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XENPAK→X2→XFP→SFP+と移った10GBASEのトランシーバーモジュール規格

【光Ethernetの歴史と発展】

 Ethernetというか10GBASE-Tに関しては、2017年から【10GBASE-T、ついに普及?】と題し、全11回と番外編2回をお届けした。だが、ツイストペアによる銅配線のEthernetは10GBASE-Tまでで、25/40GBASE-Tはまだまだ実用化には至っていない。

 【アクセス回線10Gbpsへの道】とも一部は被るかもしれないが、ここでは光ファイバーを利用する“光Ethernet”を紹介していこう。

「光Ethernetの歴史と発展」記事一覧

 現実問題として、10GBASEで使われているトランシーバーモジュールの規格は、利用された順で言えばXENPAK→X2→XFP→SFP+となる。

4波長をサポ―ト、70ピン独自コネクタ採用の「XENPAK」

XENPAKの形状。結構大きい。出典はxenpak.org(Web Archive)

 2001年3月、XENPAK MSAの形成が発表された。MSAはMultiSource Agreementの略で、業界団体にすらなっていなかった。

この寸法は中央のモジュール部だけで、実際には取り付けのブラケットなどがあるからもう少し大きくなる。出典はXENPAK MSA Rev 3.0のFig.1

 発表文にもあるように、Agere System(旧Lucent TechnologiesのMicroelectronics Groupがスピンアウトした企業)とAgilent Technologiesの2社が共同の覚書を交わしたというレベルではあるのだが、とにかくこの2社が中心となって、10G Ethernet向けにトランシーバーモジュール規格の標準案を出したかたちだ。

 その発表文によれば、850nmシリアル、1310nmシリアル、1310nm WWDMと1550nmシリアルという4つの波長をサポートし、モジュール寸法は38×121×17.4mmにおさえたものだ。コネクタは70ピンの独自規格(Tyco Electronicsが提供)を利用する。

 ホスト側との接続はXAUI(以下左)なので、前回にも掲載した以下右にある構成を利用するかたちだ。制御機能側は割と充実しており、動作状況のモニタリングとかも可能となっている。

 電源としては、850nm/1310nm光源のモジュールの場合は最大6W、1550nm光源の場合は最大10Wが供給可能とされている。もっとも電力供給そのものには大きな問題はないが、これによるモジュールの発熱の方が問題視されており、Specificationの中にはそのための記述もある。

XAUIの信号そのものは4対ということもあり、実際には16本(4対×Differential×双方向)だけとなり、70ピンコネクタの片側だけで済んでいる。残り半分は制御機能や電源供給などにあてられている。出典は「XENPAK MSA Rev 3.0」のFig.11
「10GBASE-PR」で物理層との接続に使われる「XAUI」はあくまでオプション扱いのもの

 このXENPAKは当初、「ほかの規格がない」ということで利用されていた。ただ、SFPなどに比べて何しろ「デカい」ため、X2が出てくると押されるように衰退していった。XENPAK MSA自身も、2002年に9月にRev 3.0のSpecificationを出した後はほとんど動きがなくなっており、ウェブサイトも2008年までは存在したが、その後アクセス不能になっている。

実質的にはXENPAK後継の「X2」、70ピンコネクタ採用で4波長をサポート

左がZENPAK、右がX2。出典は"CISCO 10GBASE X2 MODULES"

 2002年7月、今度は「X2 MSA」が形成された。メンバーはAgere Systems、Agilent Technologies、JDS Uniphase、三菱電機、NEC、OpNext、Optillion及びTyco Electronicsだ。ここにXENPAK MSAのAgere SystemsとAgilent Technologies、それにコネクタを提供していたTyco Electronicsの名前があることからも分かるように、実質的にはXENPAKの後継規格ということになる。

 最初のSpecificationである「Revision 1.0」は2003年2月に発表された。このときには、メンバー企業としてIgnis Optics、Molex Incorporated、Multiplex Inc、NTT、Pine Photonics、TriQuint Optoelectronicsが加わり、XENPAK MSAよりも活発だったことが伺える。

 さて、そのX2であるが、仕様自体はXENPAKにかなり近い。まずコネクタそのものはXENPAKと同じTycoの70ピンのものが利用される。電気的仕様に関して言えば、XENPAKの一部のレジスタの値が異なる(D.8032というレジスタの値が"00-80-BE"から"00-0C-64"に、D.8012というレジスタの値が"01"から"02"になった)だけで、それ以外は完全に一緒である。

 つまり、XAUIを利用した接続である点、850nmシリアル/1310nmシリアル/1310nm WWDM/1550nmシリアルの4波長をサポートする点に違いはない。

奥は放熱フィンの高さを引き上げつつ、モジュール全面にフィンを這わしたもの。XENPAKではそれだけ放熱が問題ということかもしれない。10Wなどではやはり厳しいだろう。出典はX2MSA.org

 一方で異なっているのは機械的形状である。全体的により小型化(おおまかに言って体積はXENPAKの半分程度)となったほか、レールによる着脱(右)、さらにPCIカード向けの対応(右下)など、より広範に利用するための工夫というか、きちんとした仕様化がなされたものだ。

これはシングルスロットの例だが、デュアルスロットで放熱フィンの高さが2倍のものも定義されている。出典は「X2 MSA Revision 1.0b」の6.13

 あるいは、コネクタ部の追加シールドの方法なども記述されたほか、放熱能力を強化する方法も論じられている。

 コストという意味では、ZENPAKとX2の間に大きな差はなかったようだが、多少なりとも体積が減り、機械的な面も見直されて使いやすくなったことで、ZENPAKを置き換えるように、2004年あたりからX2が利用されるようになった。

10Gbpsのシリアル通信規格「XFI」を前提とした「XFP」、9種の媒体をサポート

XFPモジュールとケージそのほか。X2に比べてもモジュールそのものが大分スリムになった。出典は「XFP Revision 3.1 Adapter Revision」のFigure 20

 3つ目の規格である「XFP」もまた、「XFP MSA」が2002年5月に結成された。

 ほとんどX2と変わらないタイミングだが、製品化はX2から少し遅れた。結成メンバーはBroadcom Corporation、Brocade、Emulex Corporation、Finisar、JDS Uniphase、Maxim Integrated Products、ONI Systems、ICS(住友電工子会社)、Tyco ElectronicsおよびVelioの10社で、コネクタメーカーのTycoと光コネクタのJDS Uniphase以外は、XENPAK/X2とは全く異なる。

 ただし、こちらはその後さらに多くのメンバー企業が参画していて、XFP Revision 3.1のContributorsを見ると、実に75社の名前が挙がっている。その中にはAgere SystemsやAgilent Technologies、三菱電機、NEC、NTTなどX2のメンバーがほぼ加わっており、その意味ではX2のメンバー企業が、XFPをX2の後継規格と考えていたと言えるようにも思う。

 XFPは「XFI」を前提とした規格だ。XFIは前回の最後で触れたが、10Gbpsのシリアル通信規格だ。前回も掲載したスライドの一番下にある、PMAとPMDを繋ぐ間のインターフェースがそれだ。

 そしてスライドにもある通り、「IEEE 802.3ae」とは無関係の独自規格となる。それもあってか、XFPではこのあたりを丁寧に定義している。基本的にXFIは以下の図のように、2線式でホスト側のPMAと繋がる構造だ。

2線式というかディファレンシャルかつ双方向なので、実際には信号線は4本だけになる。ほかにリファレンスクロックや割り込み、モジュールの挿脱通知といったほか、電源などもあるため、コネクタは30ピンとなっている。出典は「XFP Revision 3.1 Adapter Revision」のFigure 4

 信号速度は、10G Ethernet以外にSONETや10G FiberChannel、あるいはG.709などを考慮し、データレートは9.95Gbps~11.09Gbpsまでの複数をサポートする。

 ちなみに、エンコードは64b/66b以外に、8b/10b、SONET Scrambled、NRZ、RZの各方式をサポートしているが、10G Ethernetでは64b/66bエンコードが利用される。以下のスライドでは、IEEE 802.3aeだと10.31Gbps(正確には10.3125Gbps)という微妙な数字なのは、64b/66bエンコードを通すことを前提にしているためで、データレートそのものは10Gbpsとなる。

G.709とは「ITU-T Recommendation G.709」のこと。11.09Gbpsとあるあたり、OTU2eに対応したものと思われるが、10G Ethernetにはあまり関係のない話である。出典は「XFP Revision 3.1 Adapter Revision」のTable 5

 また、媒体もさまざまなものをサポートしており、850nm VCSEL/1310nm VCSEL/1550nm VCSEL/1310 FP/1310nm DFB/1550nm DFB/1310nm EML/1550nm EML/Coppers or Othersと9種類にも及ぶ。VCSELは垂直共振器型面発光レーザー、FPLはFPレーザー、DFBは分布帰還型レーザー、EMLは電気吸収変調器レーザーの意味で、それぞれに一長一短あるが、ここではその違いまでは論じない。

 Copperに至っては、それに耐えられる製品はあるのか?と思ったが、調べてみると例えば「XFP Twinax Cable」」といった製品があって、最長10mまで到達可能なあたりは、例えばラック内配線などに活用されているのかもしれない。

 話を戻すと、これだけ多数の波長およびレーザー方式に対応しているため、IEEE 802.3aeで定義された「10GBASE-R」や「10GBASE-X」への利用は、問題なく可能となっている。

 XENPAK/X2と比べると厳しい点が電源供給である。XFPの場合、Power Level 1~4の4種類のモジュールが定義されているが

  • Power Level 1:1.5W以下
  • Power Level 2:2.5W以下
  • Power Level 3:3.5W以下
  • Power Level 4:3.5W以上

 ただ、そもそも供給される電源が+1.8V/1.8W、+3.3V/2.5W、+5V/2.5Wとなっており、Power Level 4を定義した場合でも、利用できる限界は6.8Wであり、10Wが可能だったXENPAK/X2には及ばない。

大原 雄介

フリーのテクニカルライター。CPUやメモリ、チップセットから通信関係、OS、データベース、医療関係まで得意分野は多岐に渡る。ホームページはhttp://www.yusuke-ohara.com/