清水理史の「イニシャルB」
N5105+I225-V(2.5Gbps)×4のファンレスPCで、話題になっているネットワーク安定性問題を検証する
I226も? B3は大丈夫?
2023年3月6日 06:00
AliExpressなどで販売されている、N5105+2.5Gbps×4搭載のファンレスPCを入手した。これを手に入れた目的は2つあり、ひとつはインテルのイーサネットコントローラ「I225-V」が、B3ステッピングで安定したのかを検証すること、もうひとつは、OpenWrtをProxmoxのLXCコンテナで動かすことだ。
今回は、前者となるハードウェア面の安定性をチェックしてみた。
I225/226シリーズの安定性問題と、筆者がI225-V搭載機を選んだ理由
「Foxville」こと、インテルの2.5Gbps対応イーサネットコントローラー「I225/I226」シリーズが、一部で話題となっている。
2020年あたりから、I225-Vを搭載したマザーボードなどで、ゲームのプレイ中にネットワークが切断したり、速度が半分以下に下がったりするなどの不具合が話題となった。
現在、こうした不具合の情報に関しては、インテルのサポートページに状況と対策が掲載されている一方で、I225-Vに関しては、最新のB3ステッピング以降で改善されたという話もあり、問題は収束したかに思えた。
▼関連したインテルのサポート情報
インテル Ethernet Controller I225-V のネットワークの問題
インテル Ethernet Controller I225-V が動作ケーブルを検出しない場合
インテル Ethernet Controller I225-V が「Event ID 27」というエラーで突然動作を停止
しかし、その矢先、海外のサイト「TechPowerUp」で、I225-Vの後継となるI226-Vでも同様の接続が不安定になる問題がレポートされた。同レポートによると、インテルやMicrosoft、ASUS、Redditなどのユーザーコミュニティにて、ランダムな接続の切断(数秒間)が発生することを報告する投稿が見られるという。
▼TechPowerUpのレポート
PSA: Intel I226-V 2.5GbE on Raptor Lake Motherboards Has a Connection Drop Issue: No Fix Available
筆者の手元には、I226-Vを搭載した検証環境が存在しないため、この問題の真偽を確かめることはできないが、事実だとすれば、I225-Vの問題が引き続き残っていることにも考えられ、B3ステッピング以降で改善されたと言われているI225-Vに関しても、再評価が必要になってくる。
もちろん、最新のI226-Vで検証する方が好ましいのだが、筆者がB3ステッピングのI225-Vに注目するのは、このイーサネットコントローラーが、Aliexpressなどで販売されている低価格のミニPCやx86ルーター用デバイスに多く採用されているからだ。
I226-V搭載のミニPCやx86ルーター用デバイスも存在するが、価格を考えるとI225-V搭載機の方が魅力的な上、OpenWrtやProxmoxなどで動かすには最新のデバイスよりも枯れた世代の方が好ましいため、未だユーザーの購入対象になりやすい。
筆者も、ちょうど、1万円前後でPCルーターを組みたいと考えていたタイミングだったので(冒頭で触れたProxmox LXC上でのOpenWrtの検証)、I225-VのB3ステッピングを搭載したPCを新たに調達したのだった。
▼AliExpressの販売ページ
TOPTRON ファンレスソフトウェアルーターアプライアンス
購入時、I225-Vのステッピングが明確に記載されていなかったので心配ではあったが、届いた機器の基盤上でチップを確認したところ、以下のサイトに掲載されている「SLNMH」というスペックコードが一致したので、無事にB3ステッピングを入手できたことを確認できた。
イベントID27「だけ」で不具合とは判断できない
というわけで、とりあえずWindowsをインストールし(ドライバーもインテルの最新版を使用)、動作を確認してみたが、Windows上では不具合は見られなかった。
前述したインテルのサポート情報、および新たにI226-Vの不具合をレポートしたサイトでは、不具合の目安としてイベントビューアーの「コード27(およびコード32)」が挙げられている。
おそらく、イベントビューアーでコード「27」を指定してフィルタリングすれば、I225/I226ユーザーであれば、ほぼ100%、このイベントを発見できるはずだ。
もちろん、筆者の環境でもコード27として、「Intel Ethernet Controller I225-V Network link is disconnected」がすぐに見つかった。
しかし、このコードは、単純にネットワークがリンクダウンしたときに記録される情報であり、不具合に直結するとは限らない。例えば、PCのスリープが代表的だ。試しにPCをスリープさせ、復帰させてみたが、その度に、このコード27を確認できた。つまり、日常的なOSのスリープ動作でも、このコードが記録されることになる。
大切なのは、このコードが発生したときの状況だ。PCの電源を入れた状態のまま使っている状況下、つまりネットワークのリンクが維持され続けなければならない状況で、コード27が発生しているかどうかをチェックする必要がある。
そこで、電源設定で常時電源オンの状態にし、6時間ほどLAN内の別のPCにPingを打ち続けてみたが、Pingでパケットロスが発生することもなく、テスト中にコード27が記録されることもなかった。日常的なウェブサイトの閲覧だけでなく、数時間のゲームプレイ、1時間ほどのビデオ通話を数回利用してみたが、通信が停止するような不具合は見られなかった。
続いて、同じ環境にProxmox VEをインストールし、仮想マシンを動かすサーバーとして利用してみたが、こちらも問題なかった。
同様に1日に数回、ログにEthernetのリンクダウンを報告するログが表示されていることが確認できたが、これらは理由がはっきりしており、PCのEth0端子(ログ上はenp2s0)に接続した管理用のPCがスリープしたタイミングや、テスト用にWindowsからネットワークインターフェースを意図的に無効化した際のみ切断が記録されている。
同PCには、Eth3に別の機器(ルーター)も接続されているのだが、同じ期間でEth3のリンクダウンは一切記録されておらず、管理用PCのEth0のみ記録されている。I225-Vに不具合があるなら、同様にネットワーク接続が確立されているEth3も記録されているはずだ。
ただ、上記ログの最後だけ、復帰後に10Mbpsでリンクアップしている。特にケーブルや接続先は変更していないので、この点だけは少々不可解ではある。
というわけで、個人的には、もう少し、何か事件があるかと半分期待して検証していたのだが、筆者宅の環境では問題なかったことになる。
しかしながら、この問題は、組み合わせるマザーボードやスイッチ、ケーブルなどとも関係があるというインターネット上の書き込みも散見されるので、一概に結論を出すことはできない。このPCは、今後、OpenWrtをインストールしたルーターとしても稼働させるつもりなので、継続的に確認していくつもりだ。
インテルは消費者にも正確な情報の発信を
以上、インテルの2.5Gbps対応イーサネットコントローラーについて、簡単だが検証をしてみた。
筆者宅での限られた環境での検証に過ぎないが、結果は問題なかった。しかしながら、筆者が昨今感じるのは、圧倒的な「情報不足」だ。
Wi-Fi 6Eのドライバーの混乱も記憶に新しいが、末端で商品を手にするわれわれ消費者には、こうした重要なサポート情報が届きにくい。現状の「噂」が先行する状況は、誰にとっても得とは思えない。最新のI226-Vの安定性も気になるところなので、B2B的な広報手段だけでなく、われわれ最終消費者にも届くように情報を発信してほしいものだ。