清水理史の「イニシャルB」

“Wi-Fi 7対応”最新PCと、バッファローのWi-Fi 7ルーターで、実効3Gbpsを体験する!

MSIのPrestige-16-AI-Studio-B1VFG-8003JP。Wi-Fi 7対応モジュール搭載のAI PC。320MHz幅がすでに利用可能になっている

 ノートPCであれば、すでにWi-Fi 7が実質的に利用可能なようだ。

 2月8日に発売されたMSIの「Prestige-16-AI-Studio-B1VFG-8003JP」(Intel BE200D2W搭載)を利用し、バッファローのWi-Fi 7対応ルーター「WXR18000BE10P」との組み合わせで利用してみたところ、Wi-Fiの実効速度で3Gbpsを超えを確認できた。320MHz幅が有効になっていなくては考えられない数値なので、すでにPCは320MHz幅が使える状態と考えてよさそうだ。

Wi-Fi 7対応PCを購入

 以前のバッファローのWi-Fi 7対応ルーター「WXR18000BE10P」のレビュー記事では、筆者の勉強不足で、認可されていない6GHz帯の検証を「技適未取得機器を用いた実験等の特例制度」を利用した記事を掲載してしまい、本当に申し訳ないことをしてしまった。

 というわけで、Wi-Fi 7の検証するためには、Wi-Fi 7対応として市販されているPCやスマートフォンを利用するしかないので、さっそくMSIの「Prestige-16-AI-Studio-B1VFG-8003JP」を購入した。

 2月8日に発売された新製品で、Core Ultra 7 155Hを搭載したAI PCとなっている。無線LANモジュールとしてWi-Fi 7対応のKiller Wi-Fi 7 BE1750w (Intel BE200D2W)を搭載している点が購入の決め手となったが、AI PCとしての実力(言語モデルでのCPUとNPU、GPUの比較)も検証したかったので、今回はGeForce RTX 4060搭載モデルを購入した。

 スペック表の「無線LAN」の項目を見ると「Wi-Fi 7(11be)、Bluetooth 5.4 ※日本国内ではWi-Fi 6E/6/5/4のみ対応。Wi-Fi 7は法令上6GHz帯・320MHz幅に対応した国のみ使用可能」と記載されているので、当初は気長に320MHz幅対応ドライバーの登場を待つつもりだったのだが、実際は、その必要はなかった。

搭載されているモジュールはWi-Fi 7対応のKiller Wi-Fi 7 BE1750w(BE200D2W)

すでに320MHz幅が有効だった

 出荷時状態で、WXR18000BE10Pに接続し、試しにfast.comでの速度を計測してみたところ、以下の画面のように、10Gbpsのauひかりを利用した速度測定で下り3Gbpsという値が表示された。

Fast.comで3Gbpsオーバーをマーク(回線はauひかり10Gbps)

 160MHz幅の2882Mbpsリンクなら、実効で3Gbpsを超える値が出ることはないので、すでに320MHz幅対応で出荷されているようだ。試しに、speedtest.netでも試してみたが、やはり3Gbpsを超える通信を実現できた。

Speedtest.netの結果。こちらも3Gbpsオーバーを実現

 ただし、Windowsのプロパティ(またはnetsh wlan show interface)の値は安定しない。待機時は「1469/1469」と表示され、通信時のみ4082.9などの値を確認できる。今のところ、320MHz幅で期待される「5764」の表示は見たことがないが、160MHz幅4096QAMの2882Mbps以上の速度は実現できているようだ。

1469Mbpsでのリンクと表示されるが、実質的には320MHz幅で接続されている様子
通信中は4Gbpsを超えるリンクが表示される

 ちなみに、デバイスマネージャーでの認識結果は「Killer Wi-Fi 7 BE1750w 320MHz Wireless Network Adapter(BE200D2W)」。筆者のPCに搭載されているモジュールはKillerブランドで、ドライバーのバージョンは「23.10.0.8(2023/10/31)」となっていた。

 なお、本稿執筆時点(2月9日)でのIntel BE200向けのドライバーは「2024/1/9」付けの「23.20.0.4」だったので、こちらにアップデートしてみたが、状況は変わらなかった。リンク速度の表記は、待機時は1469のまま、通信時のみ3~4Gbps以上を示す場合があるが、5764Mbpsでリンクする様子は見られなかった。

 フルスピードでのリンクは、電波状況がクリーンで、端末とアクセスポイントとの距離も近くないと実現できないのかもしれない。このあたりは、継続的な検証が必要と言えそうだ。

出荷時のドライバーは23.10.0.8
23.20.0.4に更新しても状況は変わらず。320MHz幅も利用可能だった

長距離は6GHz帯よりも5GHz帯が有利かも

 続いて、いつもの通り、木造3階建ての筆者宅にてiPerf3のテストを実施してみた。

 結果は以下の通りだ。比較対象として5Gbps帯を利用したWi-Fi 7 160MHz幅の2882Mbps時と、Wi-Fi 6 160MHz幅の2402Mbps時の値も記載している。

無線クライアントテスト
1F2F3F3F端
PC1(Wi-Fi 7/320MHz/6GHz)上り32601220581222
PC1(Wi-Fi 7/320MHz/6GHz)下り28001190745293
PC1(Wi-Fi 7/160MHz/5GHz)上り21201030649295
PC1(Wi-Fi 7/160MHz/5GHz)下り20101270805400
PC2(Wi-Fi 6/160MHz/5GHz)上り17001020573262
PC2(Wi-Fi 6/160MHz/5GHz)下り17801160747342

※単位:Mbps
※サーバー:Ryzen3900X/RAM32GB/1TB NVMeSSD/AQtion 10Gbps/Windows11 Pro
※PC1:Core Ultra 7 155H/RAM32GB/1TB NVMeSSD/Killer Wi-Fi 7 BE1750w(BE200D2W)
※PC2:AMD Ryzen 7 6800U/RAM 16GB/1TB NVMeSSD/RZ616

 Wi-Fi 7の6GHz(おそらく320MHz幅)は、近距離であれば3Gbpsオーバー、2階でも1Gbpsオーバーで安定した通信ができており、かなり速い印象だ。Wi-Fi 接続で実効3Gbps出るのだから、ファイルのダウンロードなどはもはや2.5Gbpsの有線より速い計算になる。

 ただし、長距離に関しては、今回の検証では6GHz帯が苦戦した。3階入り口では5GHz帯のWi-Fi 7と互角だが、最も遠い3階端では逆転されてしまっている。

 近距離では圧倒的にWi-Fi 7の320MHz幅が有利だが、バランスとしては5GHz帯のWi-Fi 7が優秀な印象だ。近距離の最大速度で2Gbps越えを実現できるほか、2階や3階でも速度が落ちにくく、安定して高い値を維持できている。特に3階のもっとも遠い場所で400Mbpsを実現できるのは優秀だ。

 そう考えると、今回利用したバッファローのWXR18000BE10Pのように、トライバンドで2.4GHz、5GHz、6GHzのすべて利用できるメリットは大きいと言える。近距離は6GHz、長距離は5GHz、IoT機器などの速度が求められない機器は2.4GHzと、帯域を使い分けることができる。

国内初の320MHz幅対応Wi-Fi 7ルーター。バッファロー「WXR18000BE10P」

 Wi-Fi 7ルーターはトライバンドがいいし、320MHz幅を生かすための10Gbps有線(それもWAN/LAN両方)は不可欠だし、メッシュも組める方がいい、ということで、ハイエンド機を選びたくなってしまう。

Wi-Fi 7は買っても大丈夫

 以上、Wi-Fi 7に対応したPCを実際に試してみたが、すでに320MHz幅が利用可能になっているため、Wi-Fi 7ルーターとの組み合わせで高いパフォーマンスを発揮できることがわかった。

 実効で3Gbps以上でつながるPCが手に入る今、Wi-Fi 7ルーターへの投資は、決して早すぎるとは言えないだろう。特に、10Gbpsクラスの回線を使っている人は、むしろ現状のWi-Fi 6/6Eでは、せっかくの回線速度を生かせないため、もったいない。価格は高いが、パフォーマンスを優先するなら、購入を検討する価値があるだろう。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 11」ほか多数の著書がある。