期待のネット新技術
25Gbps×8の「200GBASE-R」で「CFP8」「QSFP-DD」「OSFP」「CDFP」のモジュール規格が乱立
【光Ethernetの歴史と発展】
2020年9月1日 06:00
Ethernetというか10GBASE-Tに関しては、2017年から【10GBASE-T、ついに普及?】と題し、全11回と番外編2回をお届けした。だが、ツイストペアによる銅配線のEthernetは10GBASE-Tまでで、25/40GBASE-Tはまだまだ実用化には至っていない。
【アクセス回線10Gbpsへの道】とも一部は被るかもしれないが、ここでは光ファイバーを利用する“光Ethernet”を紹介していこう。
「光Ethernetの歴史と発展」記事一覧
- 10BASE-Tと同じ仕組みの光ファイバーで最大2kmを実現「10BASE-F」
- 屈折率で伝送距離が異なる「光ファイバー」の材質と構造
- 最大100Mbpsながら伝送距離の異なる「100BASE-FX」「100BASE-SX」などの各規格
- 実効1Gbpsに到達した「1000BASE-SX/1000BASE-LX/1000BASE-CX」
- 拠点間接続に用いる「1000BASE-X」の各種関連規格
- 低価格な光ファイバーで1Gbpsを実現する車載向けがメインの「GEPOF」
- 10Mbpsの「MII」から1000MbpsのCisco独自規格「SGMII」まで
- 1波長で10Gbps、光源と到達距離の異なる「10GBASE-W/R」の各規格
- 10Gbpsのフレッツ光で使われる「10GBASE-PR」、既存ケーブルを流用できる「10GBASE-LRM」
- XENPAK→X2→XFP→SFP+と移った10GBASEのトランシーバーモジュール規格
- 10Gbpsのシリアル通信規格「XFP」、これを置き換えた「SFP+」
- 10GbEの次は40GbEと100GbE、HSSGによってともに標準化の開始へ
- 最大100Gbps、「IEEE 802.3ba」として標準化された8つの規格
- IEEE 802.3baで定義されたInterconnectとトランシーバー規格
- 100Gbpsで100mを目指す「P802.3bm」、IEEE 802.3baをブラッシュアップ
- 最大100Gbps・100mの「100GBASE-SR4」と40Gbps・40kmの「40GBASE-ER4」
- CFPのサイズ半分、最大200Gbpsの「CFP2」、さらに小型化された「CFP4」
- 40Gbpsの「QSPF+」、50Gbpsの「QSFP56」、112Gbpsの「SFP-DD」「QSFP28」
- 25Gbps×4で100Gbps、光Ethernet第2世代「IEEE 802.3bm-2015」の各規格が標準化
- 50Gbpsに対応する5つの規格「50GBASE-KR/CR/SR/FR/LR」
- 「25G PAM-4」で100/200Gbpsを実現する7規格と、SMF1対で100Gbpsの「100G PAM-4」
- 25Gbps×8の「200GBASE-R」では4つのモジュール規格が乱立
- 最大400Gbpsを実現する2つのモジュール規格「OSFP」「CDFP」
- 1レーン50Gbpsで最大400Gbpsを実現する「P802.3bs」
- レーンあたり50/25Gbpsで400Gbpsを実現する「IEEE 802.3bs」の各規格
- 53.125Gの「PAM-4」を4対束ねた「PSM4」で最大400Gbps「400GBASE-DR4」
- アクセス回線向けの光ファイバー規格「IEEE P802.3cp/P802.3cs/P802.3ct」
- 位相変調した光信号を復号するコヒーレント光、波長分離多重の「DWDM」併用の「400ZR」
- 「100GBASE-ZR」を残し「IEEE P802.3ct」から「400GBASE-ZR」を分割
- 1対のMMFで100Gbpsを目指す「IEEE P802.3db」
- IEEE標準ではない光Ethernetの各規格、100G/400G/800Gですでに登場
- SWDMを用いた100/40Gbpsの「100G-SWDM4-MSA」と「40G-SWDM4-MSA」
- 「100GBASE-LR4」と「100GBASE-SR10」の間を埋める最大100Gbpsの「100G PSM4 MSA」
- SMF1本で25Gbps×4の100Gbpsを実現、到達距離2kmの「CWDM4 MSA」、40kmの「4WDM MSA」
- 100Gbpsで10/20/40kmの到達距離を狙った「100G 4WDM-10/20/40」
- 「100G PAM-4」で最大100Gbps、到達距離2kmの「100G-FR」と10kmの「100G-LR」
- SMF1対で100Gbpsの「100G LR1-20/ER1-30/ER1-40」、4本束ねて400Gbpsの「400G-FR」
- 最大400Gbps、到達距離2kmの「400G-FR4」と到達距離10kmの「400G-LR4-10」
- 最大100Gbpsで250kmを伝送可能な「MSA-100GLH」、巨大なサイズと消費電力で採用進まず
- 最大400Gbps、到達距離10kmの「CWDM8」、8×50G NRZの採用で低コストと低電力を実現
- 400Gbpsで到達距離2kmと10kmの「CWDM8 2km/10km」、低OH濃度SMFの採用で損失を抑える
- 400Gを光ファイバー1本で双方向通信する「400G BiDi MSA」、「400GBASE-SR8」を先行規格化
- 50Gが8対で400Gbpsの「400G-BD4.2」、消費電力増や高コストが課題に
- IEEE「400GBASE-SR4.2」は先行した「400G-BD4.2」と相互互換性を確保
- 高コストで普及に至らない「400GBASE-SR8」と、さらに高価な「400GBASE-SR4.2」
- 最大800Gbpsの100G PAM-4 PHY、ベンダー各社がサポート、受発光素子普及のカギは940nm?
- ETCがリリースした「800G Ethernet」の仕様は400Gを2つ並べる構造に
- 「QSFP-DD MSA」を発展させる「QSFP-DD800」、供給電源など今後に課題も
- 最大800Gbpsを目指す「800G Pluggable MSA」、3つの変調方式を採用
- 高帯域と低レイテンシーの一方で到達距離は限界へ、800Gへ想定される4つのシナリオ
- PSM4とCWDM4で1.6Tb/secを実現し、到達距離も延長「800G Pluggable MSA」
- 800G Ethernetに関連、OSFP MSAと2つのIEEEの動向
- 800Gの本命「IEEE 802.3 Beyond 400 Gb/s Ethernet」、100/200Gの信号で800G/1.6Tを実現
- 200G×8の1.6Tbps、×4の800Gbpsでの転送実現は2023年?
- 100Gが8対の「800GBASE-VR8/SR8」が仕様に追加、BERの目標値決定にはさらなる情報が必須
- 200GにおけるElectricalインターフェースを検討、通信に必要な消費電力は半減へ
- Beyond 400 Gb/s EthernetにおけるOTNサポートは4月の投票でいったん否決
- 1.0E10年のMTTFPAを維持、1.0E-14のBER Targetには高コストなFECが必要に
- FacebookやMicrosoftのDC事業者が先行、Beyond 400G Study Groupは800Gと同時に1.6Tの標準化を主張
- 200Gの光伝送は技術的に実現可能、一定の損失を前提にすれば現実的なPAM6の検討も?
- 800Gb/sと同時に1.6Tb/s Ethernet仕様も策定へ 200Gb/sレーンの製品出荷は2027年頃?
- 到達距離10kmの「800G-LR」に向け、Coherent-Lite方式を検討を求めるGoogle
- 200Gのシリアルと800GのWDM、どっちが先に100万ポート出荷を実現できるのか?
- 400・200Gb/sのサポートなど、2021年7月ミーティングへの投票は可決が多数
- 800Gで10kmの到達距離を実現する「800Gbps/10km Reach SMF」の4案
- 800Gで到達距離40kmを目指す「ER8」、MZMを採用し、400G向けDSPを2つ並列
- 銅配線での8レーン800Gが規格化、レーンあたり200Gも実現へ?
- 「IEEE P802.3df」のPAR分割に向けた動き、作業効率化の一方で異論も?
- 800G実現に向け、PDM-32QAMで96G/192GBaudとPDM-16QAMで120G/240GBaudをリストアップ
- これまでの光Ethernet規格振り返りと、「40GBASE-FR」をめぐる議論の経緯
- 「IEEE 802.3cn-2019」は若干のパラメーター変更のみ、「100GBASE-AR/400GBASE-AR」は現時点で幻に
- 「100GBASE-AR」と「400GBASE-AR」は「IEEE P802.3cw」に、PMDの仕様を定義して2023年中ごろに標準化?
- 到達距離500mの「CWDM4-OCP-100G」、低価格な100G Ethernet規格として広く流通し始める
25Gbps×8を実現すべく「CFP8」「QSFP-DD」「OSFP」「CDFP」の各モジュール規格が乱立
「50GBASE-R」に関しては、前回説明した「SFP 56」(正確には「SFP-DD 56」)が使われることになった。ただ、これも50Gbpsまでしかカバーしていない規格であり、「IEEE 802.3cd-2018」の定める「100GBASE-R」や「200GBASE-R」はカバーできない。
まず100GBASE-Rの方では、「QSFP」および「CFP4」が引き続き使われることになった。要するに25Gbps×4レーンであり、QSFPはこちら、CFP4はこちらで、それぞれ説明しているので詳細は繰り返さない。
問題は200GBASE-Rである。こちらでは当然ながら25Gbps×8となる。ここでモジュール規格として「CFP8」「QSFP-DD」「OSFP」「CDFP」の4種類が乱立することになった。
まずCFP8については、こちらで以前も掲載した以下左のように、幅はCFP4の倍となる。とはいえ、幅は40mm、高さが9.5mm、全長で102mmだから、かなりコンパクトと言ってもいい。実際にはモジュールのケージ側に放熱フィンを取り付けることが前提なので、高さはモジュールそのものが9.5mmでも、ケージ側は最大25mmと想定されている。
シンプルなコネクタ構造で25Gbpsを16対で400Gbpsを実現する「CFP8」
そのCFP8であるが、コネクタ構造は右に示すようにシンプルなものだ。片側62ピン、トータルで124ピンのコネクタで、中央に電源とクロック、制御信号を集中させ、左右に信号をGNDを挟みながら配するという構図だ。
これを見てぱっと気が付くのは、TX/RXともに0~15まで、トータル16対の信号が利用できるようになっていることだ。これは、CFP8が400Gbpsまでを視野に入れている(CFP4は100Gbpsまでだった)ことに起因する。400Gbpsの場合、レーンあたり25Gbpsなら16対の信号が必要になることから、一気にピン数を倍増させた格好だ。
ちなみに、CFP8のSpecificationの策定が完了したのは2017年3月のことである。つまり、IEEE 802.3cd-2018の標準化が完了する以前だった。それもあってか、CFP8では25Gbps以外に50Gbpsでの接続も想定していた。これは「IEEE 802.3bs-2017」(当時はまだP802.3bs)で、「400GAUI-8」の接続が予定されていたためだ。
400GAUI-8では、26.5625GT/secとなるPAM-4の接続を想定しており、これを利用した場合は53.125Gbps×8での接続となる。一方、400GAUI-16は同様に26.5625GT/secながらNRZなので、26.5625Gbps×16での接続となる。そんなわけで、CFP8をそのまま流用することで26.5625Gbps×8となり、200GBASE-Rの接続が可能となったわけだ。
余談になるが、供給可能電流はClass 1/2で2.5A、3/4で5A、5/6で7.5Aとなる。電源電圧そのものは3.3Vなので、それぞれ8.25W/16.5W/24.75Wを供給できる計算だ。なお、定格ではピンあたり800mAまで、8ピンで6.4A、つまり21.12Wが最大である。7.5Aを利用する場合は、コネクタ供給メーカーから800mAを超えても大丈夫との承認が必要とされている。
これまでのモジュールに比べ、供給電力枠がずいぶん増えている気もするが、こちらの記事で説明したように、IEEE 802.3bsにはさまざまなバリエーションがある。例えば「400GBASE-SR16」を400GAUI-8で接続する場合、まずホストからモジュールは25G PAM-4×8でデータが受け渡され、これを25G×16に変換するので、送信側は以下のような流れとなるし、受信はこの逆が必要になる。
- PAM-4を展開して50Gbps×8の信号へ変換
- 8:16のGearboxを挟んで、25Gbps×16へ変換
- 16対の光源で信号を送出
光源の数もさることながら、GearboxやらPAM-4のModulator/Demodulatorを挟むとなると、相応に消費電力が積み上がるのは致し方ないところだ。消費電力の枠は高めに取らざるを得ないし、ヒートシンクがケージの上に高くそびえ立つのも仕方ないだろう。
ただ、このようにIEEE 802.3bsへの対応を念頭に置いた規格だったため、200GBASE-Rへの対応は容易だったと思われる。
8対の50G PAM-4で400Gbpsを実現する「QSFP-DD」、QSFPのフォームファクターは維持
次がQSFP-DD。これを策定するQSFP-DD MSAは2016年3月にBroadcom、Brocade、Cisco、Finisar、Foxconn Interconnect Technology、Intel、Juniper Networks、Lumentum、Luxtera、Mellanox Technologies、Molex、Oclaro、TE Connectivityの13社により結成された。
QSFP-DDの目的は分かりやすく、QSFPのフォームファクターをそのまま維持しながら、利用できるレーン数を倍の8対とすることで、25G NRZなら200Gbps、50G PAM-4なら400GbpsのEthernetに対応できるモジュールを提供する、というものだ。
2016年9月には早くも暫定版のHardware Specificationがリリースされ、2017年3月には最初の正式版Specificationがリリースされた。その後も着々とSpecificationはUpdateされており、現時点ではHardware Specificationが5.1、Common Management Interfaceが4.0となっている。
QSFP-DDとCFP8が異なるのは互換性の維持である。CFP8とCFP4は、そもそも外形寸法からして違うし、インターフェースの電気的特性も異なる。全く別のものなのでモジュールの流用もできないが、QSFP-DDはQSFPとの互換性を保つことを重要視した。このため、QSFP-DDモジュールの外観は、QSFPモジュールと一見区別が付かない。
そんなわけで、パッと見はQSFPと同じなのだが、ではどうやって互換性を保ちつつ信号線を倍にしたかというと、SFP-DD同様、コネクタ部の信号パッドを前後2段としている。
これは、SFP-DDがSFPの信号パッドを倍にした右の図とも同じ仕組みであり、信号パッドもSFP-DDをさらに複雑にしたような構成になっている。
ちなみにPower Classは、1.5W/3.5W/7.0W/8.0W/10W/12W/14W/>14Wが1~8までとして定義されている。このあたりは、QSFPの制約がそのまま効いている感じだ。
Vccを6ピンへ倍増、15Wモジュール2つを重ねた実装も想定した「QSFP-DD」
QSFPの場合は、こちらの記事にも書いたが、Vccが全部で3ピンしかなかった。QSFP-DDではこれが倍増しているが、それでもVccTx、VccTx1、Vcc1、Vcc2、VccRx、VccRx1の6ピンでしかない。
電源電圧は3.3Vなので、14WとなるClass 7の時点でピンあたり0.7Aほどが流れる計算となり、やや厳しい感じである。ただ、Gearboxの話を抜きにしても、8対分の光源と受光器、PAM-4のModulator/Demodulatorをあわせれば、14Wまでは簡単に届いてしまいそうで、こちらもかなり厳しい条件ではある。
加えて言えば、QSFP-DDでは2つのモジュールを積み重ねて装着可能な「Stacked 2x1 cage」が当初から想定されている。15Wのモジュール2つをこの狭いところに重ねるかたちで装着して問題ないのか、という懸念は当然だろう。
それもあって、QSFP-DD MSAではわざわざ"QSFP-DD: Enabling 15 Watt Cooling Solutions White Paper"を出し、この中で15Wモジュールを2つ縦に重ねた状態での動作温度が、適切な流量の冷却風さえあれば規定範囲内に収まることをわざわざ確認している。
モジュールの容量そのものも小さい上、特にStacked 2x1 cageの場合は放熱も難しい。ホワイトペーパーにはヒートパイプを利用した冷却ソリューションなども示されていたが、安定運用のためには熱暴走などを避ける必要もあり、これに向けてQSFP-MSAのなかでさまざまな検討を行っていたことが伺える。
「10GBASE-T、ついに普及へ?」記事一覧
【アクセス回線10Gbpsへの道】記事一覧
- 622Mbpsを32台のONUで分割、ATMがベースの「ITU G.983.1」仕様
- 「Bフレッツ」(100Mbps)に採用された最大622Mbpsの「B-PON」
- IEEE 802.3ahとして標準化された1Gbpsの「GE-PON」
- 2.488Gbpsの「G-PON」、B-PON後継のG.984.1/2/3/4として標準化
- 「10G-EPON」で10Gbpsに到達、IEEE 802.3avとして標準化
- NURO光 10Gに採用された10Gbpsの「XG-PON」、「G.987」として標準化
- XG-PON後継、上りも10Gbpsの「XGS-PON」と「NG-PON2」
- 25Gbpsの「NG-PON2+」、5G基地局向けバックボーン向け
- 最大100Gbpsの「100G-EPON」、2020年に標準化完了
- 【番外編】XG-PONを採用する「NURO 光 10G」インタビュー