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25Gbps×4で100Gbps、光Ethernet第2世代「IEEE 802.3bm-2015」の各規格が標準化
【光Ethernetの歴史と発展】
2020年8月12日 06:00
Ethernetというか10GBASE-Tに関しては、2017年から【10GBASE-T、ついに普及?】と題し、全11回と番外編2回をお届けした。だが、ツイストペアによる銅配線のEthernetは10GBASE-Tまでで、25/40GBASE-Tはまだまだ実用化には至っていない。
【アクセス回線10Gbpsへの道】とも一部は被るかもしれないが、ここでは光ファイバーを利用する“光Ethernet”を紹介していこう。
「光Ethernetの歴史と発展」記事一覧
- 10BASE-Tと同じ仕組みの光ファイバーで最大2kmを実現「10BASE-F」
- 屈折率で伝送距離が異なる「光ファイバー」の材質と構造
- 最大100Mbpsながら伝送距離の異なる「100BASE-FX」「100BASE-SX」などの各規格
- 実効1Gbpsに到達した「1000BASE-SX/1000BASE-LX/1000BASE-CX」
- 拠点間接続に用いる「1000BASE-X」の各種関連規格
- 低価格な光ファイバーで1Gbpsを実現する車載向けがメインの「GEPOF」
- 10Mbpsの「MII」から1000MbpsのCisco独自規格「SGMII」まで
- 1波長で10Gbps、光源と到達距離の異なる「10GBASE-W/R」の各規格
- 10Gbpsのフレッツ光で使われる「10GBASE-PR」、既存ケーブルを流用できる「10GBASE-LRM」
- XENPAK→X2→XFP→SFP+と移った10GBASEのトランシーバーモジュール規格
- 10Gbpsのシリアル通信規格「XFP」、これを置き換えた「SFP+」
- 10GbEの次は40GbEと100GbE、HSSGによってともに標準化の開始へ
- 最大100Gbps、「IEEE 802.3ba」として標準化された8つの規格
- IEEE 802.3baで定義されたInterconnectとトランシーバー規格
- 100Gbpsで100mを目指す「P802.3bm」、IEEE 802.3baをブラッシュアップ
- 最大100Gbps・100mの「100GBASE-SR4」と40Gbps・40kmの「40GBASE-ER4」
- CFPのサイズ半分、最大200Gbpsの「CFP2」、さらに小型化された「CFP4」
- 40Gbpsの「QSPF+」、50Gbpsの「QSFP56」、112Gbpsの「SFP-DD」「QSFP28」
- 25Gbps×4で100Gbps、光Ethernet第2世代「IEEE 802.3bm-2015」の各規格が標準化
- 50Gbpsに対応する5つの規格「50GBASE-KR/CR/SR/FR/LR」
- 「25G PAM-4」で100/200Gbpsを実現する7規格と、SMF1対で100Gbpsの「100G PAM-4」
- 25Gbps×8の「200GBASE-R」では4つのモジュール規格が乱立
- 最大400Gbpsを実現する2つのモジュール規格「OSFP」「CDFP」
- 1レーン50Gbpsで最大400Gbpsを実現する「P802.3bs」
- レーンあたり50/25Gbpsで400Gbpsを実現する「IEEE 802.3bs」の各規格
- 53.125Gの「PAM-4」を4対束ねた「PSM4」で最大400Gbps「400GBASE-DR4」
- アクセス回線向けの光ファイバー規格「IEEE P802.3cp/P802.3cs/P802.3ct」
- 位相変調した光信号を復号するコヒーレント光、波長分離多重の「DWDM」併用の「400ZR」
- 「100GBASE-ZR」を残し「IEEE P802.3ct」から「400GBASE-ZR」を分割
- 1対のMMFで100Gbpsを目指す「IEEE P802.3db」
- IEEE標準ではない光Ethernetの各規格、100G/400G/800Gですでに登場
- SWDMを用いた100/40Gbpsの「100G-SWDM4-MSA」と「40G-SWDM4-MSA」
- 「100GBASE-LR4」と「100GBASE-SR10」の間を埋める最大100Gbpsの「100G PSM4 MSA」
- SMF1本で25Gbps×4の100Gbpsを実現、到達距離2kmの「CWDM4 MSA」、40kmの「4WDM MSA」
- 100Gbpsで10/20/40kmの到達距離を狙った「100G 4WDM-10/20/40」
- 「100G PAM-4」で最大100Gbps、到達距離2kmの「100G-FR」と10kmの「100G-LR」
- SMF1対で100Gbpsの「100G LR1-20/ER1-30/ER1-40」、4本束ねて400Gbpsの「400G-FR」
- 最大400Gbps、到達距離2kmの「400G-FR4」と到達距離10kmの「400G-LR4-10」
- 最大100Gbpsで250kmを伝送可能な「MSA-100GLH」、巨大なサイズと消費電力で採用進まず
- 最大400Gbps、到達距離10kmの「CWDM8」、8×50G NRZの採用で低コストと低電力を実現
- 400Gbpsで到達距離2kmと10kmの「CWDM8 2km/10km」、低OH濃度SMFの採用で損失を抑える
- 400Gを光ファイバー1本で双方向通信する「400G BiDi MSA」、「400GBASE-SR8」を先行規格化
- 50Gが8対で400Gbpsの「400G-BD4.2」、消費電力増や高コストが課題に
- IEEE「400GBASE-SR4.2」は先行した「400G-BD4.2」と相互互換性を確保
- 高コストで普及に至らない「400GBASE-SR8」と、さらに高価な「400GBASE-SR4.2」
- 最大800Gbpsの100G PAM-4 PHY、ベンダー各社がサポート、受発光素子普及のカギは940nm?
- ETCがリリースした「800G Ethernet」の仕様は400Gを2つ並べる構造に
- 「QSFP-DD MSA」を発展させる「QSFP-DD800」、供給電源など今後に課題も
- 最大800Gbpsを目指す「800G Pluggable MSA」、3つの変調方式を採用
- 高帯域と低レイテンシーの一方で到達距離は限界へ、800Gへ想定される4つのシナリオ
- PSM4とCWDM4で1.6Tb/secを実現し、到達距離も延長「800G Pluggable MSA」
- 800G Ethernetに関連、OSFP MSAと2つのIEEEの動向
- 800Gの本命「IEEE 802.3 Beyond 400 Gb/s Ethernet」、100/200Gの信号で800G/1.6Tを実現
- 200G×8の1.6Tbps、×4の800Gbpsでの転送実現は2023年?
- 100Gが8対の「800GBASE-VR8/SR8」が仕様に追加、BERの目標値決定にはさらなる情報が必須
- 200GにおけるElectricalインターフェースを検討、通信に必要な消費電力は半減へ
- Beyond 400 Gb/s EthernetにおけるOTNサポートは4月の投票でいったん否決
- 1.0E10年のMTTFPAを維持、1.0E-14のBER Targetには高コストなFECが必要に
- FacebookやMicrosoftのDC事業者が先行、Beyond 400G Study Groupは800Gと同時に1.6Tの標準化を主張
- 200Gの光伝送は技術的に実現可能、一定の損失を前提にすれば現実的なPAM6の検討も?
- 800Gb/sと同時に1.6Tb/s Ethernet仕様も策定へ 200Gb/sレーンの製品出荷は2027年頃?
- 到達距離10kmの「800G-LR」に向け、Coherent-Lite方式を検討を求めるGoogle
- 200Gのシリアルと800GのWDM、どっちが先に100万ポート出荷を実現できるのか?
- 400・200Gb/sのサポートなど、2021年7月ミーティングへの投票は可決が多数
- 800Gで10kmの到達距離を実現する「800Gbps/10km Reach SMF」の4案
- 800Gで到達距離40kmを目指す「ER8」、MZMを採用し、400G向けDSPを2つ並列
- 銅配線での8レーン800Gが規格化、レーンあたり200Gも実現へ?
- 「IEEE P802.3df」のPAR分割に向けた動き、作業効率化の一方で異論も?
- 800G実現に向け、PDM-32QAMで96G/192GBaudとPDM-16QAMで120G/240GBaudをリストアップ
- これまでの光Ethernet規格振り返りと、「40GBASE-FR」をめぐる議論の経緯
- 「IEEE 802.3cn-2019」は若干のパラメーター変更のみ、「100GBASE-AR/400GBASE-AR」は現時点で幻に
- 「100GBASE-AR」と「400GBASE-AR」は「IEEE P802.3cw」に、PMDの仕様を定義して2023年中ごろに標準化?
- 到達距離500mの「CWDM4-OCP-100G」、低価格な100G Ethernet規格として広く流通し始める
第1世代は10Gbps×10、第2世代は25Gbps×4、第3世代は50Gbps×2の構成で100Gbpsを実現
前回、「QSFP28」まで説明が終わったところで、規格の話に戻りたい。
光Ethernetに関しては、100Gbpsが3世代存在する。第1世代が「IEEE 802.3ba-2010」で、これは10Gbps×10だ。第2世代が「IEEE 802.3bm-2015」で25Gbps×4、これに続く第3世代の「IEEE 802.3cd-2018」では、50Gbps×2の構成であり、「100GBASE-SR2/100GBASE-DR」が追加されている。
100Gbps×1には、どうやってもならなかった(実際は100Gbps×1も現在は可能なのだが……)あたりについては、少し説明が必要だろう。
IEEEとしては、もちろん100Gbpsの標準化で満足しているわけではなかった。そもそも実質は、「100GBASE-SR10」では10Gbps、「100GBASE-SR4」でも25Gbpsでしかないわけで、1対あたりの速度をどうやって高めるかが、それぞれの規格策定中も模索され続けていた。
もう1つはトータルとしての帯域向上である。例えばEthernet Allianceは、以下の2014年ロードマップにおいて、2017年には400GbEが実用化されるとの見通しを示していた。
実際、初の400Gbpsの規格だった「400GBASE-SR16」の標準化は2017年末に完了したので、ぎりぎりロードマップは守られた。ちなみに、2018年におけるロードマップは以下で、派生規格がいきなり湧くことになった。
具体的は派生規格は以下のようなものだ。
IEEE 802.3bs | 200Gbps | 200GBASE-DR4 |
200GBASE-FR4 | ||
200GBASE-LR4 | ||
200GAUI-4 | ||
200GAUI-8 | ||
400Gbps | 400GBASE-SR16 | |
400GBASE-DR4 | ||
400GBASE-FR8 | ||
400GBASE-LR8 | ||
400GAUI-8 | ||
400GAUI-16 | ||
IEEE 802.3by | 25Gbps | 25GBASE-CR |
25GBASE-CR-S | ||
25GBASE-KR | ||
25GBASE-KR-S | ||
25GBASE-SR | ||
IEEE 802.3cc(IEEE 802.3by) | 25Gbps | 25GBASE-LR |
25GBASE-ER | ||
IEEE 802.3cd | 50Gbps | 50GBASE-CR |
50GBASE-KR | ||
50GBASE-SR | ||
50GBASE-LR | ||
50GBASE-FR | ||
IEEE 802.3cm | 400Gbps | 400GBASE-SR8 |
400GBASE-SR4.2 | ||
IEEE 802.3cn | 50Gbps | 50GBASE-ER |
200Gbps | 200GBASE-ER | |
400Gbps | 400GBASE-ER |
メインストリーム(?)は100Gbpsから200/400Gbpsまでとなるが、まずは25/50Gbps Ethernetについて、今回は紹介しよう。
25G Ethernet Consortium結成、「P802.3by」で「25GBASE-CR/KR」として標準化
2014年7月、25G Ethernet Consortiumという業界標準団体が結成される。メンバーはArista、Broadcom、Mellanox Technologies、Google、Microsoftの5社だ。前から3社はともかく、ネットワークの提供側ではなく利用者側であるGoogleとMicrosoftが加わっているのが目を引く。
利用側から見れば、いつまでも10Gbpsベースのままでは埒が明かないし、かといって100Gbpsはなかなか出てこないため、自分たちの欲しいネットワーク規格を自ら策定しようということだと思われる。この25G Ethernet Consortiumは、その後で素早くSpecificationもリリースする。
ぶっちゃけると、この25G Ethernetは100GBASE-SR4を1レーン、つまり25Gbps分だけ利用する規格なので、ほぼIEEE 802.3bjの策定作業が終盤を迎えていた2014年段階のドラフトをベースにすれば仕様策定は難しくなかっただろう。それもあって、2014年10月には早くもVerification IP(システム検証用のIP)がCadenceから発表されたという有様だ。
ちなみに、25G Ethernet Consortiumという名前ながら、Specificationは25Gbpsと50Gbpsの両方を包括するものとなっている。この50Gbpsの方の規格は100GBASE-SR4の半分という単純なものではない。
それもあってSpecificationもややチャレンジャブルなものであるが、IEEEと異なり、さっさとSpecificationを定められる(問題があればSpecificationをReviseすればいい)というあたり、業界標準団体のいいところだ。2017年には、もう25G/50Gモジュールを利用したPlugFestが開催されている。
ただ、25G Ethernet Consortiumにも最後まで独自仕様のままで通すつもりはなく、Consortium結成の直後からIEEEに働きかけてTask Forceを構成する。「P802.3by」としてナンバリングされたこの25G EthernetのPARは、2014年末に承認され、2015年から仕様策定作業に入った。
ただし、基本的な考え方は既にある25G PHYを単独で利用しようというもので、その意味では特に目新しい話はなかった。実際、4レーンから1レーンに減らすことで、信号のフォーマットが変わったりはしないからだ。
ちなみに上の一覧で見ると、「25GBASE-CR-S」および「25GBASE-KR-S」という、見慣れない"-S"付きの規格がある。これはRS-FECをサポート“しない”ものだ。25G Ethernetの構造は以下の通りだが、FECについては"条件次第で利用"となっている。
実際、25GBASE-CRは銅ケーブル、25GBASE-KRはバックプレーン向けとなるので、「FEC(RS-FEC)」を利用する方が一般的だとは思うが、中にはFECなしで行けるという(超短距離向けなどだろうか?)用途向けに、RS-FECのない規格も入っている。逆にいえばその程度の違いでしかない。
そんなわけなので、こちらはあまり問題もなく、2016年3月にはDraft 3.1も出て、これをベースに標準化が完了している。
「P802.3cc」で標準化された「25GBASE-LR/ER」、1対のSMFで10/40kmの到達距離を実現
それを追いかけるように、2016年5月にTask Forceが構成されたのが「P802.3cc」であり、「25GBASE-LR」および「25GBASE-ER」の標準化が行われた。こちらは「100GBASE-LR4」および「100GBASE-ER4」を1レーンのみで運用するという構成だ。
特性などは100GBASE-LR4および100GBASE-ER4と変わらず、単に1対というだけだ。これは先の25GBASE-SRも同じだ。どちらも1本のSMFで接続され、25GBASE-LRが10km、25GBASE-ERが40kmという到達距離となる。
ただ、25GBASE-SRに対するニーズはまだ分かるが、この到達距離であれば一気に100GBASE-LR4/ER4へ行くのでは? という気はしなくもない。ただ、説明によれば「コアネットワークは100Gbpsで運用されるが、そこから分岐する先は、100Gbpsでなくて構わないにせよ10Gbpsよりは高速なことが求められており、25Gbpsへの移行は自然な流れ」としている。
そしてメーカーとしても商機を見出しているので、標準化を進めて欲しいということだろう。IEEE 802.3byよりも、検討すべき事象がさらに少ない(銅配線やバックプレーンに関する議論をしなくて済んだ点も大きい)と思われることもあってか、2017年末に「IEEE 802.3cc」として標準化が完了している。
さて、25G Ethernetはそんなわけで比較的スムーズに終わったわけだが、こちらは技術的に言えば第2世代にあたる、レーンあたり25Gbpsだったからという話でもある。これに対し、続く50G Ethernetは第3世代に属するもので、技術的な面での飛躍が必要となったために、そう簡単には進まなかった。
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