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広がる法人向けの“睡眠ビジネス”!? 1885年創業の老舗企業からスタートアップまで、各社の取り組みが活発化

睡眠ビジネスへの参入を考える法人向けにセミナーが開催されました

 去る9月7日、これから睡眠ビジネスに参入を予定している事業者やベンチャーを集めたセミナー「Mirai Salon#9 広がる睡眠ビジネス」が開催されました。これから睡眠ビジネス市場は1兆円規模になると言われているそうです。そこで、すでに睡眠ビジネスに参入している企業など、4人のプロフェッショナルが登壇し、睡眠の基礎から現在行っている活動について説明しました。

 法人向けの睡眠ビジネスもしくは、法人として取り組んでいる睡眠に関するアプローチに興味があったので、大変興味深いひとときでした。それぞれのセッションで一番気になったポイントをご紹介しましょう。

睡眠不足で脳の老化がスピードアップしてるかも!?

 最初に登壇したのは予防医学研究者で医学博士の石川善樹氏。「睡眠の超基礎」として、睡眠について説明しました。

予防医学研究者・医学博士の石川善樹氏

 ビジネスパーソンなら、睡眠でいろんな疲れを取りたいと思うもの。睡眠時間が短いと、メンタルにダメージが現れやすくなります。石川氏は講演の中で、「睡眠はまだ分からないことだらけ」としながらも、眠りの序盤、中盤、終盤で機能が違うことを紹介しました。

 例えば、最初の3時間は深い睡眠が多く、脳の疲れを取るための時間と言われていて、中盤の3~6時間は体の疲れを取るために使われるとか。終盤の6時間以降はレム睡眠が増え、心の疲れに影響するそうです。つまり、削れば削るほどそれぞれの疲れが取れなくなるというわけです。

睡眠中に心と体のメンテナンスが行われます

 よく「自分はあまり眠らなくても大丈夫! ショートスリーパーかも!」という方が時々いらっしゃいますが、一説には5%くらいしかいないと言われます。案外若さや体力でカバーできているだけで、本来取るべき睡眠時間が取れていないかもしれません。

 統計的に働き盛りの日本人の睡眠時間は6時間程度らしいですが、石川氏は6時間睡眠の悪影響として「7時間睡眠に比べて脳の老化が2倍のスピードですすむ」「ビール大瓶1~2本飲んだ状態(ほろよい)と同じで、脳の認知機能が落ちる」としました。

 私も6時間弱くらいで目が覚めてしまうのですが、実は疲れが取れていない、脳の老化は進み、認知機能が落ちている――いいことなしらしいと震撼しました。でも、年齢が上がるにつれて眠れなくなっていくんですよね……。

ちなみに朝型と夜型は遺伝子で決まるそうです

1万人の睡眠改善に取り組んできたニューロスペース

 実際に企業に出向いて、法人向けに睡眠改善プログラムを提供しているのが株式会社ニューロスペースです。今年で設立5年目で、規則的な生活が難しい企業や、時差ボケしやすい企業などにプログラムを提供。これまで約50社、1万人の従業員の睡眠改善のお手伝いをしてきたそうです。吉野家やANAという社名を見れば思わず納得。

株式会社ニューロスペース代表取締役社長の小林孝徳氏

 ニューロスペースではとにかく現場のニーズありき。十分なヒアリングの後、それぞれの企業にカスタマイズされたサービスを提供し、主観的な改善も含め、実際に睡眠時間の増加や質の向上、という成果が挙がっていると紹介しました。

すでにさまざまな企業が社員の睡眠改善に取り組んでいます

 実証実験も行っており、中でも私がとても興味を持ったのが、KDDIのホームIoTサービス「au HOME」を活用した社内実証実験。

 人間の睡眠は、脳が休んで体が動くノンレム睡眠と、脳は働いて体が動かないレム睡眠が交互に現れます。夏に寝室が暑いとき、レム睡眠だと体が動かず、ふとんと自分の間に熱がこもって暑くなります。それがきっかけで中途覚醒が起こりやすくなるため、レム睡眠に入ったことが分かったら、家電を制御するのだそうです。それで寝苦しさが解消されたら素晴らしい!

 寝具内の温度や湿度環境を調整しようという製品はすでに登場しているので、そういうものと連携したら、1年中快適に眠れそうです。

「au HOME」を活用した実証実験にも取り組んでいるそうです

すずまり

プログラマからISPの営業企画、ウェブデザイナーを経て、現在はIT系から家電関連まで、 全身を駆使してレポートする雑食性のフリーライターに。主な著書に「Facebook仕事便利帳」「iPhone 4 仕事便利帳」(ソフトバンククリエイティブ)など。 睡眠改善インストラクター、睡眠環境診断士(初級)。