中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2020/7/9~7/16]

G20がデジタル通貨容認か ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. 次々と発表されるスタートアップ支援の施策

 国によるスタートアップ支援の施策が活発だ。総務省と情報通信研究機構(NICT)は「起業を志す学生や有望な若手起業家を全国から発掘し、メンタリングやビジネスプランのブラッシュアップなどの育成過程を通して事業化をサポートする『全国アクセラレータ・プログラム』」を発表した(マイナビニュース)。また、内閣府は「Beyond Limits. Unlock Our Potential.世界に伍するスタートアップ・エコシステム拠点形成戦略」に基づく拠点都市の選定結果を発表した(ASCII.jp)。選定されたのは「スタートアップ・エコシステム 東京コンソーシアム」「Central Japan Startup Ecosystem Consortium」「大阪・京都・ひょうご神戸コンソーシアム」「福岡スタートアップ・コンソーシアム」の4つの都市。内閣府は「文部科学省、経済産業省および各関係省庁と連携して、世界に伍する日本型のスタートアップ・エコシステムの拠点の形成と発展を支援」するとしている。

 デジタル技術をはじめとする次世代の技術開発や事業化において、日本は世界をリードできているとはいい難い。支援施策によって国際的な競争力を高め、さらにはウィズコロナやアフターコロナでの「新しい日常」を豊かにする新事業の創出も期待したいところだ。

ニュースソース

  • 総務省、地域発ICTスタートアップ創出に向けたプログラム- 全国大会も開催[マイナビニュース
  • 内閣府、スタートアップ・エコシステム拠点都市の選定結果を発表[ASCII.jp

2. G20がデジタル通貨容認か

 デジタル通貨についての議論に動きが出てきた。共同通信が報じたところによると、G20(20の国と地域)がデジタル通貨を容認する方向で調整に入ったという(47NEWS)。今後、マネーロンダリング(資金洗浄)の防止など、規制論議を10月から本格化させるとしている。米国フェイスブック社が仮想通貨「LIbra(リブラ)」を主導し、中国ではデジタル人民元への積極的な取り組みがあるなかで、これまでは各国の中央銀行は慎重な姿勢を示し、こうした動きをけん制をしてきたが、ここにきていよいよ方向転換をすることになりそうだ。先日、日本銀行もCBDC(法定デジタル通貨)の発行に伴う技術的な課題についてまとめたレポート「中銀デジタル通貨が現金同等の機能を持つための技術的課題」を公開したばかりだ(INTERNET Watch)が、いよいよ現実味を帯びてきた。

 また、三菱UFJフィナンシャル・グループは、かねて計画していたデジタル通貨「coin(コイン)」を今年度後半にはサービス開始するという意向を示している(朝日新聞デジタル)。coinは「1コイン=1円」として、特定の事業者での支払いや、換金して銀行口座へと戻すこともできる。また、個人間送金も可能だとされている。

 新型コロナウイルスの感染拡大が収まらないなか、人の対面機会の減少や感染防止策の徹底の観点から、物理的な紙幣や硬貨によらない価値の交換がより進むことになるか。

ニュースソース

  • G20、デジタル通貨を容認へ―規制論議を10月に本格化[47NEWS
  • 三菱UFJ、デジタル通貨「コイン」を今年度後半に開始[朝日新聞デジタル

3. 集合住宅のVDSL配線を光配線へ、無料で「フレッツ 光ネクスト」タイプ変更工事――NTT東日本

 東日本電信電話株式会社(NTT東日本)が「フレッツ 光ネクスト」の「マンションタイプ(VDSL方式/LAN配線方式)」の利用者が「光配線方式」に切り替える際のタイプ変更工事を無料で実施すると発表した(INTERNET Watch)。現在、新築で建設された集合住宅の建物内配線はあらかじめ管路も整備されていることから各戸まで光ケーブルで配線されることも一般的になっているが、既設の建物では管路が整備されていないなどの条件から、既存のメタルケーブルを用いてVDSL方式で接続するのが一般的だった。

 しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、テレワーク、遠隔授業、ビデオ視聴などのニーズが高まったことから、パフォーマンスが上がらないという相談が増加しているという。光ファイバーの普及はかなり広がってはいたものの、こういう条件下に課題が顕在化した。それを無償でタイプ変更工事を行うというのはすばらしいマーケティング施策だ。

ニュースソース

  • マンション内のVDSL配線を光配線へ、無料でタイプ変更工事~NTT東日本 「フレッツ 光ネクスト」の集合住宅向け“オール光”に積極的[INTERNET Watch

4. ビデオ会議は専用デバイスで――マイクロソフトとZoomが発表

 マイクロソフトとZoomがともにビデオ会議に特化した端末を発表した。

 マイクロソフト社はTeams専用デバイスである「Microsoft Teams Displays」を公開した。米国では2020年後半から提供を開始するとしている。日本での発売は不明だ。写真を見るかぎり、卓上で使うことを想定しているような小型のものである。

 一方、Zoomは「Zoom for Home」を発表した。最初のモデルはDTEN社と提携して開発された「DTEN ME」という名称の27インチ、1080pのタッチスクリーン端末である。価格は599ドル(約6万4000円)としている。

 各社とも激しい開発競争をしてるビデオ会議システムの市場だが、これからはこうしたアプライアンスの開発へと向かうのか。いままでよりも簡単な操作で会議を主催できたり、参加できたりするのであれば、新たなユーザーを獲得することにもつながるかもしれない。

ニュースソース

  • Microsoft、Teamsの利用に特化したデバイス「Teams Displays」公開[マイナビニュース
  • Zoom、在宅勤務向けに「Zoom for Home」発表--27インチのタッチスクリーン端末提供へ[CNET Japan

5. 有名人・有名ブランドを狙った大規模なTwtterアカウント乗っ取り事案が発生

 7月16日未明、著名人や有名企業を狙った大規模なTwtterアカウントの乗っ取り事案が発生したと報じられている(PC Watch)。標的とされたのはビル・ゲイツ氏やイーロン・マスク氏、そしてオバマ元大統領といった著名人、さらには、アップル社などの有名企業の公式アカウントのようだ。いまのところ、具体的な手口は明らかではないようだが、プラットフォーム側のセキュリティ対策の強化はもとより、有名人でないユーザーでもアカウント管理には注意が必要。

ニュースソース

  • ビル・ゲイツやApple公式アカウントも標的に。Twitterに大規模ハッキング[PC Watch

中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。