テレワークグッズ・ミニレビュー

第30回

八方ふさがりの集合住宅「回線遅い」問題、戸建て向けフレッツ光でめっちゃ快適に

 テレワークが定着した昨今、INTERNET Watchの編集部スタッフやライター陣も、それぞれの仕事環境を改善すべく日々工夫を凝らしている。この連載では、そんなスタッフが実際に使ってオススメできると思ったテレワークグッズのレビューをリレー形式で紹介していく。


 昨年、都内のアパートにある筆者宅のインターネット接続サービスを、最大通信速度(下り)100MbpsのCATVから、「@nifty光 with フレッツ」に乗り換え、最大通信速度(下り上りとも)1Gbpsにアップグレードした。その際、大家さんも巻き込んだドタバタや遠回りがあった。

 なお、集合住宅の回線速度問題についてお悩みの方も少なくないと思うが、こちらについては別途取材してみたので、関連記事「『フレッツ光が遅いアパート』を改善するには? 集合住宅の光回線高速化についてNTT東日本に聞いた」もあわせてお読みいただければ幸いだ。

自宅のモジュラージャックがあったパネルをはずして、光ファイバーケーブルを通しているところ

 さて、これまで、CATVのインターネット接続サービスでも大きな不満はなかった我が家だが、コロナ禍で事情が変わってしまった。

 2020年の初夏ごろから、昼間に異常にネットワークが重くなることが増え、完全にダウンすることも2、3回あった。一度問い合わせたことがあったが、「テレワークと思われる利用が急に増加し、インフラの整備が追い付いていない」とのこと。

 なるほど、CATVの規模で需要の急増があっては、対応が大変かもしれない(なお、2020年の後半には、わりと安定した)。CATVには下り最大100Mbps台のプランしかないので、プランの変更ではなく光回線への乗り換えを考え始めた。

 数年前に、アパートで「フレッツ光」が利用可能になったと連絡をもらった記憶があった。調べ直してみると、やはりこの建物で「フレッツ光」が利用可能であることが分かった。

フレッツ光の公式サイトで、住所から自分の住む集合住宅でフレッツ光が使えるかどうかは調べられる。ただし、建物内の配線方式などの詳細までは分からない

光は光でも「最大100Mbps」ではどうにも……

 光回線の移行先として、かつてADSL時代に長くお世話になった@niftyを選んだが、申し込んでみると、我が家のアパートで使えるのは「最大通信速度100Mbpsのフレッツ光」だと@niftyから連絡があった。それだと、CATVから乗り換えてもたいした速度の向上は見込めない。

 どうしたものかと思案していたら、戸建て向けのプランで最大通信速度1Gbpsの回線を通すことも可能だとの提案をもらった。なるほど。それで行きましょう!

 と、いうことで大家さんに相談すると、実は大家さん宅でも回線が遅くて気になっており、この機会に建物内の全戸の回線をアップグレードできないか? との相談を受けた。要するに現在はVDSL方式だと思われるアパート内の配線を、光配線方式にしたいということだ。その方が、実効速度は戸建て向けよりも多少低下するかもしれないが、割安な集合住宅向けプランで契約できる。それに、おさまりもいい。

 実は、わが家がお世話になっている大家さんは高齢で、インターネットのことはほとんど分からないと思われる。全戸の回線をアップグレードしたい、というのは大家さんのお子さん(筆者と同年代)で、アパートの価値を上げることにもつながるだろうから、ということだった。

 筆者は現在のアパートの前にも、同様に高齢のオーナーが管理している都内のアパートを借りていた。オーナーは高齢でネットを使っておらず、事情も分からない、その子どもの世代は日常的にネットを使っていて、回線のことも気になってはいるが、管理に直接はコミットしていない、といったケースは、多いのではないかと思う。

 こうした考えは分かるし、協力したい。ただよく分からないのは、どこにどう問い合わせればいいのかで……。

@nifty光のウェブページより。どこの光コラボも、当然ながら通信速度は自宅に通っているフレッツ光の回線次第となる

「アパート全体の光配線化はできない」との結論に

 大家さん(のお子さん)もネットのことはよく分からないということで、ひとまず、筆者が手探りで方々に相談してみることになった。NTT東日本の「116」に電話してみると、光コラボの契約者は光コラボを通して依頼してくれないと動けないという(大家さんも光コラボに契約していた)。一方で@niftyに相談してみると、回線のことはNTTさんに聞いてもらわないと分からないという。

 ここで、@niftyの回線工事に関する連絡には、専門の窓口があることを思い出した。そちらに連絡してみると、集合住宅の回線をアップグレードする要望をNTT東日本に送ることが可能だという。なるほど、要望を送れば大家さんも前向きなことだし、じきに工事が実現するのか……と思ったが、実はそうではないらしい。

 さらに話を聞くと、この方法は、大家さんがOKだとしても実質的には年単位で何も動かないことが多く、おすすめできないという。理由は(明確な説明をしてもらえなかったので)よく分からないが、そんな不確実な方法では無意味だ。

 どうも入居者の立場としては八方ふさがりのようなので、大家さんからISPに問い合わせてみてもらうことにした。数日して連絡をもらったところによると、やはりどうしても全戸の光回線のアップグレードはできないと言われたので、あきらめたという。筆者宅だけ高速回線を通せるなら、やってもらって構いません、とのこと。

 後日、2月8日公開の記事「『フレッツ光が遅いアパート』を改善するには? 集合住宅の光回線高速化についてNTT東日本に聞いた」のため取材して分かったことだが、このようなケースの場合、大家さんが回線に詳しくなくて自信がないとしても、集合住宅オーナーの立場で「116」へ電話してもらうのが、最も話が早そうだ。

 なお、この取材の際に知った光配線方式への変更に関する専門窓口「NTT東日本リニューアルセンタ」にも後日問い合わせてみたが、筆者の住むアパートは、やはり全戸の光配線化はできないとのことだった。ただ、具体的にどのような問題があるのかは教えてもらえなかった。

集合住宅に戸建て向け光回線を通してみた

 全戸の光配線方式へのアップグレードができなかったのは残念だが、我が家のみ戸建て方式で光回線を通すことになり、2週間ほど後の工事が決まった。この際、以下のことを確認された。

  • MDF室(主配線盤室)にはカギがかかっているか?
  • ビス留めなど穴をあける工事は可能か?

 MDF室に関しては大家さんに聞いても「どこだっけ?」という反応だったが、おそらくカギはかかっていないし、一応工事の際には立ち会うようにするとのこと。穴をあける工事については、必要ならばやむなし、ということでOKだった。

 実際に工事が始まってみると、MDF室にはカギがなく、光ファイバーケーブルは壁の中の配管を通すだけでOKで、穴あけは不要だった。大家さんの立ち合いは必要なく、工事は1時間ほどで完了した。

MDF室の中身

 さて、通信速度を比べてみよう。なお、筆者宅はバッファローのWi-Fi 5(IEEE 802.11ac)ルーター「WSR-1166DHP4」を使い、有線LANおよびWi-FiでPCなどを接続している。IPv6 IPoE対応で、有線LANはギガビット対応。Wi-Fiの最大通信速度は866Mbps(5GHz帯接続時)または300Mbps(2.4GHz帯接続時)だ。

レンタルのONUと、Wi-Fiルーター

 Googleのスピードテストを使い、有線LAN接続でのスピードを移行前(CATV)と移行後で比べると、下りは約10倍という結果になった。上りの速度はCATVだと最高10Mbpsのプランだったので、比較すると70倍近い。

移行前 有線LAN接続(CATV)
移行後 有線LAN接続(@nifty光 with フレッツ)

 Wi-Fi接続でのスピードは、移行前に測定しそびれていたので、移行後の数字だけを。Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)に対応しているMacBook Air(M1 2020)で測定した。

 ほかの機器をWi-Fi接続せずにルーターのほぼ直下で測定したが、複数回測定すると下りで400Mbps弱~100Mbps台と、なかなかぶれが大きい。ルーターを新しい機種に買い替えれば、もっとWi-Fi接続時のパフォーマンスを上げられそうではある。

移行後 Wi-Fi接続

 光回線は、全くストレスがなくていい。コロナ禍直後にはかなり重くなることがあったCATVの回線も2020年後半には安定してきたと述べたが、それでも、夜間などの時間帯に重くなることは日常的にあった。

 それがなくなり、家族皆が別々の動画を見たりしても、まったく重さを感じないのは快適だ。次は、Wi-Fiルーターをもう少し新しいものに買い替えたいと考えている。