期待のネット新技術

Beyond 400 Gb/s EthernetにおけるOTNサポートは4月の投票でいったん否決

【光Ethernetの歴史と発展】

 Ethernetというか10GBASE-Tに関しては、2017年から【10GBASE-T、ついに普及?】と題し、全11回と番外編2回をお届けした。だが、ツイストペアによる銅配線のEthernetは10GBASE-Tまでで、25/640GBASE-Tはまだまだ実用化には至っていない。

 【アクセス回線10Gbpsへの道】とも一部は被るかもしれないが、ここでは光ファイバーを利用する“光Ethernet”を紹介していこう。

「光Ethernetの歴史と発展」記事一覧

「IEEE 802.3 Beyond 400 Gb/s Ethernet Study Group」2021年4月の動向

 前回までで、2021年3月のミーティングで出た主要な話題はほぼカバーできたかと思う。

 ということで、次は「IEEE 802.3 Beyond 400 Gb/s Ethernet Study Group」における2021年4月の動向であるが、4月はミーティングも2回だけで、その内容もStraw poll(予備投票)とMotion(動議)だけであった。

IEEE 802.3 Beyond 400 Gb/s Ethernet Study Groupのウェブサイト

 Straw Pollは決定権のない、あくまでも予備的な意識調査であり、Motionはこれを将来Task Forceできちんと取り上げるべき項目として上げるかどうかの正式な意見表明となる。そして、全てのStraw pollとMotionをまとめたのが以下だ。

【Straw Poll #1】MAC/PLSサービス向けのBERは?

  • 1.0E-13:21票
  • 1.0E-14:24票
  • 1.0E-15:5票
  • 1.0E-15より低く:0票
  • もっと情報が必要:50票
  • 棄権:16票

【Straw Poll #2】次世代Ethernetのデータレートは?

  • MACが800Gb/sをサポート:13票
  • MACが1.6Tb/sをサポート:1票
  • MACが800Gb/sと1.6Tb/sをサポート:50票
  • MACが800Gb/sをサポート:13票
  • もっと情報が必要:17票
  • 棄権:4票

【Straw Poll #3】次世代EthernetのMACは800Gb/sをサポートすべきか?

  • Yes:73票
  • No:5票
  • もっと情報が必要:4票
  • 棄権:4票

【Straw Poll #4】次世代EthernetのMACは1.6Tb/sをサポートすべきか?

  • Yes:35票
  • No:9票
  • もっと情報が必要:41票
  • 棄権:6票

【Straw Poll #5】800Gb/sのEthernetのBERのターゲットは?

  • 1.0E-13:42票
  • 1.0E-14:26票
  • 1.0E-15:4票
  • 1.0E-15より低く:2票
  • もっと情報が必要:10票
  • 棄権:7票

【Straw Poll #6】1.6Tb/sのEthernetのBERのターゲットは?

  • 1.0E-13:13票
  • 1.0E-14:26票
  • 1.0E-15:2票
  • 1.0E-15より低く:0票
  • もっと情報が必要:38票
  • 棄権:6票

【Straw Poll #7】OTN※をサポートすべきか?

  • Yes:49票
  • No:10票
  • もっと情報が必要:17票
  • 棄権:14票

※ OTNはOptical Transport Networkの略で、NTTが提案し標準化された波長多重を用いた光Ethernetの国際標準規格

【Straw Poll #8】8対のMMFを用いた最低50m到達する800Gb/sの物理層を定義すべきか?

  • Yes:64票
  • No:3票
  • もっと情報が必要:12票
  • 棄権:11票

【Straw Poll #9】8対のMMFを用いた最低100m到達する800Gb/sの物理層を定義すべきか?

  • Yes:59票
  • No:6票
  • もっと情報が必要:14票
  • 棄権:11票

【Straw Poll #10】8対のSMFを用いた最低500m到達する800Gb/sの物理層を定義すべきか?

  • Yes:80票
  • No:7票
  • もっと情報が必要:0票
  • 棄権:5票

【Straw Poll #11】4対のSMFを用いた最低500m到達する800Gb/sの物理層を定義すべきか?

  • Yes:79票
  • No:0票
  • もっと情報が必要:5票
  • 棄権:8票

【Straw Poll #12】4対のSMFを用いた最低2Km到達する800Gb/sの物理層を定義すべきか?

  • Yes:59票
  • No:8票
  • もっと情報が必要:14票
  • 棄権:11票

【Straw Poll #13】1対のSMFを用いた8波長WDM(波長あたり100Gb/s)で最低2Km到達する800Gb/sの物理層を定義すべきか?

  • Yes:48票
  • No:8票
  • もっと情報が必要:14票
  • 棄権:11票

【Straw Poll #14】1対のSMFを用いた4波長WDM(波長あたり200Gb/s)で最低2Km到達する800Gb/sの物理層を定義すべきか?

  • Yes:62票
  • No:2票
  • もっと情報が必要:11票
  • 棄権:7票

【Straw Poll #15】1対のSMFを用いた最低4Km到達する800Gb/sの物理層を定義すべきか?

  • Yes:13票
  • No:21票
  • もっと情報が必要:28票
  • 棄権:6票

【Straw Poll #16】1対のSMFを用いた最低6Km到達する800Gb/sの物理層を定義すべきか?

  • Yes:26票
  • No:8票
  • もっと情報が必要:27票
  • 棄権:7票

【Straw Poll #17】1対のSMFを用いた最低10Km到達する800Gb/sの物理層を定義すべきか?

  • Yes:44票
  • No:0票
  • もっと情報が必要:12票
  • 棄権:7票

【Straw Poll #18】1対のSMFを用いた最低40Km到達する800Gb/sの物理層を定義すべきか?

  • Yes:42票
  • No:0票
  • もっと情報が必要:13票
  • 棄権:8票

【Straw Poll #19】800G EthernetのOpticalサブレイヤー間インターフェースの速度は

  • レーンあたり100Gb/s:45票
  • レーンあたり200Gb/s:44票
  • レート非設定:24票
  • もっと情報が必要:8票
  • 棄権:4票

【Motion #1】次世代EthernetのMACで800Gb/sをサポートする(75%)

  • 賛成:85票
  • 反対:2票
  • 棄権:4票
  • →動議は可決

【Motion #2】次世代EthernetのMACで1.6Tb/sをサポートする(75%)

  • 賛成:81票
  • 反対:2票
  • 棄権:7票
  • →動議は可決

【Motion #3】次世代EthernetでOTNをサポートする(75%)

  • 賛成:37票
  • 反対:23票
  • 棄権:12票
  • →動議は否決

【Motion #4】8対のMMFを用いて最低50/100m到達する800Gb/sの物理層を定義すべき(75%)

  • 賛成:61票
  • 反対:13票
  • 棄権:18票
  • →動議は可決

【Motion #5】8対/4対のSMFを用いて最低500m/2Km到達する800Gb/sの物理層を定義すべき(75%)

  • 賛成:76票
  • 反対:8票
  • 棄権:6票
  • →動議は可決

【Motion #6】1対のSMFで4波長WDM、最低2Km到達する800Gb/sの物理層を定義すべき(75%)

  • 賛成:61票
  • 反対:1票
  • 棄権:9票
  • →動議は可決

【Motion #6】1対の最低10/40Km到達する800Gb/sの物理層を定義すべき(75%)

  • 賛成:44票
  • 反対:14票
  • 棄権:1票
  • →動議は可決

 各Motionに「(75%)」とあるのは、IEEEのルールでテクニカルな議題の場合、75%の賛成票がなければ可決されないという意味だ。つまり、Motion #3は賛成多数ではあるものの、75%に達しないことで否決された格好だ。

 もっとも、これはOTNを将来に渡ってサポートしないという意味ではなく、現時点ではまだ正式な項目として取り上げないという意味なので、今後さらに提案が出てくる余地は当然あり得る。

 これで、3月に出てきた提案に対する大まかな方針は決まったが、5月のミーティングではさらにさまざまな提案が出てくることになる。また、Straw Poll #5/#6で分かる通り、まだBERのターゲットに関しては意思統一がなされたとは言い難い。このあたりもさらに審議が続くことになる。

大原 雄介

フリーのテクニカルライター。CPUやメモリ、チップセットから通信関係、OS、データベース、医療関係まで得意分野は多岐に渡る。ホームページはhttp://www.yusuke-ohara.com/