急遽テレワーク導入!の顛末記
「Asana、Jooto、Wrike……、無料で使えるカンバンボードを徹底比較!」――急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記(172)
通知機能、カスタマイズ性、外部サービスとの連携などをチェック
2024年1月22日 07:00
先日は「Trello」のカンバンボードを、「Notion」というクラウドサービスにインポートしてみた。そのまま両者を使い比べたところ、基本的な操作方法には違いはなかったが、通知の仕様などで使い勝手が変わる部分もあるようだ。
……この記事を書いている時点で、新型コロナが5類に移行されて256日が過ぎた。
私が勤めている新宿にある中小企業では現在、各スタッフが可能な範囲でリモートによる業務を行っている。その中で今回は無料でカンバンボードが使えるサービスを、他にもいくつか試してみた。
1月15日(月):まずは3サービスの基本機能を比較してみた
進捗管理に「Notion」のカンバンボード機能を使ってみたのだが、簡単にガントチャートが作れる一方で、カード移動の際に通知が行われないなど、それまで使っていた「Trello」とは動作が異なるところがあった。こうなると、“自分にとってベストなカンバンボードが使えるサービス”を探してみたくなってくる。
そこで、基本的な機能が無料で、他のユーザーとの共同作業も可能なものを探してみたところ、以下の3つのサービスが見つかった。それぞれ無料プランでできることが違ったので、その内容を確認していきたい。
Asana
【主な無料プランの内容】
- コラボレーター数:最大10人まで
- ボード数:無制限
- 利用可能なビュー:ボード/リスト/カレンダー
- ストレージ容量:100MB
Jooto
【主な無料プランの内容】
- コラボレーター数:最大4人まで
- ボード数:無制限
- 利用可能なビュー:ボード/ガントチャート/ファイル
- ストレージ容量:100MB
Wrike
【主な無料プランの内容】
- コラボレーター数:無制限
- ボード数:無制限
- 利用可能なビュー:ボード/テーブル/ファイル/グラフ/リソース
- ストレージ容量:2GB
これらのサービスの中で最も無料プランの内容が充実しているのが「Wrike」で、コラボレーター――カンバンボードを共有できるユーザー数が無制限なのに加え、ファイルを2GBまでアップロードできる。一方、「Asana」はカレンダービューを、「Jooto」はガントチャートを無料で使えるのが大きな魅力だ。
ちなみに、「Notion」はコラボレーター数が10人までで、ストレージ容量に制限はないが、1ファイルの容量が最大5MBまでとなっている。また、カードと連携するガントチャートなど、利用できるビューには制限を設けていない。
「Trello」もストレージ容量に制限はないが、1ファイルの容量は最大10MBまで。ワークスペースあたりのボード数は最大10枚までとなっており、ボード以外のビューを利用するには有料プランとの契約が必要だ。
無料プランの内容だけを見ると、やはり「Wrike」が良さそうだが、カードと連動するガントチャートを使いたいので「Jooto」も悪くなさそうだ。あとは、実際にサービスを利用して、その使用感を確かめてみたいと思う。
1月16日(火):操作性やカスタマイズ性など、各サービスで方向性が違う
昨日調べた3つのサービスについて、さっそくカンバンボードの使い勝手を試してみたのだが、基本的な操作における使用感はあまり変わらなかった。各カードには期日や担当者、優先度などのラベルを設定できるほか、フィルターを使ってカードを絞り込み表示したり、サブタスクを作成してその進捗も管理することが可能。カード内ではコメント機能を使って、担当者間で連絡を取ることもできる。
ただ、細かい使い勝手については独自の味付けがされており、その方向性には以下のような傾向がみられた。
- Asana:多人数での利用を想定した、豊富なカスタムメニューを備える
- Jooto:一番シンプル。ToDoリストから派生したような使用感
- Wrike:タイマーや承認フローなど、各カードに独自の機能を搭載
「Asana」は大人数で動かすプロジェクト向きか!?
「Asana」はとにかくカスタマイズ性が高いのが特徴と言えるだろう。「進行中」や「完了」といったステータスをリストで管理するだけでなく、「優先度(低/中/高)」や「ステータス(順調/要対応など)」といった項目を各カードに設定して、その状況を細かく確認できる。アプリ内/メールでの通知についても、かなり細かく設定することができた。
さらに、他のサービスとの連携も可能で、例えば「Googleカレンダー」に登録した予定にカードを紐づけたり、タスクの作成時にカレンダーに予定を作成する機能を用意。こうした自動化についてはAIによるアシストも利用でき、コメントの入力中に「ありがとうございます、早速取り掛かります!」といった入力候補を用意してくれたのは、体験としてちょっと面白かった。
また、「Asana」独自の仕様としては、カードに複数の担当者を設定した際に、その数だけカードが複製されるのもユニークだ。「担当者が増えたら、その人数分だけ進捗を管理する必要があるでしょう?」といった意図がありそうで、これらの点から同サービスは“大人数で動かすプロジェクトの管理”を意識しているように感じられた。
シンプルな「Jooto」、外部アプリとの連携強くガントチャートが無料
続いて、「Jooto」だが、こちらはカンバンボードの必須機能をシンプルにまとめた上で、ToDoリストを融合させたような設計になっている。各カードやサブタスクには、ToDoリストでお馴染みのチェックボックスが用意されているので、これのオン/オフでもタスクの消化具合を確認可能。これまでタスク管理にToDoリストを使っていたという人は、そのまま違和感なく使いこなせそうだ。
さらに、外部サービスとの連携では、「Googleカレンダー」「Slack」「Chatwork」に対応。例えば、自分が担当者に指定されていて、期限が設定されたカードがあると、その情報を「Googleカレンダー」に自動で登録してくれる。「Slack」と「Chatwork」については、通知を転送できるので、常に「Jooto」をチェックしていなくても、何かのイベントがあれば両アプリで確認できるというわけだ。
それに加えて、「Jooto」の嬉しいポイントが、カンバンボードと連携するガントチャートが、無料プランで利用できることだ。こちらもシンプルなデザインなのだが、それだけに操作性がよく、直感的に使えるインターフェイスになっている。
サブタスクの予定も組み込めるので、タスクが混み入っている案件でも柔軟な対応ができそうだ。機能性としては以前に紹介した「Notion」のタスク管理機能に近いが、ここで注目したいのが「カードの移動」についても通知を受け取れること。「Notion」にはこの機能がなかっただけに、共同作業では1つのアドバンテージになりそうだ。
「Wrike」はオーソドックスなカンバンボードをより実用的に
そして、最後に試した「Wrike」だが、こちらはカンバンボードとして最もオーソドックスな仕上がりになっていると言えるかもしれない。筆者は長く「Trello」のカンバンボードを使っていたのだが、使用感がかなり近かった。
その一方で「予算」や「影響」といった独自のステータス項目を標準で用意しており、タイマーや承認プロセスを設定できることなど……。よりビジネスに特化した設定項目が用意されているのは、「Wrike」が更なる実用性を求めた部分と言えるかもしれない。その他にも、カスタマイズできる内容は多岐に渡っているのだが、無料プランでは利用できないのが残念なところだ。
ただ、個人的に気になったのが、カードの移動については通知画面で確認できないこと。メールでの通知はあるのだが、できれば画面内で完結してほしかったと思ってしまうのは、「Trello」を使い慣れてしまった影響だろうか? まぁ、各カードを開けば操作履歴は確認できるので、そこまでの問題ではないのだが。
以上の結果をまとめると、カンバンボードの必須機能に加えて、ガントチャートを無料で使えるのが「Jooto」。「Asana」と「Wrike」はカスタマイズ性が魅力だが、「Asana」が各種機能をオーソドックスに強化しているのに対して、「Wrike」はややマニアックというか、「分かっている人が使いこなすと強力」といった印象だった。
とはいえ、これはあくまで各サービスを無料プランの範囲内で使った際の感想なので、有料プランに加入すれば、もう少し見方が変わってくるかもしれない。
1月17日(水):有料プラン向けの機能も試してみた
今回、紹介した3つのサービスは、アカウント作成時から一定期間は有料プランをお試しで利用できるようになっている。せっかくなので、これらの機能がどこまで使えるかも確かめてみたいと思う。
まず、筆者が気になっていたガントチャート(タイムライン)だが、「Asana」の作成機能は柔軟性の高さが魅力に感じられた。既に登録されているタスクの横に、依存関係のある新たなタスクを作成したり、タスクをドラッグ操作で別のリストに移動させたりと、チャート上でタスクの追加や移動が自由に行える。もちろん、ガントチャート上で作成したタスクは、カンバンボードでも表示されるので、現実に即してより精密なタスクの作成・管理を行うことができるだろう。
一方、「Wrike」は柔軟性では一歩譲るが、チャートをクリックして作業時間を追加したり、マイルストーンに変換するといった機能が用意されているのが面白かった。そのタスクに作業の期間を割り当てていても、実作業にどれだけの時間がかかるかは別の話なので、それをまとめて管理できるのは管理者としては便利な指標になる。
さらに、「Wrike」では有料プランに契約すると、「Asana」のような自動化機能が利用できるようになる。例えば、タスクの期限が来たら、重要度を変更するなど、いろいろな使い方ができそうなので、管理の手間を減らすことができそうだ。
両者のガントチャートなどを使い比べてみたが、やはり王道とユニークという方向性には変わりはないようだ。この辺りはチャートを利用するユーザーやタスクの内容など、プロジェクトの内容によって求められる要件も変わってくるので、それに合わせたサービスを利用することになると思われる。
ということで、「Trello」と、それを移行した「Notion」にはじまって、カンバンボードが使えるツールを色々と試してみた。それぞれに個性があったので、「自分にとって最も使いやすいサービスは何か?」を、これからも引き続き模索していきたい。
とある中小企業に勤める会社員、飛田氏による体当たりレポート「急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記」。バックナンバーもぜひお楽しみください。