中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」
ニュースキュレーション[2020/8/20~8/27]
ソフトバンクが技術展「ギジュツノチカラ」を開催、9月7日からはオンラインでも ほか
2020年8月28日 12:50
1. ソフトバンクが技術展「ギジュツノチカラ」を開催、9月7日からはオンラインでも
講談社が運営する施設「Mixalive TOKYO(ミクサライブ東京)」が、リアルイベントとオンラインイベントを提供する“ハイブリッドシアター”として開業した。この技術的な基盤を提供したのはソフトバンクである。この施設は全てのフロアで5Gのインフラが整備されていて、さらに映像やVRの配信設備なども備える(ケータイWatch)。
この施設の開業に合わせ、ソフトバンクの技術研究開発部門のオープンハウスともいえる位置付けの「ギジュツノチカラ展」が開催される。本来は一般顧客にも公開をすることを予定していたが、新型コロナウイルス感染症の対策のために、現地では一部メディア向けに公開された。そして、9月7日からは一般向けにオンライン展示会として開催されることになっている(ソフトバンク)。
これまで、ソフトバンクとして自社の技術をアピールするオープンハウスのような企画を実施してこなかったが、5Gやその先のビヨンド5G(いわゆる「6G」)の時代に向けたさまざまな技術開発に取り組んできていて、その成果の一部を見ることができる。そのなかで注目点として挙げておきたいのは、成層圏からの通信サービスを提供するHAPSモバイルの機体だ。グライダーのような機体に太陽電池パネルとバッテリー、そして5Gの基地局を搭載し、上空およそ20kmの成層圏を飛行させて、日本でいえば山岳地帯や海上、さらには災害時など、地上の基地局がカバーできていないエリアにもモバイル通信サービスを提供することを目指している。実際の機体の大きさはボーイング747型機(ジャンボジェット)の主翼の長さと同じくらいだとされているが、ここに展示されているのはその10分の1の模型だ。また、機体に搭載する基地局の模型も展示されている。この機体はすでに米国において飛行実験にも成功をしている。一連の計画についてはすでに報じられているのだが、それが現実になるとはにわかに信じられないところもあった。しかし、こうして模型や実験映像を見るとその実現が近いことを感じる。
さらに、5Gの低遅延・大容量通信が可能であるという特性を生かした動画、ゲーム、CGなどのコンテンツ配信などのデモンストレーションや体験もできる。その背景にあるアーキテクチャが「エッジコンピューティング」だという。つまり、5Gと比較すると“低速な”インターネットを経由することなく、ネットワーク上でのより端末に近い場所にコンテンツや端末からのインタラクションを処理するサーバーを配置することで、低遅延・大容量通信という特性を生かしきることができるという仕組みだ。ここで例示されたエンターテインメント分野のみならず、自動運転や機械制御のようなリアルタイム性が重視される分野においては、こうしたアーキテクチャが採用されるとみられる。5G以降のモバイルインフラはLTEの延長で考えるのではなく、ネットワークアーキテクチャのみならず、通信料金モデルなどにもパラダイムシフトが生じることになりそうだ。
2.「スマホ依存」に対する医学的研究が始まる
KDDI、KDDI総合研究所、東京医科歯科大学はスマホ依存の調査と解明を目的とする共同研究を開始した(ケータイWatch)。KDDIはこれまでも依存症に対する取り組みを進めてきているが、今回の研究は「患者への主観的なヒアリングに加えてスマートフォンの利用状況などの客観的なログデータを組み合わせ、スマートフォンの利用状況を図るための客観的な指標を定義した上で、患者本人や医師と共有することで、医療機関での治療や治療効果検証などへの活用を目指す」としている。
スマートフォンの利便性が高まるとともに、それに過度に依存してしまうことにより、「本来やるべきことがおろそかとなり、学業や仕事、家庭に悪影響を及ぼしている方」がいることが指摘されている(KDDI)。本来は生活を豊かにする道具が逆の作用をしている。こうした依存状態の解消をするための取り組み成果だけでなく、予防などについての知見も得られることを期待したい。
ニュースソース
- KDDI、東京医科歯科大と「スマホ依存」に関する共同研究[ケータイWatch]
3. 接触確認アプリ「COCOA」のダウンロード数が1500万件を突破
接触確認アプリ「COCOA」のダウンロード数が約1501万件(8月26日17時時点)、陽性報告数は累計428件になったと報じられている(ケータイWatch)。また、濃厚接触があったと通知された人が行政検査の対象となり、検査費用が全額公費負担となる(ケータイWatch)。これまで濃厚接触者の可能性があると通知されていても、行政検査の対象になっていなかったことに驚くが、今後はさらにインストールをする動機づけの1つになることだろう。
また、福岡市ではCOCOAをダウンロードすることで、インフルエンザの予防接種費用を自治体が補助し、一律に1000円で受けることができるようになるとしている(ITmedia)。こうしたこともアプリ普及のための動機付けとして広がる可能性もある。
一般企業でも、明治が従業員4000人に貸与している社用のスマートフォンにCOCOAをインストールすると報じられている(ZDnet Japan)。すでに大塚商会が社用のスマートフォンに導入すると報じられている。こうして、企業が一律に導入することにより、職場での感染抑止の効果も期待できる。
ニュースソース
- 「COCOA」ダウンロードでインフル予防接種1000円に 福岡市が独自補助へ[ITmedia]
- COCOAで通知を受けた人は行政検査の対象に――厚生労働省が通達[ケータイWatch]
- 新型コロナ接触確認アプリ「COCOA」、DL数が1500万件突破[ケータイWatch]
- 明治、社用スマホに「COCOA」導入--従業員約4000人が対象[ZDnet Japan]
4. 2020年上半期のアプリダウンロード数は対前年比25%増
App Annie Japanが2020年上半期(1月~6月)のモバイル市場に関するレポートを発表した(ITmedia)。
それによると、「2020年上半期のモバイルアプリのダウンロード数はiOS/Google Play全体で640億ダウンロードを記録」し、「世界的に新型コロナウイルス感染拡大の第一波の時期となった4月は月間ダウンロード数がピークに達し」たという。とりわけ、ゲームのダウンロード数が急成長しているという。いうまでもなく、4月、5月、6月は全世界的にも外出自粛期間であり、スマートフォンでのアプリの利用が特徴的に増加したことが明らかになった。
一方、教育分野のアプリの利用時間は中国が圧倒的に多いことが目立つ。日本では2019年10月~12月と比較し、2020年4月~6月の利用時間が約85%増加したにもかかわらず、世界基準で見ると十分に活用されていないように見える。産業のデジタル化だけでなく、教育分野のデジタル化も今後の課題か。
ニュースソース
- 2020年上半期のアプリダウンロード数は前年比25%増に App Annieが発表[ITmedia]
5. 通貨以外の分野へのブロックチェーン応用事例
仮想通貨以外の分野へのブロックチェーンの応用例がいくつか報じられている。目についたニュースとしては、不動産の証券化(CNET Japan)、証明書発行業務(ASCII.jp)、業務ログからの不正検出(INTERNET Watch)、電力取引(マイナビニュース)、サプライチェーンマネジメント(マイナビニュース)などの事例である。
仮想通貨以外の分野でのブロックチェーンの応用についてはこれまでも報じられてきているが、それぞれ事業者がリードしたかたちでの実証実験がスタートしているところがここのところの特徴ということができる。つまり、より現実の課題解決に即した具体的な狙いを感じる。背景には、新型コロナウイルス感染症の流行が鎮静化しないなか、各産業や各企業はデジタル技術を積極的に利用することでこの難局への対応を進めようとしていることがありそうだ。
ニュースソース
- LIFULLとSecuritize Japanが業務提携--不特法事業者向けSTOスキーム提供へ[CNET Japan]
- LINE、ブロックチェーン基盤の事業化を開始──シンプルで使いやすいプラットフォームを目指す[coindesk]
- コインチェック、暗号資産で調達する「IEO」事業を開始──コンテンツ配信企業が10億円を検討[coindesk]
- ブロックチェーン証明書スタートアップLasTrustが、オリックス銀行と基本合意書を締結。ブロックチェーン技術を活用した証明書発行業務のデジタル化に向けて検討・協議を開始[ASCII.jp]
- ブロックチェーン上の業務ログからリアルタイムに不正を検出、ニチガスとBasset[INTERNET Watch]
- リコー、ブロックチェーン活用のリアルタイム電力取引管理システムを開発[マイナビニュース]
- 三井物産流通H、サプライチェーンのDXを目的にブロックチェーン技術とIoT技術を実証実験[DIGITALX]