被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

それってネット詐欺ですよ!

芸能人の被害報告も続々! サポート詐欺に要注意

 11月11日、お笑いタレントのキンタロー。さんが、Twitterでネット詐欺にあったことを投稿しました。7月17日に、尾木ママが被害に遭ったサポート詐欺と同じものです。尾木ママのケースは大きくニュースになったのですが、それでも同じパターンで被害が起きてしまうのは悲しいことです。

2018年11月11日、キンタロー。さんがサポート詐欺に遭い、1万5000円を支払ってしまいました

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

 先日、筆者はテレビの取材で、尾木ママの自宅へ伺ってきました。実際に被害に遭ったパターンを詳細に聞くほどに、ネット詐欺として細かく計算されているのに感心してしまいました。その能力があれば、何らかの営業職で稼げるほどだと思います。

 サポート詐欺とは、ウェブページを閲覧しているときに、「ウイルスに感染しました!」と警告を出し、ウイルス駆除の支援をするという手口です。もちろん、実際にはウイルスには感染していませんし、ウイルス駆除もしません。ただ、警告画面が開くのと同時に、大きな警報のようなサウンドが再生されたようです。仕事で疲れているところに大音量で警報が鳴ると、判断力が奪われてしまいます。

 記載されている電話番号に電話すると、カタコトのオペレーターにつながります。しかし、画面にはマイクロソフトのロゴなどが表示されているので、グローバルのサポートセンターにつながってしまうと考えてしまうケースがあります。すると、クレジットカード番号を求められます。キンタロー。さんはここで番号を教えてしまい被害に遭いました。尾木ママは怪しいと思って拒否したところ、コンビニでAmazonギフト券を購入する方法もあると教えられ、夜中に急いで買いに出たそうです。

「ウイルスに感染した」と、偽の警告でユーザーを詐欺にかけます。この画像は、IPA(立行政法人情報処理推進機構)の注意喚起で紹介されている警告画面の例(詳しくは、関連記事『偽警告に従って電話すると片言の日本語を話すオペレーター登場、有償ソフトやサポートサービスの購入を強要』参照)

 当初、10万円のコースを要求されたのですが、渋っていると一番安い2万8000円のコースもOKと言われ、「なんて親切なのだろう」と思ってしまったそう。これも営業の場でよく見られるテクニックですね。

 さらに、ウイルスを駆除するために、細かく操作を指示され、ソフトをインストールしたり何らかの接続設定を行いました。筆者が、PCを確認したところ、遠隔操作ソフトが入っていました。本来であれば不正アクセスをするのはとても高度な技術が必要ですが、ユーザー自身の手で遠隔操作ソフトをインストールして、セットアップしてしまったら簡単に不正アクセスされてしまいます。PCのカメラにも侵入され、購入したAmazonギフト券の番号を写したところ、警報が解除されました。

 対応策としては、この手の詐欺があることを知り、無視することです。ウェブページやブラウザーを閉じてしまえば終わりです。何らかの機能を駆使して、閉じられなくされてしまったなら、本連載の以前の記事『PCをハッキングされた! と思い込んで被害を拡大しないこと』で紹介した「タスクマネージャー」を使う方法で強制的に終了させましょう。

 もし、何らかのソフトを入れてしまったなら、PCを工場出荷時の状態にリセットしましょう。方法はマニュアルに書いてあります。残念ながら支払ったお金は返ってきません。

 あの手この手で心理的プレッシャーを与えて、理性的な判断をできないように誘導するネット詐欺。最も効果的な防御方法は、デジタルリテラシーを向上することです。もし、PCを使い始めたばかりのご両親がいるようであれば、ぜひこの記事を転送して読んでもらってください。そうすれば、相談なくお金を払ってしまう被害を防げるかもしれません。

NPO法人DLIS(デジタルリテラシー向上機構)

高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。