期待のネット新技術

最大100Mbpsながら伝送距離の異なる「100BASE-FX」「100BASE-SX」などの各規格

【光Ethernetの歴史と発展】

 Ethernetというか10GBASE-Tに関しては、2017年から【10GBASE-T、ついに普及?】と題し、全11回と番外編2回をお届けした。だが、ツイストペアによる銅配線のEthernetは10GBASE-Tまでで、25/40GBASE-Tまだまだ実用化には至っていない。

 【アクセス回線10Gbpsへの道】とも一部は被るかもしれないが、ここでは光ファイバーを利用する“光Ethernet”を紹介していこう。

「IEEE 802.3u-1995」として定義された「100BASE-TX」「100BASE-FX」

 前回は光ファイバーの話で終始したが、再び光Ethernetに戻そう。10Mbpsの普及に伴い、より高速なネットワークへの要望が高まるのは、当然のことだろう。

 IEEEは1992年11月、「HSSG(High Speed Study Group)」という名称で、まず100Mbps Ethernetの検討を開始。翌1993年9月に、これはIEEE P802.3u 100Mb/s Ethernet Task Forceへと昇格し、1994年5月にDraft 1.0が完成した。

 ここからTask Force Review、Working Group ballot、Sponsor ballotを経て、1995年6月に「IEEE 802.3u-1995」として標準化が完了した。ここで定義されたのが、以下の2種類である。

  • 100BASE-TX(CAT5ケーブルを利用し、4対のツイストペア全部を利用する通信方式)
  • 100BASE-FX(光ファイバー2本と波長1310nmの光源を組み合わせ、100Mbpsの双方向通信を行う。最長到達距離は2km)

 もっとも、IEEE 802.3uが決まるまでも一筋縄ではいかなかった。Study Groupの時点で存在した競合規格は、FDDI/FDDI II/FiberChannel/HIPPI/TCNS/ISO-Ethernetなどさまざまあったが、いずれも難ありということで候補から落ちていった。だが、Task Forceでやや揉めたのが、「100VG-AnyLAN」を推す声があったことだ。これは当時、HPとAT&Tの半導体部門が共同で策定したもので、以下のような特徴があった。

  • Demand Priorityベースの送信制御
  • CDMA/CDではなくToken Passing方式の排他制御
  • 配線そのものはCAT3で利用できる(ただし4対の信号線が必要なので、1,2pinと3,6pinのみ配線されている2対の10BASE-T用ケーブルは使えない)

 ただ、そもそもCDMA/CDではない時点でEthernetなのか?という議論もあり、最終的にTask Forceでは100VG-AnyLAN推進派に対し、これをFast Ethernetではなく、別の規格として標準化を進めるように勧告。これを受け、最終的に「IEEE 802.12-1995」として標準化されたが、Statusが“Inactive-Withdrawn”となっていることからも分かるように、普及には程遠い状況で終わってしまっている。

1310nmのレーザー光源で全二重のリングを構成する「100BASE-FX」

 「100BASE-FX」の方は、これに比べてまだ順調だったと言える。競合にあたる規格はほとんどなく、10BASE-Fの延長というかたちで仕様策定が完了している。

 ただ、レーザー光源は850nmから1310nmに切り替わった。この理由としては、当時の半導体レーザーでは、850nmだと100Mbpsの速度を出すのが難しかった(レーザーの送信側は間に合ったらしいが、受信側が結構大変だったという話を聞いたことがある)。

 一方、先ほどもちらっと出てきたFDDIでは、既に100Mbpsの速度を1310nmのレーザー光源で実現していた。これをそのまま転用すれば確実に実現できる、という目途が立ったことが、採用の大きな理由だったそうだ。

 ちなみにFDDIというのはFiber Distributed Data Interfaceの略で、ANSIのX3-T9が標準化を主導した。構成としては、トークンリングと同じリングバスの形式で、以下の図のように、全二重を実現するために信号の向きを逆転させたファイバー同士でリングを構成する。

 ちなみにFDDIと言いつつ、実際には同軸ケーブルでの構成も可能で、その場合は厳密にはCDDI(Cable Distributed Data Interface)という名称であるが、現場ではFDDIで通っていた。

850nmのレーザー光源とマルチモードファイバーを組み合わせた「100BASE-SX」

 ただし、ここからいろいろと問題が出てくる。FDDIはそもそもホスト向けというか、バックボーンのサーバー同士の接続に用いることが多かったので、ある意味コストは多少高くても問題なかった。しかし、100BASE-FXが普及を始めるにつれ、「そうは言っても高い」という声が次第に出始めた。大まかに言って、当時の1310nm関連機器は、850nm機器と比較して2倍(レーザー光源も受光素子に加えて、ファイバーもシングルモードだと当然高くなる)という話であった。

 また、シングルモードファイバーは、到達距離は2kmほどで長距離接続には向いているが、逆にもっと短距離でいい場合にはむしろ不向きだ。そこで登場したのが、850nmのレーザー光源とマルチモードファイバーを組み合わせた「100BASE-SX」だ。

 ただ、不幸だったのは、この短距離向け100Mbpsの規格策定がIEEEではなくTIA(Telecommunication Industries Association:米通信工業会)で行われたことだ。最終的に850nmの光源とマルチモード光ファイバーを組み合わせた100Mbpsの規格が「ANSI/TIA/EIA-785-2001」として2000年に標準化される。

 実は規格として10BASE-FXへの後方互換性も維持されており、到達距離は最大で550m(300mという数値もあって条件が異なるようだ)を確保。ただ、安価な部品を採用できる分、コストは100BASE-FXの半分とは言わないまでも、それなり安くなる見込みだった。

 本来ならこちらが先に出るべきだったのでは?という気もしなくはないのだが、IEEE 802.3には取り込まれることがなかった。それもあって結局広く普及したとは言い難く、現在では既に使われなくなっている。

「IEEE 802.3ah」として標準化された100BASE-LX10/BX10、ベンダー独自規格も……

 この頃のIEEEにとっては、短距離向けの規格はあまり眼中になかった。というのは短距離はそれこそ100BASE-TXを使えばいいという立場で、むしろもっと長距離の伝送が可能な方法を模索していた。これが2004年に「IEEE 802.3ah」として標準化された、100BASE-LX10と100BASE-BX10である。

 どちらも最長10kmの到達距離を実現するためのものだが、大きな違いは100BASE-LX10が送信と受信で2本の光ファイバーで1対になっているのに対し、100BASE-BX10では送信1310nm、受信1550nmというように利用する波長を変更し、以下の図2のように1本の光ファイバーで送受信とも可能にする仕組みだ。2種類の波長の光は、それぞれの波長を通す(それ以外は反射する)ハーフミラーを使って分解するかたちとなる。

 この方式でも、特に長距離になればケーブル代も馬鹿にならない。ケーブル代自体はざっくり半分になる一方で、新たにハーフミラーが必要になることや、この当時は1310nmと比べてもさらに高価な1550nm対応の部品を必要とするといった欠点もあり、コスト面でどちらが有利かと言われると。ちょっと判断が難しいところがある。

 さて、これ以外にも、「100BASE-LFX」や「100BASE-EX」、「1000BASE-ZX」といった規格も存在した。ただ、これらは100BASE-XXXの名前が付いてはいるものの、実際はIEEEもTIAも無関係な、ベンダーの独自規格である。

 100BASE-LFXは、OM1(コア径62.5μm/クラッド径125μmで、850nmの波長で200MHz・kmの伝達特性)ないしOM2(コア50μm/クラッド径125μmで、850nmの波長で500MHz・kmの伝達特性)の光ファイバーで最長2kmであるが、これを4kmまで広げたものである。

 一方、100BASE-EXは1310nmの光源とシングルモードファイバーで最長40km、100BASE-ZXは光源を1550nmに切り替えて、最長80kmまでの到達を実現するというものだ。どのみちこれらは、それこそデータセンター間の接続といった用途に向けたもので、配線の両側に同じベンダーの機器が入ることは珍しくない。

 そうなると、ベンダー独自であってもそのベンダーがサポートする限り問題はないという考え方は確かにあり、多少リスクがあっても(40kmなり80kmなりで届かない場合、間にリピーターを挟む必要があるが、この電源をどう取るかといった問題を含め、当然リピーターの数が少ないほど)安く済むことになる。

 リスクというのは、ベンダーを変更する必要が出たときに、配線のやり直しになる可能性が捨てられないところだ。こうした問題もあり、あまり広く使われたとは言い難い。

大原 雄介

フリーのテクニカルライター。CPUやメモリ、チップセットから通信関係、OS、データベース、医療関係まで得意分野は多岐に渡る。ホームページはhttp://www.yusuke-ohara.com/