期待のネット新技術
Beyond 400 Gb/s EthernetにおけるOTNサポートは4月の投票でいったん否決
【光Ethernetの歴史と発展】
2021年8月17日 06:00
Ethernetというか10GBASE-Tに関しては、2017年から【10GBASE-T、ついに普及?】と題し、全11回と番外編2回をお届けした。だが、ツイストペアによる銅配線のEthernetは10GBASE-Tまでで、25/640GBASE-Tはまだまだ実用化には至っていない。
【アクセス回線10Gbpsへの道】とも一部は被るかもしれないが、ここでは光ファイバーを利用する“光Ethernet”を紹介していこう。
「光Ethernetの歴史と発展」記事一覧
- 10BASE-Tと同じ仕組みの光ファイバーで最大2kmを実現「10BASE-F」
- 屈折率で伝送距離が異なる「光ファイバー」の材質と構造
- 最大100Mbpsながら伝送距離の異なる「100BASE-FX」「100BASE-SX」などの各規格
- 実効1Gbpsに到達した「1000BASE-SX/1000BASE-LX/1000BASE-CX」
- 拠点間接続に用いる「1000BASE-X」の各種関連規格
- 低価格な光ファイバーで1Gbpsを実現する車載向けがメインの「GEPOF」
- 10Mbpsの「MII」から1000MbpsのCisco独自規格「SGMII」まで
- 1波長で10Gbps、光源と到達距離の異なる「10GBASE-W/R」の各規格
- 10Gbpsのフレッツ光で使われる「10GBASE-PR」、既存ケーブルを流用できる「10GBASE-LRM」
- XENPAK→X2→XFP→SFP+と移った10GBASEのトランシーバーモジュール規格
- 10Gbpsのシリアル通信規格「XFP」、これを置き換えた「SFP+」
- 10GbEの次は40GbEと100GbE、HSSGによってともに標準化の開始へ
- 最大100Gbps、「IEEE 802.3ba」として標準化された8つの規格
- IEEE 802.3baで定義されたInterconnectとトランシーバー規格
- 100Gbpsで100mを目指す「P802.3bm」、IEEE 802.3baをブラッシュアップ
- 最大100Gbps・100mの「100GBASE-SR4」と40Gbps・40kmの「40GBASE-ER4」
- CFPのサイズ半分、最大200Gbpsの「CFP2」、さらに小型化された「CFP4」
- 40Gbpsの「QSPF+」、50Gbpsの「QSFP56」、112Gbpsの「SFP-DD」「QSFP28」
- 25Gbps×4で100Gbps、光Ethernet第2世代「IEEE 802.3bm-2015」の各規格が標準化
- 50Gbpsに対応する5つの規格「50GBASE-KR/CR/SR/FR/LR」
- 「25G PAM-4」で100/200Gbpsを実現する7規格と、SMF1対で100Gbpsの「100G PAM-4」
- 25Gbps×8の「200GBASE-R」では4つのモジュール規格が乱立
- 最大400Gbpsを実現する2つのモジュール規格「OSFP」「CDFP」
- 1レーン50Gbpsで最大400Gbpsを実現する「P802.3bs」
- レーンあたり50/25Gbpsで400Gbpsを実現する「IEEE 802.3bs」の各規格
- 53.125Gの「PAM-4」を4対束ねた「PSM4」で最大400Gbps「400GBASE-DR4」
- アクセス回線向けの光ファイバー規格「IEEE P802.3cp/P802.3cs/P802.3ct」
- 位相変調した光信号を復号するコヒーレント光、波長分離多重の「DWDM」併用の「400ZR」
- 「100GBASE-ZR」を残し「IEEE P802.3ct」から「400GBASE-ZR」を分割
- 1対のMMFで100Gbpsを目指す「IEEE P802.3db」
- IEEE標準ではない光Ethernetの各規格、100G/400G/800Gですでに登場
- SWDMを用いた100/40Gbpsの「100G-SWDM4-MSA」と「40G-SWDM4-MSA」
- 「100GBASE-LR4」と「100GBASE-SR10」の間を埋める最大100Gbpsの「100G PSM4 MSA」
- SMF1本で25Gbps×4の100Gbpsを実現、到達距離2kmの「CWDM4 MSA」、40kmの「4WDM MSA」
- 100Gbpsで10/20/40kmの到達距離を狙った「100G 4WDM-10/20/40」
- 「100G PAM-4」で最大100Gbps、到達距離2kmの「100G-FR」と10kmの「100G-LR」
- SMF1対で100Gbpsの「100G LR1-20/ER1-30/ER1-40」、4本束ねて400Gbpsの「400G-FR」
- 最大400Gbps、到達距離2kmの「400G-FR4」と到達距離10kmの「400G-LR4-10」
- 最大100Gbpsで250kmを伝送可能な「MSA-100GLH」、巨大なサイズと消費電力で採用進まず
- 最大400Gbps、到達距離10kmの「CWDM8」、8×50G NRZの採用で低コストと低電力を実現
- 400Gbpsで到達距離2kmと10kmの「CWDM8 2km/10km」、低OH濃度SMFの採用で損失を抑える
- 400Gを光ファイバー1本で双方向通信する「400G BiDi MSA」、「400GBASE-SR8」を先行規格化
- 50Gが8対で400Gbpsの「400G-BD4.2」、消費電力増や高コストが課題に
- IEEE「400GBASE-SR4.2」は先行した「400G-BD4.2」と相互互換性を確保
- 高コストで普及に至らない「400GBASE-SR8」と、さらに高価な「400GBASE-SR4.2」
- 最大800Gbpsの100G PAM-4 PHY、ベンダー各社がサポート、受発光素子普及のカギは940nm?
- ETCがリリースした「800G Ethernet」の仕様は400Gを2つ並べる構造に
- 「QSFP-DD MSA」を発展させる「QSFP-DD800」、供給電源など今後に課題も
- 最大800Gbpsを目指す「800G Pluggable MSA」、3つの変調方式を採用
- 高帯域と低レイテンシーの一方で到達距離は限界へ、800Gへ想定される4つのシナリオ
- PSM4とCWDM4で1.6Tb/secを実現し、到達距離も延長「800G Pluggable MSA」
- 800G Ethernetに関連、OSFP MSAと2つのIEEEの動向
- 800Gの本命「IEEE 802.3 Beyond 400 Gb/s Ethernet」、100/200Gの信号で800G/1.6Tを実現
- 200G×8の1.6Tbps、×4の800Gbpsでの転送実現は2023年?
- 100Gが8対の「800GBASE-VR8/SR8」が仕様に追加、BERの目標値決定にはさらなる情報が必須
- 200GにおけるElectricalインターフェースを検討、通信に必要な消費電力は半減へ
- Beyond 400 Gb/s EthernetにおけるOTNサポートは4月の投票でいったん否決
- 1.0E10年のMTTFPAを維持、1.0E-14のBER Targetには高コストなFECが必要に
- FacebookやMicrosoftのDC事業者が先行、Beyond 400G Study Groupは800Gと同時に1.6Tの標準化を主張
- 200Gの光伝送は技術的に実現可能、一定の損失を前提にすれば現実的なPAM6の検討も?
- 800Gb/sと同時に1.6Tb/s Ethernet仕様も策定へ 200Gb/sレーンの製品出荷は2027年頃?
- 到達距離10kmの「800G-LR」に向け、Coherent-Lite方式を検討を求めるGoogle
- 200Gのシリアルと800GのWDM、どっちが先に100万ポート出荷を実現できるのか?
- 400・200Gb/sのサポートなど、2021年7月ミーティングへの投票は可決が多数
- 800Gで10kmの到達距離を実現する「800Gbps/10km Reach SMF」の4案
- 800Gで到達距離40kmを目指す「ER8」、MZMを採用し、400G向けDSPを2つ並列
- 銅配線での8レーン800Gが規格化、レーンあたり200Gも実現へ?
- 「IEEE P802.3df」のPAR分割に向けた動き、作業効率化の一方で異論も?
- 800G実現に向け、PDM-32QAMで96G/192GBaudとPDM-16QAMで120G/240GBaudをリストアップ
- これまでの光Ethernet規格振り返りと、「40GBASE-FR」をめぐる議論の経緯
- 「IEEE 802.3cn-2019」は若干のパラメーター変更のみ、「100GBASE-AR/400GBASE-AR」は現時点で幻に
- 「100GBASE-AR」と「400GBASE-AR」は「IEEE P802.3cw」に、PMDの仕様を定義して2023年中ごろに標準化?
- 到達距離500mの「CWDM4-OCP-100G」、低価格な100G Ethernet規格として広く流通し始める
「IEEE 802.3 Beyond 400 Gb/s Ethernet Study Group」2021年4月の動向
前回までで、2021年3月のミーティングで出た主要な話題はほぼカバーできたかと思う。
ということで、次は「IEEE 802.3 Beyond 400 Gb/s Ethernet Study Group」における2021年4月の動向であるが、4月はミーティングも2回だけで、その内容もStraw poll(予備投票)とMotion(動議)だけであった。
Straw Pollは決定権のない、あくまでも予備的な意識調査であり、Motionはこれを将来Task Forceできちんと取り上げるべき項目として上げるかどうかの正式な意見表明となる。そして、全てのStraw pollとMotionをまとめたのが以下だ。
【Straw Poll #1】MAC/PLSサービス向けのBERは?
- 1.0E-13:21票
- 1.0E-14:24票
- 1.0E-15:5票
- 1.0E-15より低く:0票
- もっと情報が必要:50票
- 棄権:16票
【Straw Poll #2】次世代Ethernetのデータレートは?
- MACが800Gb/sをサポート:13票
- MACが1.6Tb/sをサポート:1票
- MACが800Gb/sと1.6Tb/sをサポート:50票
- MACが800Gb/sをサポート:13票
- もっと情報が必要:17票
- 棄権:4票
【Straw Poll #3】次世代EthernetのMACは800Gb/sをサポートすべきか?
- Yes:73票
- No:5票
- もっと情報が必要:4票
- 棄権:4票
【Straw Poll #4】次世代EthernetのMACは1.6Tb/sをサポートすべきか?
- Yes:35票
- No:9票
- もっと情報が必要:41票
- 棄権:6票
【Straw Poll #5】800Gb/sのEthernetのBERのターゲットは?
- 1.0E-13:42票
- 1.0E-14:26票
- 1.0E-15:4票
- 1.0E-15より低く:2票
- もっと情報が必要:10票
- 棄権:7票
【Straw Poll #6】1.6Tb/sのEthernetのBERのターゲットは?
- 1.0E-13:13票
- 1.0E-14:26票
- 1.0E-15:2票
- 1.0E-15より低く:0票
- もっと情報が必要:38票
- 棄権:6票
【Straw Poll #7】OTN※をサポートすべきか?
- Yes:49票
- No:10票
- もっと情報が必要:17票
- 棄権:14票
※ OTNはOptical Transport Networkの略で、NTTが提案し標準化された波長多重を用いた光Ethernetの国際標準規格
【Straw Poll #8】8対のMMFを用いた最低50m到達する800Gb/sの物理層を定義すべきか?
- Yes:64票
- No:3票
- もっと情報が必要:12票
- 棄権:11票
【Straw Poll #9】8対のMMFを用いた最低100m到達する800Gb/sの物理層を定義すべきか?
- Yes:59票
- No:6票
- もっと情報が必要:14票
- 棄権:11票
【Straw Poll #10】8対のSMFを用いた最低500m到達する800Gb/sの物理層を定義すべきか?
- Yes:80票
- No:7票
- もっと情報が必要:0票
- 棄権:5票
【Straw Poll #11】4対のSMFを用いた最低500m到達する800Gb/sの物理層を定義すべきか?
- Yes:79票
- No:0票
- もっと情報が必要:5票
- 棄権:8票
【Straw Poll #12】4対のSMFを用いた最低2Km到達する800Gb/sの物理層を定義すべきか?
- Yes:59票
- No:8票
- もっと情報が必要:14票
- 棄権:11票
【Straw Poll #13】1対のSMFを用いた8波長WDM(波長あたり100Gb/s)で最低2Km到達する800Gb/sの物理層を定義すべきか?
- Yes:48票
- No:8票
- もっと情報が必要:14票
- 棄権:11票
【Straw Poll #14】1対のSMFを用いた4波長WDM(波長あたり200Gb/s)で最低2Km到達する800Gb/sの物理層を定義すべきか?
- Yes:62票
- No:2票
- もっと情報が必要:11票
- 棄権:7票
【Straw Poll #15】1対のSMFを用いた最低4Km到達する800Gb/sの物理層を定義すべきか?
- Yes:13票
- No:21票
- もっと情報が必要:28票
- 棄権:6票
【Straw Poll #16】1対のSMFを用いた最低6Km到達する800Gb/sの物理層を定義すべきか?
- Yes:26票
- No:8票
- もっと情報が必要:27票
- 棄権:7票
【Straw Poll #17】1対のSMFを用いた最低10Km到達する800Gb/sの物理層を定義すべきか?
- Yes:44票
- No:0票
- もっと情報が必要:12票
- 棄権:7票
【Straw Poll #18】1対のSMFを用いた最低40Km到達する800Gb/sの物理層を定義すべきか?
- Yes:42票
- No:0票
- もっと情報が必要:13票
- 棄権:8票
【Straw Poll #19】800G EthernetのOpticalサブレイヤー間インターフェースの速度は
- レーンあたり100Gb/s:45票
- レーンあたり200Gb/s:44票
- レート非設定:24票
- もっと情報が必要:8票
- 棄権:4票
【Motion #1】次世代EthernetのMACで800Gb/sをサポートする(75%)
- 賛成:85票
- 反対:2票
- 棄権:4票
- →動議は可決
【Motion #2】次世代EthernetのMACで1.6Tb/sをサポートする(75%)
- 賛成:81票
- 反対:2票
- 棄権:7票
- →動議は可決
【Motion #3】次世代EthernetでOTNをサポートする(75%)
- 賛成:37票
- 反対:23票
- 棄権:12票
- →動議は否決
【Motion #4】8対のMMFを用いて最低50/100m到達する800Gb/sの物理層を定義すべき(75%)
- 賛成:61票
- 反対:13票
- 棄権:18票
- →動議は可決
【Motion #5】8対/4対のSMFを用いて最低500m/2Km到達する800Gb/sの物理層を定義すべき(75%)
- 賛成:76票
- 反対:8票
- 棄権:6票
- →動議は可決
【Motion #6】1対のSMFで4波長WDM、最低2Km到達する800Gb/sの物理層を定義すべき(75%)
- 賛成:61票
- 反対:1票
- 棄権:9票
- →動議は可決
【Motion #6】1対の最低10/40Km到達する800Gb/sの物理層を定義すべき(75%)
- 賛成:44票
- 反対:14票
- 棄権:1票
- →動議は可決
各Motionに「(75%)」とあるのは、IEEEのルールでテクニカルな議題の場合、75%の賛成票がなければ可決されないという意味だ。つまり、Motion #3は賛成多数ではあるものの、75%に達しないことで否決された格好だ。
もっとも、これはOTNを将来に渡ってサポートしないという意味ではなく、現時点ではまだ正式な項目として取り上げないという意味なので、今後さらに提案が出てくる余地は当然あり得る。
これで、3月に出てきた提案に対する大まかな方針は決まったが、5月のミーティングではさらにさまざまな提案が出てくることになる。また、Straw Poll #5/#6で分かる通り、まだBERのターゲットに関しては意思統一がなされたとは言い難い。このあたりもさらに審議が続くことになる。
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