中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2020/4/9~4/16]

「フレッツ光」のトラフィックが4月2週の昼間に最大33%増 ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. グーグルとアップル、新型コロナウイルス感染者との「濃厚接触追跡システム」共同開発に着手

 米グーグルと米アップルは新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止を目的として、濃厚接触追跡システムを共同で開発すると発表した。

 これはスマートフォンとインストールされたソフトウェアを用いて接触追跡(contact tracing)をするシステムで、この5月にも世界の保健機関や公衆衛生当局の公式アプリ(Android/iOS)として一般ユーザーへの提供開始を計画しているという(IT Leaders)。プライバシー保護の観点から、このシステムを使用するためにはあくまでも個々のユーザーがアプリをインストールし、オプトイン(利用に同意)することが必要となる。

 簡単にまとめると次のような仕組みのようだ。オプトインした端末同士は接近することでビーコンでの通信を行い、端末内は誰と通信をした(=接近をした)かを記録しておく。後日、どちらかが陽性となった場合、そのユーザーが陽性になったということを表明する操作をすると、その記録は衛生当局のサーバーにアップロードされる。他のユーザーは適宜、サーバーから匿名化された陽性者リストをダウンロードし、そのなかに自分が接触した人が含まれている場合に、接触があったことを端末が通知を行うという仕組みとされている(ITmedia)。

 もちろん、フェイクで陽性申告をすることが懸念されるが、「陽性申告するには、例えば当局が医師に配布するQRコードをスマートフォンで読み取るなどのハードルが設けられているので、フェイク申告はできない」(ITmedia)としている。

 また、グーグルとアップルによる方式のほか、マサチューセッツ工科大学(MIT)でも、位置情報を使用して、接触者の追跡を行うシステムを提案している(CNET Japan)。

 さらに、新型コロナウイルス・クレデンシャル・イニシアチブ(CCI:COVID-19 Credentials Initiative)は、個人が新型コロナウイルス感染症から回復したこと、抗体検査で陽性反応が出たこと、あるいはワクチンが開発されればワクチン接種を受けたことを証明(および他人に証明を要請)する「デジタル証明書」の開発に取り組んでいる(coindesk)。その実装には、分散型のブロックチェーンアーキテクチャーが利用されるようだ。

 パンデミックという世界的な課題の解決をプライバシー問題に配慮した上で解決できることには大いに期待をしたいところだ。

ニュースソース

  • グーグルとアップル、COVID-19の濃厚接触追跡システムの共同開発に着手[IT Leaders
  • GoogleとApple共闘の新型コロナ対策、その仕組みとプライバシー[ITmedia
  • AppleとGoogleの「新型コロナ感染者と接触したかも」通知がフェイク申告を防ぐ方法は?[ITmedia
  • MITの新型コロナ接触追跡アプリ、米地方当局が採用を検討[CNET Japan
  • 「免疫パスポート」開発に60社が集まる──ワクチン接種、陽性反応をデジタル証明[coindesk

2. 日本でも開発が始まる「濃厚接触者追跡システム」

 エンジニアの団体である一般社団法人コード・フォー・ジャパンは、スマートフォンを使って、新型コロナウイルスに感染した人と濃厚接触した可能性を通知する接触者追跡システムの開発を進めている(ITmedia)。これはシンガポールの技術開発機関GovTech Teamで開発されたものを参考としているという。さらに「米Googleと米Appleが発表した、Bluetoothを活用して感染者と濃厚接触した可能性を検出する技術で使われる共通規格にも対応する予定」としている。そして、政府でもこのシステムの実用実験に乗り出すと報じられている(NHK)。

 情報通信技術が発達したこの時代、このようなアイデアによって現下の課題の解決に大きく寄与するのではないかと期待される。そして、感染拡大の防止する安心や安全のためのみならず、疫学的な観点でも興味深いものとなるのではないだろうか。

ニュースソース

  • 新型コロナの濃厚接触を通知するアプリ、エンジニア民間団体が開発中 AppleとGoogleの規格にも対応[ITmedia
  • 政府 “濃厚接触者を把握”アプリの導入検討 近く実用実験へ[NHK

3. 「フレッツ光」のトラフィックが4月2週の昼間に最大33%増

 外出自粛により、ネットワークを使った動画コンテンツの視聴が増加したことやテレワーク、とりわけビデオ会議が増加したことにともなって、心配になるのがインターネットインフラの容量の限界である。現在の需要と供給のバランスはどうなっているのだろうか。

 NTT東日本とNTT西日本は、緊急事態宣言の発出(4月7日)を挟む4月6~10日のフレッツ光回線におけるネットワークトラフィックについてのの資料を公開した(INTERNET Watch)。コラボ光を含むフレッツ光のIPoE/PPPoE各方式でのダウンロードインターネットトラフィックを集計したものである。

 それによると、NTT東日本エリアでは、4月2週の昼間に最大33%増だったとしていて、さらに「これまでのピークトラフィック量を踏まえたネットワーク設計をしているため、現時点ではネットワーク全体の容量は十分に確保している」としている。

 他国では体感できるほどの通信速度の低下があるという記事も散見されるなか、日本の場合はまだ余裕があるようだ。しかし、幸か不幸かテレワークが十分に行われていない(いまださまざまな理由から出勤が多い)状況でのことで、自粛の長期化により、テレワークもだんだんと増加し、今後はそれに伴ったトラフィックも増加することが考えられる。

ニュースソース

  • フレッツ光トラフィックが4月2週の昼間に最大33%増、新型コロナのテレワーク増加で、NTT東西が調査[INTERNET Watch

4. 総務省が「6G」に向けた戦略案に対する意見を募集

 総務省は、5Gの次の世代にあたる通信規格「Beyond 5G」の導入に向け、日本としての総合戦略、政策の方向性を定めるために、有識者会合で作成された「Beyond 5G推進戦略骨子」への意見の募集(総務省)をしている(ケータイWatch)。Beyond 5Gとは将来の6G(第6世代ワイヤレス通信技術)を意味していて、これからの国際競争力や社会基盤の強化には必要不可欠とされている。また、新型コロナウイルスのまん延が収束したのちの社会基盤としての意味も強まっている。

 主な検討事項としては、1)2030年代の社会において通信インフラに期待される事項、2)Beyond 5Gによりこれを実現するために必要な技術、3)我が国におけるBeyond 5Gの円滑な導入及び国際競争力の向上に向け望まれる環境、4)これらを実現するための政策の方向性などとしている。

ニュースソース

  • 総務省、2030年代の「6G」に向けた戦略案にパブコメ募集[ケータイWatch

5. テレワークを積極推進する企業

 ここ数週間に実施された複数のアンケートの集計からも分かるように、テレワークを実施できている企業や従業員はそれほど多くはない。とりわけ首都圏では朝の通勤ラッシュがそれを象徴している。もちろん、全ての業務がテレワークで可能なわけではないが、ちょっとした工夫や発想の転換によってテレワークに移行できるはずなのに、経営者も従業員も、それまでの組織の習慣に縛られていたり、決断できなかったりすることで、いまだ実施されていない事例も少なからずあるようだ。

 そのようななか、新型コロナウイルスまん延の初期の段階からいち早くテレワークを推進してきた企業では、報酬制度も変わりつつあるようだ。

 GMOインターネットでは在宅勤務によって削減されたオフィスの経費(電気代など)を従業員等に還元する(マイナビニュース)。また、さくらインターネットではデータセンター保守など担うため、現地へと出向かなければならない従業員には出社手当を支給するほか、社員には1万円の臨時手当や月3000円の通信手当も付与する(ITmedia)。

 いずれの場合も、新型コロナウイルス感染症対策が社会的にも長期化することを見据えたうえで、それに適合するための制度を模索しているユースケースとして捉えることができる。そして、その先には、いずれはオフィスを縮減したり、不要であるとしたりする判断を下す企業も出てくるに違いない。

ニュースソース

  • GMOインターネット、在宅勤務で浮いたオフィス経費をパートナーに還元[マイナビニュース
  • さくらインターネット、1日5千円の「出社手当」支給 緊急事態宣言の対象地域で、データセンター保守など担う社員に[ITmedia

中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。