけがないと笑い飛ばしてくれるでしょう。それでいいのです。知識さえあれば、本番の詐欺に会っても、笑い飛ばせるからです。

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NPO法人DLIS(デジタルリテラシー向上機構)

高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。