被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー
それってネット詐欺ですよ!
アップルから「アカウントは閉鎖されます」とメールが来た
2018年11月30日 06:00
先日、筆者宛てに「Apple」という差出人から
「アカウント管理チームは最近Appleアカウントの異常な操作を検出しました。アカウントを安全に保ち、盗難などのリスクを防ぐため、アカウント管理チームによってアカウントが停止されています。次のアドレスでアカウントのブロックを解除することができます」
というメールが来ました。iPhoneを利用しているので、Apple IDが凍結されてしまうと洒落になりません。一瞬慌てたのですが、文面を見て脱力してしまいました。ネット詐欺だからです。
あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。
このメールでは、「リカバリアカウント」というリンクを開かせたいようです。そこで、安全なPCから開いたところ、「Apple ID」というウェブページが開きました。ここでApple IDとパスワードを入力させようというのです。さらに、入力してしまうと、次の画面で住所や電話番号、クレジットカード番号などの個人情報も求めてきます。
Apple IDを盗まれると、いろいろな被害に遭う可能性が発生します。まず、有料アプリを勝手に購入される可能性があります。ギフト機能で「ストアクレジット」を贈ることも可能です。iCloudに入られてしまったら、「iPhoneを探す」機能で、iPhoneのある場所をGPSで確認できます。さらには、遠隔ロックしたうえ、強制的に音を鳴らしたり、電話を掛けたりメッセージを表示させたりできます。
突然、iPhoneが大きな音を出したので画面を見たら、操作できなくなっているうえ、10万円払えと表示されていたら怖いですよね。Apple IDにはクレジットカードを紐づけている人も多いので、さらにパニックになります。「iPhoneを探す」機能では、iPhoneのデータを消去することもできます。iCloudでバックアップしている場合は、削除することもできるので困ります。iCloud内の写真や動画を見られてしまうと、さまざまな情報から個人の特定される可能性が高まります。Apple IDの漏えいはリスクが高いので、注意する必要があるのです。
クレジットカード番号を入れたら、ダイレクトに不正ショッピングされますし、漏えいした個人情報も二度とネットから消すことはできません。
まずは、このメールの見破り方を紹介します。
差出人は「Apple」となっていますが、メールアドレスを見ると、ドメイン名(「@」より後ろの部分)が「appleonlinesupport.xxxxxxxxxx.net」のような文字になっています。アップルオンラインサポートのような文字が入っていますが、アップルのドメイン名である「apple.com」ではありません。
個人的なお知らせは、最初に名前で呼び掛けてきます。いきなり本文で始まるのも変です。日本語も変です。「をご利用いただき あり がと うございますが、」とか「3つのエラーが発生すると、アカウントは永久 に禁止されます。 」など明らかに日本人ではないですね。また、変な空白があちこちにあるのも特徴です。
対策は無視することです。万一に備え、2段階認証を有効にしておくと安全です。Apple IDとパスワードだけではログインできず、iPhoneに届く認証コードが必要になる仕組みです。普段使いで少々手間がかかることもありますが、安全性はとても高くなります。
自分だけは大丈夫と思っている人ほど、疲れているときや酔っているときにふと入力してしまいがちです。入力してしまった直後であれば、パスワードを変更することで被害を防止できるかもしれませんが、やはり普段からの心がけが重要です。特に、“GAFA”と呼ばれる、Google、Apple、Facebook、Amazonのアカウントは鉄壁の守りを固めておきましょう。
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NPO法人DLIS(デジタルリテラシー向上機構)
高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。