山谷剛史のマンスリー・チャイナネット事件簿

インターネット利用者は5億3800万人に~2012年7月


  本連載では、中国のネット関連ニュース(+α)からいくつかピックアップして、中国を拠点とする筆者が“中国に行ったことのない方にもわかりやすく”をモットーに、中国のインターネットにまつわる政府が絡む堅いニュースから三面ニュースまで、それに中国インターネットのトレンドなどをレポートしていきます。

インターネット利用者は5億3800万人に

 中国ネットワークインフォメーションセンター(CNNIC)は19日、中国における2012年6月末におけるインターネットの利用状況をまとめた「第30次中国互換網発展状況統計報告」を発表した。2012年6月末時点のインターネット利用者は5億3800万人で、総人口に対するインターネット利用率は39.9%。携帯電話でインターネットを利用する人は3億8800万人となり、携帯電話・スマートフォン経由での利用者上昇が目立つ結果に。また農村部の利用者数は半年前から1464万人増の1億4600万人で、インターネット利用者全体の27.1%を占める結果となった。

 詳しくは「中国のインターネット利用者は5億3800万人。スマートフォン利用者が急増」(http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20120720_548152.html)」の記事でご紹介しているので参照していただきたい。


上海や大連で無料公衆無線LANサービスがスタート

 上海では無料で無線LANが利用できるサービス「i-Shanghai(愛上海)」がスタートした。観光客が集まる上海駅、外灘(バンド)、東方明珠塔周辺、新天地など30カ所で利用でき、年内には300カ所、来年末には450カ所まで増やすという。1日に2時間利用可能。利用には携帯電話でパスワードが書かれたSMSを受信しなければいけないため、中国のSIMカードが必要となる。

 大連の中心「中山区」でも無線公衆無線LANサービスがスタートし拡大している。7月に報じられたニュースによれば、173カ所で利用できるとのこと。銀行やショッピングセンターやデパートやホテルなどをカバーする予定だ。

 これまでも中国全土規模の公衆無線LANサービスはあったが、中国移動(China Mobile)、中国聯通(China Unicom)、中国電信(China Telecom)のいずれかのキャリアを有料で利用するケースが基本だった。一部都市のファーストフード店やカフェで無料公衆無線LANが解放されているが、その附近で悪意を持ったハッカーがよく似たSSIDの無線LANを設置するケースが報告されている。上海や大連でも、こうした問題が登場する可能性がある。

 その大連では、車内に3Gルーターを設置したタクシーが登場したことが地元ニュースで報じられた。3Gルーター設置のタクシーは別の都市での先例が確認できるが、そのニュースでは「犯罪情報を送受信した場合の発信元が特定しにくい」という専門家の指摘が報じられている。

 とはいえ、現在沿岸部の都市を中心に、スマートフォンとタブレットの利用者はますます増えている。無料公衆無線LANサービスの対象地域拡大で、繁華街でますます多くの人がモバイル機器を上手に使いこなしていくだろう。

4インチ以上をアピールする中国電信(ChinaTelecom、CDMA 2000)4インチ以上をアピールする中国聯通(ChinaUnicom、W-CDMA)


淘宝網(TAOBAO)、サイト利用者の都市別利用実態を発表

 中国で最大手のオンラインショッピングサイト「淘宝網(TAOBAO)」は、同サイトがどの都市で利用されているのかを調査。中国国内の2300を超える都市を分類した「中国城市網購発展環境報告」を発表した(URL: http://www.aliresearch.com/?m-cms-q-view-id-73252.html )。淘宝網は、最もよく利用される都市を1級都市として、都市を6つに区分。

 1級都市は上から上海、北京、広州、深セン、2級都市は上から重慶、天津、武漢、南京、成都、瀋陽、仏山、杭州、東莞、蘇州、大連、西安、青島、ハルビン、済南、寧波、鄭州、長沙、無錫、長春、温州、スワトウ、福州、アモイの順となった。

 都市におけるインターネット利用者のうち、淘宝網利用者の割合は、1級都市では34.9%と3人に1人が利用、同じく2級都市では23.4%と4人に1人が利用、3級都市~6級都市では15%前後となった。一方、最近初めて淘宝網を利用した人の傾向を見ると、6級都市が最も前期比で増え、続いて5級都市が続くなど、地方都市で淘宝網が浸透していることも明らかになった。

淘宝網の都市別利用実態


淘宝網(TAOBAO)運営者に逆風

 上記の「淘宝網(TAOBAO)」で、「毎日1万近い店舗がなくなっている」と、中国電子商務研究中心が発表した。報告によれば、現在およそ600万の店舗があり、毎日1万近い店舗が開店しているが、一方で店舗が運営を止めたり、店じまいしているという。このマイナスの理由は、1年間で万のオーダーの消費者の苦情や、それによる淘宝網の処罰の厳しさ、それに突然変わる淘宝網の運営ルールの変更が原因であるという。

 また、同じ7月に淘宝網で人気店4店を運営する24歳の女性店長が過労死した。こうしたケースは初めてではなく、5月には同じく人気店の27歳店長が脳出血で死亡、9月には27歳店長が心臓病で死亡などが報じられている。2011年年末に淘宝網が店舗運営者に対し健康調査を行ったところ、多くが頭痛、手や腕の筋肉痛を訴え、また血尿や甲状腺異常などの症状を持つ率が高いという結果が出ている。

 こうしたニュースに対し、淘宝網はすぐに「専業の人もいれば兼業の人もいる」「店舗を一旦停止しただけで、完全に辞めたわけではない」「これらニュースは誇大表現だ」と反論した。

 これら一連の流れにより、淘宝網運営者の労働実態に注目が集まった。1日9時間労働が当たり前で、常に何人もの顧客と同時にチャットで対応するという。就職活動が日本以上に厳しい中国では、淘宝網のショップを開く学生も少なくないが、こうした実態レポートで学生の起業志向に影響があるかもしれない。


Amazon中国のライバルサイト、電子ブックリーダーをリリース

 中国でAmazon中国(卓越亜馬遜)かそれ以上に人気の書籍メインのオンラインショッピングサイト「当当網(dandan)」が電子ブックリーダー「都看Doucon」を発表した。定価は599元(約7800円)だが、まずは同社サイトで1万台を499元(約6500円)の価格で直売する。E Ink採用の6インチディスプレイ搭載でOSはAndroid2.2。PDF、EPUB、HTML、TXT形式をサポートし、無線LANと3Gで直接同社サイトから本を購入できる。

 中国の電子ブックリーダーでは、手書きパッドの「漢王」がリリースする様々なハードウェアのラインアップで消費者に訴えた電子ブックリーダーや、オンラインゲームベンダー「盛大」がリリースする、コンテンツの多さと本体の安さがアピールポイントの「Bambook」などがある。「都看Doucon」は、同人書籍ではなく、正規版の書籍を多数揃えていることをアピールポイントとしている。

当当網のdoucon(都看)。既に初回分は品切れに


スマートフォン、中国メーカーが存在感を増す

 中国のリサーチ会社「iResearch」はスマートフォンのハードウェアについてまとめた「2012Q2中国智能手机市場季度観測報告」を発表した。

 これによれば、2012年第2四半期のスマートフォン販売台数は前期比31.1%増の3800万台で、特に中国メーカー製の製品が消費者に受け入れられて伸びているという。メーカー別では「サムスン(22.2%)」「レノボ(11.9%)」「ファーウェイ(11.2%)」「酷派(クールパッド、10.7%)」「ZTE(9.5%)」「アップル(7.1%)」「HTC(3.9%)」「モトローラ(3.3%)」「NOKIA(2.5%)」となった。

 ユーザーの利用しているOS別では上から順に、「Android(63.1%)」「symbian(19.9%)」「iOS(11.7%)」「Windows Phone(2.8%)」となった。

 注目度では、サムスン、アップル、中国メーカーの小米が伸びる一方で、ノキアやHTCが下がる結果に。機能面では、カメラ機能では800万画素(42.1%)および500万画素(28%)搭載の製品に、ディスプレイサイズは3.5インチ以上(62.7%)の製品に注目が集まっている。

 実際、一部の都市ではこうしたニーズを受け、4インチ以上のAndroidスマートフォンをキャリア各社がプッシュするという光景が見られる。


WTO、銀聯の独占を指摘。VISAらオンラインペイメント市場を狙う?

 16日、中国の銀行が発行するキャッシュカード全てに強制的に中国のクレジットカード「銀聯(Union Pay)」がつくことについて、WTO(世界貿易機関)は規定に違反しているとして、外国のクレジットカードにも門戸を開放すべしという判決を下した。

 この判決に、中国メディアは、VISAとMASTER CARDが中国のオンラインペイメント市場が魅力的で参入したいのではと分析。確かに、オンラインショッピングサイトはAmazon中国(卓越亜馬遜)や一部の航空会社、一部の第三者支払いサービスのチャージくらいしかVISA、MASTER、JCBなどに対応していない。

 今回の判決により、淘宝網(TAOBAO)など他のオンラインショッピングサイトで銀聯以外のクレジットカードが利用できるようになれば、在中国の外国人にも大変便利に利用できることになるだろう。

 CNNICの統計によれば、スマートフォン利用者急増を背景に、オンラインペイメント利用者は1億8722万人まで上昇している。


中台企業、Siriについて「特許侵害している」とAppleを起訴

 前回の記事でも書いたが、iPad商標訴訟がようやっと終わったと思いきや、今度はSiriについて中国の小i機器人と台湾の成功大学が、特許を無断で利用しているとしてそれぞれ訴訟を行った。

 中国の小i機器人は、質問をすると自動応答するシステムを開発、数年前から各チャットソフトでアカウントを公開していた。また、台湾の成功大学は、研究している言語識別の20の特許を侵害してるとして、Appleを提訴する構えだ。

小i機器人の自動応答サービス。それなりに答えている


微博で競う新浪(Sina)と騰訊(Tencent)、スマートフォン向けチャットアプリで対抗

 老舗ポータルサイト「新浪(Sina)」がスマートフォン向けチャットアプリ「蜜友(Meyou)」をリリースした。テキストに加え、音声や画像をやりとりすることができる。新浪といえばミニブログサービス「新浪微博」が有名だが、この新浪微博のアカウントを利用することが可能。一方新浪とユーザー獲得合戦をしている騰訊(Tencent)は、先行して微信(WeChat)というチャットアプリをリリース、既に同様の機能で1億を超えるユーザーを抱える。

 中国では騰訊(Tencent)のQQを、PCとスマートフォン両方で利用する人がまだまだメジャーだ。とはいえ日本ではLINEも人気だし、この類のアプリが影響力ある両社のアピールにより、一気に普及していくかもしれない。

19歳以上に限れば、88.81%が微博アカウントを所持しているというレポートも


NTTドコモ、百度と協業しモバイルコンテンツ展開へ

 中国の老舗ポータルサイト「新浪(Sina)」「捜狐(SOHU)」「網易(NetEase)」「騰訊(Tencent)」はそれぞれモバイルでも多くの利用者を集めるべく、アプリの開発や、コンテンツの拡充を行っている。ロンドンオリンピックのコンテンツでも各社が競い合い、その結果網易が最も利用者が多かったようだ。

 こうした中、NTTドコモは13日、百度との合弁会社「百度移信網絡技術(北京)有限公司」への出資が完了したと発表。百度移信は百度のプラットフォームと、NTTドコモが培った付加価値サービスを活用し、中国の携帯電話向けサービスやデジタルコンテンツを提供するとの方針を発表している。これについては、詳しくは「NTTドコモ、Baiduとの合弁会社に出資完了、中国本土でコンテンツなど展開」(http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20120713_546767.html)の記事でご紹介しているので参照していただきたい。



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2012/8/10 06:00


山谷 剛史
海外専門のITライター。カバー範囲は中国・北欧・インド・東南アジア。さらなるエリア拡大を目指して日々精進中。現在中国滞在中。著書に「新しい中国人」。