期待のネット新技術
最大400Gbpsを実現する2つのモジュール規格「OSFP」「CDFP」
【光Ethernetの歴史と発展】
2020年9月8日 06:00
Ethernetというか10GBASE-Tに関しては、2017年から【10GBASE-T、ついに普及?】と題し、全11回と番外編2回をお届けした。だが、ツイストペアによる銅配線のEthernetは10GBASE-Tまでで、25/40GBASE-Tはまだまだ実用化には至っていない。
【アクセス回線10Gbpsへの道】とも一部は被るかもしれないが、ここでは光ファイバーを利用する“光Ethernet”を紹介していこう。
「光Ethernetの歴史と発展」記事一覧
- 10BASE-Tと同じ仕組みの光ファイバーで最大2kmを実現「10BASE-F」
- 屈折率で伝送距離が異なる「光ファイバー」の材質と構造
- 最大100Mbpsながら伝送距離の異なる「100BASE-FX」「100BASE-SX」などの各規格
- 実効1Gbpsに到達した「1000BASE-SX/1000BASE-LX/1000BASE-CX」
- 拠点間接続に用いる「1000BASE-X」の各種関連規格
- 低価格な光ファイバーで1Gbpsを実現する車載向けがメインの「GEPOF」
- 10Mbpsの「MII」から1000MbpsのCisco独自規格「SGMII」まで
- 1波長で10Gbps、光源と到達距離の異なる「10GBASE-W/R」の各規格
- 10Gbpsのフレッツ光で使われる「10GBASE-PR」、既存ケーブルを流用できる「10GBASE-LRM」
- XENPAK→X2→XFP→SFP+と移った10GBASEのトランシーバーモジュール規格
- 10Gbpsのシリアル通信規格「XFP」、これを置き換えた「SFP+」
- 10GbEの次は40GbEと100GbE、HSSGによってともに標準化の開始へ
- 最大100Gbps、「IEEE 802.3ba」として標準化された8つの規格
- IEEE 802.3baで定義されたInterconnectとトランシーバー規格
- 100Gbpsで100mを目指す「P802.3bm」、IEEE 802.3baをブラッシュアップ
- 最大100Gbps・100mの「100GBASE-SR4」と40Gbps・40kmの「40GBASE-ER4」
- CFPのサイズ半分、最大200Gbpsの「CFP2」、さらに小型化された「CFP4」
- 40Gbpsの「QSPF+」、50Gbpsの「QSFP56」、112Gbpsの「SFP-DD」「QSFP28」
- 25Gbps×4で100Gbps、光Ethernet第2世代「IEEE 802.3bm-2015」の各規格が標準化
- 50Gbpsに対応する5つの規格「50GBASE-KR/CR/SR/FR/LR」
- 「25G PAM-4」で100/200Gbpsを実現する7規格と、SMF1対で100Gbpsの「100G PAM-4」
- 25Gbps×8の「200GBASE-R」では4つのモジュール規格が乱立
- 最大400Gbpsを実現する2つのモジュール規格「OSFP」「CDFP」
- 1レーン50Gbpsで最大400Gbpsを実現する「P802.3bs」
- レーンあたり50/25Gbpsで400Gbpsを実現する「IEEE 802.3bs」の各規格
- 53.125Gの「PAM-4」を4対束ねた「PSM4」で最大400Gbps「400GBASE-DR4」
- アクセス回線向けの光ファイバー規格「IEEE P802.3cp/P802.3cs/P802.3ct」
- 位相変調した光信号を復号するコヒーレント光、波長分離多重の「DWDM」併用の「400ZR」
- 「100GBASE-ZR」を残し「IEEE P802.3ct」から「400GBASE-ZR」を分割
- 1対のMMFで100Gbpsを目指す「IEEE P802.3db」
- IEEE標準ではない光Ethernetの各規格、100G/400G/800Gですでに登場
- SWDMを用いた100/40Gbpsの「100G-SWDM4-MSA」と「40G-SWDM4-MSA」
- 「100GBASE-LR4」と「100GBASE-SR10」の間を埋める最大100Gbpsの「100G PSM4 MSA」
- SMF1本で25Gbps×4の100Gbpsを実現、到達距離2kmの「CWDM4 MSA」、40kmの「4WDM MSA」
- 100Gbpsで10/20/40kmの到達距離を狙った「100G 4WDM-10/20/40」
- 「100G PAM-4」で最大100Gbps、到達距離2kmの「100G-FR」と10kmの「100G-LR」
- SMF1対で100Gbpsの「100G LR1-20/ER1-30/ER1-40」、4本束ねて400Gbpsの「400G-FR」
- 最大400Gbps、到達距離2kmの「400G-FR4」と到達距離10kmの「400G-LR4-10」
- 最大100Gbpsで250kmを伝送可能な「MSA-100GLH」、巨大なサイズと消費電力で採用進まず
- 最大400Gbps、到達距離10kmの「CWDM8」、8×50G NRZの採用で低コストと低電力を実現
- 400Gbpsで到達距離2kmと10kmの「CWDM8 2km/10km」、低OH濃度SMFの採用で損失を抑える
- 400Gを光ファイバー1本で双方向通信する「400G BiDi MSA」、「400GBASE-SR8」を先行規格化
- 50Gが8対で400Gbpsの「400G-BD4.2」、消費電力増や高コストが課題に
- IEEE「400GBASE-SR4.2」は先行した「400G-BD4.2」と相互互換性を確保
- 高コストで普及に至らない「400GBASE-SR8」と、さらに高価な「400GBASE-SR4.2」
- 最大800Gbpsの100G PAM-4 PHY、ベンダー各社がサポート、受発光素子普及のカギは940nm?
- ETCがリリースした「800G Ethernet」の仕様は400Gを2つ並べる構造に
- 「QSFP-DD MSA」を発展させる「QSFP-DD800」、供給電源など今後に課題も
- 最大800Gbpsを目指す「800G Pluggable MSA」、3つの変調方式を採用
- 高帯域と低レイテンシーの一方で到達距離は限界へ、800Gへ想定される4つのシナリオ
- PSM4とCWDM4で1.6Tb/secを実現し、到達距離も延長「800G Pluggable MSA」
- 800G Ethernetに関連、OSFP MSAと2つのIEEEの動向
- 800Gの本命「IEEE 802.3 Beyond 400 Gb/s Ethernet」、100/200Gの信号で800G/1.6Tを実現
- 200G×8の1.6Tbps、×4の800Gbpsでの転送実現は2023年?
- 100Gが8対の「800GBASE-VR8/SR8」が仕様に追加、BERの目標値決定にはさらなる情報が必須
- 200GにおけるElectricalインターフェースを検討、通信に必要な消費電力は半減へ
- Beyond 400 Gb/s EthernetにおけるOTNサポートは4月の投票でいったん否決
- 1.0E10年のMTTFPAを維持、1.0E-14のBER Targetには高コストなFECが必要に
- FacebookやMicrosoftのDC事業者が先行、Beyond 400G Study Groupは800Gと同時に1.6Tの標準化を主張
- 200Gの光伝送は技術的に実現可能、一定の損失を前提にすれば現実的なPAM6の検討も?
- 800Gb/sと同時に1.6Tb/s Ethernet仕様も策定へ 200Gb/sレーンの製品出荷は2027年頃?
- 到達距離10kmの「800G-LR」に向け、Coherent-Lite方式を検討を求めるGoogle
- 200Gのシリアルと800GのWDM、どっちが先に100万ポート出荷を実現できるのか?
- 400・200Gb/sのサポートなど、2021年7月ミーティングへの投票は可決が多数
- 800Gで10kmの到達距離を実現する「800Gbps/10km Reach SMF」の4案
- 800Gで到達距離40kmを目指す「ER8」、MZMを採用し、400G向けDSPを2つ並列
- 銅配線での8レーン800Gが規格化、レーンあたり200Gも実現へ?
- 「IEEE P802.3df」のPAR分割に向けた動き、作業効率化の一方で異論も?
- 800G実現に向け、PDM-32QAMで96G/192GBaudとPDM-16QAMで120G/240GBaudをリストアップ
- これまでの光Ethernet規格振り返りと、「40GBASE-FR」をめぐる議論の経緯
- 「IEEE 802.3cn-2019」は若干のパラメーター変更のみ、「100GBASE-AR/400GBASE-AR」は現時点で幻に
- 「100GBASE-AR」と「400GBASE-AR」は「IEEE P802.3cw」に、PMDの仕様を定義して2023年中ごろに標準化?
- 到達距離500mの「CWDM4-OCP-100G」、低価格な100G Ethernet規格として広く流通し始める
50GbpsのPAM-4または25GbpsのNRZが8本で400G/200G Ethernetがターゲットの「OSFP」
前回の「CFP8」「QSFP-DD」に続き、今回は「OSFP」「CDFP」を解説したい。
そのOSFP MSAは2016年11月に立ち上げられた。創立メンバーは、Arista Networks、Acacia Communications、Accelink、Adva Optical Networking、Amphenol、AppliedMicro、Applied Optoelectronics、Barefoot Networks、Broadcom、Cavium、ClariPhy Communications、ColorChip、Coriant、Corning、Dell EMC、Finisar、Foxconn Interconnect Technology、富士通オプティカルコンポーネンツ、Google、Hewlett Packard Enterprise、日立電線、Huawei Technologies、Infinera、Innolight、Innovium、Inphi、Intel、Ixia、Juniper Networks、Kaiam、Lorom、Lumentum、Luxtera、Macom、Marvell、Mellanox Technologies、Molex、MultiLane、NeoPhotonics、NEL America、Nokia、Oclaro、PHY-SI、SAE、Senko、Source Photonics、住友電工、TE Connectivity、山一電機と、49社もの企業が集まっている。
MSAの場合、普通はもう少し絞ったかたちで審議を進め、パパッと標準化を済ませるものだが、ここまでメンバー企業が多いとやや紛糾しそうな気もする。実際、Specification Revision 1.0がリリースされたのは半年後の2017年5月で、この手のものとしてはちょっと時間が掛かった印象を受ける。ちなみにOSFPは、Octal Small Form factor Pluggableの略だそうである。
さてそのOSFPモジュール、Optical/Copperの両対応であるが、特徴はモジュールの上に背は低いがヒートシンクが一体化されていることだろうか? 外形寸法(幅×奥行×高さ)の22.58×100.40×13.00mm(最大)というのは、CFP4より少し大きいという程度である。
ただ、モジュール側にヒートシンクを装着した例はあまりない(通常はケージ側と接触させるかたちでケージに熱を逃がし、そこにヒートシンクを取り付ける)。ちなみに右上の図ではヒートシンクに上蓋が載っているが、規格上は左下のように、これがなくても構わない。
もっとも、この程度(最大でも3.80mm)のフィンで放熱できる能力には当然限界があるわけで、ケージ側に放熱フィンを取り付けるケースも想定されている。
ちなみに当初のSpecificationにはケージにスタック式のものは定義されておらず、横一列のものだけが用意されていた。これはRevision 3.0で右の図として定義されている。
さてこのOSFPだが、左下のように400G Ethernetとなる「400GBASE-DR4」「400GBASE-SR8」「400GBASE-SR4.2」「400GBASE-FT4」「400GBASE-FR8」「400GBASE-LR8」あたりを主なターゲットとしている。しかし、400G Ethernetに加え、右下のように200GBASE-FR4×2や、CWDM4×2(こちらはまた後ほど)などもカバーしている。
コネクタ部そのものは、右のように60ピンで、ここに8対の送受信信号を通すことになる。
その信号としては、25GbpsのNRZ、もしくは50GbpsのPAM-4を念頭に置いてはいるものの、400G以外にも、使おうと思えば以下のように200GBASE-SR4×2などに利用することは可能だ。
OSFPが、ほかのモジュールと異なるもう1つの点は電源にある。先に書いたようにVccピンは4本、電源電圧は3.3Vなのだが、何とピンあたり1.6Aを許容するため、最大構成だと3.3V×6.4A≒21.1Wで、ここまで紹介してきたモジュールよりも高い消費電力に耐えられる構成となっている。
Power Classは1~8まで、それぞれ1.5/3.5W/7W/8W/10W/12W/14W/>14Wが定義されている。Class 3から妙に細かく刻んでいる気がしなくはないが、放熱のことも考えると、むやみに消費電力枠を引き上げても自らの首が締まるだけなので、できれば14Wまでで抑えたいのだと思われる。
ちなみに、OSFPで面白いのは、右のようなQSFP用のアダプターがあることだ。これにより、OSFP対応のケージ(というかスイッチ)に、QSFPのモジュールを装着して利用できる。もっとも筆者は、このアダプターが使われているのを実際に見たことはないのだが。
2枚のカードを重ねた16対で最大400Gbpsを送受信可能な「CDFP」
最後の「CDFP」は、("CDFP"がどこから来たのか少し調べたが分からなかった)。実はCDFP MSAの結成は2013年9月と、ほかのMSAに比べてもかなり古い。Founder MemberはAvago、Brocade、IBM、JDSU、Juniper Networks、Molex、TE Connectivityの7社である。
その目的は、やはり400GbpsのPluggable Moduleの規格を策定することで、2014年3月にはMechanical Specification 1.0を早くもリリースしている。ただし、規格策定の時期が古い、ということは最新の伝送に対応していないという意味でもあり、実際Specification(最新版は2015年3月のRevision 3.0)のタイトルは"CDFP - 400Gb/s(16X 25Gb/s)Pluggable Transceiver"である。
実際のモジュール形状は、挿入部が短いStyle 1(右図)と、挿入部がずっと長いStyle 2/3がある。挿入部のサイズ(幅×奥行×高さ)は、Style 1が27.06×26.05×9.81mmで、Style 2/3は奥行きが46.55mmとなる。外形のサイズは最大で29.71×90×17.47mmとなり、両方を足せば結構な大きさとなる。
ちなみに外側の長さには、右の図で"x16"と書かれたラッチ部(プラスチック製の丸い輪の部分で、指を掛けて手前に引っ張るとラッチが解除される)も含まれるので、モジュール分の長さは50mm程度と思われるが、それでも挿入部と併せると、Style 2/3の場合で100mm前後となり、幅、高さとともに、かなり大きなものだ。
この大きさには、実は致し方ない理由がある。CDFPの場合、内部は2枚のカードから構成される。右の図は、この2枚の役割をまとめたものだが、要するにカード1枚には8対分の送受信がまとめられ、これを2枚重ねて実装することで、16対の送受信を可能にする、というわけだ。
コネクタは、1枚のカード片面あたり30ピンで、両面では60ピン、2枚では120ピンとなる。16対もの信号を送受信するので、そのくらいのピン数は当然必要なのだ。
これをSFP-DDのように前後へずらすといった細工を施せば、さらに高さを減らせたのだろうが、左のように素直に2枚を重ねて装着するようにした結果、それなりの高さが必要になってしまった。
ちなみに消費電力は、カードあたり最大6Wが上限である。一応Power Classは1~5まで、モジュール全体で言えば、それぞれ6W/8W/10W/12W/>12Wが定義されている。電源電圧はやはり3.3Vで、電源ピンはカードあたり3ピン(モジュール全体で6ピン)なので、12Wだとピンあたり0.6Aほどと、まだ多少ゆとりがあるように思われる。
2015年というと、TSMCが16FF(16nm FinFET)プロセスの量産を始めたあたり。これは当時最先端のプロセスだが、ネットワーク機器などには一般に28~40nmあたりを使うことがまだ多かった。このため、12Wというのは結構厳しかったかもしれない。実際には、もう少し消費電力が増えることを前提として、右の図のようにケージへのヒートシンクの装着も想定されていた。
ところで、このCDFPのターゲットというか仮想敵は、CFP4やQSFP28であった。CDFPのFAQを見ると、CFP4やQSFP28と比べて、遥かに少ないポート数でより大きな帯域を提供できることがメリットとして挙げられていた。
これそのものは間違っていないのだが、実際には400G Ethernetはもっと高密度なモジュールを利用して普及を始めてしまい、CDFPはあまりお呼びが掛からなかったというのが不幸なところだろうか? あと、CDFPのコネクタはMolexが特許を保有していたので、コネクタはライセンス料込みで買わなければならなかったあたりが嫌われた可能性もある。
ということで、前回と今回でようやくモジュールの説明が一通り終わったので、次回からは規格の話に戻りたい。
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