アラフィフすずまりの「今日も元気に仕事しよう!」

広がる法人向けの“睡眠ビジネス”!? 1885年創業の老舗企業からスタートアップまで、各社の取り組みが活発化

子どもに睡眠を考えるきっかけを与える「Peels」

 子どもの睡眠改善や意欲あふれるライフサポートを行っているのが、西日本電信電話株式会社(NTT西日本)の睡眠サポートプロジェクト「Peels」です。

西日本電信電話株式会社の山下福太郎氏(ビジネスデザイン部オープンイノベーション推進室睡眠サポートプロジェクト「Peels」代表)

 NTT西日本ビジネスデザイン部オープンイノベーション推進室睡眠サポートプロジェクト「Peels」代表の山下福太郎氏によれば、子どもたちが睡眠に関して主体的に考えるプログラムを提供し、睡眠への興味を喚起しているといいます。結果、実際に睡眠が改善されるだけでなく、勉強するようになったりといった副次的な効果も得られているとか。

中学生、高校生の睡眠時間がどんどん減っています

 子どもにとって睡眠は成長と学力向上に直接影響を与える重要なファクターですが、学校で睡眠について教えてもらう機会はゼロ。また、子どもは親のライフスタイルの影響を受けやすい存在ですが、親が睡眠に関する知識が欠けていると、子どもの可能性を潰してしまうこともあるかもしれません。

睡眠興味喚起プログラムの実施例

 そんな中、24時間ネットに接続し続けられる通信インフラを提供している、いわば睡眠時間を削るきっかけを提供しているといってもおかしくない会社の中で、このような活動が始まっているという事実に興味を持ちました。スマートフォンやインターネットの利用について、子ども自身が考えられるきっかけが増えるといいですよね。

 ちなみにPeelsを反対側から読むとsleepに。

脳波をセンシングして眠りに導く、老舗メーカー「フジクラ」

 最後は1885年創業という株式会社フジクラによる取り組みの紹介でした。フジクラは電力ケーブルや光ファイバーの製造を行う老舗メーカー。「睡眠の課題を作り出したといってもいい」というのは、同社新規事業推進センター シリコンバレーオフィス所長の今井隆之氏。その自虐的なコメントに笑うしかありません。

株式会社フジクラの今井隆之氏(新規事業推進センター シリコンバレーオフィス所長)

 そんなフジクラでは、米国コロラドの企業Sleep Shepherdと組んで、ヘッドバンドを使った実証実験を行っているといいます。ヘッドバンドでは脳波を測定できるのですが、脳波の周波数より少し低い周波数を耳から入れることで、睡眠に導くというもの。使い始めから2週間ほどで、睡眠サイクルが理想的な曲線を描くようになるなど、手応えを感じているといいます。

Sleep Shepherdと組んで入眠サポートデバイスの実証実験を実施中

 ヘッドバンドはすでに米国で30000台も売れているとのことで、これは実際に試してみたくなりました。呼吸や音楽、香り、光などでリラックスして眠ろうという製品は多いですが「脳波の周波数より少し低い周波数を耳から入れる」とはどんな感じなのでしょう。

睡眠状態に応じたバイノーラルビートで脳波の周波数を下げるそうです

眠らない攻めのビジネスはあり?

 質疑応答では、全体的に「睡眠改善」を目的としたもので、短時間睡眠でもパフォーマンスが得られるような攻めのビジネスではないのはなぜか、という質問がありました。それに対して小林氏は「エビデンスがないからだと思います」と回答しました。

 私は短時間睡眠では人間の体がそれに耐えられないのでは、と思いました。例えばカフェインを摂取することで一時的に覚醒できますが、その生活を続けていると、結局その後激しい睡魔に襲われますよね。

 睡眠時間を削ることでビジネスにプラスにしたいという考えは理解できますが、どこかで帳尻を合わせなければ健康が維持できず、最終的に心身の健康を損なう結果が待っていそうな気がするのです。なぜなら身体機能の回復を担うのが睡眠の役割だから。

 自分の体が発する声に耳を傾け、体内リズムに合わせて体が喜ぶ状態にすることが、最終的なパフォーマンス発揮に繋がるのではないでしょうか。

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すずまり

プログラマからISPの営業企画、ウェブデザイナーを経て、現在はIT系から家電関連まで、 全身を駆使してレポートする雑食性のフリーライターに。主な著書に「Facebook仕事便利帳」「iPhone 4 仕事便利帳」(ソフトバンククリエイティブ)など。 睡眠改善インストラクター、睡眠環境診断士(初級)。