清水理史の「イニシャルB」
NASのバックアップにUSB 3.0対応DASを使う TerraMaster D4-310
2016年9月5日 06:00
TerraMasterから登場した「D4-310」は、USB接続で利用するDAS(Direct Attached Storage)だ。機能がシンプルで、ネットワークでの共有もできないが、その分、安く、速く、容量も大きい。ビデオ編集などの特定用途での利用やNASのバックアップ用などへの活用も期待できる製品となっている。
NASのバックアップ先を考える
先日、NASの海外向け掲示板を覗いていて考えさせられた。
質問の内容はこうだ。
「NASのファイルシステムをBtrfsに変更したいが、現状のデータが27TB(!)もある。データを保ったまま移行できるか?」
答えは、無情にも「No」で、ほとんどの回答者がデータをバックアップし、システムの再構成をすることをアドバイスしていた。
すると、このスレッドは、壮絶なるバックアップ論議へと展開する。果たして、27TBものデータをどうバックアップするのが効率的なのか? と。
個人で使っている筆者の環境など、このスレの質問者の足元にも及ばないが、それでもメインで使っているNASのデータ使用量は約6.7TB。
ダウンロードしたファイルや選別せずに放り込んだ写真やビデオ、玄関先のカメラが動体検知した際の録画映像など、不要なデータも多いので、整理すればもう少し減らせそうだが、この時点でもすでに全データを市販のHDDやクラウドにバックアップするのは、少々、難しい状況となっている。
もちろん、NASを2台用意して、いざというときにフェイルオーバーするようにして……。なんて方法もありだが、コストを考えるとちょっと厳しい。
そこで、今回購入したのが、TerraMasterの「D4-310」だ。海外では知名度のある製品だが、最近国内のAmazon.co.jpなどでも入手可能になった製品で、従来の「D4-310」から機能強化された最新版のDASとなる。
4つのベイのうち、HDD1とHDD2のペア、HDD3とHDD4のペアで個別にRAIDを構成できる仕様になっており、なかなかユニークな製品となっている。
アップグレード内容を考えると2000円の価格差は安い
それでは、製品を見ていこう。ケースはアルミ合金の質感をそのまま使った高級感のある外観で、サイズは高さ227×奥行225×高さ136mm。一般的な4ベイNASと同等のサイズ感と考えていいだろう。
PCやNASとの接続に利用するインターフェイスはUSBとなっており、背面に搭載されているUSB type-Cポートを利用して、付属のケーブルで機器と接続する。
Type-Cが採用されている点、Amazonの販売ページで10Gbps対応となっていることから、USB 3.1対応のようにも思えるが、同社の製品情報ページを確認する限りでは、対応する規格はUSB 3.0で、インターフェイスの最大転送速度も5Gbpsとなっている。
背面は、type-Cに加えて、一般的なType-Aも2ポート搭載されているが、これは本体に内蔵されたUSBハブ機能を利用するためのもの。例えば、Type-Aポートにキーボードやマウスを接続しておけば、Type-Cで接続したPCから、このキーボードやマウスを利用できる。
なお、2000円ほど安い価格で旧モデルのD4-300も購入可能だが、D4-300にはこのType-Aポートは搭載されない。
このほか、最新版のD4-310では、背面に設定用のダイヤルが搭載されており、これを回転させて上下左右のいずれかのポジションに設定することで、RAIDのモードを設定可能となっている。
具体的には設定については後述するが、旧D4-300ではRAIDの構成のために別途PC用のソフトウェアを利用する必要があったことを考えると、ハードウェアのみで構成可能になったメリットは大きいだろう。2000円の価格差はこれで十分に元が取れるだろう。
ハードディスクを装着しRAIDを構成する
ハードディスクは、フロントに用意されている4つのベイに搭載する。ネジで固定するタイプのトレイなので、装着は少々面倒だが、小型のプラスドライバーが同梱されており(弱いがマグネット)、固定に苦労はしないだろう。
RAIDのアレイモードについては、前述したように背面のダイヤルを利用して設定する。背面に用意されている2つのダイヤルのうち、上がRAID#2(HDD3+HDD4)用、下がRAID#1(HDD1+HDD2)用となっており、この方向によって「SINGLE」「RAID1」「RAID0」「JBOD」を選択できる。
標準では両方ともSINGLEに設定されており、HDD1~HDD4のディスクそれぞれが個別に認識される設定になっているが、今回はRAID#1をRAID0、RAID#2をRAID1に構成してみた。これまた付属の小型マイナスドライバーを使ってダイヤルの方向を合わせ、さらに付属のピンで「RESET」ボタンを5秒ほど押し込むと、モードが変更される。
ハードウェア側でサポートするRAIDのレベルは1(ミラーリング)までなので、RAID5構成などはOS側でソフトウェアによって構成することになる。最近のPC用OSやNAS用OSでは、ストレージプールを使って仮想的なボリュームを手軽に構成できるので、この機能に頼らずにソフトウェアで構成するのも1つの選択だ。
なお、ハードディスクは公式には8TBまでサポートしており、4台フル搭載で最大32GBまでの対応となっている。
パフォーマンスは上々
実際の使い方は通常の外付けHDDとほぼ同じだ。PCから利用する場合は、Windows 10のディスク管理などから領域の作成とフォーマットを実行すればいい。標準のSINGLE構成なら4台のHDDが、RAID構成なら2台のHDDが認識される。
NASで使う場合も同様だ。外付けHDDとして認識されるので、設定画面からドライブとして認識できるようにフォーマットしておけばいい。
筆者宅の場合、前述したようにNASの使用量は約6.7TBとなっている。これをRAID0で構成したD4-310のRAID#1にバックアップしたところ、無事にすべてのデータをバックアップすることができた(NASの圧縮機能を活用することで最終的には3TBほどの使用量で済んだ)。
パフォーマンスについては利用するディスクによって異なる。公称値は最大410MB/sとなっているが、これはSeagate製のSSD搭載ハイブリッドHDDをRAID0で構成した際の値となる。
今回、Westernd DigitalのWDRed(4TB)2台をRAID0で構成した際の値は以下の通りとなる。シーケンシャルのリードで272MB/s、ライトで242MB/sとなった。
NASの場合、ネットワークの1Gbpsがボトルネックになり、100MB/sあたり一般的となるので、2倍以上のパフォーマンスが期待できることになる。ビデオ編集などの用途では、NASに10GbitEthernetを使うケースもあるが、それに比べるとだいぶリーズナブルに高速なストレージを用意できることになる。
ちなみに、せっかくType-Cで接続できるので、USB 3.1の拡張カード(ASRock USB 3.1/A+C)を装着したPCに接続してみたが、速度的には変わらなかった。仮にUSB 3.1に対応していたとしても、ディスク側の性能の限界もあるため、インターフェイスの速度はさほど気にする必要はなさそうだ。
DASも便利
以上、個人的には久しぶりにUSB接続のハードディスクを購入したが、低コストで大容量のストレージを手軽に構成できるTerraMaster D4-310は、NASのバックアップなどに適した製品と言えそうだ。その高速なアクセス性能を活かしてビデオ編集用の外付けストレージなどとしても重宝しそうだ。
10Gbpsに対応するNASも少なくないが、PCやスイッチの対応を考えると、普及はまだ先になりそうだ。そう考えると、今、DASを購入するメリットも見えてくる。インターフェイスの主流もUSB Type-Cに移行しそうなことを考えても、将来的に無駄にならない投資と言えるだろう。