山谷剛史のマンスリー・チャイナネット事件簿

中国のインターネット利用者、4億5000万人に ほか~2010年12月


 本連載では、中国のネット関連ニュース(+α)からいくつかピックアップして、中国在住の筆者が“中国に行ったことのない方にもわかりやすく”をモットーに、中国のインターネットにまつわる政府が絡む堅いニュースから三面ニュースまで、それに中国インターネットのトレンドなどをレポートしていきます。

インターネット利用者、4億5000万人に

 中国のインターネット利用者が2010年11月末までに4億5000万人に達したと中共中央対外宣伝弁公室・国務院新聞弁公室主任の王晨氏が発表した。CNNIC(China Internet Network Information Center)によれば2010年6月末時点で4億2000万人(ニュース記事「中国のネット利用者は4億2000万人に、ブロードバンドが3億6000万人超(http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20100720_381370.html)」を参照)なので、7月からの5カ月で3000万人増加したことになる。なお、CNNICの統計は半年に一度発表されており、最新統計はこの1月中旬頃に発表される見込みだ。

 中国の情報産業省にあたる「工業和信息産業部」の2010年11月の統計(http://www.miit.gov.cn/n11293472/n11293832/n11294132/n12858447/13542227.html)によれば、11月末時点でブロードバンド加入数は1億2488万9000(うちADSL加入数は9978万2000)となっている。

Google、2010年の検索ワードランキングを発表、百度は発表せず

 Googleは、世界各国の検索ワードランキングを発表した。日本や、中国における総合ランキング(http://www.google.com/intl/en/press/zeitgeist2010/regions/cn.html)も発表されている。

 中国のランキングは1位から順に、「百度(検索サイト)」「qq(インスタントメッセンジャーを軸にした各種サービス)」「淘宝網(オンラインショッピングサイト)」「4399(ブラウザゲーム)」「hao123(百度配下のリンク集)」「163(ポータルサイト網易)」「uusee(ネットテレビプレーヤー)」「優酷(動画共有サイト)」「土豆網(動画共有サイト)」「開心網(Facebook似のSNSサイト)」となった。また携帯電話による検索では1位から「手机(携帯電話)」「小説」「図片(画像)」「qq」「天気」と続いた。

 中国検索シェアトップの百度は、2008年までは検索ランキングを発表しているが、その後は2年連続で発表をしていない。中国においてGoogleの利用者は百度に比べインターネット利用歴が長く高学歴高収入の傾向がある。

人気のブラウザゲームポータル「4699」

ミニブログ利用者、2010年に急増。「草の根メディアとして利用されている」とレポート

 年末、twitterのようなミニブログサービスの利用者に関するレポートが中国の調査会社各社から発表された。なお、twitterサービス自体は中国ではアクセスを遮断されており、海外のVPNサーバーを経由するなどしない限り、中国国内からはアクセスできない。

 調査結果によるとミニブログサービスの推定利用者数は、下は7500万人から上は1億2500万人までと調査会社によってまちまちな結果になっているが、最も有名な調査会社の易観国際(Analysys International)では7500万人と推定している。

 いずれの調査でも2010年年初は1000万人弱だった点は同一だ。つまり、1年間でおよそ利用者が10倍に、利用率も3%程度から20%前後まで増加したといえる。本連載2010年9月の記事では「ミニブログのアクティブな利用者は2010年末に4600万人に」と予想する記事を紹介したが、数カ月前のこの予想よりもずっと早いスピードで普及しているようだ。

 もともと掲示板やQQにより、不特定多数に話題のトピックが素早く伝播し、話題の人物や事件にニュースメディアが後追いでフォーカスしていたが、2010年のミニブログの本格普及開始により、上海ビル火災のニュースの時のように、情報の伝播速度はいっそう速くなった。

 こうしたミニブログ利用者増を受け、上海のメディア「東方早報」は「政府担当部門はミニブログを注視し、悪性のデマによる政府絡みのマイナスイメージをつけないよう、伝統的なメディアはミニブログと提携してメディアの融合を進めるべき」と提言している。

都市部では、4人に1人がオンラインバンキングを利用

 12月15日に中国金融認証中心が発行した「2010中国電子銀行調査報告」によれば、都市部の地級市(省都+省の一部地域の中心的都市)では、住民の26.7%がPCによるオンラインバンキングを利用している。

 アクティブな利用者は利用者全体の80.7%と高い。また、第三者支払いサービスは地級市住民の19%が利用し、その利用者の8割がオンラインバンキングを利用している。さらに、各利用者の平均利用回数も去年の月4.8回から月5.6回に向上した。ただし、携帯電話によるオンラインバンキング利用者は、回線速度の遅さから利用率は低く、地級市住民の5.3%に留まる。

 また、中国のリサーチ会社「易観国際(Analysys International)」が12月31日に発表したレポートでは、2010年のオンラインペイメント取引総額は前年比93%増となる1兆710億元(約13兆4000億円)と試算する。

 オンラインショッピングとオンラインバンキング・オンラインペイメントの利用が高まる中で、2010年は、2010年8月の本連載で「超級網銀(スーパーネット銀行)がスタート」と書いたように、銀行を跨いだネットバンキングが可能となったほか、クレジットカード兼デビッドカードの「銀聯(Unionpay)」がオンラインで利用できるようになる銀聯在線(http://www.chinapay.com/)が12月にスタートした。

オンラインペイメント利用総額(単位:億元)スーパーネット銀行「銀聯在線」

書籍販売に関する新ルール策定で淘宝網での書籍販売業者に打撃

 12月10日、中国政府新聞出版総署は出版物の販売に関する新ルール「関于促進出版物網絡発行健康発展的通知」を発布した。書籍を販売する業者はネット販売であろうとも「出版物市場管理規定」という規定に従わなければならないとし、その規定の中には「資本金が200万元(約2500万円)、営業面積が50平方メートル以上」を条件としている。

 これにより1人~少人数で運営する店舗が多い、オンラインショッピングサイトの雄「淘宝網」に出店する書籍を扱う各店舗は運営危機に直面した。許可証の取得期限は1月31日で、それ以降は取り締まられる。

電子ブックコンテンツサイトなどで個人情報が晒されていると話題に

 当連載の2010年11月の記事で、海賊版文書コンテンツを公開していると指摘されたことが話題となった百度の「百度文庫」をはじめとした文書共有サイト(電子ブックコンテンツサイト)」だが、翌12月、百度は「百度文庫」に有料コンテンツを販売する「文庫書店(http://wenku.baidu.com/shop/)」をスタートさせた。

 また12月には、「百度文庫」などのサイトで別の問題が発生。Excelファイル限定で「客戸(顧客) 地名」で検索すると、顧客リストが容易に手に入るとして話題となった。報道によれば、8000人の個人情報が漏洩したという。

 近年、どこから番号を入手したのか中国在住の筆者の携帯電話にも、しばしば勧誘の電話がかかるようになった。子供向け教材を購入したら、様々な教育関連企業から勧誘の電話がかかるようになった、と言う中国人はたくさんいる。格差社会の中国では、優良消費者以上に魅力的なのが非常に裕福な経営者(中国語で「老板」)の個人情報リストだ。話題となったことで、特に百度文庫で経営者の被害が注目された。

百度文庫の情報漏洩を報道するテレビのニュース番組百度文庫の有料コンテンツ「文庫書展」

オンラインコンテンツを含むメディアで、英語の省略単語を禁止するお触れ

 中国新聞出版総署は、紙媒体・ネット媒体問わずアルファベットなど外来文字の省略文字を使うことを禁じる「関于進一歩規範出版物文字使用的通知」を発表した。これにより、例えば中国独自のアルファベットを用いたインターネットスラングを書き込むと、その書き込み自身が消される可能性が出てきた。

 中国新聞出版総署ではこの規制の理由を、「言葉の文化を破壊し、社会に悪影響を及ぼさないように、中国語の文字の規範性と純潔性をたもつため」としている。

 多くのインターネット利用者は基本的に、ネットライフが制限されなければ、新しい政府方針に反対することはない。逆に、今回のような中央政府の介入には多くのインターネット利用者が反応、掲示板上でこのお触れに関する不安の書き込みが少なからず確認できる。本連載の2009年6月の記事で紹介したが、政府の規制に関するネット利用者の抵抗としては、フィルタリングソフト「グリーン・ダム」導入義務づけの際に、多くのインターネット利用者が抵抗を見せた例がある。

IE6の利用率は45.2%、Windows XPの利用率は81.8%

 米国のコンサルティング会社「Net Applications」は3日、中国のインターネットユーザーの45.2%が依然としてInternet Exploler 6(IE6)を利用しているというデータを発表した。

 同レポートでは、「多くのユーザーがWindows XP海賊版を利用していることから、ブラウザーをアップデートせず、またWindows 7にもアップデートしようとしない」ことを原因としている。また、同レポートでは中国におけるWindows XP利用者の割合を81.8%としている。この数字は、世界平均57.9%と比べ非常に高い。一方で、Windows 7は世界平均が19.7%であるのに対し、中国では10.3%と低い。

 Windows XPが発売されたのは2001年末。今でこそ4億5000万人のインターネット利用者を抱える中国だが、CNNICが2002年当時に発表したレポート(http://research.cnnic.cn/html/1245044462d620.html)によれば、2001年末のインターネット利用者は3370万人で、ネットに繋がった端末数は1254万台。実に9割以上がWindows XPからインターネットを利用し始めたことになる。

中国コミュニケーションサイト利用は18~30歳が大半

 調査会社「iResearch」は掲示板、SNS、ミニブログなどのコミュニケーションサイトに関する最新の調査結果「中国網絡社区研究報告(iResearch China Social Network Research Report)」を発表した。

 利用者の年齢層で最も多いのが25~30歳で39.5%、続いて18~24歳の34.4%で、すなわち18~30歳で75%近くに達する。18歳~30歳の利用率が高いのはインターネット利用実態と通じるところがあるが、18~24歳の層が最も多いインターネット利用者全体よりはやや利用者層の年齢が高いことが伺える。

 SNSの利用者は掲示板サイトの利用者がほぼ全て利用しており、利用サイト数は「1サイト(18.8%)」「2サイト(41.3%)」「3サイト(25.6%)」と、複数サイト利用が多数派。旧来の掲示板サイトからSNSへの移行率がここまで高い背景としては、掲示板サイトの多くがSNSを導入していることが挙げられる。

 ミニブログに関しては、掲示板サイト利用者の71.7%が利用し、22%が興味を持っている。利用サイト数は「1サイト(48.2%)」「2サイト(34.5%)」「3サイト(12.8%)」と、SNSほどではないものの、ミニブログでも複数サイト利用者は多い。

 これらコミュニケーションサイトへの広告については、「まったくクリックしない」という人は全体の10.8%に過ぎず、残りは「滅多にクリックしない(24.9%)」「時々クリックする(49.2%)」「よくクリックする(15.1%)」となっており、時々またはよくクリックするユーザーが64.3%もいることがわかる。

 また、掲示板サイトでは売買掲示板を設けているサイトもあるが、売買掲示板で売り買いした経験は55.2%が「ある」と回答、半数を超えている。経験がない利用者も、39.7%が「やったことがないが興味あり」と回答、利用に前向きだ。

コミュニティサイト利用年齢層

グーグルの偽広告で著名旅行予約サイトがグーグルを提訴

 ここ1年で利用者が急増している新手の中国国内航空券に強い旅行予約サイト「去〓儿(〓は口へんに那)」(http://www.qunar.com/)。このサイトにそっくりな名前の偽サービスを利用し騙された人からの、中国の消費者センターへの相談が急増した。

 この原因として上がったのがGoogleだ。中国市場から撤退を発表したGoogleは、各地の広告代理店とも契約を解除したものの(Googleからの一方的な契約解除に中国の代理店は損害賠償を請求している)、Google AdSenseとGoogle AdWords は引き続きサービスを続ける中、去〓儿の利用者を狙った悪質な業者が去〓儿になりすましたニセ広告を掲載したため、旅行代金を回収した後チケットを発券しない詐欺事件が多発。「Googleの審査がしっかりしていないからこうなった」と去〓儿は訴える構えだ。

様々な旅行代理店の値段を価格比較サイト風に表示する「去〓儿」

関連情報


2011/1/6 06:00


山谷 剛史
海外専門のITライター。カバー範囲は中国・北欧・インド・東南アジア。さらなるエリア拡大を目指して日々精進中。現在中国滞在中。著書に「新しい中国人」。