期待のネット新技術
「IFTTT」をはじめとした、各種サービスをつなぐクラウド連携サービス
【スマートスピーカーの裏側に迫る】(第4回)
2018年3月27日 06:00
スマートスピーカーは“AIスピーカー”とも呼ばれ、声で呼び掛けて質問すると、応答を返してくれるもの。AmazonやGoogle、LINE、Appleなどが発売しているが、その裏側では、どうやって質問に対して音声で応答しているのだろうか? 今回は、スマートスピーカーでの利用が可能なサービスとして、「IFTTT」をはじめとしたサードパーティーが提供するものについて解説する。(編集部)
前回までに、フロントエンドとバックエンドの2つのサービスが、それぞれ「ほぼ」独立に成立しているという話を紹介した。フロントエンド側が、ほぼスマートスピーカーとクラウドサービスが1対1に対応しているのに対し、バックエンド側は、ほとんどの機器がそれぞれ独自のソリューションでフロントエンドとつながっている関係で、順列組み合わせというか、ほぼ何でもありという状況になっており、すでに混沌としつつある。
複数のサービスをつなぐ仕組みを提供する「IFTTT」
こうした混沌とした状況に対するソリューションはないのか? というと、それを意図して開発されたわけではないにせよ、結果的に解決策となり得るサービスがいくつか存在している。ただ、一歩間違うと、より混沌とする可能性もあるわけだが。
複数のサービスをつなぐ仕組みを提供するサービスのうち、最も有名なのは「IFTTT(イフト)」だろう。IFTTTそのものは、さまざまなサービスを連携するものとして、スマートスピーカー登場以前の2011年にLinden Tibbets氏によって開発されている。
IFTTT(イフト)という名前は、「IF(もし) This(入力) Then(ならば) That(出力)」の頭文字を取ったものだが、「This」と「That」には、IFTTTがサポートするさまざまなサービスを登録できる。例えば「ピザのデリバリーが出発したら、玄関の照明を点ける」「Evernoteに何かアップロードしたら、それをSlackに投稿する」というように、ユーザーのニーズにあわせて、複数のサービスを連携させることができる。
このうち、Thisの中には当然スマートスピーカーも入っている。原稿執筆時点でサポートされている「Voice Assistants Service」は、「Google Assistant」、「Jibo」、「Amazon Alexa」、「Cortana」、「Invoxia Triby」の5製品だ。
Siriが対応するのはAppleのサービスに限られるため、直接には対応していないが、例えば「Evernote」のように、そのサービス自体がSiriに対応していれば、これをIFTTTで連携させるかたちでの利用が可能だ。
このようにIFTTTを使えば、あくまでIFTTTが対応しているサービスに限られるが、本来対応していないサービスでも、スマートスピーカーにリクエストを出すだけで利用できることになる。例えばGoogle Assistantにもいくつかの「レシピ」が登録されている。
レシピとは、ThisとThatに対するIFとThenを記述したもので、第2回で説明したAlaxa/Cortana/ClovaのSkillや、「Actions on Google」に相当するものである。このレシピは、機器メーカーあるいはサービスプロバイダーが提供するもののほか、自分で作ることもできる。
現状は、スマートスピーカーあるいはスマートホームが、立ち上がったばかりで発展途上となるため、メーカーのサポートはどうしても遅れがちだし、メーカーの提供するものが自分のニーズに合うとは限らない。当面は自分で何とかするのが一番早道であり、IFTTTは、その際に非常に便利なサービスである。
IFTTTとの連携でスマートスピーカーから操作できる「スマートリモートコントローラー」
このIFTTTとも連携できるが、単体での動作も可能なスマートリモートコントローラーについては、すでにいくつかの製品が発売されている。これは、スマート化されていない従来型のエアコンやテレビ、照明などの機器に対して、機器のリモコンに代わって赤外線などで制御できるようにするものだ。「Nature Remo」はその一例で、さまざまな家電製品のリモコンパターンを記憶しており、スマートフォンやスマートスピーカーからのリクエストで、家電製品のオン/オフをはじめとした操作を行うことができる。
それ以前には、汎用(という言い方も変だが)のネットワークリモコンキットとでも言うべき「IRkit」というオープンソースデバイスがあり、Amazon.co.jpなどでも販売されていた(現在は販売終了)。これをもう少し家電制御向けに振ったのがNature Remoという位置付けになるかと思う。似たようなものに「eRemote」があり、出荷はこちらの方が先だ。こうしたスマートリモートコントローラーは、従来型家電機器とスマートスピーカーをつなぐ際に欠かせない。
ちなみにeRemoteの販売元である株式会社リンクジャパンでは、eRemoteとは逆に、温度/湿度/照度/音/空気質の測定を行う「eSensor」という製品もリリースしている。ほかにも「iRemocon」、「RS-WFIREX3」、「Magic Cube」、「sRemo-R」など、市場にはさまざまなコントローラー製品が増えつつある。
もっとプリミティブなもので言えば、例えば韓国のNaranが提供する「Microbot Push」のようなものもある。これは「物理的にボタンを押してくれる」デバイスで、例えば自宅の照明のスイッチに仕掛けておけば、スマートライトでも何でもない普通の蛍光灯をリモートで制御することすらできる。原稿執筆時点では、同社のサイトでは在庫切れになっているが、Amazon.co.jpでは購入可能だ。
ここまでご紹介したものはほんの一例であり、現在は機能が足りていないものもある。例えばIFTTTの場合、Google Assistantに対してThisには対応しているが、Thatには対応していない。このため、「照明を点けて」と呼びかけて点灯することはできても、外部の照度センサーをトリガーにしてGoogle Homeに「朝になりました」と喋らせることはできない。では、IFTTTと同種のサービスである「Zapier」や「myThings」ではできるかというと、“現時点では”そうでもなかったりして「ぐぬぬ」になるわけだ。
ただ、何しろ猛烈な勢いで新製品が出てくる上に、すぐさまサービスの改訂や追加がなされる業界なだけに、先のことを見通すのは難しい。もっと言えば、今すぐスマートスピーカーを購入しても、まだできることはかなり限られるだろう。ただし、逆に言えば、まだ自分であれこれ工夫する余地はたっぷりある。
それこそスマートリモコンとかスマートプッシュボタンの類に関しては、自分で作ることもできる。例えば、Raspberry Piにサーボモーターを組み合わせるだけでも、いろいろなことができそうだ。そういうDIYというかMakerの精神を持ち合わせて臨めば、楽しいというかそのくらい整理されていない混沌な状況にある、ということは理解しておく必要がある。
「それは面倒」という人は、もうしばらくスマートスピーカーの導入は見送った方が賢明だ。バックエンド側が充実するには、まだ年単位の時間が掛かりそうである。
今回は、「IFTTT」をはじめとした、サードパーティーが提供するサービスについて解説しました。次回は、「アクセス回線10Gbpsへの道」の番外編第2回として、10Gbps接続サービス「auひかり ホーム10ギガ」を提供しているKDDI株式会社へのインタビューをお届けする予定です。