期待のネット新技術
最大200Gbpsを見据えた「CFP2」、サイズはCFPの半分に、さらに小型化を果たした「CFP4」も
【光Ethernetの歴史と発展】
2020年7月28日 06:00
Ethernetというか10GBASE-Tに関しては、2017年から【10GBASE-T、ついに普及?】と題し、全11回と番外編2回をお届けした。だが、ツイストペアによる銅配線のEthernetは10GBASE-Tまでで、25/40GBASE-Tはまだまだ実用化には至っていない。
【アクセス回線10Gbpsへの道】とも一部は被るかもしれないが、ここでは光ファイバーを利用する“光Ethernet”を紹介していこう。
「光Ethernetの歴史と発展」記事一覧
- 10BASE-Tと同じ仕組みの光ファイバーで最大2kmを実現「10BASE-F」
- 屈折率で伝送距離が異なる「光ファイバー」の材質と構造
- 最大100Mbpsながら伝送距離の異なる「100BASE-FX」「100BASE-SX」などの各規格
- 実効1Gbpsに到達した「1000BASE-SX/1000BASE-LX/1000BASE-CX」
- 拠点間接続に用いる「1000BASE-X」の各種関連規格
- 低価格な光ファイバーで1Gbpsを実現する車載向けがメインの「GEPOF」
- 10Mbpsの「MII」から1000MbpsのCisco独自規格「SGMII」まで
- 1波長で10Gbps、光源と到達距離の異なる「10GBASE-W/R」の各規格
- 10Gbpsのフレッツ光で使われる「10GBASE-PR」、既存ケーブルを流用できる「10GBASE-LRM」
- XENPAK→X2→XFP→SFP+と移った10GBASEのトランシーバーモジュール規格
- 10Gbpsのシリアル通信規格「XFP」、これを置き換えた「SFP+」
- 10GbEの次は40GbEと100GbE、HSSGによってともに標準化の開始へ
- 最大100Gbps、「IEEE 802.3ba」として標準化された8つの規格
- IEEE 802.3baで定義されたInterconnectとトランシーバー規格
- 100Gbpsで100mを目指す「P802.3bm」、IEEE 802.3baをブラッシュアップ
- 最大100Gbps・100mの「100GBASE-SR4」と40Gbps・40kmの「40GBASE-ER4」
- CFPのサイズ半分、最大200Gbpsの「CFP2」、さらに小型化された「CFP4」
- 40Gbpsの「QSPF+」、50Gbpsの「QSFP56」、112Gbpsの「SFP-DD」「QSFP28」
- 25Gbps×4で100Gbps、光Ethernet第2世代「IEEE 802.3bm-2015」の各規格が標準化
- 50Gbpsに対応する5つの規格「50GBASE-KR/CR/SR/FR/LR」
- 「25G PAM-4」で100/200Gbpsを実現する7規格と、SMF1対で100Gbpsの「100G PAM-4」
- 25Gbps×8の「200GBASE-R」では4つのモジュール規格が乱立
- 最大400Gbpsを実現する2つのモジュール規格「OSFP」「CDFP」
- 1レーン50Gbpsで最大400Gbpsを実現する「P802.3bs」
- レーンあたり50/25Gbpsで400Gbpsを実現する「IEEE 802.3bs」の各規格
- 53.125Gの「PAM-4」を4対束ねた「PSM4」で最大400Gbps「400GBASE-DR4」
- アクセス回線向けの光ファイバー規格「IEEE P802.3cp/P802.3cs/P802.3ct」
- 位相変調した光信号を復号するコヒーレント光、波長分離多重の「DWDM」併用の「400ZR」
- 「100GBASE-ZR」を残し「IEEE P802.3ct」から「400GBASE-ZR」を分割
- 1対のMMFで100Gbpsを目指す「IEEE P802.3db」
- IEEE標準ではない光Ethernetの各規格、100G/400G/800Gですでに登場
- SWDMを用いた100/40Gbpsの「100G-SWDM4-MSA」と「40G-SWDM4-MSA」
- 「100GBASE-LR4」と「100GBASE-SR10」の間を埋める最大100Gbpsの「100G PSM4 MSA」
- SMF1本で25Gbps×4の100Gbpsを実現、到達距離2kmの「CWDM4 MSA」、40kmの「4WDM MSA」
- 100Gbpsで10/20/40kmの到達距離を狙った「100G 4WDM-10/20/40」
- 「100G PAM-4」で最大100Gbps、到達距離2kmの「100G-FR」と10kmの「100G-LR」
- SMF1対で100Gbpsの「100G LR1-20/ER1-30/ER1-40」、4本束ねて400Gbpsの「400G-FR」
- 最大400Gbps、到達距離2kmの「400G-FR4」と到達距離10kmの「400G-LR4-10」
- 最大100Gbpsで250kmを伝送可能な「MSA-100GLH」、巨大なサイズと消費電力で採用進まず
- 最大400Gbps、到達距離10kmの「CWDM8」、8×50G NRZの採用で低コストと低電力を実現
- 400Gbpsで到達距離2kmと10kmの「CWDM8 2km/10km」、低OH濃度SMFの採用で損失を抑える
- 400Gを光ファイバー1本で双方向通信する「400G BiDi MSA」、「400GBASE-SR8」を先行規格化
- 50Gが8対で400Gbpsの「400G-BD4.2」、消費電力増や高コストが課題に
- IEEE「400GBASE-SR4.2」は先行した「400G-BD4.2」と相互互換性を確保
- 高コストで普及に至らない「400GBASE-SR8」と、さらに高価な「400GBASE-SR4.2」
- 最大800Gbpsの100G PAM-4 PHY、ベンダー各社がサポート、受発光素子普及のカギは940nm?
- ETCがリリースした「800G Ethernet」の仕様は400Gを2つ並べる構造に
- 「QSFP-DD MSA」を発展させる「QSFP-DD800」、供給電源など今後に課題も
- 最大800Gbpsを目指す「800G Pluggable MSA」、3つの変調方式を採用
- 高帯域と低レイテンシーの一方で到達距離は限界へ、800Gへ想定される4つのシナリオ
- PSM4とCWDM4で1.6Tb/secを実現し、到達距離も延長「800G Pluggable MSA」
- 800G Ethernetに関連、OSFP MSAと2つのIEEEの動向
- 800Gの本命「IEEE 802.3 Beyond 400 Gb/s Ethernet」、100/200Gの信号で800G/1.6Tを実現
- 200G×8の1.6Tbps、×4の800Gbpsでの転送実現は2023年?
- 100Gが8対の「800GBASE-VR8/SR8」が仕様に追加、BERの目標値決定にはさらなる情報が必須
- 200GにおけるElectricalインターフェースを検討、通信に必要な消費電力は半減へ
- Beyond 400 Gb/s EthernetにおけるOTNサポートは4月の投票でいったん否決
- 1.0E10年のMTTFPAを維持、1.0E-14のBER Targetには高コストなFECが必要に
- FacebookやMicrosoftのDC事業者が先行、Beyond 400G Study Groupは800Gと同時に1.6Tの標準化を主張
- 200Gの光伝送は技術的に実現可能、一定の損失を前提にすれば現実的なPAM6の検討も?
- 800Gb/sと同時に1.6Tb/s Ethernet仕様も策定へ 200Gb/sレーンの製品出荷は2027年頃?
- 到達距離10kmの「800G-LR」に向け、Coherent-Lite方式を検討を求めるGoogle
- 200Gのシリアルと800GのWDM、どっちが先に100万ポート出荷を実現できるのか?
- 400・200Gb/sのサポートなど、2021年7月ミーティングへの投票は可決が多数
- 800Gで10kmの到達距離を実現する「800Gbps/10km Reach SMF」の4案
- 800Gで到達距離40kmを目指す「ER8」、MZMを採用し、400G向けDSPを2つ並列
- 銅配線での8レーン800Gが規格化、レーンあたり200Gも実現へ?
- 「IEEE P802.3df」のPAR分割に向けた動き、作業効率化の一方で異論も?
- 800G実現に向け、PDM-32QAMで96G/192GBaudとPDM-16QAMで120G/240GBaudをリストアップ
- これまでの光Ethernet規格振り返りと、「40GBASE-FR」をめぐる議論の経緯
- 「IEEE 802.3cn-2019」は若干のパラメーター変更のみ、「100GBASE-AR/400GBASE-AR」は現時点で幻に
- 「100GBASE-AR」と「400GBASE-AR」は「IEEE P802.3cw」に、PMDの仕様を定義して2023年中ごろに標準化?
- 到達距離500mの「CWDM4-OCP-100G」、低価格な100G Ethernet規格として広く流通し始める
25G×4で100Gbpsに対応した「CFP2」、消費電力は最大18W、幅は半分まで小型化
前回の後半で解説した「CAUI-4」を前提とした、という言い方もやや変だが、そのターゲットとして想定されていたのが「CFP2」である。
CFPは「CAUI-10」への対応がデフォルトとなっており、もちろんCAUI-10より遅い信号でも対応は可能だ。その仕様には「さまざまなアプリケーションで利用可能だが、公称信号レートは10Gbit/s per laneとする」とあるが、これはCFPモジュールの仕様というより、モジュール内部の仕様で対応すべしというものだった。
だから、実際には市場では全く見かけない(おそらく存在しないと思う)ものの、10GBASE-SR対応のCFPモジュールを作ることも、技術的には可能という、ある意味で懐の広い(というか、あまり厳密ではない)仕様だった。
これがCFP2ではもう少し厳密になるとともに、より使いやすくなった。前者については、10Gと25Gにきちんと対応したかたちだ。これで100Gでもx4での接続に対応したことになる。必要なら200Gまでを見据えた仕様となっていて、そういう意味では「IEEE 802.3bm」の次まで利用できるものとなっている。
一方の使いやすさについては大幅に小型化がなされた。そのサイズは以下の通りだが、体積はCFPのほぼ3分の1にまで小さくなっている。
- 幅:82mm→41.5mm
- 奥行:144.8mm→107.5mm
- 高さ:13.6mm→12.5mm
特に、幅がほぼ半分ということは、スイッチなどで同じ幅にCFPの倍の数を実装できるという意味となり、より多数のポートを必要とする場合などには大変喜ばれることとなった。
コネクタは、CFPからやや減って104ピンとなった。CAUI-4/CAUI-8の場合、下側は制御信号だけでデータは上側を通る格好となるが、CAUI-10の場合には下側も含め両端にデータが通るかたちとなる。
ちなみにCFP2の場合、消費電力のClassがClass 1~6まで設定されており、Class 1で3W、以下Class 2で6W、Class 3で9Wと3Wずつ増えていき、Class 16では18Wとなる。
初代CFPでは、Class 1~4で8Wずつ増え、最大で32Wだったから、半減とは言わないまでもかなり消費電力を抑えなければならなくなった。ただ、ポート密度を増やせば、消費電力も相応に減らさないと排熱がシャレにならなくなるので、最大18Wという制限は妥当と言えるものだろう。なお、制御信号そのものは3.3VのLVCMOSレベルだが、データ信号は1.2VのLVCMOSで、これはCFPと同じである。
このCFP2は、CFP MSAによって2013年に標準化された。なぜかこの標準化のリリースがCFM MSAのサイトでは公開されていないが、住友電工が2013年3月19日付でリリースを出している。
そのメンバー企業を見ると、CFPのときにFinisar、Opnext、住友電工とその子会社のExcelight Communications、後追いでAvago Technologiesだったものが、CFP2ではAvago Technologies、Finisar Corporation、富士通オプティカルコンポーネンツ、Oclaroと住友電工となっている。
もっとも、Oclaroは2012年7月にOpnextを買収しており、またExcelight Communicationsは2009年にSumitomo Electric Device Innovations U.S.A.へ商号を変更し、ある意味では住友電工に一体化していたので、要するに富士通が新たに加わっただけとも言える。
その富士通オプティカルコンポーネンツは、2014年9月に世界初となる100GBASE-ER4のCFP2モジュールを発売している。意外に遅かったな、という印象を受けるが、CFP→CFP2ではトランシーバーモジュールの小型化/省電力化が必須であり、これはしばしばプロセスの変更(例えば40nmで作っていたものを28nmまたは20nmで作り直す)を伴うため、その分遅れるのは致し方なかったのかもしれない。
CPFから幅4分の1、体積9分の1へ小型化した「CFP4」、コネクタは56ピン、200Gには非対応に
ついでなので、「CFP4」についても説明しておこう。CFP4もCFP2と同じく、40/100G Ethernet向けに開発されたモジュール規格となる。そのサイズ(幅×奥行×高さ)は21.5×92×9.5mmと、CFP2比で幅半分、体積で3分の1近くまで小型化された。CFPとの比較では幅4分の1、体積では9分の1近くとなるわけだ。
さすがにここまで小さいと、いろいろ制約が生じてくる。具体的に言えば、CFP2でサポートされていたCAUI-10やCAUI-8のサポートが完全に廃され、CAUI-4のみとなった。ちなみに消費電力はさらに半減しており、Class 1で1.5W、以下1.5W刻みでClass 6ですら9Wである。それでもSFP+の最大1.5Wに比べればはるかに多いのだが、転送速度を考えるとむしろ厳しくなっているとも言える。
コネクタは56ピンで、上側が信号、下側が制御信号と電源となっている。上側には送信ピンを逆順に並べ替えた「ALT1」という配置が用意されているが、これは後述する「QSFP」との互換性を保つためのオプション扱いである。QSFPは2014年には既にリリースされていたので、これとの互換性を無視することはできなかったのだろう。
幅が短く、また消費電力も少なくなっているので、より高密度の実装も可能となっている。こう言っては何だが、このCFP4がもっと早く出ていれば、あるいはQSPF/QSFP+とかと伍するマーケットシェアを取れたかもしれないが、あいにくここまで割り切るのに少し時間が掛かり過ぎた感がある。
CFP4に対応したモジュールがないわけではなが、例えばFSの100GBASE-SR4 CFP4モジュールは、既にオンラインでの取り扱いがなくなっているという具合に、シェアをあまり取ることはできなかった。ちなみにCFP MSAでは、これに続く「CFP8」の仕様を策定しているが、これは400G Ethernetに対応した規格なので、また後で触れることとしたい。
25GBASE-CRに対応する「SFP28」など、SFP系列の各モジュール
さて、これとは違うモジュールの流れが、SFP系列である。本連載の『10Mbpsの「MII」から1000MbpsのCisco独自規格「SGMII」まで』や『10Gbpsのシリアル通信規格「XFP」、これを置き換えた「SFP+」』でも記したように、もともとSFPが100Mbpsと1Gbps、SFP+が10Gbpsを通す仕様になっていた。これを拡張したものが、以下の各規格である。
規格名 | 速度 |
SFP28 | 25Gbps |
QSFP+ | 40Gbps |
SFP56 | 50Gbps |
SFP-DD | 100Gbps |
QSFP28 | 100Gbps |
まず「SFP28」であるが、これは「IEEE 802.3by-2016」という後追いの仕様で策定された25GBASE-CRなどに対応したものだ。要するに、QFP+の信号を10Gbpsから25Gbpsへと高速化した仕組みである。
ただし、後方互換性を保っており、10Gbpsでの利用も可能だった。モジュール規格そのものはSNIA(Storage Networking Industry Association)の「SFF-8402」において"SFP+ 1X 28 Gb/s Pluggable Transceiver Solution (SFP28)"として2014年3月に標準化が行われており(最新版は2014年9月のRevision 1.1)、これを利用したモジュールが、IEEE 802.3byの仕様策定を待たずに出荷されている。
ちなみにSFF-8402を見ると、16GbpsのSFP16という仕様も含まれているのだが、これを利用したモジュールを筆者は見たことがない。
【お詫びと訂正 8月3日 19:12】
記事初出時、表中の規格名の一部に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。
誤:SFP56
正:QSFP56
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