「あなたのWi-Fi改善します」by NETGEAR

読者の「鉄筋コンクリート造でWi-Fiが厳しい」に「WAX610」投入で劇的な効果?

【第3回】業務用ならではのPoE対応と管理ツール「Insight」は家庭内ネットワークにも最適

業務用製品の「WAX610」は家庭でどう有効に機能する?
S氏宅の間取り
導入機材はネットギアの法人向け製品「AX1800 INSIGHT アプリ&クラウド ワイヤレスアクセスポイント WAX610」を7台

 高速な固定回線を契約しているはずなのに、思ったほど速度が出ない、つながらない、不安定で満足にインターネットが使えない……。もしかしたら、それはWi-Fiルーターが原因なのかも!?

 「あなたのWi-Fi改善します」は、そんな悩みを持つ読者に、実際にネットギアのWi-Fi 6対応ルーターを使ってWi-Fi環境を改善してもらおうというモニター企画。ご自宅にINTERNET Watch編集部がお邪魔して、その環境に最適なWi-Fiルーターに置き換え、問題を解決し、ネットワークの改善を図ります。

 ……と言いながらも第3回目は、コロナ禍の緊急事態宣言まっただなかでお邪魔することができず、ユーザー様ご自身にセッティングしていただくことになりました。導入したのはコンシューマー向けのメッシュWi-Fiルーター、「Orbi」ではなく、ネットギアの法人向け製品の1つ、Wi-Fi 6&メッシュネットワーク対応の「AX1800 INSIGHT アプリ&クラウド ワイヤレスアクセスポイント WAX610」(以下WAX610)というアクセスポイントです。

 Wi-Fiネットワークの状況としては、おそらくこれまでで最もシビアな鉄筋コンクリート造の環境。そこでなぜ業務用製品を選ぶことになったのか、一般の住宅で果たして業務用製品が有効に機能するものなのか、気になるところです。個人ユーザーではなかなか体験できない製品だけに、興味深い事例になりました。

※緊急事態宣言時のため、取り付けや設定はライター/編集部のリモート立会いのもと、当選者に行っていただき、取材もリモートにて実施しております。

ユーザープロフィール

・鉄筋コンクリート造一戸建てに居住
・S氏本人、妻、子供(6歳以下)2人、義父母の6人暮らし
・「NURO 光」の光回線(下り最大2Gbps)を利用

抱えている課題

・鉄筋コンクリート造で無線メッシュネットワークが届きにくい
・住宅密集地のため近隣住居のWi-Fi電波で混雑している
・Wi-Fiがつながらず、スマートフォンはLTEで使うことがほとんど
・義父母の仕事場も兼ねており、留守時のネットワークトラブル対応に不安

Wi-Fiに厳しい鉄筋コンクリート造、家の中でも「LTEオン」が習慣に……

 今回のお宅は、鉄筋コンクリート造3階建て。しかも、以前はクリニックとして使われていた建物は見るからにしっかりした作りで、Wi-Fi的な視点では「いかにも大変そう」な環境です。

 現在の利用状況は、1階の一部と3階が奥様のご両親の仕事場・住居、2階が自分たちの住まいになっており、全体としては二世帯住宅となっています。

 なお、クリニックからのリフォーム時には壁の中にLANケーブルを通してあり、要所で有線LAN接続できるようになっていて、数年前には他社製のメッシュネットワーク対応Wi-Fiルーターも4台導入されています。

 有線LANが使えるおかげで、S氏自身や両親の仕事用パソコンに対しては最低限のネットワーク環境を提供できていたものの、コロナ禍でS氏の在宅勤務が続いたことにより、改めてWi-Fi環境の脆弱さが浮き彫りになりました。Wi-Fiルーターがある部屋では通信できても、別の部屋に移動してしまうとほとんど届かず、通信が不可能になっていたのです。

 1階はもちろん、住居として使用している2階と3階では、寝室もリビングもキッチンも、Wi-Fiの利用はほぼ不可能。そのため、自宅でスマートフォンを使うときはLTEにしておくのが習慣化しており、キャリアのデータプランも家族全員、大容量タイプを契約していました。せっかくの2Gbpsのインターネット回線を全く生かせず、「高速回線のはずなのに、Wi-Fiをオフにして使う敗北感たるや……」と、S氏は半分冗談、半分本気で悔しさをにじませます。

 スマホだけでなく、リビングにあるApple TVなどのメディアデバイスももちろんWi-Fiが使えないため、ネットワークスイッチなども組み合わせて有線LAN接続。奥様が時々使うノートPCにいたっては、部屋を横断するようにLANケーブルを一時的に引っ張ってきて、有線接続でしのいでいました。従来環境の電波強度を計測したところでは、以下のような状況です。

交換前
既存ルーター使用時の各ポイントにおける電波強度

 各部屋が壁で阻まれているのに加え、マンションが林立する住宅密集地にあるためにWi-Fi電波が混雑していることも、通信しにくい一因になっていると考えられました。従来のルーターは4台とも有線LAN接続でメッシュネットワークを構築していたため、純粋に、スマホなどの子機とルーターの間の無線通信がボトルネックになっているのは間違いありません。

 したがって、ネットワーク環境の改善にあたっては、無線メッシュネットワークに頼ることはできませんでした。アクセスポイントを増やしてメッシュを密にしたところで状況はおそらくそれほど変わりません。そもそもコンシューマー向けのWi-Fiルーターで構築できるメッシュネットワークは、せいぜい4、5台程度まで。今回のように階数が多く部屋ごとにルーターを設置しなければならない(それでも改善できるとは限らない)環境では、より多くの台数が必要になります。

【どう解決するか?】設置の自由度が高く、多くの台数で連携可能な法人向けアクセスポイント

「WAX610」はアクセスポイントなので、NURO 光のルーターを残す

 この難しい環境でどう対策するのがベストなのか。最終的に出した結論が、ネットギアが法人向けに販売しているアクセスポイント製品「WAX610」を導入することでした。

 オフィスのような広いフロアで、多くのユーザーが同時接続することを想定した業務用製品のWAX610には、コンシューマー向けの製品にはない特徴がいくつかあります。なかでも大きな違いは「PoE」(Power over Ethernet)という機能を搭載していること。正確には「IEEE 802.3at」(PoE+)と呼ばれる規格に対応し、LANケーブルを通じてほかの機器に電力を供給できる(もしくは電力供給を受けられる)というものです。

 たとえば、同じようにPoEに対応するネットワークスイッチを用意し、そこからLANケーブルでWAX610に接続すれば、WAX610はACアダプターを接続する必要がなくなります。この「LANケーブルを1本つなげば動作する」というのは、オフィスはもちろんのこと、住宅でも実は大事な部分です。

PoEポートを搭載するスイッチ「GC108PP」を2台用意。これによりPoE対応機器同士では、LANケーブル1本で通信と電力供給が可能
コンパクトで薄型なボディの裏面にはPoE対応のポートを持つため、PoEに対応させればLANケーブル1本で電源供給までできる。なお別売の電源アダプターでも動作可能

 メッシュWi-Fiルーターを最適な場所に設置しようとしたら、電源コンセントが近くになかったために、泣く泣く電源が届く別の場所に置くことになった、という経験はないでしょうか。一般的なWi-Fiルーターはこのように電源コンセントの位置に左右されがちで、メッシュネットワークの利点を最大限に生かせないケースも少なくありません。

 また、LANケーブル(CAT5eなど)の場合、機器間距離を最長100mまでとることができます。長いケーブルで余裕をもって配線できるため、機器の設置の自由度はさらに高まります。それに対して電源ケーブルは、延長コードを使わない限りはそこまで長くすることはできません。たとえそのようにして敷設は可能だとしても、LANケーブルと電源(延長)ケーブルの2本を壁や床に長々と引き回すのは、快適に過ごしたい生活空間ではできるだけ避けたいものです。

 薄型で目立ちにくいタイプのLANケーブルが今では安価に手に入ることもあり、配線を目立たせず、電源コンセント位置に影響されない自由度の高い設置方法を検討できるという点で、PoE対応のWAX610を選ぶメリットは家庭でも小さくないと言えます。

リモートから監視・制御できる「Insight」対応

 もう1つのWAX610の特徴は、ネットギアの業務用ネットワーク製品を管理するためのツール「Insight」を利用できることです。Insightは独自のクラウドを通じて、WAX610をはじめとするネットワーク機器の管理・制御を行えるもので、LAN内だけでなくリモートからのアクセスも可能です。

ネットギアの業務用ネットワーク製品のリモート管理などが可能になる「Insight」アプリ

 このInsightを使うことで、WAX610の初期設定やメッシュネットワークの構築・最適化、機器に対する各種操作と状態確認などが行えます。利用にはサブスクリプション契約が必要になり、機器1台あたり年間1125円~を支払う必要がありますが、その分機能は強力です。

 追加のアクセスポイントをLANケーブルで接続し、電源を入れるだけでアプリ上で認識し、ほとんどワンタップで既存のメッシュネットワークに追加していけます。また、複数のアクセスポイントのWi-Fi電波がエリア一帯に最適に届くように、個別に電波出力を自動制御する仕組みも備えています。これにより最小限の台数構成で効率的なメッシュネットワークを構築でき、しかも電力消費を可能な限り抑えつつ、どこにいても高速通信が実現するとのこと。

 さらに、新たなWi-Fi機器がネットワークに接続したとき、あるいはネットワーク内の機器がオフラインになったときなどには通知が届き、ログにも残るため、何らかの異常が発生した際には即座に原因の把握に向けて対処できます。もちろんこれらの機能は自宅から離れたリモートからでも同じように利用できます。

InsightアプリからはWAX610本体のランプを強制的に消灯することも可能。寝室などに設置した場合、夜中はランプがまぶしく感じることもあるため、「かゆいところに手が届くこうした細かい機能はうれしい」とS氏

【導入結果】3フロアを7台でカバー、大幅速度アップで夢膨らむ、Amazon Echo Showなどの活用も……

 S氏宅ではこのWAX610を各フロアに2~3台ずつ、計7台を設置。同時にPoE対応スイッチも2台導入しました。7台のWAX610のうち6台は有線LANケーブルで接続してメッシュ化。3階にある1台はLANケーブルの届かない場所にあるため、そこだけ無線LANによるメッシュネットワークとしました。

 WAX610の導入前後で宅内ネットワークの速度はどう変わったのでしょうか。電波強度とiPerf3によるデータ転送速度の計測結果は以下の通りです。

交換後
WAX610導入後の各ポイントの電波強度
iPerf3によるLAN内速度計測結果

 これを見ると、どの場所でも通信速度が大幅にアップしており、それまで2桁Mbps、あるいは1桁Mbpsに留まっていた箇所も余裕で3桁Mbpsを記録するようになりました。アクセスポイント間の通信経路、いわゆるバックホールをほぼすべて有線LANで統一して、フロア間、部屋間の壁の有無とは関係なしに通信できるようにしたのは、やはり今回のネットワーク構築の肝と言えるでしょう。

Wi-Fiがほとんど届かず有線LAN頼みだった1階事務所。WAX610を設置したことで下り約670Mbpsという最大の改善幅を達成した

 実際の使用感としても、WAX610に置き換えた後は、どの部屋でも高強度でWi-Fi電波を捉えることができ、S氏は「家族も含めLTE回線に切り替える必要がなくなったので、最近始まった低価格のキャリアプランに乗り換えてもいいかも、と考えている」と話しました。なにより、WAX610設置後にZoomを使ってオンライン取材を実施した際には、S氏がWi-Fiに繋いだiPhoneを持って、フロア間を移動しながら状況報告してくれましたが、その間にも映像が途切れることなく届いていたのは、特にネットワーク改善の効果を実感するところでした。

S氏の書斎となっている2階の部屋も600Mbps以上に
WA610の導入で2倍の速度になった2階の寝室
3階の寝室も大幅な速度アップ

 また、2階リビングで有線LAN接続していたApple TVなどのメディアデバイスも、Wi-Fi接続で快適に視聴できるようになりました。これまで電波が一切届かなかったため考えもしなかった「浴室でのお風呂スマホも、これからは楽しみたい」ともコメント。「電波の届く・届かないの心配がなくなったので、これからはスマートホーム機器も充実させていきたい」という欲求も、自然と湧いてきたようです。

 「確実にどこでもWi-Fiがつながる安心感があるので、いろいろなシナリオが考えられるようになりますね」と話し、Amazon Echo Showのようなスマートディスプレイを複数台導入して家庭内の内線代わりにしたり、まだ幼い子供の見守り用カメラにしたり、といったことも追々考えていきたいとか。

3階リビング近くの1箇所だけは有線LANが引けなかったため、無線LANでメッシュ化

一般のメッシュ機器では対応できない環境なら業務用製品も検討の価値あり

 今回はS氏自身の手で機器セッティングを実施していただきましたが、管理ツールのInsightは「使い方が簡単で、機器追加やメッシュネットワークの構築はほとんど自動的に完了してしまった」のだそう。

 仕事の都合で遠方への出張も少なくなかったという同氏ですが、今後はもし出張中に宅内ネットワークにトラブルがあったとしても、リモートから何が起こっているのかを確認でき、場合によっては原因を突き止めてトラブル解消にもつなげられるため、安心感が高いとも話していました。

 業務用製品ならではのPoE対応についても、そのメリットを存分に味わうことができているよう。「以前はルーターを棚に乱雑に置いていただけででしたが、LANケーブル1本で済むうえに本体サイズがコンパクトなので、壁に目立たずに設置できます。家族からも見た目がすっきりしたと好評です」とし、「長いLANケーブルが使えるため、できるだけ壁の高い位置に本体を設置して、電波を届きやすくすることもできます」とも話していました。

PoE対応によりLANケーブルの接続のみで設置可能に。カーテンボックスに隠れるようにすることで、配線自体も目立たなくなっている

 さらにS氏は「鉄筋コンクリート造だと、フロアごとに別SSIDに設定したアクセスポイントを置くことが多いと思います。でもその場合、たとえば3階に移動したのに2階のアクセスポイントにつながったままで、実質通信できないこともあります」とし、「今回のように有線でメッシュ化することで、そういった不都合も一切なくなるのがいいですよね」と、メッシュネットワークのメリットを再認識していました。

 WAX610は、サブスクリプションサービスのInsightを利用することが前提となる業務用製品です。年間1台あたり1000円余りとはいえ継続的に料金がかかる点は、個人宅で使用するにあたっては大きなハードルの1つかもしれません。しかし、今回のケースで言えば、家族全員のスマホの料金プランを見直すこともできますし、鉄筋コンクリート造3階建てのように、多数のアクセスポイントを使ってメッシュネットワークを構築したい場合や、PoE対応による設置の簡便さを重視するのであれば、家庭でもこうした業務用製品を検討するのも選択肢の1つではないでしょうか。

(協力:ネットギアジャパン)