週刊Slack情報局

Slack×Office 365などのアプリ連携で「会話から仕事が生まれる」会社へDX

「Slack Tour Japan Online」レポート

 Slack Japan株式会社は、新しい働き方とデジタル変革に関する日本独自開催の年次イベント「Slack Tour Japan Online」を11月12日にオンラインで開催した。本稿では、セッション「SlackとOffice 365で実現する、ニューノーマル時代の生産性向上術」の模様をレポートする。

 利用企業の多いSaaSアプリケーションである「Office 365」とSlackとを連携することによる生産性向上について、Slackによる機能説明がなされた。また、Slackとアプリケーションの連携による業務効率化について、導入企業の株式会社ベルシステム24によって語られた。

SlackとOffice 365の連携で「イベント駆動型エンタープライズ」へ

 まず、Slack Japanの伊藤哲志氏(シニアプロダクトマーケティングマネージャー)が、SlackとOffice 365の連携機能について紹介した。

Slack Japan株式会社の伊藤哲志氏(シニアプロダクトマーケティングマネージャー)

 伊藤氏は、現在ではさまざまな業務に最適化されたクラウドのアプリケーションがあり、その数が1000以上に上ることを取り上げた。その一方で、複数のアプリがうまく連携できていないという企業が64%に上り、ツールの切り替えに1日30分を無駄にしているという調査結果を紹介した。

複数のアプリがうまく連携できていないという企業が64%

 そこでSlackが現在掲げているのが「イベント駆動形エンタープライズ」というコンセプトだ。さまざまなツールをSlackに統合し、コミュニケーション中などの出来事からコラボレーションを実現し、DXを進めるというものだと伊藤氏は説明した。

「イベント駆動形エンタープライズ」

 Office 365もこうしたクラウドのアプリケーションだ。Slackを使う大企業の70%がOffice 365も使っているという。

 Office 365の中でさらにExcel、PowerPoint、Word、Outlookといった複数のアプリケーションが含まれる。これらのアプリケーションが簡単にSlackにインテグレーション可能になっており、Slackを起点としてこれらのアプリケーションに行くことができるようになっている。全てをSlackから行えるようにすることで、コラボレーションの中でどのアプリケーションを使うのか、どこを検索するのかをユーザーが悩む必要がなくなると伊藤氏は語った。

Office 365とSlackを連携

Slackでコミュニケーションしながら、Office 365で共同作業

 デモとして、SlackでコミュニケーションしながらOffice 365でコラボレートする様子も実演された。

 まず案件のチャンネルに、営業担当である自分と、マーケティングやSEの同僚が入っている。一方、顧客とのやりとりはメールベースなので、OutlookからSlack for Outlookでメール内容をSlackで共有する。

Outlookからメール内容をSlackで共有
メール内容がSlackで共有された

 それに対してSEが興味深い資料としてSharePoint上に共有してくる。Slack内で資料がサムネール表示され、アプリケーションの移動を意識せずに資料を表示できる。

SharePoint上のPowerPoint文書をSlackで共有

 続いてSlackの中からOutlook Calendarでミーティングを設定する。Slackのメンバーがデフォルトで指定されるほか、Outlook Calendarで全員の空いている時間帯が候補時間となる。

Slackの中からOutlook Calendarでミーティングを設定

 さらに、スマートフォンのSlackクライアントで参加しているマーケティングの人から、クイックに相談したいと連絡が来たところで、Slackから「/teams-call」コマンドだけでTeamsでつながるところも見せた。

Slackから「/teams-call」コマンドを実行
Teamsでつながった

 こうした連携機能は、Slackの管理画面から、全員あるいは特定ユーザーなど単位で、アプリごとに承認や拒否ができるところも伊藤氏は見せた。

連携するアプリケーションを管理

「会話から仕事が生まれる」Slack×アプリ連携で、コールセンター事業の会社をDX

 Slackとアプリケーション連携で業務を効率化している事例として、ベルシステム24の川崎佑治氏(DX推進リーダー)が実例を語った。

株式会社ベルシステム24の川崎佑治氏(DX推進リーダー)

 ベルシステム24はコールセンター事業の会社で、「コミュニケーションのプロを自認している」と川崎氏は説明する。全国に37拠点があり、従業員2.8万人のうち、在宅が1000席で、これを4000席に増やすことを目指しているという。こうした中で、社内および社外とのコミュニケーションとして、同社では2018年からSlackを利用している。

 Slackを選んだポイントとして川崎氏は3つを挙げた。3位は「圧倒的効率」で、特に欲しいファイルや見つけたい会話などの検索機能が便利だという。

Slackを選んだポイント3位:圧倒的効率

 2位は「感情まで伝わる」で、写真や動画、スタンプなどを使って簡潔かつ感情まで伝わるコミュニケーションできるという。

Slackを選んだポイント2位:感情まで伝わる

 1位は「ヨコグシが活発に」で、会社が大きくなっていって部署間の交流が少なくなったときに、ヨコグシ(横串)のコミュニケーションを活性化させる効果があるという。

Slackを選んだポイント1位:ヨコグシが活発に

 ここでSlackの言う「イベント駆動型」について、川崎氏は「会話から仕事が生まれること」という独自解釈を論じた。会話には意図や出来事があり、そこから仕事が生まれるという意味だ。企業内の仕事では、会話をして資料を作り、会話をして目的を果たす流れとなる、これが「つなぎ目がない」シームレスな状態であれば効率化される、と川崎氏は述べた。

 川崎氏によると、コミュニケーションのイノベーションは、「ヒトとヒトとが『電話』で『遠隔でも』つながるようになった」「ヒトとヒトとが『メール』で『高速に』つなながるようになった」というかたちをとるという。

 こうした「つながる」にも、「かなり面倒」「やりとりはできているが、ひっかかりがある」「サクサク」などの度合いがある。この「やりとりはできている」と「サクサク」の間にイノベーションがあると川崎氏は言う。

「イベント駆動型」は「会話から仕事が生まれること」と川崎氏
「やりとりはできている」と「サクサク」の間にイノベーション

 そうしたSlackによるイノベーションの社内例を川崎氏は紹介した。

 まず、チームのコラボレーションは、ちょっと前までは、会議を招集し、作業し、結果をメールし、その結果について会議を招集する、というものだった。それが今では、Slackで会話しながらクラウドで共同作業するようになった。例えばOffice 365のExcel Onlineの文書をSlackから共同編集することで、会話と資料の行き来がスムーズになる。

チームのコラボレーションの変化
SlackからExcel Onlineの文書を共同編集

 また、写真を共有する場合、ちょっと前までは、1人が添付してメールし、受け取った人が解決につながる人に転送し、ということを繰り返していた。今はSlackに投稿して、解決につながる人にメンションを加えるだけで、Slack上で解決していける。例えば、給湯室の水を運ぶのが大変という話から、「こんなの見た」と使えそうな道具の写真を投稿することで、メンションで広がり、買っていいかの確認もその場で済ませて決定していく。

写真を共有する場合の変化
使えそうな道具の写真の投稿から購入の決定までをSlackで

 「ちょっと話す」というスモールミーティングの場合は、ちょっと前は場所を探すだけで大変だったが、今はSlackからZoomやTeamsでのミーティングに移り、メモもそのままSlackに残る。

「ちょっと話す」ときの変化
SlackからZoomでミーティング

 ベルシステム24の全国の拠点をつなぐ工夫についても川崎氏は紹介した。基本的にセキュリティ上の理由でワークスペースを分けているが、共通チャンネルを設けて交流や情報共有を促進している。

気軽に話せるスペース作り、一言縛りの「#ひとこと」チャンネルも

 例えば「#各地のベルから」チャンネルでは全国や海外の拠点から写真が投稿され、互いに身近に感じられるようになっている。「#ヨコグシノーアジェンダ」チャンネルは、名前どおりアジェンダなしで情報共有するもので、特に事例を探しているという投稿が多いという。「#社内ブログ通知」チャンネルはYammer上の社内ブログの新着が自動投稿される。

 また、在宅で疎外感を感じる対策として、いかに「ちょっとした話」ができるかという心理的安全性を模索しているという。「#ざつだん」チャンネルでは、雑談により、ふとした会話を誘発する。「#ひとこと」チャンネルは、一言しか言ってはいけないという縛りを設けることで、一言を話しやすくするという。

「#各地のベルから」チャンネル
「#ヨコグシノーアジェンダ」チャンネル
「#社内ブログ通知」チャンネル
「#ざつだん」チャンネル