週刊Slack情報局

パンデミック前後で働き方はどう変わった? Slack導入企業が語る

Slack Japan、オフィス開設2周年記念で座談会

(上段右から)株式会社ベルシステム24 DX推進担当社内外コミュニケーション改革プロジェクトリーダー の川崎佑治氏、株式会社クレディセゾン常務執行役員CTOの小野和俊氏、(下段右から)Slack Japan日本法人代表の佐々木聖治氏、NECネッツエスアイ株式会社取締役執行役員常務の野田修氏、(左上)司会のSlack Japanの寒田美緒氏

 Slack Japan株式会社が20日、同社オフィス開設2周年記念のメディア向けオンライン座談会を開催。Slackのユーザー企業の株式会社ベルシステム24、株式会社クレディセゾン、NECネッツエスアイ株式会社が、Slackなどのデジタルによる働き方の変革について、Zoomを使ったパネルディスカッション形式で語り合った。

Slack Japanは売上高76%増

 座談会に先立ち、米Slack Technologies CEO兼共同創業者のスチュワート・バターフィールド氏と、Slack Japan日本法人代表の佐々木聖治氏があいさつするとともにSlackの近況を語った。

 動画メッセージで登場したバターフィールド氏は、「あらゆる規模のあらゆる業界のお客様と仕事できることを幸運に思っている」として、顧客が「Slackを活用して新しい未来を描き、よりよい働き方を実践している。柔軟性を取り入れ、オフィスがより人間的な方法でつながれる場所に変化する」と語った。

米Slack Technologies CEO兼共同創業者のスチュワート・バターフィールド氏

 Slack Japan日本法人代表の佐々木聖治氏は、Slack Japanのオフィスから登場した。同社では、在宅勤務とオフィス勤務を組み合わせたパイロットプログラムを1カ月間実施中だという。

 佐々木氏は、長期リモートワーク実施下の意識の変化について、同社が主宰するFuture Forumによる調査結果を紹介した。2020年第3四半期と第4四半期を比較して、仕事における帰属感と生産性が向上しているという。

 また、コロナ禍におけるSlackの日本市場での成長を報告。2021年度(2020年2月~2021年1月)は前年度比で売上高が76%増、有料ユーザー数が79%増だったという。

 最近の機能についても佐々木氏は紹介した。組織間でやり取りする「Slackコネクト」は、2020年に正式発表されて前年比151%の拡大となり、「メールの代わりに使う企業が増えている」(佐々木氏)という。

 2020年秋の年次イベント「Slack Frontiers」でアナウンスされた非同期ビデオ投稿(仮称「Stories」)や、いつでも使える音声通話(仮称「Slack Huddleミーティング」)も、年内にサービス提供を正式に発表予定だと佐々木氏は紹介した。

Slack Japan日本法人代表の佐々木聖治氏
2020年のSlackの日本市場での成長
最近の機能

リモートワークのコミュニケーションをSlackで補完

 座談会は、ベルシステム24 DX推進担当社内外コミュニケーション改革プロジェクトリーダーの川崎佑治氏、クレディセゾン常務執行役員CTOの小野和俊氏、NECネッツエスアイ取締役執行役員常務の野田修氏、Slack Japanの佐々木聖治氏で行われた。司会はSlack Japanの寒田美緒氏。

 最初のテーマは、パンデミック前後で働き方がどう変わったか。

 まずSlack Japanの佐々木氏が、コロナ禍でリモートワークになったときにバターフィールド氏が言った「今はそんなにがんばらなくてもいいんだ。安全が第一だ」という言葉を紹介した。さらに、Slackをコロナ前から取り入れている人たちの声が励みになると語った。

 NECネッツエスアイの野田氏は、Slackをコロナ前から全員に配布していてよかったと思った、と答えた。リモートワークで既存のままの業務ができない状況になって、組織横断チームのチャンネルや、承認プロセスがSlackに乗り、健康確認や作業予定などのボットが開発されるようになったという。

 クレディセゾンの小野氏は、金融の仕事では出社が必要な業務があるが、出社が必要な業務でもSlackの意義があると答えた。今まで隣の席の人にちょっと声を掛けて聞いていたようなことが、電話だと相手を占有してしまうなど気軽にできないので、Slackでやろうということになったという。そして、Slackを使ってみたら、早いし記録に残るのでいい、ということで全社導入したと語った。

 ベルシステム24の川崎氏は、在宅勤務の人とオフィスの人がいたとき、在宅勤務の人が疎外感を感じることが起こりがちという問題を取り上げた。メールだとなかなか雑談できないが、Slackだと「今日暑いよね」というようなコミュニケーションもできるということで、Slackを全社導入したという。さらに、全国に拠点がある同社では、コロナ対策について各拠点での施策をSlackチャンネルで流し、中央集権ではなく横連携で情報共有していることを紹介した。

NECネッツエスアイ株式会社取締役執行役員常務の野田修氏

Slackのメリット「記録」「非同期」「公平性」……

 次のテーマは、Slackなどのデジタルワークプレイスにはどのようなメリットがあるか。

 小野氏は、社内がいちばん変わったのが「記録すること」、つまりカジュアルな記録が習慣化したことだと答えた。リアルオフィスでの会話は記録に残らないのに対し、Slackでの会話であれば、「先日のSlackのあのスレッド」ということで参照され、微妙なニュアンスも確認できる。一方でリアルな対面で話したほうが早いこともあり、その場合もいない人に伝えることを考えて会話し、あとでSlackで伝えるという。「そういうよさは今後も消えないんだろうなと思う」(小野氏)。

 なお、時間がたつと内容や雰囲気が分からなくならないかという質問に対して小野氏は、「文字数に関係があると思う」と答えた。「初めてSlackを使う人は議事録っぽい書き方をするが、そうするとかえって雰囲気が分からない。慣れてくると短い言葉で答えるようになって、それが雰囲気を伝える。その最たるものが絵文字リアクションだ。長い書き込みに対しては、ツッコむこともある」(小野氏)。

 川崎氏は、「非同期」が重要だと答えた。その場にいないメンバーと非同期に連携できることだ。「これまではオフィスの数十人としかつながれなかったのが、全国のメンバーがその場にいるように話せる」(川崎氏)。

 野田氏は、デジタルワークプレイスについて、横串でいろいろな知識のあるメンバーが集まることによる生産性と、フラットにオープンに話すことによって新しいものが生まれることを挙げた。また、トップが決断した結果を、今までは順に伝えていたが、1回で意思疎通できるようになったことも氏は挙げた。

 これらの意見をまとめて佐々木氏は、「公平性」のメリットが確認できているのではないか、とまとめた。さらに、そこで必要なこととして、「オープン性」を保つことで、新しい人でも公平に情報にアクセスして、早くから活躍できることを付け加えた。

株式会社クレディセゾン常務執行役員CTOの小野和俊氏

企業文化への影響は「境界線をなくすこと」

 3つめのテーマは、企業文化への影響だ。

 佐々木氏は、「心理的安全性」が大切だと考えてきたと答えた。まず、絵文字を使うなどして、誰かの発言にリアクションをすること。そして、公平性のためのダイバーシティとして、人間の違いを許容して一緒に働くこと。そして、ストレスコントロールとして、Slackではグローバルに月1回の金曜日に休みがあり、エマージェンシーの休暇の制度もあるという。

 野田氏は、「リモートとデジタルを活用しないとビジネスが難しくなると実感した」と答えた。DXでチャレンジしようという変化を社員が意識するようになって、さまざまなプロセスを連携して自動化することにチャレンジしているという。例えば、SalesforceからSlackで情報連携、あるいはSlackからSalesforceの情報を見る、というプロジェクトが行われるようになったと氏は紹介した。

 小野氏は、「いちばん大きいのは境界線をなくすこと」だとして、役職のボーダーや部署のボーダー、国のボーダーなどを意識しないようになるのが大きいと答えた。

 一方で課題として、常識も考えも利害関係も違う人たちが一度に会話する難しさもある。この問題に対してい小野氏は、Google社内で言われているという「HRT(ハート)」の原則を紹介した。「謙虚(Humility)」「尊敬(Respect)」「信頼(Trust)」を忘れないことで衝突を避けるという考え方だ。

 川崎氏は、コンタクトセンターの会社ということで、「遠隔コミュニケーションが大事というのが分かっているものの、より理解が深まった」と答えた。特に軽い話題でのコミュニケーションがSlackで深まったという。例えば春に、桜前線が北上していく中で各地の桜写真を投稿してリレーしていくというやり方は今までなかったという。「きれいと、今日は暑い・寒いなどからコミュニケーションが深まる。写真1枚でもあれば話が活発になる。そういうことが分かった」(川崎氏)。

株式会社ベルシステム24 DX推進担当社内外コミュニケーション改革プロジェクトリーダーの川崎佑治氏

コロナ以後に目指す職場とは

 最後のテーマは、コロナ以後、今後どのような職場を目指すか。

 小野氏は、「境界線がなくなるというのは残していきたい」と答えた。「『こういうのをやってみよう』とアイデアが出てきたときに、部署を超えて人が集まって、とりあえず検討して、それでやめようとか進もうとか決める。そういう機動性で、集合と離散が高頻度でカジュアルに起きること。そういうやり方は、なくならないんじゃないかと思う」(小野氏)。

 川崎氏は、「今まで1つの席で全部やろうとしすぎていたことに気付いた」と答えた。誰かと話すのも、ウェブミーティングも、集中して作業するのも、ちょっとしたプレゼンテーションも、全部同じ場所だったという。「場所場所を用意するオスフィスが大事なんだなと思った。それがデジタルではより簡単にできる」(川崎氏)。

 野田氏は、「SlackやZoomなどを活用して、より効率的で生産性が高いようにしていくのは変わらない。一方で、リアルの働き方も重要だなと感じている」として、「どちらも体験したので、双方のいいところを取り入れて、新たなイノベーションを生み出していきたい」と答えた。

 最後に佐々木氏は、Slackの今年のテーマは「reinvent(再発明)」だと紹介し、「これまで体験された部分も含め、正しいやり方、最適なやり方を定義していく時期にきている」と語った。「オフィスも在宅もよいところを取り入れて、俊敏性を落とすことなく、新しい働き方を実践していく時期にきていると思う」(佐々木氏)。

一般企業でも利用が広がっているビジネスコミュニケーションツール「Slack」。Slack Technologiesの日本法人であるSlack Japanはこのツールのことを“ビジネスコラボレーションハブ”と表現しており、あらゆるコミュニケーションやツールを一元化するものと位置付けている。本連載「週刊Slack情報局」では、その新機能やアップデート内容、企業における導入事例、イベントレポートなど、Slackに関する情報をお届けする。