第218回:家族のスケジュール共有が手軽にできるSNS
壁掛けカレンダー感覚の「nanotyFamilies(ナノティ・ファミリーズ)」



 「nanotyFamiles」は、サンロフトが提供しているオリジナルSNS作成サービス「nanoty」をベースに、家族での利用向けに機能やデザインを変更したサービスだ。家族でのスケジュール共有や伝言、写真共有などといった情報共有に加え、ほかの家族とのコミュニケーションも楽しめるのが特徴だ。





家族のつながりをネットで実現

 フリーという時間に不規則な仕事をしているせいか、我が家ではスケジュール確認の会話がよく交わされる。「今日、クルマ使っても大丈夫?」、「土曜は空いてる?」などと妻から聞かれるのはしょっちゅうで、時には子供の行事の予定をすっかり忘れて「あれ、今週の日曜ってなんかあったっけ?」と筆者が尋ねることも多い。

 家族のスケジュールというのは、わかっているようでなかなか把握しきれていないもので、特に子供が幼稚園や小学校に上がると、何かと家族で動く行事が増え、確認を怠ったがゆえにダブルブッキングになってしまうということも珍しくない。

 というわけで筆者宅では、いわゆるWebベースのグループウェアが登場した当初から、さまざまなツールを使って家族のスケジュール共有に挑戦してきた。家庭内にサーバーを用意したこともあったし、P2Pのグループウェアを使ったこともあった。現在は、携帯電話からのアクセスがもっとも手軽という理由で、Yahoo!カレンダーを利用してスケジュールを共有しているが、1つのアカウントのカレンダーを家族で共有するという暫定的な使い方をしていることもあり、「コレ!」という決定的なサービスが見つかっていない状況だ。

 そんな中、サンロフトと東京ガス(コンテンツ提供)によってサービスが開始されたのが、今回紹介する「nanotyFamilies(ナノティ・ファミリーズ)」だ。サービスとしては、グループウェアではなくSNSで、従来からサンロフトが提供していたオリジナルSNS作成サービス「nanoty」を家族での利用に特化したサービスとして新たに提供したサービスとなる。


サンロフトと東京ガスが提供する家族向けに特化したSNSサービス。家族でスケジュールや写真などの情報を手軽に共有できる

 家族SNSと言われてもすぐにはわかりにくいが、要するに家族のメンバーが参加できるプライベートなスペースをWeb上に作成し、「伝言版」「カレンダー」「アルバム」「ブックマーク」「プレゼント」「メッセージ」という6つの機能を利用して、家族間でのコミュニケーションを楽しめるサービスだ。サンロフトが提供する「nanoty」は、もともと「Small Network Service」を略してSNSと称しているが、まさに家族という小規模な人と人とのつながりを構築できるサービスと言えるだろう(詳しくは後述するが、家族と別の家族をつなぐネットワークも構築可能)。





「合いことば」でログイン

 実際にnanotyFamiliesを使ってみよう。nanotyFamiliesは、前述したサンロフトのオリジナルSNS作成サービス「nanoty」をベースにしたサービスとなっているため、まずはnanotyへの無料登録が必要になる。nanotyFamiliesのホームページから、メールアドレスなどを登録してnanotyへの登録が完了すると、はじめて家族用SNSの作成が可能となる。


nanotyFamiliesの利用には、元となるオリジナルSNS作成サービス「nanoty」への会員登録が必要。登録すれば、nanotyFamiliesに加え、nanotyのサービスも無料で利用できる

 このように比較的簡単に家族SNSのスペースを作成できるが、ユニークなのは認証の方法だ。作成した家族SNSは、「xxxxxx.nanoty.jp(xxxxxxは任意)」というURLとなるが、ここへのアクセスには「家族アドレス」と「合いことば」の入力が必要になる。グループウェア的な感覚で考えると、スペースを共有するユーザーそれぞれに個別のIDを作成し、そのIDを使ってログインするのが一般的だが、nanotyFamiliesでは家族が共有のIDを使って家族SNSのスペースにログインするという仕様になっている。

 もちろん、このままでは現在ログインしているユーザーが家族の誰なのかをシステム側が判断できない。このため、nanotyFamiliesでは、家族SNSへのログイン後、たとえば「パパ」や「ママ」といったようなユーザーの写真(管理者となるユーザーが家族SNSへのログイン後に家族それぞれのアカウントを作成)をクリックすることで、自分が誰なのかを選択する仕様になっている。


nanotyFamiliesでは、家族SNSにログインするために共通のIDとパスワード(合いことば)を利用する。その後、ユーザーを選択することで、現在の利用者が家族のうちの誰なのかを判断するようだ

 この方法は最初違和感があったものの、慣れるとなかなか便利だ。覚えておくのは家族共通のIDとパスワードだけでいいためにログインにとまどわない。子供や祖父母と一緒に使うことを考えると、こういった手軽なログインの方法のほうが使ってもらいやすいだろう。

 なお、登録した家族がnanotyのアカウントを取得している場合(後から個別に取得することも可能)、家族SNSの画面でnanotyアカウントとパスワードを使ってログインすることも可能だ。ただし、これは家族の選択画面をスキップできるというメリットがあるだけで、セキュリティ的な意味合いはない。パスワード設定後も、家族アカウントでログオン後、ユーザーの写真を選べばノーパスワードでそのユーザーでログオンすることが可能となっている。

 要するに、nanotyFamiliesでは、家族SNS内部の情報は家族アカウントで保護されるが、内部の情報は各ユーザーで完全に共有するというコンセプトになっている。グループウェアやインターネット上のカレンダーサービスなどでは、ユーザーが自分のプライべートな情報を個別に管理し、それを許可したユーザーに公開するという形態になるが、nanotyFamiliesはこれとは別の考え方が異なり、ユーザー(家族)同士で知られてもかまわない共有情報を登録する場所となっている。





壁掛けカレンダーと同じ感覚で使うサービス

 このように、nanotyFamiliesは基本的に家族間でオープンにしたい情報を共有するためのサービスと言える。実際、nanotyFamiliesで提供されるカレンダーでは、家族それぞれが登録した予定が誰にでも公開されるようになっているうえ、ほかのユーザーの予定を登録することも可能となっている。

 たとえば、「パパ」ユーザーでログオンしてカレンダーに予定を登録すると、標準では「パパの予定」というラベルが予定に付けられるが、予定登録時に分類で「ママの予定」というラベルを選択すれば、ママユーザーの予定として登録される。このようにnanotyFamiliesでは予定がユーザーごとに管理されるのではなく、ラベルによって分類されることで、見た目上、ユーザーごとの予定として扱われるようになっている。


カレンダーに登録した予定は家族なら誰でも参照可能。また、分類でラベルを選択することでほかのユーザーの予定を登録することもできる。あくまで家族の予定を管理する場だ

 まさに、リビングの壁に掛けられているカレンダーに、家族それぞれの予定を書き込んでおくというイメージだ。よって、個人的な予定を管理するのには向いておらず、あくまでも「家族に知らせたい」情報を管理するためのサービスと言える。グループウェア的なサービスをイメージしているユーザーには物足りなく感じるかもしれないが、こういったすべてオープンにするというコンセプトのサービスは、ほかには見られないnanotyFamilesならではの特徴だ。プライバシーを守るのも重要だが、より手軽に、そしてオープンに情報を共有できるメリットは大きいだろう。

 このような傾向は、「伝言版」「アルバム」「ブックマーク」「プレゼント」のほかのサービスにも共通している。伝言板は家族に伝言を伝えるリビングのホワイトボード、アルバムは蓄えた写真を誰でも見られる本棚の写真アルバム、ブックマークやプレゼント(ほしいものリスト)はテーブルの上においてあるメモといったところだろうか。家庭のリビングでごく自然に行なわれている情報共有がシステムとして形を成している点は秀逸だ。


nanotyFamiliesの伝言板(左)とアルバム(右)。伝言板は個人宛のメッセージではなく、家族全員に宛てた連絡に使う。アルバムの写真も家族なら誰でも参照できる機能

 正直、nanotyFamilesのサービスは、Googleカレンダーなどの最先端のWebサービスと比べると見劣りする印象は確かにある。しかし、ではGoogleカレンダーを一般的な家族が日常的に使いこなせるかというと、子供、さらには祖父母なども交えた家族Googleカレンダーどころか、Yahoo!カレンダーでも難しいと筆者は考える。

 そう考えると、壁掛けカレンダーの延長線上にあるようなわかりやすいnanotyFamiliesは、実際にユーザーに使いこなしてもらうことができる現実的なWebサービスだろう。個人的には非常に高く評価したいところだ。





携帯電話からのアクセス環境充実を

 このほかnanotyFamiliesは、「家族SNS」と呼ばれることからも想像できる通り、家族間のつながりをネットワーク上で実現できる。ほかの家族SNSに友達家族の依頼を出し、その承認を得られると、友達家族としてお互いに登録される。nanotyFamiliesでは、アルバムなどに登録した写真を家族内だけでなく、友達家族に公開することも可能となっているので、たとえば仲の良い家族が一緒に旅行に行ったときの写真をお互いにアップロードして共有するといった使い方も可能だ。


友達家族として登録することで、ほかの家族とのつながりができるのもnanotyFamiliesの特徴。アルバムの写真などをほかの家族に公開できる

携帯電話からの利用も可能だが、現状はnanotyFamiliesならではのサービスを利用することができない

 このように、nanotyFamilesを利用すれば、使い方が非常にカンタンで家族内、そしてほかの家族とのコミュニケーションを手軽に楽しめる。グループウェアやSNSといったサービスがどうも難しそうで手を出しにくかった、と感じていたユーザーには、特におすすめしたいサービスだ。

 ただし、個人的には1点注文がある。携帯電話からのアクセス機能を充実してほしい点だ。nanotyFamiliesのベースとなるnanotyでは、すでに携帯電話からのアクセスが可能となっており、一応、同様の方法でnanotyFamiliesの機能も携帯電話から利用することができる。

 ただし、現状はnanotyFamiliesの機能に完全対応しておらず、たとえば「伝言板」が「トピック」と表示されていたり、「カレンダー」に登録した予定はトピックから参照することができるものの、携帯電話から予定を登録することができない。

 nanotyFamiliesのサービスが開始されて間もないので致し方ないが、年齢層によってはアクセス手段がPCではなく携帯電話メインというユーザー層も少なくない。そう考えると、なるべく早く携帯電話への完全対応を図ってほしいところだ。また、細かな点だが、カレンダーで日をまたがった予定を登録できるようにしてほしい。そうでないと、旅行の予定など何度も登録しなければならず不便でならない。これらの点の改善をぜひ望みたいところだ。


関連情報

2006/10/31 10:57


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。