ゲームでWi-Fi 6!

第6回

ゲームで最重要!「安定通信」にはメッシュWi-Fiが効く

 本連載ではこれまで、Wi-Fi環境でのゲームプレーに必要なのは遅延の少なさであることや、ゲーミング機能を持つWi-Fiルーターのメリットなどをお伝えしてきた。それらは紛れもない真実だが、それらより、Wi-Fi環境でのゲームプレーにまず重要なことがある。

 それは、Wi-Fiの電波が十分に届くかどうか、である。そこで有力な選択肢となるのが「メッシュWi-Fi」だ

Wi-Fi 6対応メッシュの上位モデル「ZenWiFi AX(XT8)」(左)と、コンパクトなエントリーモデル「ZenWiFi AX Mini(XD4)」(右)

電波の強さがやっぱり大事!弱いと起こる速度低下と通信の不安定さ

 いくら高価で高性能なWi-Fiルーターを用意しても、最新のWi-Fi 6環境を整えても、無線の電波が届かなければ話にならない。電波が届いていても、それが弱ければ2つの問題が起こり得る。

 1つは通信速度の低下だ。Wi-Fiの電波は弱くなればなるほど、通信を安定させるために通信速度が落ちていく。Wi-FiルーターとWi-Fi子機の距離が離れていっても、ある程度までは接続が途切れないが、通信速度は徐々に低下していく。

 もう1つの問題は、通信の不安定さだ。何もない空間に無線の電波を飛ばすというWi-Fiの性質上、周囲の影響を受けやすい。スマートフォンでWi-Fi接続のアイコンを見ていると、同じ場所で使用しているのに接続状態が良くなったり悪くなったりする様子を見たことがある人は多いだろう。

 電波が弱い場所では、Wi-Fiに接続できているように見えて、実は通信に失敗する瞬間が発生している可能性がある。ウェブサイトの閲覧やメールなどのインターネット通信は、通信の失敗があり得る前提で作られていて、失敗しても再びやり直すようになっている。しかしオンラインゲームでは、通信の失敗ややり直しが遅延の発生につながるため、大問題となる。

速度低下の主要因はWi-Fiルーターからの遠さこれをカバーできるメッシュWi-Fiのメリットとデメリット

 Wi-Fiの通信速度が低下する要因は、ほかのWi-Fi機器や電波を発する機器からの影響のほか、子機を持っている人の手や体による電波の遮へい、端末のわずかな向きの変化、端末やWi-Fiルーターの処理負荷などさまざま。ただ、最も大きな要因となるのは、Wi-Fiルーターと子機の距離だ。

 Wi-Fiルーターと子機の距離を近付けたくても、インターネット回線が引き込まれている位置によっては、どうしてもできない場合もある。そんなときに役立つのが、今回紹介するメッシュWi-Fiだ。

Wi-Fiルーターと同じ部屋でPCのリンク速度を確認。Wi-Fi 6で80MHz接続の最大速度を示している
同じPCを別の部屋へ持っていくと、リンク速度が下がった。だが接続は切れておらず使えはする

 メッシュWi-Fiは、複数の対応機器同士をWi-Fiでつなげることで、ユーザーは機器を追加するだけでWi-Fiの通信範囲を広げられるもの。必要に応じて2台、3台、4台と機器を増やし、その分通信範囲を広げられる。

 同様にWi-Fiの通信範囲を広げる機器としては、メッシュWi-Fiのほかに、中継機とWi-Fiアクセスポイントがある。前者は親機との間をWi-Fi接続して通信範囲を広げる点ではメッシュWi-Fiとほぼ同じだ。既存のWi-Fiルーターに追加でき、安価に導入できる一方、接続先のSSIDが親機と違うため、いちいち手動でつなぎ直す必要があるなどのデメリットがある。

 Wi-Fiアクセスポイントは、Wi-Fiルーターと有線LAN接続して通信範囲を広げる、中継機の有線版として利用できるもの。ケーブルが届く限りは距離を問わないメリットはあるものの、有線LANのケーブルを引き回したり、ルーターとは別にWi-Fiの設定を行ったりする必要があり、導入のハードルはより高くなる。

 複数の対応機器を協調して動作するメッシュWi-Fiなら、設定は1回行うだけでよく、1つ1つの機器に対して個別に行う必要がない。機器を追加して通信範囲を広げる場合の設定や設置が簡単なのもメリットだ。ただ、複数の機器を同時に導入する必要があってコストはやや高めだ。これが唯一のデメリットと言っていいだろう。

 最初からWi-Fiルーター1台では家中をカバーし切れないと分かっているなら、メッシュWi-Fiを使えば手間なく快適なWi-Fi通信環境を整えられる。

メッシュWi-Fiの設置や設定は本当に簡単?2台で家中すみずみまで電波が届く!

 ここからは、ASUSの「ZenWiFi AX(XT8)」で、メッシュWi-Fiの使い方を見ていこう。家のあちこちに置くことが前提のためか、メッシュWi-Fi機器には比較的落ち着いたデザインのものが多い。「リビングのWi-Fiを強化したいが、インテリアにそぐわないので置きにくい」と考えているなら、ぜひ対応製品を探してみて欲しい。

ASUS「ZenWiFi AX(XT8)」。2台がセットになっているメッシュWi-Fi製品で、1台のみでも購入できる

 実際に設置するときは、まず本体のうち1台の電源を入れ、モデムなどインターネット回線用のLANケーブルを接続する。こちらをモデムの近くに、もう1台を別の部屋に設置するものとして扱う。セットアップが済むまでは、2台目も近くに置いておくのがいい。

 次にスマートフォンで「ASUS Router」アプリをインストールして起動し、新しいルーターのセットアップを行う。設定するデバイスとして「ASUS ZenWiFiシリーズルーター」を選び、一覧に出てきた「ZenWiFi AX」を選択。

 あとは画面の表示に従って、SSIDやパスワードなどを入力すれば、最適な設定を自動で選んでくれる(もちろん手動での細かい設定も可能)。

「ASUS Router」アプリでセットアップ
設定するルーターを選択
SSIDのパスワードを入力
画面の指示に従えば、設定は数ステップ

 設定が完了したら、2台目を好きな場所へ設置する。1台目からの距離が遠すぎるとWi-Fiの電波が届かなくなるので、「ASUS Router」アプリで接続状態を確認しながら設置場所を決めよう。

 ちなみに、筆者宅の3LDKのマンションで2台を可能な限り離して設置してみたところ、接続状態は「良好」(最もいい状態だと「最良」)となった。元々の通信範囲がかなり広い証拠でもあり、2台あれば、家中すみずみまで安定した電波を届けられそうだ。

 実質1台分の設定で、2台(あるいはそれ以上)の設定が済んでしまうという便利さがお分かりいただけるだろう。

2台を至近距離に置くと、電波状態は「最良」との表示
筆者宅でできる限り距離を離して置くと、「良好」と表示された

 ZenWiFi AX(XT8)では、ゲームなど特定の通信を優先させる「Adaptive QoS」や、不正アクセスから保護するセキュリティ機能「AiProtection」、ペアレンタルコントロール機能なども使用できる。複数台の設定が一元化されるほかは、一般的なWi-Fiルーターと同様の使い方ができると思っていい。

ゲームなど特定の通信を優先させる「Adaptive QoS」が使える
「AiProtection」やペアレンタルコントロール機能なども搭載

メッシュWi-Fiはこんな人におすすめ

 最後に、メッシュWi-Fiをおすすめしたい人をまとめておこう。

  • Wi-Fiルーター1台では電波が弱いと感じている
  • Wi-Fi環境をWi-Fi 6にアップグレードしたい
  • インテリアとの調和を大事にしたい

 ルーター1台の既存Wi-Fi環境では電波が届きにくい、あるいは弱いと感じているなら、メッシュWi-Fiへの置き換えで、通信範囲を簡単に広げられる。

 メッシュWi-Fiは製品の性質上、複数の製品を一度に導入する必要がある。つまり、既存のWi-Fiルーターを撤去するのはほぼ前提と言っていい。であれば、新たにWi-Fi 6環境を構築しようと思っているタイミングが、メッシュWi-Fi導入のベストタイミングと言える。

 ちなみに、今回、例に挙げたASUS製Wi-Fiルーターでは、「AiMesh」という機能に対応している機種が多く、対応機種同士でメッシュWi-Fiを構築できる。Wi-Fiルーター1台で家中をカバーできるかどうか判断しにくい電波状態が微妙な場合は、こういった製品を1台導入して様子を見るのも手だ。

 また、メッシュWi-Fiはシンプルなデザインの製品が多い。リビングのWi-Fi環境を強化したいが、いかにもメカメカしい外見のWi-Fiルーターを置きたくないというときも、うまくインテリアと調和する製品を見つけやすい。有線LANケーブルを引き回さなくて済むのも外見上のメリットだ。

メッシュWi-Fiのエントリーモデル「ZenWiFi AX Mini(XD4)」。コンパクトで設置場所に困らない

 なお、Wi-Fi 6対応のメッシュWi-Fiとしてよりで安価な「ZenWiFi AX Mini(XD4)」もラインアップしている。見た目もコンパクトで設置場所が選びやすいのもメリットだ。

(制作協力:ASUS JAPAN株式会社)

石田 賀津男

ゲームなどのエンターテイメントと、PC・ネットワークなどのIT系の両方にまたがる分野を得意とするフリージャーナリスト。元GAME Watch記者で、2012年に独立。2016年より男児の育児にも奮闘中。個人ウェブサイト「ougi.net(https://ougi.net/)」