山谷剛史のマンスリー・チャイナネット事件簿

中国のインターネット利用者が4億7700万人に ほか
2011年4月


 本連載では、中国のネット関連ニュース(+α)からいくつかピックアップして、中国を取材拠点とする筆者が“中国に行ったことのない方にもわかりやすく”をモットーに、中国のインターネットにまつわる政府が絡む堅いニュースから三面ニュースまで、それに中国インターネットのトレンドなどをレポートしていきます。

中国のインターネット利用者が4億7700万人に

 中国ネットワークインフォメーションセンター(CNNIC)は22日、定期発行物「互聯網発展信息与動態」において、中国における2010年末時点でのインターネット利用状況を発表した。それによると3月末での中国のインターネット利用者は4億7700万人で、総人口に対するインターネット利用率は35.6%。3ヶ月前の定例調査より1970万人増加した。

 オンラインショップ利用者が購入したことがある製品をジャンル別にみると、「アパレル(70.1%)」が7割を超え他ジャンルを大きく引き離してトップとなった。続いて2位から6位までは、「デジタル製品(31.6%)」「本・CD(31.4%)」「オンラインゲームなど各種サービス利用カード(27.7%)」「家具・小物(18.0%)」「化粧品(17.2%)」と続く。

 ジャンル別に支払った金額では、単価の高い「デジタル製品(26.0%)」がトップ。以下「アパレル(24.1%)」「オンラインゲームなど各種サービス利用カード(8.9%)」「家電(8.7%)」「家具・小物(8.6%)」「本・CD(4.7%)」と続いた。

「互聯網発展信息与動態」よりCNドメインの分布「互聯網発展信息与動態」より購入経験のある商品ジャンル

 

東日本大震災で、安価な太陽電池やLED製品など日本への輸出が急増

 企業対企業取引(B2B)サイト最大手で、人気オンラインショッピングサイト「淘宝網(TAOBAO)」の兄弟会社である「阿里巴巴(Alibaba)」。日本でも「アリババ」として展開しているが、同社のデータによれば、震災後第二週(3月17日~23日)の利用者は減少した反面、第三週目から利用者が急増したという。電力問題が特にフォーカスされたためで、中国製の安価な太陽電池やLED製品が普段の数倍~数十倍売れたという。

 そのアリババでは、4月末に米国版サイト「Aliexpress」に、中国製品の中でも中国メーカー製品のみを特集する「Premier Channel」というコンテンツを追加。中国大手メーカー製品の米国市場への売り込みをバックアップする。

 中国電子商務研究中心(中国ECリサーチセンター)が発表した調査報告によれば、中国には9200ものB2Bサイトがあるというが、B2Bサイト全体の取引のうち、63.5%ものシェアを阿里巴巴が占める。残りのシェア36.5%を約9200のサイトで取り合う形となり、2位の環球資源のシェアはわずか7.3%となっている。

 

中国政府「5年内に国民の著作権認知率を8割に」

百度のmp3検索サービスページ

 国家版権局は4月20日、海賊版を「版権工作“十二五”規画」を発表。抽象的な用語が並べられているが、要は「コンテンツは国家の重要な競争のためのリソース。生活の場でも学校や役所などの公の場でも、海賊版をなくそう」という内容。また「版権工作“十二五”規画」によれば、中国国民の著作権に関する認知度は2006年の60.6%から2010年の75%に上がっていて、これを5年内に80%まであげるとしている。

 この発表の後、槍玉にあげられたのが文書共有サービスでも叩かれた百度(Baidu)やP2Pサービスの雄「迅雷」など14サイト。とくに百度に関しては、「mp3検索サービスが海賊版提供行為にあたり違法」だと中国政府文化部から名指しされた。とはいえ、名指しされた百度は何らかの対応を行う動きを現在までのところ見せておらず、mp3検索サービスも変わらず提供している。百度は、5月に「百度听」という名称のmp3サービスの新バージョンを投入するとしているが、この新サービスが回答となるのかもしれない。

 チャットサービスQQを運営する騰訊のポータルサイト「QQ(.com)」では、「百度听で海賊版はなくなるか」と利用者にアンケート調査にを行ったが、89%は「なくならない」と回答している。


iPad向けアプリで海賊版雑誌コンテンツを配信した業者に損害賠償支払命令

 iPadアプリで海賊版コンテンツを配信された版元が、損害賠償を求めて提訴した。中国ではApp Storeで配信されたアプリが著作権侵害で提訴されたのはこれが初めてとなる。

 中国メディア「新京報」は、同社のコンテンツがiPad向けアプリ「中文報刊」で勝手に配信され、しかも毎日リアルタイムに更新されているとして、新京報の運営企業「派博在線」が、アプリを開発した「北京辺思奇」に対して約60万元の損害賠償を求めて提訴した。

 このニュースを紹介するメディアの一部は、海賊版を禁止する条例「信息網絡伝播権保護条例」があるため、原告は勝訴するだろうと予想している。

 

国がネット世論操作業者を批判。取締りへ

 中国のニュースサイトでは、ニュース記事の下にコメント欄があり、読者がコメントを付けられる。このため中国ではネット世論操作業者が堂々と存在しており、ニュースサイトを何年か利用してきた中国人利用者なら多くがその存在を知っている。最近になって、こうした世論操作業者を国営中央テレビ「CCTV(中国中央電視台)」など権威あるメディアが批判しはじめ、ついに中国政府も動き出した。

 工業和信息化部(情報産業省)、公安部、中央外宣方、工商総局などは連名で、ネット世論操作業者をなくそうとする「深入整治非法網絡公関行為専項行働工作方案」というお触れを出し、ネット世論操作業者十数社を名指しで批判した。中国政府は操作業者の動きを抑制することで、「インターネットの秩序が保てる」「良性の競争となる」期待しているようだ。4月末には、各省がこれに基づいて行動を開始。山東省では数千の該当する悪性の情報を削除した、と報道された。

 この政府発表に対し、ネットユーザーの一部は「中国政府の雇われ世論操作業者(ネットスラングで五毛党と呼ばれる)はどうなんだ?」と批判しているのがネットのあちこちで確認できる。

 

銀行各社、オンラインバンキングの安全をアピール

 オンラインバンキング利用が増える一方で、オンラインバンキング窃盗事件も増えている。もちろん銀行側も暗証カードや専用USBセキュリティキーなどで手を打っているのだが、利用者がUSBセキュリティキーでオンラインバンキングにログイン中に窃盗犯が当該口座の預金を振り込むといった事件が発生している。

 こうした中で銀行各社は揃って「2011網銀聨合宣伝年」なるオンラインバンキングの安全性をアピールする活動をスタート。また、銀行単体でもたとえば「深セン(センは土へんに川)発展銀行」は、オンラインバンキング窃盗被害に対して最大100万元まで補償すると発表した。

 一方で、「招商銀行」「中国建設銀行」「中国農業銀行」らはオンラインバンキングでの1回および1日の支払上限金額をより低く設定。窃盗対策となる一方で「これでは航空券など高い買い物ができない!」というユーザーの苦情も出ている。

 

撤退後もGoogleはヘビーユーザーに根強い人気~中国検索市場

 中国の調査会社iResearchは中国検索市場についてのレポート「中国捜索引行業年度監測報告2010-2011年」を発表した。それによると、2010年の中国検索市場は前年比58.5%増となる110億4000万元(1400億円)。

 検索回数について検索サイト別シェアでは、昨年中国から撤退したGoogleのシェアは、昨年の18.9%から14.0%と、下がってはいるもののインターネット暦の長いユーザーを中心に根強い人気があることを改めて数字で示す結果となった。なお、検索トップシェアの百度は、昨年の76.0%から80.6%へとシェアを拡大、Googleが失った4.9%のシェアのほとんどを吸収した形となった。その他の中国検索サイトでは、シェアに大きな変化は見られなかった。

iResearchによる検索サイトシェアiResearchによる検索市場の今までとこれから(単位:億元)iResearchによる総検索回数の推移(単位;億回)

 

オンラインショッピングに特化したブラウザーが登場

ブラウザー「捜狗高速瀏覧器網購専版」のオンラインショッピングサイトの安全・危険表示

 老舗3大ポータルサイトのひとつ、「捜狐(SOHU)」が提供する検索サイト「捜狗(SOGOU)」が、オンラインショッピングに特化したウェブブラウザー「捜狗高速瀏覧器網購専版」をリリースした。訪問したサイトがフィッシングサイトであれば警告し、独自の安全認証が取れたオンラインショッピングサイトであれば安全であることを表示するなど、安全面にこだわったウェブブラウザーだ。

 中国でも他国同様、Internet Explorer、Firefox、Google Chrome、Operaなどのウェブブラウザーが無料で提供されているが、今回の捜狗のウェブブラウザーなど、百度やQQら大手サイトが独自のウェブブラウザーをリリースしており、これら中国産ブラウザーも人気が高いのが中国ウェブブラウザー市場の特徴となっている。


著名ホテルチェーンの600万人の会員情報が盗まれたと報道

 中国で著名なビジネスホテルチェーン「7天連鎖(7days inn)」の会員1600万人のうちの600万人の情報が漏洩した、という情報が広がっている。7天連鎖はこの話が広まるや、その後のメディアの取材に対し「会員データベースは安全だ」とアピール。

 中国ではライバル会社が他社を蹴落とすために風評被害を与えることは、政府が禁止しようとすることからもわかるように日常的にある。このため、こうした情報が広まった場合も、ライバル会社が仕掛けた風評という可能性と、7天連鎖が情報漏えいを隠しているという可能性の両方があり得るので、ユーザーはにわかに判断がつかない。情報の真偽が判明するには、もうしばらく時間が必要かもしれない。

 なお、会員情報漏えいが話題になるということは、一部の消費者の間で個人情報に対する意識が高まってきていることを示している。中国でもユーザー情報保護などについていっそうの対策が求められるようになっていくと思われる。

 

中国の名門大学のインターネット講座が始まる

復旦大学のインターネット講座

 中国の名門大学「復旦大学」のインターネット講座が、老舗3大ポータルサイトのひとつ「網易(NetEase)」との協力でスタートした。網易の動画部門との協力で実現したものだが、大手ポータルのコンテンツとして提供されるだけあって、このインターネット講座のページも動画だけにとどまらず、感想コメント欄や写真やミニブログのコメントの表示など、特集ニュースコンテンツの形式を踏まえたものとなっている。

 大学同士では優秀な学生の獲得競争があり、これを機に、多くの大学がインターネット講座を著名ポータルサイトと組んで公開する流れができる可能性がある。また、中国の世界へのPRとして、テレビや新聞のネット化同様に、大学のインターネット講座化を国が推進していくことも考えられ、他大学や政府の今後の動向が注目される。



関連情報

2011/5/12 09:00


山谷 剛史
海外専門のITライター。カバー範囲は中国・北欧・インド・東南アジア。さらなるエリア拡大を目指して日々精進中。現在中国滞在中。著書に「新しい中国人」。