清水理史の「イニシャルB」

無線LANの電波強度を見える化 アイ・オー・データ機器「Wi-Fiミレル」

 アイ・オー・データ機器から、自宅やオフィスの無線LAN環境を見える化できる無料アプリ「Wi-Fiミレル」の提供が開始された。間取りを取り込んでチェックすれば、自宅の無線LAN環境のヒートマップを簡単に作成可能だ。実際に筆者宅で試してみた。

腑に落ちる

 「やっぱり、そうだよね……」

 アイ・オー・データ機器の「Wi-Fiミレル」は、今までモヤモヤと感じていた無線LANについての悩みが、ひと目で納得できようになるアプリだ。

 スマートフォン向けに無償で提供されるアプリで、現在の無線LANの電波強度を数値で表示したり、測定地点の電波強度を色で表現したヒートマップを簡単に作成できるようになっており、今まで見えなかった無線LANの電波状況を簡単に「見える化」することが可能となっている。

 おそらく、どの家庭にも「なんかWi-Fiが遅いなぁ」と感じる場所があると思われるが、実際にヒートマップを作製してみると、そこが赤く表示されるため、やはり電波状況が悪かったんだと、あらためて確認することができる。

 同社の無線LANルーターに限らず、どのメーカーの製品を使っている場合でも簡単に測定できるので、一度、テストしてみると面白いはずだ。

アイ・オー・データ機器の「Wi-Fiミレル」。無線LANの電波状況をヒートマップで見える化できる

数値だけならすぐに測定可能

 それでは、実際の使い方を見ていこう。

 と言っても設定などは不要で、アプリをインストール後、家やオフィスの無線LANに接続した状態で起動すれば、すぐに電波強度が数値で表示される。

 通常、無線LANの電波強度はdBmで表示されるが、本アプリでは0~100の独自スコアで判定された値が電波強度として表示される。

 技術者でもない限り、「-39dBm」などのような値が表示されても、それが一体どれくらいの値なのかが判断しにくいが、本製品では「82」など100点満点のうちどれくらいかで表示されるため感覚的にとても理解しやすい。

 また、色で判断することも可能となっており、緑>黄>赤の順番で、数値の周りにあるバーの色が変化するようになっている。

 よく見ると、数値が0~100までなのにバーの目盛りが60分割されており、若干の違和感があるものの、数値とバー、色で、直観的に電波が強いのか、弱いのかを判断できるのは大きなメリットと言えそうだ。

電波状況を0~100の値とバーの色で表示可能
電波状況がいい場合は緑、中間は黄色、悪い場合は赤で表示される

ヒートマップを作ってみる

 続いて、ヒートマップを作ってみよう。

 標準の状態では、四角い罫線しか表示されないため、まずは家やオフィスの間取りを取り込む。

 もちろん、間取りを取り込まずに、罫線を何となく間取りに見立てて、計測結果を記録してくことは可能だが、やはり間取り図に重ねた方が直感的にわかりやすいので、取り込むことをおすすめする。

標準では罫線付きの白紙マップとなる。間取りを取り込んだ方がわかりやすい

 取り込みは画像ファイルを指定するか、スマートフォンのカメラを使って撮影して取り込む。自宅を借りたときや購入したときの間取り図をスキャンしたり、撮影して取り込むといいだろう。

 なお、最終的に取り込む間取り図は縦横比が1:1の正方形となる点に注意が必要だ。縦長、横長、いずれかの画像の場合、短い方に合わせて切り取られるため、場合によっては間取りが入りきらないことがある。

 間取り図が小さい場合、拡大することで対応できるが、縮小できるサイズは限られているので注意が必要だ。

 確実に取り込みたい場合は、あらかじめ画像を1:1のサイズにしておくといいだろう。今回はWindowsのペイントを使って800×800で保存した間取り図の画像を取り込んだ。

 2階建てや3階建ての住宅などの場合、フロアをどうするかが悩みどころだ。1つの画像ファイルに各フロアをまとめて入れてしまうこともできるが、間取り図が小さすぎると見にくいうえ、多くの地点で測定した場合に図がごちゃごちゃするため、各フロアを別々のファイルに分けておく方が見やすいだろう。

画像ファイルを取り込むことができるが、正方形でないと、こんな感じにはみ出てしまうので注意
こんな感じで各フロアを1枚の画像で取り込むことも可能だが、フロアごとに個別に取り込んだ方が見やすい

 間取り図を取り込めたら、あとは移動しながら測定していくだけだ。

 実際の自宅内を歩き回り、間取り図の該当するポイントをタップすれば、その地点の電波強度の値が記録され、値に応じた色で周囲が円形に塗り替えられる。

 これを移動しながら繰り返していけば、電波が強いところは緑、中間は黄色、弱いところは赤といったように、間取りが色分けされたヒートマップが出来上がるというわけだ。

 筆者宅の例は以下の通りだ。3ポイント以上の測定が推奨されているが、フロアあたり6ポイント程度測定すると、隣り合う測定ポイントの色が混じり合ったいかにもヒートマップっぽい結果が得られる。

 なお、測定する際、方向(アクセスポイントに対して背を向けるか、端末をその方向に向けるか)によって電波強度が変化する場合もある。あくまでも目安と考えることが大切だ。

間取り図を表示した状態で、測定ポイントと同じ場所をタップするだけ。これで現在の電波状況が間取り図に記録される
1階、2階、3階のヒートマップ。3階の窓際は、アクセスポイントから最も遠い地点となるため、やはり赤く表示された

アドバイスがほしい

 以上、アイ・オー・データ機器の「Wi-Fiミレル」を使ってみたが、見えない無線LANの電波状況が見えるようになるのは、とても興味深い。使い方も簡単なので、一度、自宅で試してみる価値はあるだろう。

 ただし、使った後の発展がないため、「で?」となってしまう。

 理想は、賢い判定機能が搭載され、間取りから自動的に距離や壁の数などを考慮し、中継機の最も効率的な設置場所を示してくれるようなものだが、さすがにそこまでは難しそうなので、もっと簡単でいいのでアドバイスがほしい。

 測定時の無線LANの規格を判断して赤い部分が多ければIEEE 802.11acへの交換をすすめるとか、間取りや距離などの簡単な質問にいくつか回答することで中継機の利用を進めるとかくらいのアドバイスはあってもよさそうなものだ。

 面白いアプリではあるが、もう少し、発展させてもらえると、より実用的になりそうだ。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できる Windows 10 活用編」ほか多数の著書がある。