先々週末に発覚した福島中央テレビアナウンサーのブログ記事盗用事件、Flash Playerに脆弱性と報じられるも修正済みだった件など、先週は奇妙なニュースが目立ちました。私的録音録画小委員会と「ダビング10」を巡る論争も、奇妙かつ混沌とした状況になっています。
そんなニュースの陰でやや目立たなくなってしまいましたが、Google EarthのAPI公開、Firefox 3がダウンロード数のギネス記録挑戦、ニコニコ大百科正式オープン、といったソフト・Webサービス系のニュースもお見逃しなく。後半では「小中学生に携帯電話を持たせない」で注目を集めた教育再生懇親会の提案について解説します。
◆「小中学生が携帯持つなら、通話とGPS限定に」教育再生懇談会が報告書
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/05/26/19697.html
5月26日、政府の教育再生懇談会は第一次報告書を福田総理に提出。必要のない限り小中学生に携帯電話を持たせないこと、安全確保などの理由で携帯電話を持たせる場合でも、通話相手を限定した通話機能とGPS機能に限定したものを推進すること、などの内容を盛り込んだ。
◆補償金の対象機器追加は「消費者に不合理な負担」、JEITAが受け入れ拒否
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/05/30/19766.html
5月29日に開催予定だった私的録音録画小委員会が延期となった。文化庁試案について一部委員(メーカー側代表)から回答が得られなかったのが理由で、権利者側がメーカー側を批判。これに対して30日、JEITAは補償金対象機器の追加受け入れ拒否を表明した。こうした中、「ダビング10」の開始日時が確定できない状況となっている。
◆迷惑メール法の改正案が成立、事前同意無しの広告メール送信は違法に
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/05/30/19763.html
5月30日、迷惑メール法の改正案が参議院本会議で可決。従来のオプトアウト方式は認められず、オプトイン方式を採用しなければならなくなる。また、違反業者への罰金が最高100万円から3,000万円に引き上げられた。
◆Flashの脆弱性は最新版で修正済み、Adobeが調査結果を公表
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/05/29/19737.html
5月28日、米Adobe Systemsは前日に報道されたFlash Playerの脆弱性について、最新版では修正済みであると発表。最新版へのアップデートを強く推奨している。
◆米Microsoft、「Windows 7」についての情報を一部明らかに
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/05/28/19716.html
米MicrosoftはWindows Vista公式ブログの5月27日付記事において、次期OS「Windows 7」についての情報を掲載。Windows Vistaのアーキテクチャを引き継ぎ、新しいカーネルは開発しないとした。また、発売時期についてWindows Vistaの発売から約3年を予定していると述べた。
● 小中学生のケータイは通話とGPSだけにせよ! 教育再生懇談会が提言
政府の教育再生懇談会は、5月26日に福田首相に提出した第一次報告書において、「子どもを有害情報から守る」ための取り組みとして、「携帯電話利用についての教育を推進し、必要のない限り小中学生が携帯電話を持つことがないよう、保護者、学校はじめ関係者が協力する」「小中学生が持つ場合には、通話機能等に限定したものが利用されることを推進する。機能を限定した携帯電話の開発と普及に携帯電話事業者も協力する」「小中学生の携帯電話のフィルタリングの在り方について、今後さらに検討する」とした審議内容を盛り込みました。
教育再生懇談会という組織は、安倍総理の時代に設置された「教育再生会議」を引き継ぐ形で2008年2月に設置されました。座長は慶應義塾塾長の安西祐一郎氏がつとめ、インターネット関連だけでなく「21世紀にふさわしい教育の在り方について議論する」ための会です。
報告書には他にも、小学校からの英語教育の見直し、認定こども園の設置促進といった内容が含まれています。そして、これらの中でも1番目の提言として記されているのが、上記の「子どもを有害情報から守る」です。先々週に報じられた段階では「小中学生に携帯電話を持たせない」という部分だけが注目を集めましたが、先週に発表された報告書を見る限り、全体としては、いくらか落ち着いたトーンとなっています。
同じく有害情報から子どもを守るためとして、国会では各党で「青少年ネット規制法」について法案の準備が進んでおり、法律レベルでのネット規制へ動いています。こちらの内容は、5月22日のニュースになった民主党案を見ると、とにかくフィルタリング、フィルタリング、規制という内容になっており、いささか極端な内容に見えます。
これまで青少年ネット規制法に多くの企業・団体が懸念や反対意見を表明してきましたが、先週は新たに日本新聞協会が「情報の内容を規制あるいは定義する法律は公権力の介入を招きかねず、憲法21条の保障する表現の自由に反する恐れがある」と懸念を表明しました。
30日には、ヤフーが保護者を対象に行なった子どものインターネット利用に関する意識調査の結果が発表されました。これによると、青少年のインターネット利用について「政府によって一律で規制すべきである」と考える親は23.8%にとどまるとの結果が出ています。
もっとも、これはインターネット調査の結果であり、回答者はそれなりにネットリテラシーの高い層であると考えられます。問題となるのはネットの知識が乏しかったり、そもそもネット利用経験がない親を持つ子どもですから、まずは規制し、それから次の手を……という形もひとつの方法ではあるでしょう。
とはいえ、ネットサービス事業者やISPに過剰な負担を要求する規制法や、子どもが最も魅力を感じているメールやWebは禁止すべし、という教育再生懇談会の提言は、当の青少年の気持ちを無視し、安直に業者に責任を被せる土台を作っただけ、という見方もできます。
先の硫化水素問題でもそうですが、今はネットの情報をマスメディアが取り上げ、それが口コミで話され、と情報流通ルートが多様化している時代です。青少年に対してどこまで実効性のある「規制」ができるものなのかがそもそも疑問であり、情報が届いてしまった場合を全く想定しないというのは、あまりにも現在の情報流通について無知、または無責任なやり方と言えるのではないでしょうか。
2008/06/02 11:37
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小林祐一郎 プログラマ、編集者、Webディレクター等を経て、ライター・編集者として活動。興味のあるテーマは「人はどうすればネットで“いい思い”ができるのか」 。ごく普通の人の生活に、IT技術やネットのコミュニケーションツールがどんな影響を与え、どう活用できるのかを研究している。近著「Web2.0超入門講座」(インプレス) |
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