2019年2月27日 06:10
去る2月19日、働き方改革における睡眠の重要性をテーマにした「目覚め方改革プロジェクト」のメディアセミナーに参加してきました。今回はそこで聞いた話をご紹介しようと思います。
目覚め方改革プロジェクトは、久留米大学の内村直尚氏(医学部神経精神医学講座教授)をはじめとした、睡眠の専門家らが立ち上げたプロジェクトです。独自のウェブサイトを通じて、睡眠に関する正しい知識を発信することで、睡眠の大切さを啓蒙しています。
今回のメディアセミナーでは、「“働き方改革”は体内リズムの改善から~多様で柔軟な働き方のカギとなるのは睡眠~」と題して、内村氏による「パフォーマンスを左右する目覚めと体内リズム」のほか、特定非営利活動法人健康経営研究会理事長の岡田邦夫氏による「いまビジネスパーソンが取り組むべき睡眠課題」、東海旅客鉄道株式会社の清水紀宏氏(総合技術本部技術開発部技術計画チーム担当部長)による「睡眠自己管理プログラム活用による仕事のパフォーマンス向上」、大塚製薬株式会社の只野健太郎氏(ニュートラシューティカルズ事業部ソーシャルヘルス・リレーション部課長)による大塚製薬のインターネット調査の情報提供など、4つの講演が行われました。
睡眠の日(3月18日)、春の睡眠健康週間(3月11日~3月25日)を控えていることや、今年4月から施行される働き方改革関連法も踏まえ、4つの講演を通じて、最新の統計データをもとに、改めて睡眠の重要性と、現代社会が抱える睡眠の問題と睡眠不足の危険性、体内リズムの整え方などが説明されました。
眠らない日本人の生産性の低さが浮き彫りに
冒頭で内村氏は「4月から働き方改革がスタートすることにより、残業時間が大幅に削減されたり、有給休暇も取得しやすくなる。その分、時間の使い方が重要になってくる」と語りました。確かに、このまま労働時間だけ短縮させても、働き方の問題は解説するのだろうか? という疑問はあります。
内村氏によれば、経済開発協力機構(OECD)の2018年の統計で、日本人の睡眠時間は7.4時間で世界ワースト1になるそうです。これまでのワースト1は韓国だったのですが、追い越したようです。ちなみに今回の統計では、韓国の睡眠時間は7.7時間、フランスは8.5時間、イタリアは8.6時間となっています。
2018年3月に大塚製薬によって行われたインターネット調査「現代人の睡眠と目覚めに関する調査」によれば、働いている男女の8割以上(1600名中1316人)の平均睡眠時間が理想より短いと回答していました。睡眠時間を確保できない理由として最も挙げられたのが「仕事」。2位は「睡眠自体の問題」、3位は「家事」です。
岡田氏の講演では、日本の労働生産性について驚くべき統計データが紹介されました。日本は世界で1番睡眠が短く、労働時間は世界で2番目に多い国ですが、労働生産性は世界22位だったのです。生産性が最も高いのはフランスで、日本よりも睡眠時間の長い国に負けていました。
なお、労働者の熱意は139カ国中132位で、自分が働いている会社に対する信頼度は、なんと世界ワースト1位だそうです。
労働時間が短縮されても、仕事の量は変わらないはず。むしろ残業時間が減らされ、強制的にオフィスから追い出されることで、持ち帰ってしまう懸念もあります。また、これから働き手は少なくなる一方であり、労働力の確保は難しくなるでしょう。ということは、これまで通りのライフスタイルから生み出しているパフォーマンスでは、うまくいかないのではないかと感じました。
休日の寝坊に注意、睡眠は免疫機能の増加や記憶の固定につながる役割も
働き方改革が始まっても、まずしっかり睡眠時間を確保し、体内リズムを改善しなければパフォーマンスは上がりません。
内村氏は睡眠の役割として、脳・身体の休養、疲労回復、体温下降、エネルギーの保存、身体の成長(成長ホルモン分泌)、免疫機能増加、記憶の固定を挙げました。学習に関しては、徹夜して勉強しても記憶は1割も残らないそうです。
体内リズムを整えるために重要なのは、起きる時間を一定にすることです。休日は思い切り寝坊するという方は、むしろ体内リズムを自ら乱していることになります。目覚めからスタートするライフサイクルを意識すること、睡眠の量、質、リズムが大事だと内村氏は説明します。
「朝寝坊は2時間以内。起きたら朝の光を浴びてください。入眠に意識がいきがちですが、目覚めも意識する必要があります。昼間のパフォーマンス向上には朝の目覚めも大切です。」(内村氏)
ちなみに、新入社員は体内リズムが乱れやすいそうです。自由に時間を使っていた大学生活の後で、入社時に体内リズムが3時間半、もしくは6時間半の時差ボケに相当する状態になる人もいるとか。2019年のゴールデンウィークには10日間の大型連休がありますが、入社後にせっかく整い始めた体内リズムも乱れやすくなりそうです。
睡眠が軽視された結果、今の社会が形成された?
昔の人は、眠らないことがいいことだと思っていました。受験勉強で4時間しか寝ないなら合格し、5時間なら落ちるという「四当五落」と言う言葉がいい例です。
筆者が大学受験生だった頃の話ですが、体調不良で病院に行き、睡眠時間が5時間であることを担当医に伝えると、「寝てるじゃない。寝過ぎだよ! 受験生なのに」と呆れたような口調で言われたことがありました。
当時は自分にも睡眠の知識などありませんから、5時間は十分な睡眠時間なんだとすり込まれてしまいました。今思えばかなり悲劇で、睡眠の研究が進んでいなかった30年以上前は、医者ですらその程度の認識だったのです。
内村氏もご自身が医学生の頃、教授が「睡眠なんて邪魔だ」と言っていたと明かしていましたが、そういう世代の認識が、今の社会を形成したとも考えられそうです。
睡眠の大切さを認識することで社会は変わるかも
内村氏によれば、海外では子どもの頃から睡眠の大切さを学ぶ授業があるそうです。私自身は資格取得にチャレンジするまで、誰からも教えられたことはありませんでした。最近では、日本でも一部地域で、子どもや中学受験生を持つ保護者を対象に睡眠の大切さを教える授業が始まっているといいます。あるセミナーを取材したことがありましたが、「とにかく寝かせてください!」と全ての講師たちが説明していました。
なぜそこまで口を酸っぱくして説明しているのかというと、睡眠が休息と成長、そして記憶の定着に重要な役割を果たしていると知らない親たちが、子どもの睡眠時間を奪い、結果的に学力に問題を抱えることになるためです。
親世代の意識が変わっていかないと、子どもの能力も育ちません。眠ることが大事だと分かって育つこれからの子どもなら、おそらく睡眠を大事にする社会を作れそうな気がする――そんなことを考えたセミナーでした。
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