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銅配線での8レーン800Gが規格化、レーンあたり200Gも実現へ?
【光Ethernetの歴史と発展】
2021年11月2日 06:00
Ethernetというか10GBASE-Tに関しては、2017年から【10GBASE-T、ついに普及?】と題し、全11回と番外編2回をお届けした。だが、ツイストペアによる銅配線のEthernetは10GBASE-Tまでで、25/64GBASE-Tはまだまだ実用化には至っていない。
【アクセス回線10Gbpsへの道】とも一部は被るかもしれないが、ここでは光ファイバーを利用する“光Ethernet”を紹介していこう。
「光Ethernetの歴史と発展」記事一覧
- 10BASE-Tと同じ仕組みの光ファイバーで最大2kmを実現「10BASE-F」
- 屈折率で伝送距離が異なる「光ファイバー」の材質と構造
- 最大100Mbpsながら伝送距離の異なる「100BASE-FX」「100BASE-SX」などの各規格
- 実効1Gbpsに到達した「1000BASE-SX/1000BASE-LX/1000BASE-CX」
- 拠点間接続に用いる「1000BASE-X」の各種関連規格
- 低価格な光ファイバーで1Gbpsを実現する車載向けがメインの「GEPOF」
- 10Mbpsの「MII」から1000MbpsのCisco独自規格「SGMII」まで
- 1波長で10Gbps、光源と到達距離の異なる「10GBASE-W/R」の各規格
- 10Gbpsのフレッツ光で使われる「10GBASE-PR」、既存ケーブルを流用できる「10GBASE-LRM」
- XENPAK→X2→XFP→SFP+と移った10GBASEのトランシーバーモジュール規格
- 10Gbpsのシリアル通信規格「XFP」、これを置き換えた「SFP+」
- 10GbEの次は40GbEと100GbE、HSSGによってともに標準化の開始へ
- 最大100Gbps、「IEEE 802.3ba」として標準化された8つの規格
- IEEE 802.3baで定義されたInterconnectとトランシーバー規格
- 100Gbpsで100mを目指す「P802.3bm」、IEEE 802.3baをブラッシュアップ
- 最大100Gbps・100mの「100GBASE-SR4」と40Gbps・40kmの「40GBASE-ER4」
- CFPのサイズ半分、最大200Gbpsの「CFP2」、さらに小型化された「CFP4」
- 40Gbpsの「QSPF+」、50Gbpsの「QSFP56」、112Gbpsの「SFP-DD」「QSFP28」
- 25Gbps×4で100Gbps、光Ethernet第2世代「IEEE 802.3bm-2015」の各規格が標準化
- 50Gbpsに対応する5つの規格「50GBASE-KR/CR/SR/FR/LR」
- 「25G PAM-4」で100/200Gbpsを実現する7規格と、SMF1対で100Gbpsの「100G PAM-4」
- 25Gbps×8の「200GBASE-R」では4つのモジュール規格が乱立
- 最大400Gbpsを実現する2つのモジュール規格「OSFP」「CDFP」
- 1レーン50Gbpsで最大400Gbpsを実現する「P802.3bs」
- レーンあたり50/25Gbpsで400Gbpsを実現する「IEEE 802.3bs」の各規格
- 53.125Gの「PAM-4」を4対束ねた「PSM4」で最大400Gbps「400GBASE-DR4」
- アクセス回線向けの光ファイバー規格「IEEE P802.3cp/P802.3cs/P802.3ct」
- 位相変調した光信号を復号するコヒーレント光、波長分離多重の「DWDM」併用の「400ZR」
- 「100GBASE-ZR」を残し「IEEE P802.3ct」から「400GBASE-ZR」を分割
- 1対のMMFで100Gbpsを目指す「IEEE P802.3db」
- IEEE標準ではない光Ethernetの各規格、100G/400G/800Gですでに登場
- SWDMを用いた100/40Gbpsの「100G-SWDM4-MSA」と「40G-SWDM4-MSA」
- 「100GBASE-LR4」と「100GBASE-SR10」の間を埋める最大100Gbpsの「100G PSM4 MSA」
- SMF1本で25Gbps×4の100Gbpsを実現、到達距離2kmの「CWDM4 MSA」、40kmの「4WDM MSA」
- 100Gbpsで10/20/40kmの到達距離を狙った「100G 4WDM-10/20/40」
- 「100G PAM-4」で最大100Gbps、到達距離2kmの「100G-FR」と10kmの「100G-LR」
- SMF1対で100Gbpsの「100G LR1-20/ER1-30/ER1-40」、4本束ねて400Gbpsの「400G-FR」
- 最大400Gbps、到達距離2kmの「400G-FR4」と到達距離10kmの「400G-LR4-10」
- 最大100Gbpsで250kmを伝送可能な「MSA-100GLH」、巨大なサイズと消費電力で採用進まず
- 最大400Gbps、到達距離10kmの「CWDM8」、8×50G NRZの採用で低コストと低電力を実現
- 400Gbpsで到達距離2kmと10kmの「CWDM8 2km/10km」、低OH濃度SMFの採用で損失を抑える
- 400Gを光ファイバー1本で双方向通信する「400G BiDi MSA」、「400GBASE-SR8」を先行規格化
- 50Gが8対で400Gbpsの「400G-BD4.2」、消費電力増や高コストが課題に
- IEEE「400GBASE-SR4.2」は先行した「400G-BD4.2」と相互互換性を確保
- 高コストで普及に至らない「400GBASE-SR8」と、さらに高価な「400GBASE-SR4.2」
- 最大800Gbpsの100G PAM-4 PHY、ベンダー各社がサポート、受発光素子普及のカギは940nm?
- ETCがリリースした「800G Ethernet」の仕様は400Gを2つ並べる構造に
- 「QSFP-DD MSA」を発展させる「QSFP-DD800」、供給電源など今後に課題も
- 最大800Gbpsを目指す「800G Pluggable MSA」、3つの変調方式を採用
- 高帯域と低レイテンシーの一方で到達距離は限界へ、800Gへ想定される4つのシナリオ
- PSM4とCWDM4で1.6Tb/secを実現し、到達距離も延長「800G Pluggable MSA」
- 800G Ethernetに関連、OSFP MSAと2つのIEEEの動向
- 800Gの本命「IEEE 802.3 Beyond 400 Gb/s Ethernet」、100/200Gの信号で800G/1.6Tを実現
- 200G×8の1.6Tbps、×4の800Gbpsでの転送実現は2023年?
- 100Gが8対の「800GBASE-VR8/SR8」が仕様に追加、BERの目標値決定にはさらなる情報が必須
- 200GにおけるElectricalインターフェースを検討、通信に必要な消費電力は半減へ
- Beyond 400 Gb/s EthernetにおけるOTNサポートは4月の投票でいったん否決
- 1.0E10年のMTTFPAを維持、1.0E-14のBER Targetには高コストなFECが必要に
- FacebookやMicrosoftのDC事業者が先行、Beyond 400G Study Groupは800Gと同時に1.6Tの標準化を主張
- 200Gの光伝送は技術的に実現可能、一定の損失を前提にすれば現実的なPAM6の検討も?
- 800Gb/sと同時に1.6Tb/s Ethernet仕様も策定へ 200Gb/sレーンの製品出荷は2027年頃?
- 到達距離10kmの「800G-LR」に向け、Coherent-Lite方式を検討を求めるGoogle
- 200Gのシリアルと800GのWDM、どっちが先に100万ポート出荷を実現できるのか?
- 400・200Gb/sのサポートなど、2021年7月ミーティングへの投票は可決が多数
- 800Gで10kmの到達距離を実現する「800Gbps/10km Reach SMF」の4案
- 800Gで到達距離40kmを目指す「ER8」、MZMを採用し、400G向けDSPを2つ並列
- 銅配線での8レーン800Gが規格化、レーンあたり200Gも実現へ?
- 「IEEE P802.3df」のPAR分割に向けた動き、作業効率化の一方で異論も?
- 800G実現に向け、PDM-32QAMで96G/192GBaudとPDM-16QAMで120G/240GBaudをリストアップ
- これまでの光Ethernet規格振り返りと、「40GBASE-FR」をめぐる議論の経緯
- 「IEEE 802.3cn-2019」は若干のパラメーター変更のみ、「100GBASE-AR/400GBASE-AR」は現時点で幻に
- 「100GBASE-AR」と「400GBASE-AR」は「IEEE P802.3cw」に、PMDの仕様を定義して2023年中ごろに標準化?
- 到達距離500mの「CWDM4-OCP-100G」、低価格な100G Ethernet規格として広く流通し始める
「100GBASE-KR1/CR1」をベースに、銅配線で8レーン800Gを規格化
光Ethernetとは直接無関係ではあるが、8月のミーティングでは銅配線に関しても2つほどプレゼンテーションがあったので、まとめて説明しておきたい。
まず1つは、AmphenolのSam Kocsis氏による"Consensus Support for 800GbE over 8-Lanes based on 100GEL"。見て分かる通り、銅配線を利用した8レーンで800Gの規格だ。
まず、レーンあたり100Gの銅配線規格では、「IEEE P802.3ck Task Force」で現在作業中(現状はDraft 2.2の段階。予定では2022年7月に標準化完了)である「100GBASE-KR1/CR1」と、これを束ねた「200GBASE-KR2/CR2」、「400GBASE-KR4/CR4」が標準化に向けて進んでいるとする。
100Gの100GBASE-KR1/CR1が技術的なベースであり、これを2対にすると200G、4対で400Gとなるわけだが、QSFP+などでは8レーンの信号は通せないということから「IEEE P802.3ck」は400G止まりであり、それ以上の審議はなされていない。
ただ、実際にはOSFPやQSFP-DD800を利用すれば8レーンの信号を扱うことは可能だし、業界では「400GBASE-CR8/KR8」が広く普及していることも考えれば、8レーンの標準規格には意味がある、としている。
実際、例えばArista Networkの"Transceivers & Cables"を見てみると、下の方に「400G Copper OSFP」という製品があることが分かる。
こうした動向を踏まえると、既に8レーンのモジュールは市場で受け入れ可能という判断だろう。
しかも互換性に関しては、既に400GまではIEEE P802.3ckで標準化予定になっている。これを2本束ねれば、800Gとしても2×400Gとしても利用できる、とする。
以上を前提に、Study GroupにおいてはObjectiveに800GのCR/KRを定義すべきだ、というのが、このプレゼンテーションにおける提案となる。
【Straw Poll #1】800Gb/sで8レーンの同軸ケーブル(各2本)で最低2m以上の到達距離を持つ物理層を定義すべきか?
- Yes:70票
- No:3票
- もっと情報が必要:3票
- 棄権:12票
【Straw Poll #2】800Gb/sで8レーン、26.56GHzで挿入損失が28dB以下のバックプレーン向けの物理層を定義すべきか?
- Yes:60票
- No:1票
- もっと情報が必要:3票
- 棄権:22票
【Motion #1】800Gb/s CRの物理層を定義する(75%)
- 満場一致で承認
【Motion #2】800Gb/s KRの物理層を定義する(75%)
- 満場一致で承認
ということで、この提案はStudy GroupのObjectiveへ入れられることが決まった。
「SE PAM4」の変調方式採用で、銅配線でも200Gを実現?
次が、200Gb/sのCRについて。HuaweiのYuchun LUら4氏による"Further consideration on 200G per lane CR electrical links"というプレゼンテーション。こちらは、200Gを銅配線というか、同軸ケーブルで通すことの妥当性を簡単に確認したものだ。
この200Gの銅配線(というか、電気信号)については『200GにおけるElectricalインターフェースを検討、通信に必要な消費電力は半減へ』で紹介していて、変調方式に「SE PAM4(Single Ended PAM4)」を利用すれば可能、という話になっていた。
これに関して、実際のモデルをベースとして周波数軸での特性を見る限り、クロストークの影響はあまりない(信号と比べてクロストークノイズは50dB以上低くできる)とする。
また時間軸方向の特性についても、フィルターなしだと信号波形(左側の黒)にやや遅れてクロストーク(赤/青)が発生しているが、フィルターを通した後だと信号波形だけが通過し、クロストークが消えていることが分かる。
この結果から、PAM4のままでも200G KR/CRの目標は達成できるし、SE PAM4におけるクロストーク削減も効果的であるとした上で、レーンあたり200GのCRについてはObjectiveに含むべきだ、としている。
さてこのプレゼンテーションに関するStraw PollとMotionであるが
【Straw Poll #3】
4対の同軸ケーブルで800G/sの速度で、到達距離1mの物理層を規定すべき
- Yes:44票
- No:5票
- 棄権:10票
4対の同軸ケーブルで800G/sの速度で、到達距離1.25mの物理層を規定すべき
- Yes:22票
- No:23票
- 棄権:15票
4対の同軸ケーブルで800G/sの速度で、到達距離1.5mの物理層を規定すべき
- Yes:14票
- No:28票
- 棄権:17票
【Motion #3】
- 200Gb/sで1対の同軸ケーブルを利用した到達距離1m以上の物理層を定義
- 400Gb/sで2対の同軸ケーブルを利用した到達距離1m以上の物理層を定義
- 800Gb/sで4対の同軸ケーブルを利用した到達距離1m以上の物理層を定義
- 1.6Tb/sで8対の同軸ケーブルを利用した到達距離1m以上の物理層を定義(75%)
満場一致で承認ということになり、少なくともCRに関しては、レーンあたり200Gb/sの規格(到達距離1m)が含まれることが確定した格好だ。
Passive Cableで到達距離1.5mは厳しいが、1mだと配線に難
ちなみに、この8月のミーティングでは、"Addressing possible 800G copper cable objective"という、Active Cableを利用する場合に標準化の対象にするか否かの考察(過去には標準化対象には入っていなかったActive Cableも、そろそろ標準化の対象にすべきではないか?という問題提起)と、800GでDual-purpose port(光Ethernetと銅配線Ethernetの両対応ポート)を実装する場合に、両方のシステムソリューションを統合して考える必要があるという指摘が行われた。
また、"Broadened Consensus for a 200GEL Copper Cable Objective"は、光と銅配線で相互運用性を持たせるUniversal Port(Dual-purposeは光と銅配線の2つの動作モードを持つという意味であり相互運用性はない)の実装をどうするべきかという問題提起と、200G/400G/800G/1.6TのCRで1.5mの到達距離を実現することを提案した。
ただし、この到達距離1.5mについては、【Straw Poll #3】でほぼ否決されており、それもあって【Motion #3】としては出てきていない。
技術的には、Passive Cableで1.5mはかなり厳しいように思われるが、その一方で1mだとラックの上から下までの配線すらできない。
なぜなら、例えば50Uのラックだと高さが2.35mほどとなり、ということはTOR(Top of Rack)にスイッチを置いても、1mだと全体の3分の1くらいまでしか届かないことになる。
むしろ、高さ3分の1と3分の2あたりの位置にスイッチを置き、そこから上下に配線するという、あまり例のない配線方法を強いられることになりそうで、これはこれでどうだろう? という気もちょっとする。
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