読めば身に付くネットリテラシー
ネット詐欺はなくならない! 全員がリテラシーを身に付けて自衛する時代
2025年5月23日 06:00
インターネットが生活に欠かせないものになり、シニア層での活用も一層進んでいます。しかし、その便利さの裏に大きなリスクも潜んでいます。ネット詐欺の手口は日に日に巧妙になり、その被害は残念ながら増え続けています。
「自分は大丈夫」と思っていませんか? でも、サイバー犯罪のプロたちは、あの手この手で私たちのお金や情報を狙っています。今回は、なぜネット詐欺がなくならないのか、そして私たちがどうすれば身を守れるのかを解説します。
壊滅が難しいサイバー犯罪組織、次々と新たな手口も
ニュースで「フィッシング詐欺」や「投資詐欺」「ロマンス詐欺」といった言葉を耳にしたことがあるかもしれません。これらは代表的なネット詐欺の手口です。
警察庁が今年3月に発表した報告書によると、2024年のフィッシング報告件数は171万8036件で増加傾向が継続。インターネットバンキングの不正送金事犯の発生件数は4369件、被害総額は86億9000万円で、その手口の9割がフィッシングなのだそうです。また、同じく2024年のSNS型投資・ロマンス詐欺被害額は約1268億円、特殊詐欺被害額は約721億5000万円、合計で約2000億円と過去最大規模となりました。被害は年々拡大し続けており、誰もが狙われる可能性があるのが現実なのです。
警察は何をしているんだ、と思われるかもしれませんが、もちろんどんどんサイバー犯罪者を摘発しています。しかし、現代のサイバー犯罪組織は驚くほど高度に組織化され、役割分担が徹底されているのです。マルウェアの開発から攻撃の実行、インフラの管理、そして得た不正な資金の洗浄に至るまで、それぞれを専門とするメンバーが連携し、効率的に犯罪を遂行します。これにより、攻撃はより巧妙かつ大規模になり、被害が深刻化しているのです。
また、物理的な拠点や厳格な上下関係ではなく、ネット上で緩やかにつながっていることも特徴として挙げられます。メンバー同士は匿名性の高いプラットフォームで連絡を取り合い、互いの素性を知らないまま活動することも珍しくありません。国境を越えて離れた場所にいるメンバーが連携し合うことも容易で、その実態の把握を極めて困難にしており、なかなか犯罪組織を完全に壊滅させることができないのです。
サイバー犯罪者たちは、業界の対策が進んで人々がだまされにくくなると、すぐに新しい手口を考え出します。例えば、以前にフィッシング詐欺が流行したときには、対策として「URLを確認しましょう」などと解説していました。すると、例えば「Google.com」なら「Go0Gle.com」のように、「o」と「0」などの紛らわしい文字列に置き換えたドメイン名を使ってだますようになりました。
サポート詐欺も、以前はブラウザーの画面に偽の警告画面が出て、数万円の電子マネーを遅らせるのが主流でしたが、もっと稼ぐために電話番号を掲示し、電話させるように手口が変化しました。電話で遠隔操作ソフトをインストールさせ、PCを乗っ取り、ネットバンキングに不正アクセスするような事件が起きています。
国際ロマンス詐欺では、以前は詐欺を見抜くための方法として、相手の「写真をもらう」「電話をする」「ビデオ通話をする」といったテクニックがあったのですが、今では生成AIで偽の映像や音声を簡単に作ることができてしまいます。
私たちはどうすればいいのか? 基本的な4つの心掛け
では、私たちはどうすればよいのでしょうか? 実は、答はシンプルです。ネットリテラシーを身に付けることが最も重要な対策なのです。ネットリテラシーとは、インターネットを安全に使うための基本的な知識や判断力のことです。特別な技術は必要ありません。以下のような基本的なことを心掛けるだけで、サイバー犯罪の被害に遭うリスクを大幅に減らすことができます。
1)怪しいメールやメッセージに注意する
「おめでとうございます! 100万円が当選しました」「緊急:あなたのアカウントがロックされます」といったメッセージは要注意です。激安商品などの美味しい話も疑いましょう。ましてや、うさん臭い儲け話に乗ろうとしてはいけません。冷静に考えて、本当に信頼できる送信元からのメッセージかどうか確認しましょう。
2)パスワードは使い回さない
同じパスワードを複数のサービスで使うのは、家中の鍵を全部同じにするようなものです。1つ盗まれたら、全部の部屋に入られてしまいます。そして、可能な限り、多要素認証を有効にしましょう。有名なネットサービスの多くは多要素認証に対応しています。
3)定期的なアップデートを行う
スマートフォンやPCのアップデートは面倒に感じるかもしれません。しかし、セキュリティの穴を塞ぐ修理のようなものと考え、必ず実施しましょう。
4)「おかしいな」と思ったら立ち止まる
急かされて判断を迫られたり、通常とは違う手続きを求められたりしたら、一度立ち止まって考えてください。詐欺師は私たちを焦らせて、正常な判断力を奪おうとします。必ず、家族や知人、消費生活センター、警察などに相談しましょう。
インターネットは私たちの生活を便利にしてくれますが、使い方を間違えれば危険な目に遭うこともあります。クルマの運転と同じです。交通ルールを知らずに運転すれば事故を起こしますが、きちんと学んで注意深く運転すれば、安全に目的地に到着できます。
ネットリテラシーは、インターネットという道路を安全に走るための運転免許のようなものです。一人一人がこの“免許”を持つことで、社会全体の安全性が高まります。警察や専門家だけに任せるのではなく、私たち全員がネットリテラシーを身に付けることで、詐欺師たちが活動しにくい社会を作ることができます。ネット詐欺が儲かるからサイバー犯罪者たちがそこに群がってくるのです。儲からなくなれば散り散りになることでしょう。
被害が起きてから対処するのではなく、被害を未然に防ぐ。これが、進化し続けるネット詐欺に立ち向かう最も効果的な方法なのです。今日から、あなたもネットリテラシーを高める一歩を踏み出してみませんか?
高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。
※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと