期待のネット新技術
800Gb/sと同時に1.6Tb/s Ethernet仕様も策定へ 200Gb/sレーンの製品出荷は2027年頃?
【光Ethernetの歴史と発展】
2021年9月14日 06:00
Ethernetというか10GBASE-Tに関しては、2017年から【10GBASE-T、ついに普及?】と題し、全11回と番外編2回をお届けした。だが、ツイストペアによる銅配線のEthernetは10GBASE-Tまでで、25/40GBASE-Tはまだまだ実用化には至っていない。
【アクセス回線10Gbpsへの道】とも一部は被るかもしれないが、ここでは光ファイバーを利用する“光Ethernet”を紹介していこう。
「光Ethernetの歴史と発展」記事一覧
- 10BASE-Tと同じ仕組みの光ファイバーで最大2kmを実現「10BASE-F」
- 屈折率で伝送距離が異なる「光ファイバー」の材質と構造
- 最大100Mbpsながら伝送距離の異なる「100BASE-FX」「100BASE-SX」などの各規格
- 実効1Gbpsに到達した「1000BASE-SX/1000BASE-LX/1000BASE-CX」
- 拠点間接続に用いる「1000BASE-X」の各種関連規格
- 低価格な光ファイバーで1Gbpsを実現する車載向けがメインの「GEPOF」
- 10Mbpsの「MII」から1000MbpsのCisco独自規格「SGMII」まで
- 1波長で10Gbps、光源と到達距離の異なる「10GBASE-W/R」の各規格
- 10Gbpsのフレッツ光で使われる「10GBASE-PR」、既存ケーブルを流用できる「10GBASE-LRM」
- XENPAK→X2→XFP→SFP+と移った10GBASEのトランシーバーモジュール規格
- 10Gbpsのシリアル通信規格「XFP」、これを置き換えた「SFP+」
- 10GbEの次は40GbEと100GbE、HSSGによってともに標準化の開始へ
- 最大100Gbps、「IEEE 802.3ba」として標準化された8つの規格
- IEEE 802.3baで定義されたInterconnectとトランシーバー規格
- 100Gbpsで100mを目指す「P802.3bm」、IEEE 802.3baをブラッシュアップ
- 最大100Gbps・100mの「100GBASE-SR4」と40Gbps・40kmの「40GBASE-ER4」
- CFPのサイズ半分、最大200Gbpsの「CFP2」、さらに小型化された「CFP4」
- 40Gbpsの「QSPF+」、50Gbpsの「QSFP56」、112Gbpsの「SFP-DD」「QSFP28」
- 25Gbps×4で100Gbps、光Ethernet第2世代「IEEE 802.3bm-2015」の各規格が標準化
- 50Gbpsに対応する5つの規格「50GBASE-KR/CR/SR/FR/LR」
- 「25G PAM-4」で100/200Gbpsを実現する7規格と、SMF1対で100Gbpsの「100G PAM-4」
- 25Gbps×8の「200GBASE-R」では4つのモジュール規格が乱立
- 最大400Gbpsを実現する2つのモジュール規格「OSFP」「CDFP」
- 1レーン50Gbpsで最大400Gbpsを実現する「P802.3bs」
- レーンあたり50/25Gbpsで400Gbpsを実現する「IEEE 802.3bs」の各規格
- 53.125Gの「PAM-4」を4対束ねた「PSM4」で最大400Gbps「400GBASE-DR4」
- アクセス回線向けの光ファイバー規格「IEEE P802.3cp/P802.3cs/P802.3ct」
- 位相変調した光信号を復号するコヒーレント光、波長分離多重の「DWDM」併用の「400ZR」
- 「100GBASE-ZR」を残し「IEEE P802.3ct」から「400GBASE-ZR」を分割
- 1対のMMFで100Gbpsを目指す「IEEE P802.3db」
- IEEE標準ではない光Ethernetの各規格、100G/400G/800Gですでに登場
- SWDMを用いた100/40Gbpsの「100G-SWDM4-MSA」と「40G-SWDM4-MSA」
- 「100GBASE-LR4」と「100GBASE-SR10」の間を埋める最大100Gbpsの「100G PSM4 MSA」
- SMF1本で25Gbps×4の100Gbpsを実現、到達距離2kmの「CWDM4 MSA」、40kmの「4WDM MSA」
- 100Gbpsで10/20/40kmの到達距離を狙った「100G 4WDM-10/20/40」
- 「100G PAM-4」で最大100Gbps、到達距離2kmの「100G-FR」と10kmの「100G-LR」
- SMF1対で100Gbpsの「100G LR1-20/ER1-30/ER1-40」、4本束ねて400Gbpsの「400G-FR」
- 最大400Gbps、到達距離2kmの「400G-FR4」と到達距離10kmの「400G-LR4-10」
- 最大100Gbpsで250kmを伝送可能な「MSA-100GLH」、巨大なサイズと消費電力で採用進まず
- 最大400Gbps、到達距離10kmの「CWDM8」、8×50G NRZの採用で低コストと低電力を実現
- 400Gbpsで到達距離2kmと10kmの「CWDM8 2km/10km」、低OH濃度SMFの採用で損失を抑える
- 400Gを光ファイバー1本で双方向通信する「400G BiDi MSA」、「400GBASE-SR8」を先行規格化
- 50Gが8対で400Gbpsの「400G-BD4.2」、消費電力増や高コストが課題に
- IEEE「400GBASE-SR4.2」は先行した「400G-BD4.2」と相互互換性を確保
- 高コストで普及に至らない「400GBASE-SR8」と、さらに高価な「400GBASE-SR4.2」
- 最大800Gbpsの100G PAM-4 PHY、ベンダー各社がサポート、受発光素子普及のカギは940nm?
- ETCがリリースした「800G Ethernet」の仕様は400Gを2つ並べる構造に
- 「QSFP-DD MSA」を発展させる「QSFP-DD800」、供給電源など今後に課題も
- 最大800Gbpsを目指す「800G Pluggable MSA」、3つの変調方式を採用
- 高帯域と低レイテンシーの一方で到達距離は限界へ、800Gへ想定される4つのシナリオ
- PSM4とCWDM4で1.6Tb/secを実現し、到達距離も延長「800G Pluggable MSA」
- 800G Ethernetに関連、OSFP MSAと2つのIEEEの動向
- 800Gの本命「IEEE 802.3 Beyond 400 Gb/s Ethernet」、100/200Gの信号で800G/1.6Tを実現
- 200G×8の1.6Tbps、×4の800Gbpsでの転送実現は2023年?
- 100Gが8対の「800GBASE-VR8/SR8」が仕様に追加、BERの目標値決定にはさらなる情報が必須
- 200GにおけるElectricalインターフェースを検討、通信に必要な消費電力は半減へ
- Beyond 400 Gb/s EthernetにおけるOTNサポートは4月の投票でいったん否決
- 1.0E10年のMTTFPAを維持、1.0E-14のBER Targetには高コストなFECが必要に
- FacebookやMicrosoftのDC事業者が先行、Beyond 400G Study Groupは800Gと同時に1.6Tの標準化を主張
- 200Gの光伝送は技術的に実現可能、一定の損失を前提にすれば現実的なPAM6の検討も?
- 800Gb/sと同時に1.6Tb/s Ethernet仕様も策定へ 200Gb/sレーンの製品出荷は2027年頃?
- 到達距離10kmの「800G-LR」に向け、Coherent-Lite方式を検討を求めるGoogle
- 200Gのシリアルと800GのWDM、どっちが先に100万ポート出荷を実現できるのか?
- 400・200Gb/sのサポートなど、2021年7月ミーティングへの投票は可決が多数
- 800Gで10kmの到達距離を実現する「800Gbps/10km Reach SMF」の4案
- 800Gで到達距離40kmを目指す「ER8」、MZMを採用し、400G向けDSPを2つ並列
- 銅配線での8レーン800Gが規格化、レーンあたり200Gも実現へ?
- 「IEEE P802.3df」のPAR分割に向けた動き、作業効率化の一方で異論も?
- 800G実現に向け、PDM-32QAMで96G/192GBaudとPDM-16QAMで120G/240GBaudをリストアップ
- これまでの光Ethernet規格振り返りと、「40GBASE-FR」をめぐる議論の経緯
- 「IEEE 802.3cn-2019」は若干のパラメーター変更のみ、「100GBASE-AR/400GBASE-AR」は現時点で幻に
- 「100GBASE-AR」と「400GBASE-AR」は「IEEE P802.3cw」に、PMDの仕様を定義して2023年中ごろに標準化?
- 到達距離500mの「CWDM4-OCP-100G」、低価格な100G Ethernet規格として広く流通し始める
2021年5月のミーティングでは、ほかにも「Electrical Interface Objective Wording」や、「Considerations on beyond 100G per lane electrical objectives」といった電気層に関するいくつかの提案が行われた。
一方、Huaweiからは「LN-on-Insulator Modulator Technology for B400G Ethernet Application」として、LNoI(Lithium Niobate on Insulator:ニオブ酸リチウム利用した光導波路型デバイス)を利用することによって、200G PAM4で有望な結果が得られるという簡単な調査結果なども示された。
1.6Tb/s Ethernetの仕様策定も800Gb/s Ethernetと同時に開始へ
だが、これらはあまり大きな話ではないので、興味ある方はそれぞれのPDFをご覧いただきたい。それはともかく、2021年6月のミーティングでは、2021年5月のミーティングでの提案内容に対する投票が行われた。その結果が以下だ。
【Straw Poll #1】800Gb/sを4波長で1対のSMTで接続する(CWDM)方式に関し、2kmの最低到達距離を3kmへ延長するべきか?
- Yes:39票
- No:24票
- もっと情報が必要:20票
- 棄権:14票
【Straw Poll #2】Beyond 400Gb/s Ethernetの物理層の策定にあたってベースにすべきは
- 200Gb/s Ethernet:73票
- 400Gb/s Ethernet:61票
【Straw Poll #3】MAC層に1.6Tb/sのデータレートを加え、さらにオプションでChip-to-Chip/Chip-to-Moduleに8レーンで1.6Tb/sのオプションを加える。また、1.6Tb/s Ethernetの物理層に、8対SMFで最低500mと、8対SMFで最低2kmの仕様を追加するべきか?
- Yes:69票
- No:3票
- もっと情報が必要:11票
- 棄権:5票
【Straw Poll #4】800Gb/s Ethernetと1.6Tb/s EthernetでMAC層のパラメーターは同じにすべきか?
- Yes:42票
- No:9票
- もっと情報が必要:4票
- 棄権:13票
【Motion #1】8対のSMFを利用し、2km以上の到達距離を持つ800Gb/sの物理仕様を定める(75%)
- 賛成:67票
- 反対:8票
- 棄権:17票
- →動議は可決
【Motion #2】1.6Tb/sのMAC層の仕様を定める。このMAC層にはChip-to-Chip接続およびChip-to-Module接続用に、200Gb/s×8の構成を含める。さらに、8対のSMTで500m以上届く仕様、8対のSMTで2km以上届く1.6Tb/sの物理仕様も定める(75%)
- 賛成:69票
- 反対:2票
- 棄権:12票
- →動議は可決
【Motion #3】800Gb/s Ethernetと1.6Tb/s Ethernetで、MAC層のパラメーターを同じにする(75%)
- 賛成:36票
- 反対:13票
- 棄権:14票
- →動議は否決
とりあえず、1.6Tb/sのEthernetに関する仕様についても、策定作業を同時に開始する(最終的に同じ中で策定されるかどうかはまだ分からない)ことは決まった格好だ。
AUIインターフェースに100G×16を追加すれば、標準化が早まる?
この結果、続く7月のミーティングにおいてObjectiveが改定されたほか、前回の最後で少しだけ触れた、OSFP-XDを利用した「頭の悪いソリューション」が早速提案されたのはさすがに笑えた。提案者はVIAVI solutionsのPaul Brooks氏とHuaweiのXinyuan Wang氏である。
両氏の提案は、要するにAUIインターフェースに100G×16を追加すれば標準化が早まる、というものだ。過去の歴史で言えば、1つのEthernet規格に複数のAUIオプションが含まれるのは普通であり、例えば800Gにしても100G×8と200G×4があるのだから、1.6Tは100G×16と200G×8があってもいいはずだ、というわけだ。
そもそも、AUIに200Gレーンが実現できるのはいつになるかを、過去のCMOSロードマップから推定すると、2026~2027年になるとされている。いずれは200Gに移行するとしても、そこまでの間は100Gレーンでつないでもいいだろう、と氏は主張している。
また、100G×16の場合、早期にテストツールの着手に取り掛かれることもメリットとしている。
当たり前だが、ベンダー各社は標準化が完了すれば(可能ならその前に)、これに準拠する製品をリリースしたいと考えている。こうした先端製品の場合、企画から製品化まで2年ほどということも珍しくない。
もちろんここでASICを起こすとなると、1~2年余分に掛かるが、テスト用の機材や第1世代の製品の場合、FPGAベースでの開発は珍しくなく、これだとTape out(物理的な配置配線を含む設計完了)後、即量産に入れることになる。問題は、そのFPGAが200Gに対応するのは相当先、ということだ。
この手の先端製品という意味では、Xilinxの「Virtex/Versal」シリーズや、Intel(旧Altera)の「Stratix/Agilex」シリーズになるが、XilinxのVersal PremiumにしてもIntelのAgilexにしても、現状搭載されている汎用高速SerDesはNRZで58G(PAM4で112G、Agilexだと116G)が最大速度であり、200Gに対応する製品は存在しない。
となると、FPGAの外部に何らかの方法で1:2のGearboxを入れるしかなく、これを用意するまで開発も検証も止まることになる。ところが、先に触れたOSFP-XDが利用できるとなれば、100G×16が現実的に可能になる、というわけだ。
もちろん、16レーンのAUIとなれば、これをまたがるFECを用意する必要があるので、手直しが不要というわけではない。ただが、これに要するコストはわずかで、実現可能性は高い、としている。
そして、100Gb/sレーンが利用可能なら、少なくともAUIに関して言えば既に開発を始められる(対応したFPGAが存在する)ので、さまざまなコンポーネントやテスト機器の開発を開始できることになる。
さらに、プロセスの微細化が進行すれば2025年頃からは200Gb/sレーンへの対応が始められると予測され、2027年頃にはこれを利用した200Gb/sレーンの製品が出荷できる見通しだ。
これは、1.6T Ethernetの早期の立ち上げにつながることになり、決して悪い話ではない。ということで、1.6Tb/s EthernetのAUIに16レーン構成を追加する、というプロポーザルでプレゼンテーションを終わっているのだが、これはあくまでもAUI、つまり機器とモジュール(またはモジュール内部)のみの仕様であり、光インターフェースの方は考慮されていない。
現行の200Gb/s×8レーンという構成を前提にすれば、モジュール内部には2:1のGearboxを入れないといけないわけだ。そのGearboxの測定器はどうする? という話になりそうだ。そのあたりを含めると、言っていることは理解できるものの、やっぱり「頭の悪いソリューション」な感じは拭えない。いや、これにあわせてSMF×16とかの仕様が定まるなら、それはそれで辻褄は合うのだが。
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