被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

それってネット詐欺ですよ!

自分だけは大丈夫が一番危ない! 尾木ママのネット詐欺事例に学ぶ

 筆者は日々、ネット詐欺の事例を収集しているが、7月17日、尾木ママがブログにて「不覚 不覚!! PCハッキング詐欺にひっかかる!」と投稿。PCのハッキング詐欺にやられた、と報告した。同日には、「高齢者の皆さん!だまされないように気をつけましょう!!」と悔しさのあまり追加で投稿している。

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

 ワールドカップの決勝戦を見ようとして、何らかのアプリに接続したときに、「このパソコンは、ハッキングされました。直ちに以下の電話番号に電話連絡して下さい!」と表示されたそう。あわてて電話したところ、外国人の女性が出て、放置するとハッキングの被害が広がるため、PCを動かせなくすると言われる。そして、なんとかしてあげるからとクレジットカード番号を教えてくれと続く。ここで、そんな危険なことはできないと断ったのは流石。教えたら、速攻で限度額まで使われていたところだ。しかし、コンビニでAmazonギフト券を購入して、そのコードを教えてもらればOKと言われ、2万8000円のギフト券を購入して、番号を教えてしまったという。

 これは、セキュリティ詐欺とギフトカード詐欺の複合ワザだ。最初の、PCがハッキングされたという警告に驚いてしまうと、相手の思うつぼ。このような詐欺サイトに接続したということは、なんらかの公式サービスではなく、適当に検索し、ヒットした怪しげなサイトを開いてしまった可能性が高い。そんな流れもあり、電話をしてしまう人は多い。

 そして、2万8000円という微妙な金額は、PCよりも安いので心理的なハードルが低い。それで動くなら、どこかに相談するよりもラクと判断してしまうのも仕方がない。

似たような手口として、PCがウイルスに感染しているといった偽の警告画面を表示し、セキュリティソフトの購入やサポートサービスの契約へ誘導する手口もあり、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が注意を呼び掛けている。この画像は、IPAの注意喚起で紹介されている警告画面の例(詳しくは、2018年7月19日関連記事『偽警告に従って電話すると片言の日本語を話すオペレーター登場、有償ソフトやサポートサービスの購入を強要』参照)

 対応策はいくつかある。まず、この手の事例を知ること。本連載でも、セキュリティ詐欺とギフトカード詐欺は紹介しているので、どちらかに似ていると判別できれば疑うことができる。

 次に、この手の話でこちらから電話をするときは、信用していてもしていなくても、Googleで検索してみよう。本物であれば、普通になんらかの団体のウェブページがヒットするはず。詐欺に使われたことのある番号はネットで共有されており、すぐに見抜ける。

 自信がある人は、状況を自分で判断してしまうのだ。犯人は当然、あらゆるパターンの受け答えを用意している。自分は大丈夫だと思い込んでいる人ほど、会話がスタートしてしまえば、簡単に詐欺にかけることができるのだ。自分はこういうのに引っ掛かりやすいからと、すべて疑ってかかる人の方がリスクを軽減できる。そもそも、犯人が一番いやなのが、無視されること。この手の表示が出たら、即ブラウザーを閉じて、そのようなサイトには近寄らないようにして欲しい。

 詐欺事例を学びデジタルリテラシーを高めるのとともに、相談できる人を確保しておく、ということも重要だ。自称上級者も引っ掛かるときは見事に引っ掛かり、自分だけは大丈夫だと思ったとか、最近のネット詐欺はすごい、と言い訳したりする。誰しもネット詐欺に遭う可能性はあるので、慢心せず、危険を感じるアンテナは立てっぱなしにしておこう。

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DLIS(デジタルリテラシー向上機構)

高齢者のデジタルリテラシー向上を支援する団体で、現在、NPO法人の申請中です。今後は、媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行う予定となっています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。